おっさんin幼女はロックベアを守った   作:親友気取り。

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#2 バンガーとの夜

「それでね、その時ラーダがごはん作ってくれたんだけどねっ」

「ほうほう?」

「……ログベル。その話はやめておきなさい」

「ぶー。バンガーのケチ」

 

 建物から建物へ、警戒しつつ移動してさらに次の建物へ。

 あまり人影の見えないこの街に秩序はなく、それでも生き残りは一日でも多く生きるために数少ない同胞他人の命を啜って生きている……らしい。

 

 ここへ至るまでもログベルはその恵まれた体格から拳を使った格闘を、バンガーは杖(タクトみたいなやつ)を持ち魔法みたいなのを操り何とかしてきたらしい。

 アークス的に言うとファイターとフォースかな。そのコンビはゲッテムハルトとメルフォンシーナを思い出すね。

 

 

 お二人さん、放浪の中で戦う事も数度あり生き延びてる辺りセンス〇。

 しっかりさんなバンガーはともかくとして、ログベルも妹を助ける為ならばと頑張ってるっぽい。

 ただまぁ、厳しい環境に身を置き過ぎて性格というか精神に何かしら抱えてるけど。

 いちいち重くて悲しくなっちゃう。

 

「ねぇ聞いて? バンガーってラーダの事が嫌いですぐに学校を出ようって言ったんだよ? 皆といれば大丈夫なのに」

「仕方がなかったのよ」

「……オレが口出しする事じゃないよなぁ」

 

 どこに地雷が埋まってるのか分からないし、余計な口挟めなくてつらたん。

 もっとネタにしやすい話題とかないの? クラリスクレイスのチョコとか。

 

 先ほど俺達を攻撃してきたレユニオンの兵士や機械の痕跡を追って移動しているが、四方八方どこから敵が来るのか分からない緊張とはこんなにも疲れるのかとため息。

 もしかしたら壁の向こうでは息を潜めた生存者がいるのかも知れない。

 あるいは、不意を狙った略奪者が出てくるかも知れない。

 

 アークス時代の周辺マップがあれば敵も見えるしと妬む。

 

「おなかすいた……」

「やっぱり?」

「ログベル」

 

 半日歩いて夜になりかけて、そろそろ休もうかと提案。ログっちが通常より燃費悪いのは分かっていたし、食料調達の為にカンカンコーン。

 レユニオンは特定の国に所属している勢力ではなく、愚連隊とかそんな感じらしいので夜はひとまず安心といった具合らしい。

 本当の所は知らんが休めるうちにゆっくり休もうか。相手が動かなければ夜中に俺達がロドスを探す事も出来ないし。

 

 そこらの部屋から調達したケトルにバンガーの持ってた水筒の水を注いで、気合でもぎ取った木材を燃料に小規模フォイエ。

 うむ。流石は我輩だ。火起こし楽ちん。

 

「……やっぱりアーツも使えるのね。でも、いいの?」

「もしかしたら明かりでバレるかもだが、バレない内に消すさ」

「そうじゃないわよ。あんた、アーツ使ったって事はやっぱり……」

 

 フォトンアーツではなくテクニックにござるが、アーツというのがこっちの魔法の総称かね。

 

「……じゃあ、(これ)ももういらないわね。短い付き合いだったわ」

「あ」

 

 バンガーが持っていたタクトをへし折って投げた。

 

「おま、大事なもんじゃねぇのか」

「いいの?」

「リコがオリパシーなら私も隠す必要ないしいいのよ。とっくに使えないこれは邪魔なだけだわ」

 

 だからって折るこたないだろが。

 ないよかマシだろうに。法撃力とかじゃなくて、パレットの管理的に。

 オラクルじゃないこっちじゃ杖がどういう働きしてるのか知らんけど。

 てかオリパシーって何。

 

「一応言っておくけど、この子は感染してないしアーツは使えないわ」

 

 まあファイターならテクニックは使えないわな。

 オラクルじゃないこっちじゃ以下略。

 てか感染イズ何。

 

「バンガーはね、せめてわたしだけでも生き残らせようっていうんだ」

 

 ログベルがいつも通りの口調で唐突に重い事を言う。

 

「そなの?」

「私は遠からず死ぬ。だから、せめてログベルだけでも助けたいのよ」

 

 続けてバンガーも。お前ら重いんだよ。

 まるでこの二人のうち、絶対にどちらかしか生き残れないみたいな言い方しよる。

 

 ……聞いたことのある話というか、命を捨てて命が拾えるなんて、なあ? 

