ZOIDS学園   作:影狐

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その6

 

「………きっと、この指示は受け入れられないと思うんです」

 と、梯子を上り、その場所へ向かうツバキが、つぶやく。

「そうでしょうね!! まず普通は受け入れません!!」

 下にいた一人の生徒―――シュバルツェスシュトルムの一人が妙な笑みを浮かべて答えると、下へ視線を向けたツバキも、同じ顔をした。

「でも、それは他の学校の人間や、ほかのゾイド乗りたちの話なのでしょうね」

 そこは、コックピットだった。

 こぎれいな電子機器に、両脇には申し訳程度の視界で有名な透過型装甲。

 それを覆うように閉じる黒い装甲式キャノピーは、間違いなく帝国製。

 

「さて、指示を出しましょうか。

 『敵の一番装甲の厚いゾイド部隊に突っ込め』、と」

 

           ***

 

『通信です!! 傍受を恐れ、遠距離短波電文!!』

『ツバキからか!? 内容は!!』

 放火にさらされる中、その内容が酷く言いずらそうに読み上げられる。

『内容は……はい!

 敵の最も装甲の分厚いゾイド群に突っ込め、です!!!』

 一瞬、すべての味方が沈黙した。

 言っている意味が分からない、という具合に。

 

 その時、最初に動いたのは、

 

『ええい、うろたえている場合かッ!!!

 全軍突撃こそ我々の神髄である!!』

 

 荷電粒子砲の使えないデスザウラー。

 

『行くぞ!! ついてこい!! これこそが!!』

 

 エルフリーダの乗る、総指揮官の機体。

 

『我々の戦いではないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!』

 

 デスザウラーの突撃に数瞬遅れ、後続がその後ろへ付き、突撃を始めていく。

 

           ***

 

『げぇ、やられたァ!?

 防御ガン無視ですか、あの方々!?!』

 崩れた場所を完全に無視し、逆にパンツァー隊の方角へ進撃を開始する相手を見て里奈が叫ぶ。

 包囲された場合、防御に回るのは愚の骨頂であり、逆に一点に向かい突破した方が、損害は少ない。

 経験則や、戦術家、戦略家も皆が口をそろえてそう言う。

 

「―――なーわけねーでありますからぁ!?!

 その場でとどまって援軍を待つという選択肢だってあるのにッ!!」

 

 だが、はっきり言って、それをまともにやろう、と思う人間は、名将か、バカかだ。

 オティーリエには絶対にやらない。やろうとは思わない。

 人間には恐怖もあるし、損害を考える脳みそもある。

 自分ができても、ほかの人間にできないことはある。

(しかし、あのデスザウラーにはそんな物を感じない!!

 直観だ!! それも野生の勘でしかない!!)

 こちら側に来た手前、結構なピンチだった。

 こっちにあるゾイドは、比重でいえば小型ゾイドが多い。

 中型までなら対応できるゾイドばかりだが、

 重突撃、重装甲ゾイドばかりの相手で、しかも戦闘は荷電粒子砲がないだけで、まともに動けるデスザウラー。

 格闘性能だけで、ゴジュラスを蹂躙できる、帝国の『死を呼ぶ巨竜』。

 

(迷っているわけにもいかないでありますなぁ……)

 ならば、

 

「カリン殿ぉ!!

 荷電粒子砲をぶっ放せでありまぁぁす!!」

『え!?』

「とにかく撃てぇ!!! 目標は先頭のデスザウラー!!!

 そのあと全員でリナ殿たちと合流であります!!」

『りょ、了解!!』

 自機であるフェルディナントの後方、カリンの乗るC組最大戦力のバーサークフューラーが、足の固定アンカーが下り、伸ばした尾の廃熱フィンが開く。

「バスタークロー部分からは撃たなくてよし!! 威力も4割程度で大丈夫であります!!」

『撃ったらすぐに移動だよね!? わかった!!』

        ***

「させるか、わがデスザウラーは簡単に止まらんぞ!!!」

 その巨体を信じられない速さで駆る。

『総番につづけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!』

『足を止めるな、突撃だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 その足の下には、足が速いブラックライモスや、それに乗ってきたのか重砲撃型イグアンも見える。

 完璧な『突撃』の布陣だ。

           ***

「行くぞ、フェルディ!! そしてパンツァー隊の野郎ども!!」

『え、俺らだけぇ!?』『野郎で該当するのお前と俺だけだろ!!』

 しかし、その一軍に、果敢にも3体のゾイドが突撃する。

 どれも重量級。共和国重突撃ゾイドのディバイソン2機と、ガイロス帝国の巨象エレファンダーだ。

『邪魔だ、チビ共ぉ!!!』

『いやいや、小型でも強力なやつばかりじゃないかよぉぉぉ!!!!』

『気にするなよ、男子共、後ろから女神の支援をやるぜ!!』

 先頭同士が交叉する瞬間、背後からあらゆる砲撃のシャワーが放たれる。

 黄金砲――――ハイパーローリングキャノンという、共和国のあらゆる砲を乗せたロマンと実用性を兼ね備えた逸品、

 アンキロサウルス型ゾイド、ガンブラスターの攻撃だ。

『チッ、相手方はほぼ『半荷電粒子リコイル』装備だ!!!

