【完結】空の記憶   作:西条

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ピーター・ペティグリューの場合

 ホグワーツ最終決戦は終わった。闇の帝王は死んだ。それなのに、誰もが荒れている。

 ピーター・ペティグリューは、そう思った。

 

 グリモールド・プレイスで、ピーターはシリウスの手伝い役としてくるくると忙しい日々を過ごしていた。シリウスはしかし、ピーターから見たら呆れるほどの仕事量を平然とこなしてしまう。

 処理能力は、学生時代の要領の良さからしたら納得だった。手際が悪いと自負しているピーターとしては、羨ましい限りだ。

 

「……アキ、ねぇ」

 

『アキ・ポッターは消えてしまう』、そう言い放った少年を思い起こす。

 正直なところ、アキに対しての思い入れはそんなにない。ピーターにとっては幣原秋こそが秋であったし、あの少年が消えようが、秋は残るのならば、何も変わらないのではないか。

 そうとも思うのは、自分が冷たいからなのか。ピーターにはもう、よく分からない。

 

「……でも、僕にあぁ言ったのは、アキなんだよなぁ」

 

 ピーターを生かしたのもアキだ。数年前、秋に杖を向けられ笑顔で殺されそうになったことを思い出し、身が震えた。

 アキも大概激しい奴だが、しかし杖を向けられたことはない。しかも左腕に殺されそうになっていた自分を、見殺すでもなく助けてくれたーーもっとも、あの少年は、殺されかけていたのが自分でなかったところで助けたのだろうが。

 

 そう考えると、幣原秋よりもアキの方が取っつきやすいか。

 あれ以来、幣原秋とは一度も会っていない。会うことが怖かった。シリウスとリーマスは、数発ぶん殴ってそれで手打ちとしてくれた。しかし秋はピーターに対し何もしていない。それはそれで、恐ろしかった。

 

 きっと幣原秋は、ピーター・ペティグリューを許してはいないのだ。死ね、とまで思われていないだけで、友人とはもう思っていないだろう。

 それは仕方がない、当然のことだ。それだけのことを、自分はやってしまった。ジェームズとリリーを売り、『不死鳥の騎士団』の情報を流し、シリウスに全ての罪を着せてアズカバンに追いやった。改めてこう数えると、自身の罪の多さに愕然とする。

 

 秋とアキのカラクリについては、リーマスが説明してくれた。よくもまぁ、そんなことをやろうと思いついたものだ。感心するというよりもまず呆れた。

 そして「そこまでして秋は生きていたくなかったのか」ということに気付き、心が痛んだ。

 秋がこの世に見切りをつけた理由は、ピーターが作り出したも同罪だったから。

 

 果たして、秋はまだこの世界で生きていたいと望むのだろうか。

 平和になった世の中で、裏切り者の自分がいる、この世で。

 

「……秋。君の気持ちは、どうなんだい?」

 

 静かに呟いた、瞬間だった。

 部屋の扉が開け放たれる。思わずパッと振り返り、見た人物に、動きを止めた。

 

「……秋は、どこだ」

 

 重苦しい雰囲気。真ん中から分けられた粘つく黒髪に、きっちり一番上まで留められた黒のローブ。不機嫌そうに眉間には深々と皺が刻まれている。

 

 セブルス・スネイプが、立っていた。

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