惑星Zi、西方大陸エウロペ、ミューズ森林地帯からロブ平野方面に訳50キロにある都市『ニューリヴァプール』。
の、ゾイド及び通常車両兼用道路の交差点
『はーい、押さなーい、押さなーい! そっちのワークトータスは自家用車踏まないようにー!』
『そこのコマンドウルフ!! 背中のライフルで車を脅さない!! ゾイドウォーリアーか!?』
そこは今日も渋滞だった。
ゾイドが、人が入り乱れ、クラクションと鳴き声が響きわたる。
『速くしてくれよぉ、仕事遅れちゃうよぉ!』
『くぉぉらぁぁぁ、そこのマーダー!? いい加減にしないと逮捕するぞぉ!?!』
惑星Zi最速の一角であるゾイドの一体『EMZ‐13(01)マーダ』に、交通整理中のゴドス重装型警察使用が、88ミリ市街戦ゾイド制圧用ライフルを向ける。
『ちょ、民間人に何を向けてるんですかぁ!?』
『うるさい! このぐらいせんとこいつらはつけあがるばっかりだ!』
あわてて、同じく交通整理中のEZ‐027『レブラプター』警察使用が駆け寄り、そのゴドスを止める。
『また始末書かされますよぉ?』
『お前は風族だから知らんだろうがな、地球移民である俺の家の家訓にこうあぁる!
『犯罪者は即往生』だ!』
『んな無茶苦茶なぁ……』
と、言いつつもちゃんと交通整理をしている辺り、彼らも優秀な警察官なのだろう。
『ごらぁ、そこ!! 車に迷惑をかけるな、ぶっ放すぞ!!』
……人格以外は。
と、その時、遠くでガシガシという大きな音が聞こえる。
『この音、どこかで4足歩行ゾイドで速度違反をしているな!?』
『なんで嬉しそうなんですか!?』
と、言っている前に、その音がどんどん大きくなっていく。
『ぐっふっふっふ…! 来るなら来てみろぉ!!
こちとら、もう銃の装填はおわっとるんだ!!』
『落ち着いて! コマンドウルフか、それに近いゾイド相手とはいえ、その砲じゃ絶対に大参事ですって!』
しるかぁ、とゴドスが、88ミリと実戦でも通じる方を音の方向―――ちょうど、渋滞が幾分かマシな方向に向ける。
『きやがれぇぇ! そして往生せい……や…あ?』
その姿が見える。
予想以上に大きな、4足歩行の強い音を響かせて、来る。
中型じゃない、アレは……
『お、大型ゾイ、ド……?』
『な、あ、あ、れ、って、ら、らら…!』
それが、大きく跳躍し、交差点を、渋滞をも飛び越える。
『『ライガーゼロぉぉっっ!?!?!』』
手ごろなワークトータスを踏み越えて―――カノントータスになっただけあって頑丈で、多少揺れた程度で動じない―――――ライガーゼロは渋滞を抜けた。
***
「交通違反上等ですよー!」
現在時速、145.2km/h。
ゾイドによる機動戦の始祖、ゼネバス帝国の末裔たる技術は、その速度ですら『巡航』速度だ。
「このまま、グラム湖近くの学校まで!!
交通違反なんてみんなしているし、そんな事よりも初日に遅れる方が大問題です!」
ぐぉぉぉ、と叫ぶライガーゼロ、ことクロムウェル。
どうも賛同したわけではなく、コックピットごと後ろを向く。
「げぇ、もう見つかりました!?」
後ろから、2機の小型ゾイドが全速力で追いかけて来ていた。
***
『待てぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!』
ゴドスの最高速度は150km/h、今ほとんどその速度で走っており、表情の見えないゴドスも心なしか苦しそうだ。
『無茶しすぎですよ! ここは僕に任せて!』
と、そこで210km/hは叩き出せる、相方のレブラプターが前に躍り出た。
***
「やっぱり、レブラプターは軍よりも警察が似合いますね~、そもそも火器らしい火器のない機体なんて普通考えますかアレ?
帝国の黒歴史ではありますよね~、改修してもパイルバンカーとかいうふざけた仕様ですし!」
とはいえ、とリナは静かに焦った笑みを浮かべる。
「やっぱ速いですね~、限定OS(※この場合『オーガノイドシステム』の略)積んであるだけあって!」
ならば、とリナは左手のスロットルレバーを握る。
「クロムウェル、本気出しますよ!!」
スロットルを全開にする。
その途端、ライガーゼロたる容姿の特徴、その背部にあるイオンブースターが開き、機体が加速する。
「パワー、ミリタリー(出力全開)!」
数秒で速度メーターが300を突破、最高速度307km/hを叩きだす。
いつもの心地よいG、景色がどんどん一変する。
「振り切りなさい、クロムウェル!
始業式に遅刻して私がハブられないためにっ!!」
そんな私利私欲が通じているのかはわからないが、クロムウェルは獅子の咆哮をあげて走る。
***
『だめだぁ、追いつけない!』
特殊アスファルトの道路は、ドリフトするように止まるレブラプターの足が火花を散らすほどに踏ん張っても、焦げ目ぐらいしか残さなかった。
『はーっ、はーっ……ええい、逃がした!!』
と、ようやく追いついたゴドスが静かに近づき、中にいる警官がそんな声を出す。
『しっかし、まさかライガーゼロをこの目で見れるなんて……世の中わからないもんですねぇ?』
『ふん! どうせ、明日もここを通る!』
え、と驚くレブラプターに乗る警官に、ゴドスの中から相棒の警官が言う。
『あんなもんに乗ってこんなことやるのはただ一人だけだ!
この先の『ミューズ学園』の生徒で、寝坊した人間、ただそれだけだ!』
くそう、と言いながら、彼はもう見えなくなった方向へ、88ミリ砲を撃つ。
『ちょ、始末書書かされますよ!?』
『ゥ覚えてろぉぉぉぉぉ、悪ガキめぇ!! 今度こそ引導を渡して―――――』
と、そこまで叫んだところで、再び何かの足音が後ろから聞こえる。
『このパターン…!』
『ま、またか!?』
後ろを振り向く二人。
その後ろから迫るのは――――――――
『『ま、まただぁ――――――――ッッ!?!』』
再び、今度は中型ゾイドが2体を飛び越える。
銀と赤の、ライオンに似た流線型のゾイドが着地し、走り去る。
『な、なんだ、あのゾイド?』
『ライガー……じゃない?』
その容姿は、二人の見たことが無い物だった。
その謎の4足歩行ゾイドが去っていく。
『……ってか、交通整理どうしましょ?』
『ぬわぁ!? しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!!』