魂の守り人   作:一 白

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こんにちは、クランケです。
新作の投稿となります。
こういうの、昔から書いてみたかったんですが…協力者との合作で何とか形にすることができました。
それではどうぞ、お楽しみください。


第一話 超常なる日常

皇紀29XX年。我々の住むヤマト神国では、荒魂(あらみたま)と呼ばれる超常存在が度々顕現し、人々を苦しめていました。そしてその荒魂に対抗するため、我々『アマテラス機関』が設立されたのです。

 

薄暗い部屋の中、市街を焼き払う怪物と、勇敢にも立ち向かう五機のロボットが映し出される。

 

「ようこそ、【アマテラス機関】見学ツアーにご当選された皆様、ならびにライブ配信でご覧になっている皆様。私は本日の解説を務めさせていただきます、大嶋サクラと申します。皆様本日は何卒、よろしくお願いいたします。」

 

アルトボイスが朗々と部屋に響き、ぱっと明りが灯る。正面に立っていたのは、蒼い軍服に身を包み、白鞘の刀と黒鞘の刀の二振りを帯刀した黒髪ロングの女性だった。

 

「皆様既に我々アマテラス機関の概要はご存じでしょうし、早く見学に映りたいでしょうから、我々の組織体系についてのみ、手短にお話させていただきます。」

 

サクラがすっと手を挙げると、スライドが切り替わる。

 

「我々アマテラス機関は主に二つの部隊で構成されています。」

 

彼女の言葉に合わせて、スライドには月と刀を組み合わせたエンブレムと、剣と蔦のようなものを組み合わせたエンブレムが映し出される。

 

「まず戦闘を担う“ツクヨミ部隊”、そして補給や整備、戦闘時の管制を行う“スサノオ部隊”です。これら部隊の名前は、古事記の記述からとられました。」

 

日本古来の神、ツクヨミにスサノオ。二柱のイメージ画像と、実務の様子がパラパラと切り替わる。やや駆け足な進行ではあるものの、参加者の反応は悪くないものだ。

 

「ツクヨミ部隊の戦闘に使われる装備ですが、B級荒魂まではSX…サムライ・クロスと呼ばれる、鎧のようなものを着て戦います。染井三佐。」

「はい。」

 

サクラが声をかけ、モックアップのクロスを持ってこさせる。

 

「ありがとう。こちらは私たちが実際に使っているクロスの模型です。背中の…ここ、バックパックの中に、聖央都で和魂の加護を受けた水晶玉が本来は収められています。」

 

背中のバックパックを開き、中に入っているガラス球を見せると、何度かシャッターの音が鳴った。サクラはその様子を見て、数秒待ってからバックパックを閉じて説明に戻る。

 

「また、荒魂に対しては有効な遠距離攻撃手段が確立されていないため、必然的に接近しての戦闘となります。」

「あ、あの!質問よろしいでしょうか!」

「はい、どうぞ。」

 

記者風の若い男性が手を挙げ、立ち上がる。

 

「えっと、加護…でしたっけ、それを銃弾とか砲弾に込めれば、有効な遠距離攻撃手段になりえると思うんですが、どうでしょうか?」

「いい質問ですね。もちろん、我々も実際に試みました。ですが、銃弾や砲弾というのは消耗品です。一度撃てばそれで終わり、再使用もできません。」

 

事前に想定していなかった質問だ。資料がないため、ジェスチャー等で少しでもイメージしやすいよう努めている。

 

「さらに言えば、その加護が銃弾の危険性…つまり火薬を無効化し、不発弾になってしまうという現象が一定数確認されました。そして残念なことに、我々には予算という名の制約が課せられています。効果が疑わしく、緊急時に使えない可能性のある代物に予算をつぎ込むことは許されませんので。」

「なるほど…分かりました、詳しい説明ありがとうございます。」

 

にこやかに語るサクラの説明を聞いた男性は一礼し、椅子に座った。

 

「どういたしまして。さて、話を戻しましょう。A級荒魂以上の戦闘になりますと、クロスでは対応することができません。その場合、サムライ・フレームと呼ばれる大型戦闘機に搭乗して戦闘を行います」

 

ここで一区切り。薄暗かった部屋に照明が灯り、スライドが掻き消えた。

 

「これに関しては実際に見ていただいた方が早いと思いますので、説明はこれくらいにして格納庫に向かいましょうか。」

 

子供の歓声がわっと沸き、次いで椅子や机をずらす音。

 

