おっさんin幼女はロックベアを守った   作:親友気取り。

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#3 ベアハッグ

 

 今日をバーンとォ! 信じましょ?

 

 てなわけで二日目。

 朝から炭鉱夫の如くピッケルを振るい、出たグムクッキーとウルサスソーセージは姉妹にあげて俺は昨日の残りの焦げた食料を食べる。確実にこれ健康度下がってるけど、俺は無敵。俺は美少女だから0ダメージ。最強。

 何でも美味しそうに食べるログベルはともかくとして、バンガーはまだお菓子や特に肉を食べるのを遠慮しているようだ。がっついたりはしない。

 もしかしてあれか、宗教的な理由で本当は肉が駄目なんだろうか。昨日も追加で肉出そうとして怒ってたし。

 いらなかったかと話せば急いで食べるし、お腹が空いてるに違いはないんだろうけどね。

 

 

 

「──見事に崩れてんなぁ」

 

 食事も済ませて明るいし行動開始。

 あてもなく歩く……訳でなくまずはどこかでドンパチしてないか確認しようとの事でビルに登ることにした。

 したけど、移動した先のビルは階段が崩れてら。

 見た目からしてこれ、階段だけ狙って爆発で吹っ飛ばされてる。

 

「……次に行きましょ」

「また歩くの?」

 

 ログベルはさ迷うことに不満そうだ。

 しゃーない。人肌脱いだろ。

 

「どうするの?」

 

 安心したまえ。とうっ! 

 アークスは度重なる調整の結果、ブーツが無くても二段ジャンプできるようになったのだ! 

 そして、チームルームのバルーンコレクトで極めたパルクール! 

 僅かな取っ掛かりからジャンプできーる!

 

「うわぁ」

「キモッ」

 

 なにドン引きしてんだ。キモってなんだキモって。

 どっちがキモって言った? しばくぞ。

 

「なんかあったらすぐ呼べよー」

 

 三階以降の階段はちゃんと残ってたので爆速ダッシュ。うぉォン。

 

 さて、と。

 屋上から見えた風景は、なんともまぁ酷い物だ。

 あっちこっちで火の手が上がり、どこか遠くでドドンがドンドンのドドンパチ。そんで曇り空は切れる事なく果てまでかかり青空は見えないどんより。

 なんちゅうか、つまり最悪。

 よくあるって訳じゃないし映画とかでしか見たことないけど、見るからに紛争地域のど真ん中。

 アークスも市街地を舞台に戦闘を行うことはあったが、その時はまだ味方はいるしそも自分とこのホームだしで酷い有様は同様でも絶望感はここまでなかった。

 

 オプタが飛んでたりオプタが落ちてきたりオプタがまた落ちる位が一番の絶望タイムじゃないかな。

 あとはクソマップ引いた時。

 レンジャーやフォースみたいな遠距離攻撃できるクラスはいいだろうけど、接近攻撃がメインのテクターハンターにあっちこっち走り回れとかマジつらたん。

 かつては少しでも苦しみから解放されるためにフルクラフトした特製スペース・ツナでソニックアロウ撃ってた。

 我が愛剣こと未知なる魔杖ラヴィス=カノンェ。

 

「んー、よし。あっちだな」

 

 それはともかく、帰りは柵を越えて……落下!

 説明しよう! アークスはどんな高さから落ちても軽ーくスタッと着地できるのだ!

