ZOIDS学園   作:影狐

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閑話休題:生徒会長のイオナ
前編です!


 

 季節は、春の終わり、夏の始まり。

 とはいう物の、赤道直下の北エウロペ大陸は、毎度毎度の摂氏30度越えである。

 ここ、グラム湖のすぐ近くのミューズ森林地帯は、まだマシとはいえ気温は高い。

 さて、この時期とは、地球でもおなじみなアレが学生に襲い掛かる。

 

 

 

 それこそ、春の終わりの悪夢。

 

 またの名を、中間考査。

 

 

 

 ミューズ学園は、通常の学業である、中央大陸標準語、数学Ⅰ、ガイロス帝国標準語、社会、物理、ゾイド基礎操縦技術、基礎整備技術の6つと、家庭科を履修したうえで、各クラスごとの専門のカリキュラムのテストがある。

 A組は『ゾイド公式戦基礎Ⅰ』、『基礎戦術理論』、B組は上に加え『ブロックス基礎構造』と少ない―――しかし内容がかなり難しい上に覚えにくい―――が、他の組は本当の意味で地獄のカリキュラムがある。

 C組は、通常の数学Ⅰだけでなく、『数学Ⅱ、及びⅢ』までみっちりやらされた後、『戦術と指揮基礎』『戦略基礎』と、文系を殺す、バカは確実に殺すかのような内容が続き、ついでに作戦立案上必要な『地理』もやらされる。

 D組は、『電気基礎』『機械工学』『設計基礎』『電子回路』等のすさまじいまでの専門教科が続き、

 E組は、『通信技術』『プログラム基礎』『プログラム応用』と、こちらも文系を殺す内容が続く。

 F組も、C組の内容と共に、『航空力学』や『空戦戦術基礎』、さらに『航空機免許』までやらされて、中間の内にミューズ学園の敷地外の惑星Zi上の空を飛べる免許まで取らされる。

 凡人は死ぬ。ここで果てていただく。

そう、言われているに等しい。

 そして、N組などは、C、F組の授業も全部やらされた上で、『海戦戦略基礎』『海上戦術基礎』と、優等生どまりもすらも死ねと言わんばかりの内容のオンパレードである。

 試験の帰還は5日間。そのうち4日間でこれらの内容をみっちりやらされる。

 しかし、本当の地獄は、脳が疲弊しきった後の、5日目。

 その日は、実技試験。

 要するに、紅白に分かれての全校ゾイドバトル。

 別名『春の終わり砲火後作戦』。などと誰かが言ったらしい。

 

          ***

 

 試験期間4日目、午前12時30分、少し早い昼の放課後。

 この周囲のゾイド用周波数帯、そして校内放送に、明るいBGMが鳴り響く。

 

 

 

『はぁい! ミューズ学園のみんなぁ!!

 つらない試験中のお昼だけど、ちゃんとご飯食べてるぅ!?

 え、私? ダイエットしてたのに、イライラして甘いもの食べちゃうんだよね~……

 そんな私こと、E組委員長兼放送委員なDJサオリンちゃんによるぅ?

 ミューズ学園お昼の放送、つまりは『ミューラジ』! 今日も元気に行こうか~!!』

 

 

 

 流れるのは、この学校らしさのかけらもない放送。もはやラジオ番組。

 これぞ、始まって数か月ですっかりおなじみのお昼の放送である。

 

 

 

『てかさー、みんなどうよ? 私の所もかなり教科多いけどさー、A組とかB組は無事? やっぱり難しい?

 私はもう、平均点より+5を目指すとかいう意識微妙に高い感じに頑張ったけどさー、難しいよやっぱり~。

 特にフィリア先生の家庭科問題、アレ地味に難しいんだよね~。

 お料理できればいいかなー、みたいな感じにはいかないね!! 鬼畜先せ―――ああ、やっぱり何でもなーい!!! 私死にたくなーい!』

 

 

 

 そんなラジオじみた放送を、あるゾイドの通信機がとらえていた。

 

 

 

 ガシン、ガシン、と一歩一歩踏みしめるよう森の中の道を歩き、長い首を学校の本校舎に向ける。

 大型ゾイドだ。ゴジュラスと同等の大きさの。

 フレームむき出し、と言っても差し支えない首長竜型ゾイド、

 その名は『ビガザウロ』。

 惑星Zi初期の大型ゾイドであり、今では生きた化石ともいえる程古いゾイドだ。

 いや、生きた化石という表現は、少々語弊がある。

 確かに一時期、見ることのなくなったゾイドだが、ある理由により現在も、『Mk‐Ⅱ』として活躍している。

 この機体も、上部にガンスナイパーなどに使われる『ワイルドウィーゼルユニット』が鎮座し、その貧弱に見えると足も、よく見れば踵にブースターかスクリューのように見えるものが付いている。

