『つ、つまり奴らはすでに渡河を果たし、そのうえで退路を断って、我々を包囲殲滅する気でいると!?』
その通りです、と舌打ち交じりにツバキは言う。
「気でいるんじゃありません、しています!
計画を変更します。我々は反転し、敵の片側へ攻撃を仕掛けます。
まだ数と質で上ですが……クッ、」
言いたくない、そんな苦虫をつぶした顔で、ツバキは言う。
「勝てるかどうかわからなくなってしまった…!」
***
『で、デスザウラーが、システムフリーズ!?』
『探索班、何をしていた!?!』
『わかりません、レーダーに突如、ガッ!?』
一機のレッドホーンのバックパックが砲撃でつぶされる。
『イーハー!! 見たかよぉ、このアタシの射撃テク!』
『いいねぇ! 最高だ、リコ君!!』
断続的な音を立て、移動しながらカノントータスは榴弾を叩き込む。
『隊長、しかしも目標にはかすり傷一つついていませんがぁ!?』
『当たり前だ! 移動しながら撃って撃って当てられる奴は、まぐれか、』
ズドォン、と爆音を立て、なんと2機目のデスザウラーの荷電粒子ファンに榴弾が叩き込まれる。
『あ、当てちゃった……
こちら2号機ー、なんか当たっちゃったよー』
というどこかやる気のない声が上がる。
『……いるんだよなぁ……こういう、天に恵まれたスキルを持っている奴が…!』
***
「嘘でしょ!? え、本気ですかこの展開!?」
そして、参謀であるリナは、その様子を見てやらせた本人としても驚いた。
デスザウラーの装甲は分厚く、カノントータスの780ミリ榴弾砲では貫けない。
ただし、唯一荷電粒子ファンだけは、榴弾砲で破壊ができる。
しかし、弾速の遅い榴弾砲では迎撃能力の高い背部のビーム砲で破壊されるが……
『こちらフォートレス隊、フォートレス2。
スカウター1、指示を乞います』
「了解!! 状況は好転しています、敵の中核であるデスザウラーの荷電粒子砲を沈黙させました!」
いや、起きたことをいちいち考察する場合ではない。
砲弾飛び交う戦場で、間違っても装甲の薄いクロムウェルに当たらないよう注意深く避け、砂丘を立てに止まり、背後のアタックブースターで砲撃する。
「ただし、敵の主力は健在です。
かといって下手な小細工は隙を生みます、6秒後、支援砲撃をやめて一気に突撃!!
損耗の激しい側はどこですか!?」
『こちらパンツァー隊!! 今穴はあけるであります!!
それに関してリナ殿以下スカウター部隊!! 着いてきてほしいであります!!』
「ちょ、私反対側ですよ!? 何する気ですか!?」
『今指示を出したでしょう!?
突撃でありまぁぁぁぁすッ!!』
***
「この距離からがっ!!」
敵正面、ダークホーンとブラックライモスの群れに、エレファンダー・フェルディナンドが突撃し、一機のダークホーンにぶつかる。
グォォォォォォォンッ!?!
パォォォォォォォォォンッッ!!
「パンツァー隊、とっとと突撃でありまぁぁぁぁす!!!」
鼻でダークホーンの腹部へ叩き込み、その94トンのボディをハンマーのようにして豪快に振り回す。
『ぐわぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!』
『突撃だオラァァァァァァ!!!』
『い、行くしかないのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
まさかの攻撃に、隊列が乱れたそこへパンツァー隊すべての機体がなだれ込む。
重量級の突撃に反応し、そこへゾイドが集中し始める。
***
「そう来ましたか……いろいろ予定をすっ飛ばしてくれますよね~、でも!!!」
リナは、ロケットブースターのスイッチを入れ、突撃する。
「全体、この流れに便乗!!
私に足の速いゾイドは着いてきてください!」
そして、目の前の敵を見る。
「今あの部分はがら空きです!!」
そう、エレファンダーの乱入により手薄になった側へ。
***
『だめです、このエレファンダー、ガッ…!』
『バケモノか!? この数で押しても…!』
『装甲ははがれてきている、何とかしろ!!』
「いや、何とかするな!!」
その時、シュバルツェスシュトルム全体に、その声が響く。
「うろたえるな諸君!! たかがデスザウラー2機とダークホーン数体がシステムフリーズしただけだ!
まだ、反撃の余地はある!」
エルフリーダは、そうコックピットで腕を組み、言い放った。
『しかし総番、方法は!?』
「私はこの状況の打開策は一切方法は知らんッ!!」
と、信じられない一言を放つエルフリーダ。
しかし、それでもまだ死んでいない目で、彼女は次の言葉を叫んだ。
「だが!!
打開できる奴はまだいるだろう?」
***
すこし、その戦場から離れた位置にて。
「不意をつかれましたようで、どうやら我々の戦力がかなり削られています。
もっとも、斥候がやられた時から、嫌な予感はしました」
そう、凛とした声が響く。
『どうしますか…?』
「安心してください。
まだ、打開できます」
そして、ツバキは、あくまで平静に言う。
「まだ暴風は止まっていない、とあの人は言うんでしょうね」