 ふはは! タマヒュン。ないけどこう、内臓がブワッてなる感じでチビりそう。

 昔は落下死を覚悟した時もあったなぁ。今や慣れたもんだけど。

 

「うわぁ……」

「キモ……」

 

 案の定ドン引かれたが。

 あと誰だまたキモって言ったやつ。

 

「本当に人間?」

 

 とはバンガーの疑問だが、宇宙人なんだしこれくらい許せ。

 

「……ログベルより頭のヤバイやつだった……」

「お前の妹ひどいこと言ってんぞ」

「バンガー、めっ」

「私がおかしいのこれ」

 

 そうだよ。

 二対一でバンガーの負け。なんで負けたか明日までに考えといてください。ほな。

 

「って、どこいくのよ」

「向こうでドンパチやってたんだ。向かうぞ」

「……そうね、元々それが目的よね」

 

 すっげぇ呆れてる。

 

「こんなに頭のキマった人間初めて……」

「ん? ふはは、この髪型を誉めてくれてるのかな? よせやい」

「最初に会った時から寝癖ずっと付いてるわよ」

 

 寝癖じゃねぇしそうじゃねぇ!

 俺のこの髪形、その名もエターナルFレイヤーは素でちょっと長くて癖ついてんだよ!

 

「髪切ったら?」

 

 く、手強い……!

 

「何が?」

「気にしたら負けだよ」

 

 ログベルはどっちの味方なんだ。

 

「妹を守るのが姉なのです」

 

 俺も妹だよ! 俺も守って!

 

「うーん。本物の妹の方がかわいいかなー」

 

 俺だって美少女!

 少女越えて幼女!

 幼女(推定6歳 137cm)!

 

「昔はバンガーの方が臆病で、いつもわたしの後ろに隠れててさー」

「いつの話よ。やめやめ」

「えー。リコに色々話したい」

「叩くわよ」

「こわい!」

 

 お、姉馬鹿かな? 姉妹仲の良いことで。

 あー、いいなぁ。俺もこれくらい優しくされたいなぁ!

 

「は?」

「え?」

 

 なんでその反応になるん?

 

「……リコはなんというか、多少雑な扱いを望んでるんじゃないの?」

「だよねだよね。バンガーの言う通り」

「ふぁー、キレそう。あながち間違っちゃいないが」

 

 面白ければ良いの信条なので。

 知ってるかお二人さん。

 俺が今……というか、まぁ籍を置いてる家の主との初会話、「頭おかしい」から始まったんだぜ。

 

「初対面で言われるとかひどいと思わない?」

「初対面で言われる程の事したんでしょどうせ」

「どうせー」

 

 2combo!

 

「二対一でリコの負け。何で負けたか明日までに考えといてください」

 

 よく覚えてんなログちん。

 

「記憶力は良いのよ」

「他が駄目みたいな言い方する!」

「記憶力()良いのよ」

「リコー! バンガーがいじめるー!」

 

 おお、よしよし。大丈夫だよー。

 

「あ。リコちっちゃいから持ちやすい」

 

 わっちの身長137cmに対して君何センチよ。頭何個分かデカイ。

 そして持ち上げるんじゃない。抱き締めるんじゃない。

 

「ぎゅーっ!」

「オレはぬいぐるみかなんか?」

 

 あとちょっと待てあんた何だその怪力は待て待てまてマテ、ギブギブ!

 馬鹿な、この、私がッ、ぶぅるあああああ!?

 

「──あ、ごめん」

 

 みぎぃっ……。

 

「……確かにオイラはデューマンな訳だしで防御力は低いよ……? けどさ……それでも普通の人よか強いわけ。なのに、それぶち抜いてダメージ与えるとかドユコト……」

「ほら、馬鹿やってないで行くわよ」

「はーい」

 

 待って、君のお姉ちゃんに絞め殺されそうになったのにスルー? ひどくない?

 

「冗談よ。立てる?」

「レスタ……」

「うそ、医療術まで使えるの? 器用過ぎ……」

 

 へへん。これでも後方支援特化のクラスですから。

 回復バフ乗せどんとこい。

 

「回復したの? じゃあもっかい!」

「ヤメテ!」

 

 アークスは掴み大ダメージ技に弱いの!

 

「ぶー。リコってちっちゃくて暖かくて優しくて、丁度いいのに」

 

 絞めるのに丁度いいもあるか!