 尾部の関節部分から、ミサイルポッドらしいものが連なっているその姿は、まだまだ現役と言わせる気迫すら漂う。

 この機体こそ、ビガザウロMk‐Ⅱ。

 ある理由により復活した、巨大ゾイドの始祖。

 

 

 

「あわわわ、やめてビガ君!? あう、それ大事な書類、あ、そこ届かない、

 もう!! 首振っちゃダメ―――――ッッ!!」

 

 

 

 その、ゆったりとした広いコックピットの中、キャノピーへお尻を向けるはしたない格好で、歩くたび動く首の影響で散らばったプリント達と悪戦苦闘する女学生がいた。

 短いショートカットの髪の下から、柔和な顔をいかにも慌てたように表情を作る彼女は、まぁ美人だがどちらかと言えばかわいいタイプだ。

 もしもこのビガザウロのキャノピーをのぞき込む不届き者がいれば、きっと彼女のスカートから除くお尻と、ピンク色のパンツが見られるだろう。

 

 

 

 そこの覗こうとした君、ビガザウロの顔の脇にはマクサー30ミリビーム砲があるという事だけは覚えておきたまえ。

 

 

 

「うぅぅ、クリップ、クリップ……っと!」

 ようやく広いコックピットでプリントすべてを集め終わる。

 えへへー、と安堵のかわいらしい笑みを浮かべ、今度は飛ばないよう書類をうまく固定し、操縦席にきちんと座る。

「もぉ! ビガ君!! 水平だったからいいけど、首を振らないの!」

 そう、この巨大な首の主にほほを膨らませて言うが、ビガザウロは相変わらずゆったり首を動かしながら歩いていた。

「……マイペースさんだなぁ……はぁ……」

 はぁ、と彼女は言いながら、無線機から流れる学校放送に耳を傾ける。

 

『さて、前置き長くなっちゃったけどねー、今日は私、西校舎の屋上でミューラジ、お届けしてるよー!

 西校舎と言えば、最近はあるクラブ活動の本拠地となっちゃってるよね?

 そうだよ、そこにお邪魔してるよ~!』

 

 

 

「あ、もう始まっちゃってる!?」

 まずい、と彼女は焦る。

 何せ、『そのクラブ』は、自分から見て右わきにあるケースに入った物がなければ、今日の活動ができない。

「ビガ君、急いで!!」

 幸い、西校舎は近くだ。

 しかし、歩みが遅いビガザウロが間に合うか?

         ***

「みんなも知ってる、妙な趣向家達!!」

 長い髪を三つ編みのようにし、あえて首に巻くという謎めいた髪型と、実はドが入っていない大きなフレームのオシャレ眼鏡。

 そんな見た目の彼女が、DJサオリンだ。

「コーヒーとか炭酸とかじゃ、満足できない!!

 そう、彼女らこそ、ミューズ学園『紅茶研究部』だー!!」

 そして、常日頃からのハイテンションその物で語るDJサオリンの身振り手振りの先に、彼女ら、あるいは彼らがいた。

 

 

 

 

「一人目! 『荒獅子の姫のバトル後はアイスティー』こと、A組委員長にして地球移民4世のアリシア・チャンプ!」

 ふん、と髪をかき上げる優雅なしぐさで、アリシアが答える。

 忘れられてそうだが、彼女も地球移民だ。

 

 

 

「二人目! 『実はコーヒーが飲めない気弱の強面』こと、B組のエース、また地球移民かよ、東方大陸出のユウジ・イツカ!!」

 ギロリ、と睨むような顔を向ける、確かに人を殺してそうな暗い視線だが割と整った顔の少年がいる。

 だが、この場誰もがそれを「あ、緊張してるんだ」と理解される彼が、ユウジ・イツカだ。

 

 

 

「三人目!! 『ライジャーとかいうマイナーゾイドのエース』こと、C組、地底族のヒルデガルド・ターレス!!」

「今、ライジャーが地味と言ったかな? 小一時間ほど話があるのだが??」

 と、ヒルダは額に青筋を浮かべ、努めて笑顔を作りそう怒りをあらわにする。

 

 

 

「次が四人目! お前何してんだよ、と『ウチの組のマスコット』のオラージュちゃん!」

「何をしてるって、紅茶愛好家だからじゃないんですか……?」

 と、小柄な体の愛くるしい少女の、オラージュという女生徒が苦笑で答える。

 ちなみに、地底族の血が入っているのか、髪の色がオレンジ色をしている。

 

 

 

「五人目は、すっごいイケメンだね!

 『制空権の覇者』ことF組参謀のレキ・バスタール君! 火族だっけ!?」

 ふ、とサングラス越しでもわかるほど美しい顔の長身の少年が笑う。

 それだけで、大体の女は落ちそうだ。現にDJサオリンもキャー、と黄色い声を上げる。

 

 

 

「そして、この集まりの中心人物その1!

 地球の文化好きは分かるけど、まさかその地球ですらはるか大昔の国の文化が大好きすぎるってのも変人だよね!!