 ビームの通りが悪いぜ!!』

 実弾とは別に、ビーム砲やレーザーがイグアンなどに当たる瞬間、不自然な曲線を描くさまが見えた。

「贅沢なやつらだ!!

 17連突撃砲薄いぞッ!! 何をやっているッ!!!!」

『砲としてしか見てねぇのかよぉ!!!!』

 しかし、ディバイソン2機の凶悪なまでの弾幕は、イグアンに次々傷を負わせ、ブラックライモスすら退けていく。

 そこへ、エレファンダーが火器を乱射しながらツッコミ、防御に回れば後ろからガンブラスターの黄金砲が光を放つ。

 

          ***

 

「ぐっ…!?

 ……成程、なかなかやる…だが!!」

 この攻撃を、相手はものともしなかった。

「この私の駆るデスザウラーが、超重装甲ッッ!!!」

 再び放たれたハイパーローリングキャノンの雨に、その装甲が傷つき、焦げつつも、まるで無傷かのように歩みを止めない。

「そう簡単に、抜けると思うなぁぁぁぁぁぁあっっ!!!」

 それどころか、素早く反転し、尾を薙ぎ払うように敵へたたきつける。

 

         ***

 

「ゲッ!?」

 とっさに、全員姿勢を低くしたり、後ろへ飛ぶ。

 動物型だからできる芸当だ、がそれでも先頭にいたディバイソンがやられる。

『うぎゃぁぁぁぁぁ!?!?!』

 ずさぁ、と砂を巻き上げ、ぼこりとでた岩砂漠の入り口のような場所に叩きつけられる。

 ブモォォ、という声は断末魔か、バチバチとショートしたような音と共に動かなくなる。

「はうあぁぁぁぁぁぁぁぁ、あ、あ、アスカ殿ぉぉぉぉぉぉぉッ?!?!

 パンツァー隊一機システムフリィィィズ!!!!」

『ごめんよぉ、マジでごめんよぉ…!!』

 通信機越しにオティーリエとディバイソンの中にいたアスカは、泣きながら誤っていた。

 しかし、今は止めだ、とでも言わんばかりにデスザウラーが再び顔を向けるタイミングだ、かまっている暇は無い。

「カリン殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっっ!?!?!」

 

『お待たせッ!!』

 

 だが、まだパンツァー隊に運は向いていた。

 

 バーサークフューラー、ココロの口から、

 

 光が、その時ほとばしった。

 

 

 

           ***

 

 

 

『荷電粒子砲――――――ッッ!!!』

『反荷電粒子リコイル最大出力――――――ッッ!!』

 前衛にいたゾイド群の周りに、丸い光の膜が浮かび上がる。

 反荷電粒子フィールドが最大出力になった際起こる現象だ。

 

 だが、それは気休めだった。

 

 存外、空気を振るえるほどとはいえ、砲撃音よりは小さい音と、そんな物感じないほどの光を放つ荷電粒子の線は、その膜を容易にえぐり、デスザウラーへ直撃する。

 ―――グォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 胸部へ直撃した、バーサークフューラーの収束荷電粒子砲。

 その威力、そしてその痛みに、デスザウラーが吠える。

「ぐぅぅぅ……!!」

 衝撃で、コックピットが揺れる。

「も、持て……デスザウラー……!

 死を呼ぶ巨竜……我が、愛機よ……!!」

 操縦桿が重い。今にも手放しそうだ。

 だが、ダメだ。

 これを放した瞬間、エルフリーダの誇りが、デスザウラーの闘志が消える。

「システムフリーズなど……するかぁ!!」

 耐えきった。

 超重装甲は誘拐し、いまだその熱で赤熱化し、融けて内部機構が見える程だ。

 だが、そのデスザウラーは耐えきった。

「ッ、生き残りはぁ!?」

『え、A班生存報告!!!』

 同じく、同じく、と続き、

『E班全機システムフリーズ!!』

『B班、2機を残し戦闘続行不可能!!』

 と、数秒の内に被害報告が上がる。

「相手は…!」

 ようやく、視線を相手へと向けた。

 

 そして、驚く。

 

「いない…!?」

 

 

         ***

 

 

「邪魔よ!!」

 カリンが撃った瞬間、いや、撃った前から、静かに、

 アーチャー隊……ハンマーロックの一団は動いていた。

『委員長さ~ん! 突出し過ぎちゃだめですわぁ~!!

