ZOIDS学園   作:影狐

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その5

 そして、試合当日の早朝。

 

『ホバーカーゴコントロールより、ライガーゼロ、クロムウェルへ。

 セッティングデッキへ移動するであります!!』

 ミューズ学園学校備品でもある巨大カタツムリ型母艦ゾイド『ホバーカーゴ』。

 戦史において、対ガイロス軍との戦時中、共和国主力機を務めた『ライガーゼロ』のCAS、チェンジングアーマーシステムのある意味でもう一つの中枢でもある。

 タイプの同じ野生体のマルダーも持つ、丸い殻型部分をある種のエレベーターと回転式ドッグにし、区画ごとに必要なパーツ収めることで、

 出撃の際、その任務に合わせて素早く、ライガーゼロを換装することができる。

 むろん、そのキャパシティからライガーゼロのみならず、ほかの機体のパーツも使えるのは言わずと知れず、共和国の設計がいかに『汎用性』と『発展性』を重視していたのかがわかる。

『リナ殿!言われた通りのパーツは用意したでありますが、塗装が完璧にできなかったのですがいいんでありますね?』

「ふふふ~、いいじゃないですか~。まるで共和国戦線でさすがに高価だったゼロのCASがなくてつぎはぎ出陣した兵士の気分みたいで。

 まったく、下手に鹵獲したのをそのまま主力機にしちゃうからそうなっちゃうんですよ~♪

 ――――でも、そういう兵器って、個人的にはだぁい好きなんですよねぇ?」

『ふふ、以下同文であります!!』

 そのライガーゼロは、クロムウェルだった。

 そして、そのコックピットには、当然リナも乗っていた。

「行きますよ~? 前から試してみたかった、新カスタム!!」

『ライガーゼロ、セッティングデッキに固定完了!』

 リナの握る操縦桿が、ゆっくり両脇に倒され、引かれる。

 それと同期し、セッティングデッキ横から延びる換装用アーム。

 それらが、俗に『ゼロアーマー』と呼ばれる白いアーマーをつかみ、ライガーゼロから外していく。

 ライガーゼロが、素体となったタイミングで、リナが不敵な笑みを浮かべる。

「これを言わなきゃはじまりません!

 

 ライガー、インストレーションシステムコール!!

 クロムウェルRS(リナスペシャル)!!」

 

 その言葉とともに、リナは回していた操縦桿を戻し、奥へ押し込む。

 同時に、両脇のパーツ収納部分が回転。

 別のコンテナが開き、新しいパーツを換装用アームが運ぶ。

 それは、鋭角なウィングを多数持つ、青いCAS。

 そう、基本は、軽量・高速移動用のアーマー『イェーガー』。

 しかし、この装備のメイン……というか、本体としか言いようのないともいえる可変式大型イオンブースターは、付けられない。

 代わりに、赤い色の小さなイオンブースターが――――別CAS『シュナイダー』専用のブースターが取り付けられる。

 そして、その両脇には、黄金色のブレード、そしてその脇から枝分かれするように伸びる大型キャノンに似たユニット、

 ブレードライガーのブレードと、アタックブースターが取り付けられる。

「お、クロムウェル、ようやく目を覚ましましたね?」

 換装と同時に、ライガーゼロのOSが連動、コックピットは高速戦でのパイロットのG不可軽減のために、背もたれが後ろに下がる。

 そして、リナの調整の通り、射撃戦にあわせ多目的情報モニターが両脇から現れ、様々なセンサー情報がこちらに映りこむ。

『ライガーゼロ、CASコンプリーテッド!!』

 換装完了と同時にセッティングデッキが上昇。

 ホバーカーゴ上部、ライガーゼロやその他高速専用ゾイド発進口が開く。

 そこへせってっぃんぐデッキが固定。

 発進ランプが赤より、青に変わる。

「ゴー!! クロムウェル!!!」

 電磁カタパルトが起動し、強くクロムウェルが押し出される。

 着地、噴煙を上げて、走る。

「っとぉ!!

 ほう、着地して数秒で、もう250キロ!!

 クロムウェル? ずいぶん飛ばしますね!」

「グォォォ♪」

 心なしか、リナに答えた咆哮は、雄々しくも語尾が弾んでいた。

「重いのは嫌ですものね?

 安心しなさい、倉庫に合ったもの寄せ集めとはいえ、すべてあなたの好み通り!!

 今日必要なのは『足』です! 存分に走りなさい!!」

 叫ぶクロムウェルが、弾丸のように進む。

 現在速度、毎時285キロ。

『ずいぶん飛ばしますのね! リナソレーネ・アシュワース!』

 と、無線から、いつもの『本日の練習相手』の声が聞こえる。

 追いつくは、赤いボディに長大な7本のレーザーブレードを持つ、『ライガーゼロ・シュナイダー』。

 そう、いつものアリシアの駆る、愛機だ。

「どうもー、アリシアさーん♪

 今日もやられ役、お願いしますねー?」

『ふっ、まさかわたくし『達』であなた一人で勝てると思っているのかしらね?』

 と、後方から迫るは、2機のゾイド。

 両方ともライガーゼロ。それも、高速線特化型『ライガーゼロ・イェーガー』。

 現在でも、その速度に魅せられる人間も少なくない、ライガーゼロのバリエーション機だ。

「あらら、『猟犬(イェーガー)』ならぬ『猟獅子』とでも言う感じですね~?」

『わたくし、『仕立て屋(シュナイダー)』だけじゃ、さすがにあなたの相手は心細いですの』

『C組のレオマスター、直に話せて光栄だ』

『よくアリシア様が言うものでな、『卑怯ばかりの人間だが、本当の実力は底知れない』とな』

 どこか男勝りな女子生徒二人の物言いに「いやそれは言い過ぎでしょう?」とリナは冷や汗交じりに反論する。

「ま、これは性能テストですし、さっさと気楽にやりましょう」

『ああ、語るなら口じゃなくて、』

『ゾイドバトルで、だ!!』

 とたん、2機が一気に速度を落とし、こちらの背後をとろうと動く。

「来ましたね!?

