おっさんin幼女はロックベアを守った   作:親友気取り。

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大変申し訳ありません。完結詐欺です。
というのも、落としどころが完全に悪かったためです。反省しております。
ストックが無いので日刊とはいきませんが、もう少しお付き合いください。
ちゃんとした良い終わり方を目指します。


EP2 南船北馬
#1 占い


『は、離してください、まだ仕事が!』

「ごめんね、ちょっとそこまでだから」

 

 のっしのっしとログベルがタイヤの付いた喋る機械を運ぶ。

 機械、とは言ってもただの機械ではない。

 AIが搭載され、個人としてすら扱われているその名前はLancet-2。通称ランセットだ。

 

 廊下を歩いて(走行して?)いた所を運悪く(?)ログベルに見つかり、今こうしてあまり人の立ち寄らない隅の倉庫まで連れ込まれてしまった。

 一応女性という扱いの為、体重は非公表とはなっているものの体は機械のランセット。それを押して転がす訳でもなく持ち上げて運んだログベルのパワーはどうなっているのだろう。

 

「はいこれっ」

『はい……って、何ですかこれ』

 

 ログベルが押し付けたのは一つのプラカード。

 そこに書かれているのは、“身体は闘争を求める”というものだった。

 

「ドクターの所行くんでしょ? だったらこれ持ってって」

『……手、ないですよ』

 

 丸っこいボディがかわいらしいランセットに手はついていない。

 

「じゃあこの辺にさ、刺しておけないかな?」

 

 という訳で側面の取っ手みたいな所へ無理やり引っ掛けられた。

 

「うん。これでよし」

『何にも良くないですよ! そこだとタイヤに引っかかってしまいます!』

「ダメかぁ」

 

 すぽっ。

 

「どうしよっかなぁ……」

『あの、突然どうしたのですか?』

 

 散々意味不明に振り回されても優しく話を聞こうとしてくれる。

 顔を上げたログベルは、先ほどと同じ文言の書かれた紙をランセットのボディに張りつけながら答えた。

 

 それは、実質的な謹慎を解いてもらいたいという事だった。

 十分に反省はした。今はここで得た仲間達を守り、そして暴れているレッドリングことリコを救いたい。

 もう無理して戦わないので、戦場へ出して欲しい──という事を、ロドスの中でも頭な立場であるドクターへ伝えたかったというのが今回の事だ。

 

「──って訳なのです」

『うーん……。話は分かりますけど、そのやり方だと……』

 

 “身体は闘争を求める”だとただ戦いたいだけのやべー人になってしまう。

 もう少し態度に示せばもう一度戦場へ出してもらえるのでは? と提案されるがログベルは首を横に振る。

 

「わたしは今すぐにでも戦いたいの! わたしの知らない所で誰かが傷つくとか、嫌だから!」

『ログベル様の戦闘能力は高く評価されていますし、そう焦らずとも──』

「だーめーやーだー!」

『わー! 揺らさないで!』

 

 

 と、その時。

 ランセットが仕事どころでなく振り回され続けている空間に何者かが訪れた。

 

 

「……何してんだ?」

 

 術師オペレーター、ラヴァだ。

 新たな協力者(強制)の登場にログベルの首がぐるりと回り、嫌な予感を覚えて逃げようとしたラヴァを二つの目が捕らえた。

 

「待って!」

「離せ!」

 

 身長に見合った長いリーチを誇るログベルの腕から逃げられるわけもなくすぐさま捕獲。

 無駄に高い身長と無駄に高い身体能力、そして無駄に高いパワーは伊達ではない。

 

「だぁ! ハイビスから逃げて来たってのに……!」

 

 ラヴァは暴れて逃れようとするが、そんな程度でログベルから逃げられる訳がなかった。

 

『ご愁傷様です』

「……なんでオマエもここにいるんだ?」

『ラヴァ様と同じです』

「ご愁傷様、だな」

 

 ため息二つ。

 諦めて大人しくなったのを確認して、ログベルはランセットの横へラヴァを座らせた。

 

「で、何なんだよ」

「ドクターに直談判!」

 

 ──もう一度、同じ説明を最初から。

 

「てな訳で、わたしが前線に出る方法ない?」

「って、アタシたちに言われてもな」

 

 はいとプラカードを渡す。

 ラヴァが横を向くと、同じ文字の書かれた紙を貼られたランセットがいる。

 何をするかは目に見えた。

 

「カチコミでもするのか?」

「人聞きの悪いこと言わない!」

『ですから、この文面だと闘争の化身にしか見えません』

「じゃあ何て書けばいいの?」

 

 プラカードと張られていた紙を引っぺがし、代わりに“カチ勢です”と書きそれぞれに再び渡した。

 

「なんだよカチ勢って……」

「カチコチの防御力って意味。守るよーって」

「伝わらなかったら意味ないだろうが」

「むぅ」

 

 あまりサボり過ぎると怒られる所か、所属している部隊の隊長にも迷惑がかかる。

 手短にしたいと考えたラヴァは……。

 

「──占いでどうだ?」

 

 普段から持ち歩いている占いのセットを取り出した。

 何枚かのカードを切り、それを直感で引いて未来を知るシンプルなもの。

 言うが早いか、さっとログベルの前にカードを並べた。

 

「占い?」

「やったことないか? 一枚引くだけだ」

「うーん、じゃあ折角だし」

 

 示された5枚のうち、真ん中を抜く。

 描かれている絵の意味はよく分からないので、そのままラヴァに返却した。

 

 それを見て、何と伝えようか思案する。

 倉庫に沈黙が流れた。

 

『あのー……』

「ねえ、どうだったの?」

 

 二人分の催促。

 そしてようやく口を開いた。

 

「オマエは一週間の謹慎だ」

「そんな!」

 

 どんな占いの結果!? ピンポイント過ぎる! 