 一年は経ってない位の昔を思い出す。その行動理念というか、理想はその時の俺と全く一緒だ。

 

「その覚悟は良いが、希望は持ち過ぎるなよ」

「何よいきなり」

「何でもねっす」

 

 あれはちょいと話しにくいからなぁ。

 さてと。

 

 

「さ、ほら豆スープだけとはいえ大事な栄養だ、たんと食え!」

 

 大豆は畑の野菜って言われるくらい栄養豊富だからな。

 このテラ大豆はコンクリから出てきたけど。

 

「ごはん!」

 

 ああ、好きなだけ食え……。

 

「リコは食べないの?」

「いただきます!」

 

 私は遠慮しておきます。

 というか、食わせられるようなまともなのそれしか出なかったし。

 スタミナ切れるまでに出たのが大豆と焦げた食料だけって何さ。せめてグムクッキーくれよ。

 あるいはテラ大豆なんてあるんだしギガ大豆でも良かった。テラとかギガとか、ヴィータ元気にしてるかなぁ……。

 

「ん」

 

 ログベルがスープの中から大豆をつまみ出して、俺に差し出してくれた。

 くれるの?

 

「寂しそうだから」

 

 あむ。ほうはい(そうかい)? 

 

「……リコにも仲間がいたの?」

「まぁな。今はどうしてるか知らんが」

 

 俺がこっちにいる間、元の世界でどう時間が過ぎてるのかは知らん。

 都合よく時間が止まってくれてたら嬉しいが、こっちの時間と同期してたら俺ちゃん現在時点で既に一日行方不明。

 早く帰らないとコッテリ絞られるぞぉ……。

 

「まま、オレのこたぁいい。お前らはすぐ休め、明日もあるからな」

「ごめんなさい。嫌な話だったかしら」

「じゃねぇが、説明が面倒だからな」

 

 だって俺もここにいる理由はよくわからんし。

 ダークファルスだの闇の書だのなんだのって話もしたって分からんだろ。

 

「ごちそうさま!」

 

 ログベルも食べ終えたので蹴って火を消す。寝てる間にバレちゃかなわんからな。

 警戒は俺がしておこう。

 何、6歳児とはいえ肉体は無敵のリコちゃんよ。

 ほらほら、ガキ共はさっさと寝た寝た。

 

「リコはどうするの?」

「リコは寝ないの?」

 

 だから警戒するんだってば。あと6歳児の所無視しないで欲しい。

 

「途中で交代するわ。リコが倒れたら私達も危ないもの」

 

 いやガチで一晩は平気なんだが。

 2時間ごとに宇宙の危機を乗り越える元アークスを舐めないで欲しい。

 

「おやすみ」

「……おやすみなさい」

 

 素直にログベルは寝て、しぶしぶと言った様子でバンガーも寝た。

 

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 

 ……………………いや、暇だな。

 よくこういったサバイバルもんだと夜は数時間ごとに交代で起きて警戒ってのをよく見るし言ってみたけど、話す相手もいなければ暇つぶしもないし暇すぎね? 

