機器契約24等級で止まってるクソ雑魚ドクターは私です。
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陽も沈み切ったこの時間でも、龍門は尚賑やかだ。飲み屋や飯店からは匂いのついた料理の湯気が立ち込め、路地を少し入った所を見れば水商売のキャッチー達が声を高々に客を集めている。
そんな街の様子を横目に、鼠王の隣を歩く。時折、鼠王や俺に気付いた街の人間が声を掛けてくるが、それでもこの喧騒は俺達を蚊帳の外にして続いていた。
「…ワシに、何か用があるのではないか?」
自分への声に笑顔で手を振り返しつつ、鼠王が此方を見上げて来る。どうやら、案の定此方の用事に気が付いていたようだ。必要のない護衛を引き受けていた癖に、今の今までずっと黙っていたのはこう言う事か。
「…明日から、俺達近衛局はスラムに入る。それをアンタに伝えようと思ってた。」
「うむ、それはウェイ長官から聞いておる。」
「…やっぱりか。」
この答えも予想の範疇だ。彼と鼠王が一緒に歩いて来た時点で、そんな気はしてた。
だいぶ前から、稀にウェイ長官は散歩や見回りを称して外へ出る事があった。安魂夜の日なんて、夜中にちょっと出かけると言ってたしな。
つーか、あの日はとんでもねぇ一日だった。
昼間は安魂夜の祭の組み立て監視、日が暮れればシチリアンやら龍門マフィアとペンギン共の裏の龍門全体を巻き込んだドンパチ。俺達近衛局も右へ左への大捕物になった。
騒動の最中に爺さんが出て来たと思えば撃たれ、更に混乱が加速。最早安魂などとは言ってられない事態に発展した。
一頻り落ち着いたとは言え、そんな日に供すらつけずに行こうとするもんだから疲れを押して護衛を無理矢理申し出てついて行ってみれば、そこには龍門の頭が勢揃い。ついでにフェンツ運輸の頭目までいた。
頭達の横の繋がりは以前から噂されてたし、鼠王自身からそれとなく伝えられていたがいざ目の当たりにすると何とも異様異質な光景。思わずリン爺さんの護衛とバーの外で愚痴る程度には異常な事態だった。
クソペンギンとアイツの部下、あいつ等マジでいつかシメる。
「知ってんなら話は早いな。…ま、そう言う事だから黙認してもらえると助かる。」
「無闇にスラムの者に手を出さんなら、ワシは何も言わん。ああ、帰ったら娘にも伝えておかねばのう。『明日から暫く外で季節外れの花火が上がるが、火が地に付かん限り好きにやらせておけ』とな。」
その言葉が終わると同時に、周りで街道を歩いていた一人の脚が早まった。鼠王の娘であるユーシャ嬢に今の伝言を伝えに行くつもりなのだろう。
龍門で知らぬ事なし、それを支えているネットワークは決して緩くない。時の情勢から根も葉もないウワサ、鼠王がその気になれば個人の私生活だって丸分かりにしてしまう。まさに、龍門そのものがリン爺さんの庭と言って差し支えないだろう。
「…本当便利だな、その情報網。」
「フォッフォッ。伊達や酔狂で長生きなどしとらんという事じゃ。」
「…………。」
そうなって来ると、気掛かりなのは先程長官から渡された任務になって来る。近衛局で爺さんを少し待たせて着替えがてら資料を軽く確認してみたが、その内容は下手をすれば彼の逆鱗に触れかねないものだった。
それをどう説明したものかと思案していると、突然鼠王が立ち止まった。
「先程のウェイ長官の任務じゃがな。」
「……。」
「お前が何を頼まれたかは知らんし、知る気もない。じゃが、『それ』に関しては心配するな。ワシが皆を止めよう。何も虐殺が始まるわけではなかろう?」
「…恩に着るよ。」
礼を言いつつ横を向くと、何処か優しく笑う鼠王が都会のネオンライトに照らされてまた俺を見上げていた。…こうして見ると、頼りがいのあるただの爺さんなんだよなぁ。ただまぁ、話してる内容とこの人の正体からしてそんな事はまかり間違って天地がフォークダンスを踊ってもあり得ないんだが。
「さて、その代わりと言ってはなんじゃがの。」
「ん?」
「この近くにうんまい魚団子スープを出す店があるんじゃ。晩飯がてら、ちと付き合えい。」
「……分かったよ。」
公園の方を親指で指差しながらいつもの好々翁の顔に戻ったリン爺さんへ、とびっきりの呆れ顔を返す。こんな事が代償なら安いものだ。
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「やっとるかね?」
「へぇ。…あっ、どうも。ご無沙汰してやす。」
先んじて入ったリン爺さんに続き、暖簾を潜る。屋台の中に入れば蒸された魚やスープの良い匂いが鼻を擽った。何処かと思えばジェイ君の屋台。龍門のガイドブックや料理誌にも載る名店だ。
「ツチグモの旦那まで。お久しぶりでさぁ。」
「おう、二ヶ月ぶり。…相変わらず不健康なツラだな?」
「…すいやせん。こればっかりはどうにも…。」
「あぁいやすまん、気にすんな。お前さんが元気でやってんなら、それで良いからさ。」
どっからどう見てもその筋の人間にしか見えないが、彼は至極真っ当な龍門市民だ。最初見た時疑ってごめん。その時の詫びがてらに時たま寄っていたが、彼の作るスープはまさに絶品。今となってはあの時の自分の失態を抜きにして、空いた日に通っている。
「で、今日はどうされやす?」
「ワシはいつもの。」
「俺もいつものを頼む。」
「へぇ、分かりやした。んじゃ、お二人分のお酒から。」
そう言うと、ジェイ君は俺達の前に酒の入ったコップを置いて手際良く料理の支度をしていく。だいぶ間が空いてたのに『いつもの』がすんなり通じるのは素直に凄いと思う。
「お前もこの店に来とったんじゃな。」
「ジェイ君のスープは龍門で指折りだぞ?来てない奴の方が少ないだろ。」
「言えとるの。」
「ありがとうごぜぇやす。」
料理の手を止めず、ジェイ君は少し気恥ずかしそうに頬を赤らめた。そんな彼を二人してニヤニヤしながら酒を煽っていく。
いつもの日常。いつもの終わり。
酒で気分を良くしたリン爺さんやジェイ君の他愛もない話で、職場での事は何でもなかったかのようにただの平日の夜は更けていった。
酔い潰れた爺さんをおぶって家まで送る羽目になるとは思ってなかったが。
テメェの限界くらいテメェで管理してもらえません?
1000人もの方に見て頂いていて戦々恐々、足腰諤々な一文字です。
アークナイツの人気しゅごい…。
さぁ、次回からついに本編が原作2-3に絡んで来ます。お楽しみに。
んじゃまた次回。