 巨体が地に倒れ伏した。

 

『そんなにはっきりと分かるものなのですか?』

「ま、ちょっと言い方は変えたけどな。ほら起きろって、解説するから」

「はぁい……」

 

 ぺちっとカードで額を叩かれたログベルが胡坐をかきながら膝にラヴァを乗せようとして……逃げられた。

 

「聞きたくないならいいぞ」

「ごめんなさい」

 

 素直に謝って正座する。

 

「このカードが示しているのは、“近い未来に不満は解消される”……という事だ」

『では、焦らずとも謹慎は解かれるという事ですね』

「じゃないか? オマエがどこまで占いを信じるのかは任せるけど」

「えー、うーん」

 

 大人しくしていれば近いうちに謹慎が解かれるんじゃないかというのは、ランセットと同じ意見だ。

 ログベルとしてはその謹慎期間を早めに……としたかったが、これ以上は無理だと悟る。

 あまり我儘を言いすぎてもいけないと思ったからだ

 

「あ、そうだ」

 

 せっかく占って貰えるんだし、リコについても教えて貰おう。

 そう思ってもう一度やって欲しいと頼んだ。

 

「リコ? リコって、あのレッドリングか? オマエと一緒にいた」

 

 ログベルがレッドリングを追っているのはもう有名な話だ。

 特に言いふらした覚えはない筈とはいえ、戦場でのふるまいからバレバレですぐに広まった。

 

 しかしその中でも特に行動予備隊A1……フェンが隊長を務め、ラヴァも隊員として所属する部隊。

 この部隊はあの日に、ログベルの保護されたその場にいた部隊だ。

 それ故に他よりも事情に詳しく、なので早く立ち去りたい気持ちもあるが一応は占ってあげる事にした。

 今度は枚数を増やして、何枚か選ぶように指示する。

 

「ありがとう。……じゃあ、これっ」

 

 選んだのは左右の端から数枚ずつ。

 絵の意味は分からないのでラヴァに渡す。

 

『どうでしょうか……?』

 

 ランセットが呟き、ラヴァは結果を纏めるため本を捲りながら眉を潜める。

 

「……」

 

 それをログベルが黙って耐えて数分。

 ようやく言葉が纏まり、そして伝えた。

 

「──ノイズ混じりだ」

 

 とは? 

 

「安定しない。占う対象がこの世界にいるのかいないのか」

「どういうこと?」

 

 まさか、闘争の果てに力尽きた? 

 そう言おうとして、ラヴァは先に止めた。

 

「占いだって完璧な結果を出す訳じゃない。それでも、この結果は……」

 

 ──それからたどたどしく教えてくれた内容は、ログベルにもランセットにも、そして何よりラヴァ自身にとってもよくわからない不明瞭な物だった。

 リコの存在は安定しない、この世界にいたりいなかったりする、悪夢として迷い込んでいる、という意味を示しているらしい。

 

 自分たちの住む、歴史ある世界に悪夢として迷い込んでいる? 

 悪夢、夢とは普通に言えば眠った時に見るもの。

 この世界が仮に夢のような場所だとして、リコはこの世界で一緒に二日間を過ごした。

 夢の中で眠るなんて事はおかしい──。

 

「……いや、寝てない」

 

 一回だけ訪れた夜、あの時リコは見張りをしていて眠っていない。

 

「占いだってなんでも知れる訳じゃない。気休めにな」

「うん。ありがとうラヴァ。無理言ってごめんね。ランセットも」

「いいさ」

『では、お仕事に戻りますね』

 

 …………。

 ……。

 

 倉庫から二人が去ってログベルが取り残される。

 

「夢、悪夢か……」

 

 自分のいる場所が誰かの夢、フィクション、そんなあやふやな物だとは思いたくない。

 思いたくないけど、占いを信じてみるならここは夢?

 

「いや、夢とは言ってなかったかな?」

 

 あくまでリコが悪夢として迷い込んでいる、とだけ。

 どこか別の世界にいるリコが、眠った時に見る夢としてこの世界へやってくる。

 この世界にいたりいなかったりというのは、何かの区切りに目が覚めて、一時的にこの世界からいなくなるという事? 

 

 オカルトで意味不明だ。

 だけれども、そもそもリコは能力からして意味不明だった。

 どこからか取り出したピッケルで地面を叩けば食料を出せ、アーツのように見えても根本的には違うように見える何かを使い、そもデューマンという未知の種族。

 

「分かんないけどっ」

 

 事前に用意しておいた、これを取りに行ってたんですアピールのための箱を持って倉庫を出る。

 

 

「ここが悪夢だって言うなら、良い夢に変えてやるんだっ」

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