鬼のいる間に平穏を   作:秋一文字

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はいはい、五話です。一文字です。やっとこ危機契約28等級まで行けました。週末が楽しみでネタが降りて来ない日の夜しか眠れない。


五話

ーーーーーー

 

 

同じ龍門でも華美な中央街とは違い、スラムのはいつも薄暗い。まぁ当然っちゃ当然なんだけれども。ともあれそんな場所の入り口に、場違いな人影が固まっていた。俺と同じように重装備な奴から、殆ど何も持たない奴まで。

その中に、昨日見た顔が二人ほど映る。ドクターとアーミヤ嬢だ。彼等の特徴的な見た目は、そう見間違えられるものでもない。

となれば、周りにいるのはロドスの社員か。確かに昨日チェン坊が言ってた通り、これが会社の私兵ならばかなりの戦力になりうるだろう。

 

「失礼。アンタ等、ロドスアイランドの人間かい?」

「えっ?」

 

その場にいた全員が、声を掛けた俺の方を見つめて来た。その向けられた顔を頭の中に記憶しつつ、人だかりの中心部の方を見やる。

此方に気が付いたのか、小さな声で「すいません」と言いながら、人混みをかき分けてドクターを連れたアーミヤ嬢が顔を出して来た。

 

「あ、貴方は昨日の…。」

「龍門近衛局特別任務隊所属、鎮圧分隊長のツチグモだ。昨日ぶりだな、嬢ちゃん。」

 

片手で持っていた盾を足に立て掛けて置き、まだ幼いロドスの代表に敬礼を向ける。するとアーミヤ嬢の後ろにいる一団の何人かが、俺の名前を聞いて驚いたような様子を見せた。恐らくその数人は龍門に出入りした事があるか、龍門出身なのだろう。

それにつけても、そんな驚かれるような事でもないと思うんだが。

 

「では、貴方が私達に協力してくれるんですか?」

「ああ。チェン隊長は別働隊で既にスラムへ入ってる。案内役が居ないなら、俺が先導しようか?」

「ありがとうございます。ですが、情報の一部は彼女達から頂きました。なのでツチグモさんには、現地の詳しい位置関係等を示していただければと。」

 

彼女達?…まさか。

 

「やっほーっ!ツチグモさーん!」

 

嫌な予感が的中した。声のした方を見てみれば、見覚えどころか覚えていたくないルビー色の髪に、その上で白熱灯さながらに光る輪っか。ペンギン急便のトラブルメーカー筆頭、サンクタ族のエクシアが大手を振っていた。

マジか…。マジかマジかマジか…!

渋面かます俺の方へ、ケラケラ笑いながら我が物顔で前へ進み出て来るクソ天使。何度こいつ等の後片付けで苦労したか、何度こいつ等の所為で始末書書かされたか…!

 

「ちょっとちょっとー。久々の再会にそんな顔はないんじゃない?ここは『おお、我が友よー!』とかいって手ぐらい握って肩叩きあうとこだよ?」

「おお友よ。」

「に゛ゃーっ?!いたたたたた!!」

 

お望み通り、戯言並べるアホの耳をむんずと掴んで引っ張ってやる。野良猫みたいな叫び声をあげ…いや、事実野良猫か。ともかく、ジタバタ暴れるさまは見てて痛快だ。

 

「あ、あの…。ツチグモさんとエクシアさんはお知り合いなんですか?」

「いや、ちと違うな。こいつ等の後始末に、何度も駆り出されてるってだけの間柄だよ。なぁ、バカ天使。」

「何かあったら毎回ちゃんと弁償してるじゃん!こんな事される謂れなんか無いと思あいたー!」

「そういう問題じゃねぇんだよなぁ…!」

 

実際、そういう問題ではない。アメ一個運ぶだけでも建物壊したり特別任務隊を引っ張り回す事態に発展させるペンギン急便に対する評価は、俺の中では最早マフィアの下請けと何ら変わらない。

更にタチが悪いのはこいつ等自身、基本的に悪気がない事だ。あのクソペンギンは別として。

最短の道を選んだ結果そこが『何かしらの最重要区画』だったり、邪魔だったので応戦したのが『鼠王の幹部』だったりするだけ。

ここまで来ればエクシア含め、ペンギン急便のメンツは全員が全員何某か悪運の星の元に生まれてきたのではないかと錯覚するレベルに思えてくる。

いい加減叫び声が鬱陶しくなって来たのでエクシアの耳を離すと、耳を押さえながら不満タラタラの眼差しで此方を睨んで来た。文句があるのはこっちなんだがな。

 

「ハァ…。まぁいい。配達は情報だけか?」

「いちちち…。うん、それだけ。」

 

…仕事自体はちゃんしてるのに、何であんなに騒動を掻っ込めるんだか…。

いやもう考えないでおこう。こいつ等の事は考えるだけ無駄だ。

 

「アーミヤちゃん。このバカから聞きたい事はもう聞いたのかい?」

「え、あ、はい!」

 

ならば、追い返しても問題ないだろう。悪い奴らでは無いのだが、潜入やら捜索やらとは対極にいるこいつ等がいては話にならない。

 

「んじゃエクシア、てめぇはさっさと帰れ。暫くは何も面倒を起こすなよ。」

「しないって、信用ないなぁ…。いたたー…絶対後で腫れるやつじゃんこれ。この鬼!」

「至ってその通りだが?あぁそれと、クソペンギンにもさっきの言っとけ。」

 

ガキみたいに舌を出しながら歩いて行くエクシアに釘を刺し、ロドスアイランドの人員に再び向き直る。

 

「突然出て来た上、アンタ等の代表を差し置いて仕切りだして悪かった。だが、アンタ達ロドスの人間の大半は感染者だと聞いてる。多分ウェイ長官からも言われたと思うが、無用な混乱を避ける為に作戦行動中は出来るだけ俺や別働隊のチェン隊長の指示に従ってもらう。ロドスの方針はある程度理解しているつもりだ。何かあればアーミヤ嬢やドクターの意見も踏まえて指示は出す。そこは安心して欲しい。…いきなりの事で戸惑うだろうが、これはアンタ等の為でもある。済まないが、どうか理解してくれ。…作戦内容は、昨日か今朝の内にチェン隊長から連絡が入っていると思う。ここまでで、何か質問は?」

 

多少はどよめいてはいたものの、各自合点がいったのか、ロドスの部隊員達は黙ったまま各々の武器を持ち直した。

うん、よく訓練された良い兵士だ。感染者じゃなけりゃうちに欲しいくらいだ。

…さて、件の捜し人は見つかるかね…?




ペンギン急便のメンツは好きだけど、龍門の特に警察系の人間からしたら感染者とは違う意味で爆弾が歩いてるのと同義だよねな話でした。
余談ですが、ツチグモさんは叩き上げです。
次回もよろしくお願いします。
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