「出席番号1番!相川清香です!」
朝から元気だねほんと。こっちは女子の中に男2人放り込まれて気が気でないというに…極め付けは自分の前にいる自分。顔に傷なんぞ持たず、制服がデフォルトの白である(俺は制服を改造して白い部分を黒にしている)こと以外は顔も声も全く同じこの男がISに初めて触れた日は俺が覚醒した日らしい。…いや、逆か。こいつがISに触れたことで俺が覚醒した。どういう原理かは知らんが目醒めた俺は黒ウサギ隊によって救出され、姉経由で一時的に浅間山の早乙女研究所に預けられる事になり、ここに来るまでの期間をそこで過ごした。早乙女研究所の所長である早乙女博士と篠ノ之束は知己だったらしく、その幼馴染である姉とも面識があったそうだ。あそこではよくしてもらった。早乙女博士は多少マッド気味だが、人類の発展を願う純粋な研究者たちが集まる場所で、まともな大人が近くにいる生活は俺にとって貴重だった。…なーんて事を考えてたら自己紹介の魔の手がもう目の前まで。オーマイゴッド。
「…くん。織斑一夏くんっ!」
「はいっ!?」
「ええとね、今自己紹介が『あ』から始まって『お』まで行っててね、次が織斑くんの番でね、だから自己紹介してもらってもいいかな?」
どうやらオリジナルも何か考え事をしていたらしい。そしてそれに話しかけるボインちゃ…ではなく教師が1人。山田真耶…現役時代は日本の代表候補生にまで上り詰めた実力者である。現在はIS学園で教鞭を執っており、俺のクラスの副担任だ。一見頼りなさそうだが、代表候補生になれるだけの実力はあるんだろうな。たぶん。
「あ、すいません。えーと、織斑一夏です。これといって特技は無いですけど、よろしくお願いします」
そして流れる『もっと何かないのか』みたいな空気。自分のことだからわかるけど、何も無いんだって。そして
「織斑一夏だ。俺は前の織斑一夏のクローンで、基本的には同じ人間だそうだ。俺たちの差別化は…まぁ、みんなで適当に考えてくれ。以上だ」
こちらもこちらで『それだけか』みたいな空気が流れるが、意に介さず席に着く。いやほんとに何も無いんだって。だからその痛い目線やめてね?…で、そのあとも着々と自己紹介は進んでいき、特に何もなく最後の生徒まで終わった。自己紹介が大きなトラブルもなく済んだ事に山田先生がほっと一呼吸ついていると、ガラガラと音を立て教室の扉が開いた。入ってきたのは我らが姉・織斑千冬。
「自己紹介は…終わっているようだな。さて、生徒諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。私の役目はこの一年間でお前たちを一人前のIS操縦者に育て上げることだ。生半可な訓練を課すつもりはないから覚悟しておけ」
「「「はいっ!」」」
おお、今のはよく訓練された兵隊みたいに揃ってたぞ。
「よろしい。では、次にクラス代表を決める。まず大きなものとして、クラス代表は定期的に開催されるクラス対抗の試合に出場する事になる。その他にこれといって決まった仕事はないが、軽い気持ちでいると痛い目を見る事になるぞ。自薦他薦は問わん、意見のある者は挙手しろ」
どうしようー、誰にするー?と声が教室中で一斉に湧く。一応このクラスには英国代表候補生かつ専用機持ちであるセシリア・オルコットが在籍しており、実力と経験を考えれば彼女がクラス代表になるのがセオリーだろう。しかし世にも珍しい男性操縦者が2人もいるのだ。実力云々を抜きにして、興味本位でこの2人を推薦しようという声もちらほら聞こえた。頼むからやめてくれ。
「実力を考えて、クラス代表に最も相応しいのがこの私であるのは明白です。私は私自身を推薦いたします」
セシリアが自身ありげに挙手する。そうだ、それでいいぞ俺を面倒に巻き込むな。むしろ遠ざける方向でオールオッケー。
「じゃあ私は白織斑くんを推薦しまーす」
「し、白?」
ああ、嫌な予感が…オリジナルがなんか言ってるが気にしてられない。
「だったら黒織斑くんも推薦します!」
はい出たー。こういうのは往々にして当たるものなのよねー、知ってた。しゃーない、できる限り抵抗してみよう。
「織斑先生、辞退するってのはアリでしょうか」
「ナシだな」
ンな殺生な。即答はひどいよ千冬姉…こうなったら次の作戦だ。
「でしたら…試合で代表を決めるのはいかがです?俺と白織斑とオルコット、3人でそれぞれぶつかって勝敗をつければ簡単でしょう」
そう、実際に戦うのだ。白(もうオリジナルって呼ぶの面倒くさい)には悪いが巻き添えを喰らってもらおう。IS操縦に関する実力はオルコットが頭一つ飛び抜けている。順当に行けば俺と白が負けて彼女がクラス代表になり、「普通に弱い奴」のレッテルを貼られ目立たぬまま学園での生活を終える…理想はこれだな。
「ふむ…いいだろう。お前たち2人にはいずれにせよ専用機の調整もあるからちょうどいい機会だな。では試合は1週間後、第1アリーナで放課後に行う。質問はないな?…ではHRを終了する」
勝ち確キタコレ。白のことはもう気にしないとして、当日うまく敗ければクラス代表にならずに済む。俺の平和なスクールライフは約束されたも同然だ、はははは。…さて、白と箒はどっか行っちまったし、暇だからISの参考書でも読んどきますかね。早乙女研究所にいる時もちょくちょく読んでたけどしっかりは読んでなかったのよね、これ。…ちなみにこの後、白が参考書を古い電話帳と間違えて捨ててたことが判明。千冬姉の1週間詰め込みフルコースが確定したのを俺は見届けた。