レユニオンなる集団が突然武装蜂起。
んで、チェルノボーグに住まう人々を襲い始めたと。
バンガーとログベルはこんな状況下で避難先も見つけられず、ただ今日を生き抜こうと必死にさ迷っていたらしい。
ふたりは服装から見て分かる通り学生だし、なら学校で待ってた方が救助くるんじゃないかとも思ったけど、学校から命からがら脱出したって話してる辺り何か事情がありそう。
藪蛇は突っつかないに限る。
うーん。殺伐とし過ぎじゃなかろうか、この世界。
ともかくなんか専門用語というか単語というか、俺の知ってるモノはなく。
今わかるのはレユニオンがさっき俺を殴った奴らで、チェルノボーグはここいらの地名。
所々で出るウルサスが結局よくわからん。学校なのか別の地名なのか、あるいは集団名なのか。
聞こうにも常識っぽくて諸々聞けないし。
──小脇に二人を抱えてダッシュで逃げて、現在地は荒れ果てたマンションの一室。
逃げおおせ落ち着けたので状況説明を願ったのだが、ご覧の通り俺の知らない事ばっかりだよ。
やっぱ夢というより異世界にぶっ飛ばされた感じかなぁ。
家に帰りたい。
「んー、なるほど」
「あんたって何にも知らないのね。旅行でもしてたの?」
皮肉たっぷりに馬鹿って言われたけど、反論できないしそんなところと流しておく。
……実際は俺もなんでこんなところにいるのかは知らんが。
「それで。あんたは何者?」
「何って、美少女だが?」
じりじりと距離を取らないで欲しい。
ほら、チョコちゃんあげるから。
「さっきは助けてくれてありがとう。でも、ふざけないで」
「ごはん……」
「ログベルッ!」
これは茶化してる場合じゃないな。すまん。
あんまし語ると面倒だし省くけど、言うなれば元兵士の現騎士……自己紹介で騎士はないか。
えー、元兵士の現自宅警備員。です。
間違ってはないと思う。
「体の頑丈さは自信あるぞ。色々あったからな」
「……オリパシー?」
「持ってない」
「そう」
ライブシンパシー売り切れてて買えなかったんだよなぁ。
でもなんでいきなり? もしかしてマウントか?
絶対になんか違うと思うけど。
その単語が何かと聞こうとして、バンガーの手から逃れたログベルに突撃された。
倍近い質量の暴力は俺じゃなかったら引き潰されてるぞ。
「おう、どった」
「おなかすいた」
「もう!?」
食い意地張ってんなぁ。
まぁ空腹から腐りかけのチョコひとつで回復するわけないか。
「ログベルが懐くなんて、少なくても悪い人ではないって事かしら」
「お褒めに預かり恐悦至極。そういやあんたらは姉妹なのか?」
「ええ。ちなみにログベルが姉よ」
あら意外ね。逆かと思った。
つか、姉さんはめっちゃ背高いのに妹のバンガーは普通な感じなのな。
「よく言われる」
「……ごはん、もうない?」
姉の面倒を見る妹の図ってのは初めて……いや初めてじゃないな。
アークスにもいたなぁ、馬鹿姉に振り回される妹。パティエンティアは今頃何してるんだろうか。
「しかしあのチョコはあんまり食べ過ぎてもな」
腐ってるし。
……よし。仕方ない。
待ってろぉ。
今からおいたんがお見舞いするからぁ。
お見舞いするぞ!
「いでよピッケルくん!」
部屋の隅っこに移動して、出づるは我が気合に呼応して現れるギャザリングピッケル!
「ソイヤッ!」
アークスオンステージ!(床を叩く音)
「な、何してるの……?」
バンガーがドン引きしてるがこれは仕方のない事なのよ。
アークスはね、コンクリから大豆や米を仕入れて食べるの。
食べなさいバンガーくん! 食べなさい! 食べなさいログベルくん!
これがアークスのごはんよ! シンジくん!!!
失礼しました。シンジくんと出てしまいました。
んで、出てきたのはなんぞや? 焦げた食料、ウルサスソーセージ、グムクッキー……?
何これ。知らんのしか出てこないんだけど。てかまたウルサスか。うるさいと世界に怒られているのだろうか。
どっか水場ない? 釣りも試してみたい。俺にぬし釣りやらせろ。
「今はまあいいか。どれ食べる?」
「いやいやいや、ちょっと待ちなさいよ!」
「お肉の方がいい! いただきます!」
「ログベルやめなさい! あっ!」
どうだねお味は。
「おいしい!」
「なら良かった」
「……ログベル……」
チョコと違って消費期限とかないし品質は保証されてるよ。
これならお腹壊す心配もないね。
「……何食べさせてもおいしいで終わるからアテにならないわよ」
「いっぱい食べる君が好き。てな訳でバンガーは食わなくていいの?」
「というかどうして床からこれが出たのよ。なにそのピッケル」
え?