 隊長機が撃ち落とされてもルール上は問題ないですけれども、』

「なら問題はないわ!!」

 目の前で突進してきたブラックライモスに対し、フレア(対ミサイル阻害熱源)を散布して虚を突き、横腹に拳を叩き込み、叫ぶ。

『士気に影響もあります!! 何やかんやで、一番みんなを引っ張っているんですから!!』

「いい!? 指揮官だから前に出ない、は言い訳でしかないわ!!

 前に出るデメリットは、時として前に出ないデメリットを下回るのよ!!

 今がそうよ!! へリック大統領の言葉通り!!」

 敵の重装甲イグアンの放ったビームを回避し、近づいて蹴りを喰らう前に殴る。

「もうすぐ、パンツァー隊が合流するわ!!

 ここまでこそこそ動いて、電子妨害もちょっとして穴を掘ったの!!」

『もうちょっとでふさがりそうな小さい穴ですけれどもねぇ!!』

 相手の数は多い。何せ、敵陣の真ん中を通っているようなものだ。

 すでに包囲されていると同義なのだ。

「相手と同じことをしようとしただけよ!!

 それに、破城槌はもうすぐ来る上に!」

 と、すぐ近くで爆炎が上がり、敵が吹き飛ぶ。

『弾着!! カノントータスの780ミリ榴弾です!!』

「味方の射程に入った!! 近いわ、きっとリナなら状況を理解してくれるって信じてたわ!」

 そして、直後時期のすぐ近くに榴弾がやってくる。

『きゃぁ!?』『近い、近いって!?』

「……だ、弾幕で防御するから早く来いってことにしろ、死んでもいいかぐらいに思っていないかしらこれ……!?」

 しかし、案外有効だった。

 破片やら粉塵やらもあるだろうが、このハンマーロックはミサイル攻撃をメインに置くよう改造されており、センサーの感度はなかなかだ。

 敵も、ひるまず撃ってくる。特にダークホーンがやたら多いためその弾幕は、気を付けるべき密度だ。

 だが、榴弾と動じない胆力とちょっとのゾイドのダメージで守られたハンマーロック達には、まだ当たらない。

「まだなのパンツァー隊…!?」

『ちょっと、委員長さぁん!! 私の所のエースの心配は!?!』

「それも含めてよ!」

 と、隣で奮戦するゴドスからの通信に軽口をたたく。

 メルヴィンにはまだ、勝機が見え、余裕があった。

 

『――――アーチャー隊のみなさぁぁぁぁぁぁん!!! 遅れたでありまぁぁぁす!!』

 

 そして、待ちに待った声と共に、ゾイドを蹴散らす重厚な足音が聞こえた。

「来たわね!?」

 一瞬、注意をそちらに向ける。

 だが、次の瞬間、

 

『ですがぁ!! ピンチです!!ピンチであります、うぎゃぁ!?』

 その不穏な通信と共に、エレファンダーの姿が見える。

「何があったの!?」

『ココロの右腕が!

 じゃ、じゃなかった、どど、ドリルの右が壊されちゃいました!!』

『さっきやられたディバイソン以外は何とか無事だが、マジでやべぇぞ!!!』

 と、不穏な通信と共に、味方の一団が小型、中型ゾイドからなる壁を壊して進んでくる。

 殿を務める、はバーサークフューラー。

 みると、ココロの右のマグネーザーが、半ばから消えていた。

(何…!?!)

 瞬間、何かが、バーサークフューラーの背後からやってくる。

『クッ…!?』

 見事な操縦で、それの突撃をよける。

 しかし、瞬間、煌きと共に、

 スパン、ともう一方のマグネーザーが、半ばからずり落ちた。

 

「何!?」

 

 ドスン、と音を立て、エレファンダーとこちらの間に何かが下りる。

 それは、黒いゾイドだった。

 サイズは大型、形はバーサークフューラーと同じ―――ティラノサウルス型。

「ジェノザウラー…?

 いや、違う…!」

 ジェノザウラーに酷似したそのゾイド。

 しかし、背部にあるのは、パルスレーザーライフルではない。

 その背部にあるのは、二振りの『剣』。

 まるで、騎士を思わせる兜とでも言い表す頭部装甲から、赤い角と鋭い視線を見せる、恐竜型ゾイド。

 

 

 

 

「ジェノリッター…!?

 なんて趣味的な…!!」

 

 

 

 

 

          ***

 

「合流などはさせませんよ? ミューズ学園の方々」

 敵を見据え、ジェノリッターの操縦桿を握るツバキは静かに意思を向ける。

 

 

 

 

「ここが、あなた方を飲み込む『渦』だ」

 

 

 

 

 シャラン、と二振りの大剣「ドラグーン・シュタール」を向け、言い放つ。

 

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