 ロビーアクション放置もできないし、座ってたら暇の勢いで寝落ちしそうだし、寝なくても問題ないってのも眠らずにいられるって訳じゃなく。

 せめて駄弁り相手がいれば……。

 

「圏外か」

 

 リコちゃんが七不思議のひとつ、現役アークスでもないのに使えるアークスの半透明の空中ディスプレイ的なアレー。

 何処かに繋がらないかとやってみたけど圏外だった。どうせそうだと思ったよ。仕方ないね。

 意外と眩しいので消しとく。

 

「……ふぁー……」

 

 警戒が必要なほどとは思えんくらい静かだねぇ。

 仲良くくっついて眠っている姉妹を見ながら、これからどうするか考えよう。

 

 現状目的はロドスなんちゃら製薬とかいう名前がいかにも怪しげな組織と会って、藁にもすがる感じに賭けとしてワンチャン保護してもらう事。

 

 ログベル&バンガーはそこで身の安全がOKとなれば幸いだが、そのあと俺はどうするんだっていう。

 経歴も住民票もなければお金もない不審者で、隠し事もしてる。

 最悪レユニオンのスパイ的なもんだと思われたって仕方ねぇし、そも帰還の方法も探るのがその後の最優先なんだし、はたから見て不審な行動も増えるし良い事がない。

 

 無論、諦めてこの世界に永住する気もないしどうしたもんか。

 ヤケクソで思いっきりフォメルギオンでも撃ってみるか?

 ……うーむ……。

 

「やっぱり眠いんじゃないの?」

 

 やべ、唸ってたらバンガー起こしちゃった。

 

「どっちかつと暇なほうだな」

「そ。少し付き合うわ」

 

 気持ちよく寝ているログベルを起こさないように、あるいはどこかにいるであろう敵勢力にバレないように、小声で。

 

「じゃ折角だし聞きたいんだが」

「何?」

「自分も助かりたいって気はないのか?」

 

 ログベルを助けたいのは分かる。それが姉妹愛だの家族だのの理由は抜きにして。

 だが、自分でいうのもあれだが俺がいる事で生存率は上がった事だし自分を犠牲にするってのはやめないか?

 二人でロドスかどっかに保護してもらって、それで解決じゃないか。

 それに何より、自分が犠牲になれば誰かを助けられるって思い込みは、所詮思い込みだ。

 

「ま、そうね。私だってすぐ死にたい訳じゃないわ」

 

 だろ?

 

「リコは、オリパシーが治るものだってまだ希望を持ってるの?」

 

 またオリパシーか。

 適当に流しまくってたり流されたりしたがこれは本格的に知らんとまずいな。

 聞こうと口を開いて、先にバンガーが止める。

 そして、謝った。

 

「ごめんなさい。言い過ぎたわ」

「え、あ、うん」

 

 顔見て察したみたいな雰囲気だけど俺は何も察せてない不具合。

 

「……今まで誤魔化せてたのすら奇跡だもの。後はあの子が長生きする事しか神様に望まないわ」

 

 バンガーの視線が部屋の隅に転がるタクトに向く。

 使い古された感のあるそれは真ん中からひん曲がってもう使えそうにない。

 短い付き合いって言ってたが、誰から譲ってもらったのか? あるいは拾って護身にしたか。

 何にせよ事情はよく分からないが、やっぱり捨てるにはなんか勿体ない。

 

「信心深いねぇ」

「サンクタじゃないけど、神頼みくらいはさせて」

 

 また知らん単語出てきた。

 けどま、本当の本当にログベルを思いやる気持ちは確からしい。

 

「バンガー。言っとくが、命は等価で助かるもんじゃねぇ」

「……」

「厳しいかも知れんがそういう時の覚悟はしとけ」

「……そうね」

 

 聞き訳は良いが、内心はどうだか知らん。

 だが忠告はしといたぞ。

 救おうとして全力だったのに、それが手の打ちようもなくダメだったってのは心苦しいで済むものじゃないからな。

 

「無論オレだって見捨てる気はねぇ。まあ何だ、万が一ってやつ」

「リアリストなのね」

「宇宙の崩壊レベルの危機を乗り越えたベテランだからな」

「変な人」

 

 よく言われる。

 

「もう少し寝るわ。リコ」

 

 ん。どった?

 

「ありがと」

 

 おう。

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