んー……気合を消費することでこう、物質を現実化させてますというか。
やってる俺も意味が分かんないけど、ともかく無限にはできないし食糧難回避みたいには使えないよ。
「食べられる、のよね」
「少なくてもクラリスクレイスのチョコよりか」
「……」
焦げた食料は俺が食うよ。あんたはクッキーでも食べなさい。これ焦げたって一口に言っても消し炭に近い方だから。
クッキーを手渡すとバンガーはログベルの手から半分になったソーセージを奪い、代わりに二つに割ったクッキーの片方を持たせた。
バンガーも肉食べたかったの?
ちょっと待ってね、出せるか分からんがもうちょい試して……。
「いらないわ」
え、そう? ピッケルは時間で回復するしそんな気を遣わんでも──
「いらないっ!」
すいません。
食料関連が地雷とは思わなんだがこんな世界だ、気を付けよう。
……話題を変えるか。
「これからどうするんだ?」
「むしゃむしゃ」
「……ロドスを探そうと思うわ」
「ロドス?」
──ロドス・アイランド製薬。
バンガーが学校を脱出したしばらく後に、別の組がそこな勢力に保護されたのを偶然目撃したらしい。
製薬会社がどうして戦場にいるのかとかレユニオンに対抗できる戦力を保有していたとか、情報もないし不信感を抱き便乗は見送ったようだが、他に手もないと思い直しやっぱりワンチャン賭けてみようという事のようだ。
このままさ迷っててもすぐ死ぬのは分かったし、ならダメで元々と思い切って突貫してそれでも怪しかったら俺が抱えて逃げるという算段。
なぜに製薬会社が保護を受け入れてるのかは知らんが、うむ。生き抜こうと足掻く者なら助けねばな。
力なき者の剣となり盾となる。事情があって剣は持てないが、やることは変わらん。
人の命は地球の未来! ここが地球なのかは知らんけど。
「細かい事は抜きで、まずはとにかくそのロドスに会おうのコーナーかや」
「それなのよね……」
「──ごちそうさまでした」
その現場を見たのは数日前。
なら、まだ何処かにそれに関する兵か何かがいてもよしという訳だが今日日にいたるまでそれっきり姿を見たことがないと。
正直俺ちゃんとしてはこんな地獄の中でなんちゃら製薬が出てくるのは怪しさがアンパンマンだしやめようと言いたいが、なんにも知らん俺が口出しする訳にはいかない。
「レユニオンと敵対してるということは分かってるわ。だから、探すアテ自体はあるのだけど……」
「それって、戦火に飛び込む的な?」
頷かれた。わーお。
「都合がいいのは分かるわ。見返りもないもの。でも、あんたさえよければ……」
真っすぐ見られても困るよ……。
だってさ、バンガーは俺の事を強ーいお人と勘違いしているけど、今の俺は頑丈さが取り柄なだけよ。
だってさぁ。
「攻撃はできない」
武器が無いのもあるが、そも俺は現在武器を持つことができない。
いいや、それどころか素手の攻撃も、
理論上はできるにはできるが、意識が全て攻撃行為その物を拒絶している。
ピッケルや釣り竿はギャザリングアイテムであり絶対に武器ではないという認識なのか大丈夫だが、それすらも攻撃に転用しようとした瞬間もう駄目だろう。
一から説明したってしょうがないし語る時間もないので、過去のトラウマで戦闘を行えないとだけシンプルに伝える。
意外にもバンガーはすんなりと頷いてくれた。
「兵士にありがちな症状ね。分かるわ」
「分かってくれてありがとう」
分かったうえで、どうするんだ?
「何も戦うって訳じゃないわ。近くまで行って、身を潜める。ロドスがいたら、両手を振って駆け寄る」
「……んー、ま、それならいいか」
両手を振ってが喜びなのか、それとも降伏の意なのかは分からんけど。
「よし。この八神リコ、剣を捨てた身であるがログベルとバンガーを守る為に今一度力を尽くそう」
「助かるわ。オニが味方なんて心強いもの」
「よろしくね、リコ」
そうと決まればさっそく行動かい?
直近でのレユニオンといえば……。
「オレの綺麗な頭を吹っ飛ばしたあいつらか……許さねぇ……!」
レモン油で唐揚げを作ってやる……!
「……大丈夫かしら」
「でもごはんくれるしいい人だよ」