 この八神リコ、幾度も戦いを経験したがここまでヤバイと思った事はそうそうないぞ。

 

「ん?」

 

 なんか後ろから抱えられた。

 誰ぞと問うまでもなく、目の前にログベルがいるしバンガーなんだけどさ。

 

「確かに持ちやすいわね」

 

 軽々持ってるけど、人ひとり分の重さは最低でもあるよ俺。

 あんたら姉妹揃って怪力か?

 

「……ねぇ、いい?」

 

 耳元で囁かれる。

 普通ならなんかこう、エロティックな響きだが血の気が引くのを感じた。

 

「バンガー、ごー!」

「ぎゅーっ」

 

 あ゛あ゛、あああああああああ!!!!!

 (ベギバギ、ゴギガ、ガガギゴ)

 

「ぴぎゅうっ……」

「そんな絞めてないでしょ」

 

 大袈裟に騒いだけど、バンガーは丁度いい感じの抱き締め方でした。むしろ心地のよいくらい。

 ログベルがどうだったって?

 あいつは格ゲーに出たら確実に投げキャラだよ。今度から人間ザンギエフって呼んでやる。

 ザンギエフも人間だけど。

 腕力的にはポチョムキン。

 

「さ、遊んでないでいきましょ」

「はーい」

 

 俺達これから戦場に向かうって言うのに、やたら呑気だな……。

 てか最大戦力(?)の俺ちゃん瀕死にさせて大丈夫なのか。

 

「治るから平気でしょ」

 

 なんだろう、バンガーが俺の扱い慣れてきた。

 その通りレスタで回復するんだけどさ。

 

「そういえばさっきデューマンって言ってたけど、それって?」

「え、今?」

 

 さっきの俺を挽き肉にしかけた事件はもう終わり?

 もっと話題にしないの? リコちゃん抱き締めやすくてかわいくてキュートとかさ。

 もっと崇めなさいよ、崇めなさいってば!

 

「デューマンはオレの種族よ。ほれ、ここに角あるでしょ」

「……オニかと思っていたわ」

「バンガーも知らない種族がいるんだね」

「私だって全能な訳じゃない」

 

 誰が鬼か。

 どちらかというと鬼は俺に容赦なくベアハッグを見舞ったログベルだ。

 ……ん? つかなんか種族って単語を普通にスルーされてない?

 普通ここで人間じゃないのとかそういう話に……。

 

 あ、そういやこの姉妹、耳付いてた。

 てことはだ。

 

「一応好奇心での確認だけどさ、ふたりは?」

「見ての通りウルサスで間違いないわよ」

「ウルサス!」

 

 ふふふ。ずっと疑問だったウルサスの答えが出たぞ! 種族名だったんだな!

 ……あれ、ウルサスソーセージって名前不穏すぎね……?

 本当に食べてしまったのか?

 

「デューマンなんて聞いたことないけど、どういう特徴があるの?」

 

 おっとと。

 いいねぇ。今まで宇宙人なら仕方ないと散々スルーされてきた説明ができる。

 デューマンはね、防御力を犠牲に攻撃力を高めたっちゅう品種改良的な種族よ。

 かつては紙装甲がインフィニティー過ぎてクソザコだったが、インフレによって関係なくなったよ。やったね。

 

「……品種改良……。ごめんなさい、リコも複雑なのね」

 

 この世界にアークスはいないだろうし俺オンリーの種族だろうな。

 ブラックな雰囲気を察知した心優しいバンガーはそれ以上聞くのをやめたが、こんなの序の口よ。ブラックからRXまでお届けしてリボルケインできるが、ここに記すには余白が狭すぎる。

 

「さて」

 

 ふざけていられるのも今のうちだな。

 

「ええ、そうね」

「……」

 

 戦闘音がもうすぐそこまで来ている。

 話ながら歩いていたせいか、思ったより近付いてしまったようだ。

 あるいは、向こうから近付いてきたか。

 

「やろうか」

「うん」「ええ」

 

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