 ブースター、オン!!」

 リナは、イェーガーの頭部バルカンを恐れ、すぐにブースターを起動。

 背後の、アタックブースター上部にも取り付けれているブースターも含め4つとも点火し、全身のばねを利用しどんどん加速していく。

「現在風速西から1.2メートル、ちょうどいい向かい風、地表温度は25.8度、大気中粉塵濃度は34.8%、ライガーのストレス、マイナス5……」

 映し出される情報をもとに、最適な戦術プランをすぐに頭で立てるリナ。

「まぁ、前哨戦にもならない稼働テスト……なのに気楽にいきますか、とも言えないですねぇ……」

 と、背後から小刻みなリズムとともに、バルカンが放たれてくる。

「牽制ですか…!」

 リナは、尾に装備されたレーザーバルカン『LMG‐62F』を向け牽制。

 相手はゾイドバトル特化クラスらしく、尾にある武器からの攻撃を想定しておらず、一気に両脇に広がってしまう。

「あらあら、実戦だったら死にますよ~?」

 だがリナは気を抜かず、最も最良で確実な攻撃パターンに映る。

「相対速度は今のところゼロ、お互い現在時速は330キロ、MAXスピード……

 なら、曲芸やりますよ! アタックブースターをとパルスレーザー起動!」

 と、言った途端、ストライクレーザークローを起動。

 一機に減速し、2機の背後をとると同時に、ブレードライガー用レーザーブレードに取り付けられたパルスレーザーとアタックブースターのキャノンを前方へ向ける。

「レプティカルコーン(致命的円錐)ががら空きです!!」

 引き金、そして放たれる4筋の光。

『『なんのぉ!!!』』

 が、直後目の前にいたライガーゼロイェーガーが、消える。

「げぇ!? この予備動作!!」

 わかっていたから、すぐにアタックブースターを引っ込めた。

 わかっていたから、ブースターを全開にした。

『『ミラージュファングクラッシュ!!!』』

 直後、残像が交差するがごとく現れたゼロイェーガー2機の牙が、クロムウェルのいた位置の残像をかみ砕こうとする。

『な!?』『ミラージュで返された!?』

 

 かつて閃光師団に所属した『ウィナー・キッド』少佐は、ライガーゼロイエーガーの余剰排熱を利用し幻影を見せる戦法で勝利を収めた。

 その戦術は、のちの世にも使い手を残すほどには有効なものだった。

 

「大部分イエーガーのパーツ流用じゃなきゃ死んでいましたよ!!」

 リナは、前方約200メートルの位置で最高速度をたたき出しながら叫んでいた。

『あら、前方不注意ですわ!!!』

「いや、ピンチでした!!」

 が、その前方から、アリシアの乗るシュナイダーの5本の剣による突進、『バスタースラッシュ』が迫る。

「なんのぉ!!!」

 リナは、操縦桿を引き倒し、横へ曲げる。

 アタックブースターの基部たる、ブレードライガー用のレーザーブレードが展開。その金色の刀身が輝く。

「格闘適正低くても!!」

 そして、消える。

『ミラージュ!?』

「――――機体特性に合わせた操縦は、出来ます!!」

 リナは、横倒しになったアタックブースターの可動により真横へ移動。

 そして、ブレードを相手に確実にあたる位置においていた。

『ふっ、間合いと、』

 だが、直後、目の前のライガーゼロシュナイダーが飛ぶ。

『気合ですわっ!!』

「ええ!?」

 なんと、クロムウェルのレーザーブレードを踏み台にして、躱した。

「ぐっ、左に荷重が…!!」

 ぼふぅん、とレーザーブレードが地面をえぐる。

『地面に埋もれなさい!!』

「クロムウェル!! 右のアタックブースターを全開にしなさい!!!」

 だが、直後リナは信じられない行動に映った。

『何を!?』

「折れないで下さいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」

 左のレーザーブレードを起点に、すさまじい速度で反転を始めるライガーゼロ、クロムウェル。

『――――――――っ!?!?!』

「この距離で後ろをとればEシールドは張れません!!」

 すでに、アタックブースターを戻し、片方を砲撃形態に変えている。

『っ、シュナイダァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 だが、そのとき、

 アリシアはとっさにシュナイダーの右のブレードを展開、突き立てて片側のブースターを全開にした。

「いや、冗談でしょう!?」

『貴女にできてわたくしにできぬ道理でもあるとでも!?』

 こちらは、もうすぐ射撃できる状態になる。

 だが、ぎりぎりで相手が反転しきり、Eシールドを張れるようになるかもしれない。

 そして、忘れてはいけない。

 ここで倒れなくても―――――まだ二人残っている。

(よし、ここをしのいだら参った、って言いましょう)

 リナは決めた。だがここだけは決着をつけることにした。

「撃ってくださいクロムウェェェェェェェェル!!」

「防げ、ライガーゼロシュナイダァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 そして――――――――

         ***

 ちょうどその時、上空にシュバルツ高等育成学校のホエールキングがやってきていた。

 

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