「事前にお配りしたこちらのネームタグに書かれている班分けでご案内します!一班は私大嶋が、二班は染井三佐、三班は小山三佐がご案内しますので、お子様をお連れの方は絶対にお手を離さないようお願いします!」

 

サクラ達引率が声を張り上げ、見学者を誘導する。その後ろで、スサノオ部隊の広報班が部屋の後片付けをしていた。

 

私、大嶋サクラは、格納庫に向かって歩く廊下で、質問攻めの憂き目にあっていた。

 

「大嶋さんは、どの部隊にいるんですか?」

「私はツクヨミ部隊ですね。これでも隊長ですので、訓練や戦闘の指揮を行っています。」

「腰に下げてらっしゃる刀は、銃刀法に引っかかったりしないんですか?」

「私達の刀は便宜上、装備品という扱いになっています。それに携帯の許可も得ていますので、銃刀法に抵触することはありませんね。」

「ツクヨミ部隊って、戦闘がないときは何してるんですか?」

「そうですね…やはり訓練や、シミュレーションを利用した作戦立案でしょうか。」

 

次々と投げかけられる質問に、適切な答えを返さなければならない。まるで言葉の千本ノックだ。

そんなことを繰り返していると、不意に館内放送のスピーカーからノイズが流れた。次の瞬間、耳ざわりなアラーム音が鳴り響く。

 

『緊急放送、緊急放送!サイタマB-5地区にAⅡ級・AⅠ級荒魂顕現の予兆あり!ツクヨミ零番隊、壱番隊、弐番隊は至急出撃準備せよ!』

 

剣呑な空気となった廊下に、どよめく見学客。私は一瞬で意識を切り替えて、まずは彼らを安全な所へ退避させようと考えた。

 

「皆さん落ち着いて聞いてください!今から格納庫に急ぎます、はぐれないようについて来てください!」

 

丁度来ていた無人のエレベーターに見学客を押し込んで格納庫階を選択する。動き出す直前、私はそこから飛び降りて、緊急時用のシューターに向かった。

普段は掲示板に偽装されているが、ツクヨミ部隊員が例外なく持っている鍵を使えば格納庫への直行シューターが現れるのだ。足から飛び込んで十数秒で格納庫の冷たい床を勢いよく踏むと、ほぼ同じタイミングでヨシノとヤエも別のシューターから現れた。

 

「整備班長、私のムサシは!?」

「おう、オールグリーン!いつでも行けるぞ!」

 

髭面の整備班長に軽く手を挙げて、コックピットに滑り込む。腰の金具から刀を外し、リアクターに差して認証、起動。機体の奥底から、唸り声のような駆動音が聞こえ始める。

私の専用機であるSF-02X“ムサシ”は、二基のリアクターが生み出す超高出力が特徴だ。従来の量産機は一基のリアクター出力を全身に回すため、いかんせん不安定である上に出力不足感が否めない。

しかし、このムサシならば、共振する二基のリアクターが絞り出す莫大なエネルギーを余すところなく伝導するため、出力も安定している。アマテラス機関の最高傑作、らしい。

自律人工頭脳による発進前点検も終わり、スサノオ部隊の整備員もシェルターに入ったことを示すランプが点灯する。

 

《発進準備完了、いつでもどうぞ!》

 

スサノオの管制から許可も出たことだし…さて、行きますか。

 

「ツクヨミ零零零、大嶋サクラ!発進!」

 

To be continued…?




用語解説
ヤマト神国
現代日本に近くて遠い国。
建物はレンガ造りが多いものの、重要施設(アマテラス機関の施設など)は鉄筋コンクリートや金属製。首都はキョウト。

アマテラス機関
和魂とそれを守る結界を守護する独立機関。政府の下ではなく帝の下にある、政府と対等の存在。
本部は静止軌道上にあり、支部がトウキョウ・フクオカ・エゾの三か所にある。

荒魂
数十年前から人類を襲っている、正体不明の災厄。時のヤマト神国政府はこれを荒魂と命名、対抗策を講じた。最初期に一千万人程度まで激減した世界人口も、現在は十億人程度まで持ち直してきている。


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和魂
荒魂顕現最初期の政府が半ばやけくそで『依代』に神を下ろした結果、荒魂に対抗「できてしまった」偶然の産物。この成功例をいいことに暴走を始めた当時の政権は、各地で勃発したクーデターにより関係閣僚すべてが殺害されて終焉を迎えた。
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