『先手必勝!! とらえきれるかっ!』
『えっ!?』
その瞬間、ライジャーアサルトの爆発的な突撃がバーサークフューラーを襲う。
『クッ…!』
だがその時、バーサークフューラーは信じられない動きをした。
右のバスタークローが、妙な鋭さと『柔らかい』動きを持って前に突き出され、
『なぁ!?』
ギィィン、と言う音を響かせ、ライジャーを逸らしたのだ。
『にぃ!?』
いや、驚くべきはその後だ。
ヒルダの腕は知ってのとおり、この受け流された動きを殺さず、ターンを決めて射撃に移ると言う事を平然とできる。
この程度の驚きでも、冷静に後ろがとれる。
逆に、先程も分かった通り、カリンはまともにゾイドが動かせない。
ただ暴れさせるだけで制御が出来ていなかった。動かせても、それに反応できるのは無理だ。
だから、先程の流れのままに反転し、バスタークローとライジャーアサルトのビームキャノンの銃口と向かい合う形になるその様子は、
ありえない事だった。
『反転できた!』
『見事ッ!!』
当然起こる事だが、ビームキャノンは放たれ、バスタークローは展開してEシールドがそれを防ぐよう張られる。
『なるほど、これは面白い!』
撃った衝撃で後ろへとステップで下がり、再びライジャーは走り始める。
『つ、強い…! ココロ、行くよ!』
あわててカリンは、ココロことバーサークフューラーを飛ばし始める。
***
「なんて動きを!?」
「ライジャーに反応しきった…!?」
その様子を見たC組の面々は、驚きの声を口々に上げていた。
「普通の場合、あの突進をEシールドで受けるのがパターンです」
と、リナが冷静にみんなに聞こえるよう、解説を始めてくれる。
「でも、その場合だとライジャーの胸の複合ショックカノンの餌食です。
ガンブラスターのローリングバスターほどじゃありませんが、連鎖的にタイミングをずらして攻撃できるショックカノンとEシールドの相性はけっこう悪いですしね」
「それだけじゃないでありますよ、リナ殿」
と、ここでC組解説役二人目である、オティーリエが口を開く。
「ライジャーのアサルトユニットを見る限り、あのビームキャノンはゼネバス系企業『Ziアームズ』の高貫通パルスレーザーライフルでありますし、今のように一発でバーサークフューラーのシールドを貫通とはいきませんが、ショックカノンの応用で破ることも可能だった、でありますよ?」
「ですよねぇ……でも、あのバーサークフューラーのココロちゃんはソレをしなかった」
と、妙に的外れな事を言うリナ。
「まるで、一度そのパターンを見ていたかのように、それをしなかった。
あのココロちゃんだから出来たんじゃないですかね~?」
「? カリン殿がしなかった、ではなく?」
「ええ。ぶっちゃけ、カリンさんが出来るのは、百歩譲って、まだ『バーサークフューラーの闘争本能の動きに合わせる』操縦だけだと思うんですよ~。
ただ、それができるのもすごいですし、あれが私の考えてる通りのバーサークフューラーならそれでベターなんです」
つまり、とリナは続ける。
「これではっきりしましたね。
これ、カリンさんのココロちゃん、ライジャーに勝てますよ、条件さえそろえば」
***
(この動き、妙だ)
ミサイルをランダム誘導パターンに設定し、蛇行しながらターンして後ろに放ち、再び走る。
『くぅ…!』
それを、バーサークフューラーはジェノ系ティラノサウルス型ゾイド特有のホバー移動を駆使し、右へ、左へ、と避け、稀にEシールドやバスタークローで迎撃する。
(素人の動きなのに……的確過ぎる)
ここで、すこし罠にはめるため、急に右後ろへステップする、という芸当をして後ろを取ろうとする。
『あ…!』
が、空中でまだビームの照準をしよう、という段階で相手も反転し、こちらへ撃たせまいと突進してくる。
「だが反応は良い。素質はあると言わせてもらう!」
バスタークローを壊すつもりで、胸の複合衝撃砲を放つ。
4門のビーム、1門の大口径衝撃砲は、しかし奇妙なほどの反応の良さに回避される。
「回転…!?」
バーサークフューラーは横へ大きく回転し、そしてその尻尾を開くのが見える。
『っ、こうなったら!』
「何ぃ!?」
まさか、といまだ衝撃砲の反動相殺に四肢が動かないライジャーの中、その光景に驚きを隠せないヒルダ。
首を下げ、尾と水平にし、口を開き砲塔を露出させる。
空中でやっているその動作は、余りにも有名な攻撃の前準備。
「荷電粒子砲…!!」
『っ…!』
まさか、と思い気付く。
ジェノザウラーの系譜の一体、ジェノブレイカーは空中でも、どこでも荷電粒子砲が撃てた。
単に安全のために、地にアンカーを打ちつけて撃つバーサークフューラーの設計でも、準備だけなら空中でできるはずだ。
「……くくっ、これは面白い!!」
動け、とライジャーに意思を込めて操縦幹を動かす。
まずは回避だ。フルチャージをする気はなさそうだが、それでも十分な破壊力はある。
だが、避け方も重要だ。
バーサークフューラーの荷電粒子砲の俯仰角は+25度/-12度、左右へのふり幅は真正面から約36℃ずつ。
意外と広い。避けるのも難しい。
「荒野の決闘とは、良い展開だ!!」
チャージの間に後ろへ回れば、勝てる。
まわれなければ、消し炭……とまではいかないだろうが、嫌な思いはするだろう。
「ライジャー! 私について来れるか!?」
吠えるライジャー。
荷電粒子砲は発射寸前だ。
「来いッッ!!」
一気に踏み込む。
この場を抜ける最短距離は―――――あのバーサークフューラーの真横だ。
『速い!?』
「行くぞライジャーッッ!!!」
バスタークローの迎撃も考えない。まずは避ける。
シンプルに、背後を取る。
『くっ、』
「そして勝つ!!」
一歩目で、バーサークフューラーの顔の前に踏み込む。
もう撃たれてもおかしくない距離だ。
だが、相手は撃ってこない。
(ふみだせッ!!)
横を抜ける。ライジャーの速度を、バーサークフューラーはとらえきれない。
空を切り、地面をうがつバスタークローを一瞥しながら、バーサークフューラーの尾の先端をかすめるほどの場所で着地をする。
「もらったぁッ!!!」
旋回し、そして。
逆さづりとなったバーサークフューラーの頭を見る。
「何ぃ!?」
バスタークローが地面に『2つとも』刺さっている。
そしてそれを基点に、180℃回転してバーサークフューラーはこちらに向いている。
「しま――――――――――――」
威力を下げられているとはいえ、
その荷電粒子砲の光は、ライジャーを包むほど強力だった。
***