 そんな自他ともに認める変人は、地味に校内美少女ランキング5位以内のすごい子!

 つーか、スペック高杉!! どういう事なんだ説明しろ!!

 そんな女の子こそ、」

 

 

 

「説明が長―――――――い!!

 30分の内もう、6分使ってますけど、大丈夫なんですかぁ?」

 

 

 

 と、最後の一人こと、リナが自分の説明をさえぎって声を上げた。

「えー、いいじゃーん、『性格以外100点満点美少女』のリナソレーネ・アシュワースちゃーん!」

「はいはい、ダイアナ・ジェライト・サオリンさん。

 どうせ私ぃ、腹の中に茶渋ため込んでますし~?」

「フルネーム禁止!! DJサオリンで通ってるんだから!!」

「ダイアナって名前が一番似合わない顔ですしねー」

「一言多いー!」

 このやり取りだけで、学校中の人間が笑っていた。

「お嬢さんたち!

 そろそろ話を進めてはどうだろうか?」

 と、レキの一言に、おっとと、とDJサオリンは話を戻す。

「そうだよね、さすが誰かより性格いいね~♪ 今度デートしようってのはおいておいて、

 で、リナちゃん、今日の紅茶はー?」

「言い方だけでダメ出しして追い出してやりたいですけど、そうしたら掲示板であることないこと書かれそうですし、

 とは、いう物の、

 しかし、実はまだ出せないんですよ」

 はいー?という落胆の声を上げる相手に、案外素直に申し訳なさそうな顔をするリナ。

「実は、茶葉が到着していないんですよ。

 お湯はこの通り最適で、水も軟水の質のいいやつはそろえたんですけれどもね」

「なんでだよ~! 一番重要な物を、」

 それは、と言おうとした瞬間、この場の人間すべての頭上に、巨大な影が落ちる。

『!?』

 全員が、真上を見上げる。

 そこには、丸みを帯びつつも空力を考えたような『頭』があった。

 その頭を、長い首が支えていた。

 

 

 

『みなさぁぁぁぁぁん!!

 遅れちゃいましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

 

 そして、搭載スピーカーから響く声。

 その場全員が、その声を聴いた瞬間、意味は同じ別の言葉を発し始める。

 

 

 

「会長!?」「え?会長!?」「部長……!」「イオナ様!?」「生徒会長!!」「イオナ会長!?」

 そして、最後の一人が叫ぶ。

「イオナさぁぁぁぁぁん!!! お待ちしてましたぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 リナの言葉に、そのビガザウロがコックピットのキャノピーを開き、中から一人のかわいらしい女生徒が現れる。

 

 

 

「必要書類はすべて終えてきました!! 明日の編成も全部全部!!

 今日は存分に、ティータイムです!! 夕方までお出かけもできちゃいます!!」

 俗に、ドヤ顔と言われる顔を見せる彼女、

 

 

 

 そう、この学園の生徒会長こと、『イオナ』その人だった。

 

 

 

         ***

 

「さてまぁ、ラジオもなんだか半分切っちゃってるけど……

 ベタ塗にベタに聞こうか、この紅茶は何かな!?」

 と、マイクを片手に、そう尋ねるDJサオリン。

「その説明、『地球の紅茶市場掌握者』こと英国の血を引く私が説明しますか!?」

「そ、それとも!『中央大陸の紅茶は制覇した』こと、私が言いますか!?!」

 と、謎のポーズと共に、リナと若干顔の赤いイオナが我こそは、と声を上げる。

「二人ともぉ~、今これがライブ映像だったら、と思える程キマってるよぉ~?」

 対し、DJサオリンは笑いをこらえきれない。

 というより、周りも微笑ましい、や可愛い、という視線を送っていた。

「あうあうあうあうあうあうあうあう!?!?!」

「イオナさん、言っておきますけど、打ち合わせ無しで合わせてきたのはあなたですからね~?」

「リナちゃん酷いです!! ここは合わせるべきだって感じだったじゃないですか、もう!!」

 すかさず、こういう時まず最初に弄る人種ことリナがいじり、イオナがポカポカとぐるぐる腕を回す攻撃と共に真っ赤になって反論する。

 ちなみに、このやり取りからわかるだろうが、

 二人は、仲がいい。図書室で会ったらしい。

「言ってないものはやらなくてもいいのですよ?」

「そういう事言っちゃいますかぁ!?

 生徒会長にも言っちゃうんですかぁ!?!」

「生徒会長だろうと何だろうと、弄ってかわいい子には言うでしょう?」

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!」

「もうやめて……ッ! 二人とも、校内今きっと、も、萌え死に、多発……会長、止めて、リナちゃん煽んないでぇ……っ!!」

 心なしか、校舎が騒がしい。きっと気のせいではない。

 

 

 

 このイオナ。生徒会長に決まるだけあってまぁ、能力は高い。

 それはおいておいて、

 彼女は、校内かわいいランキングで堂々の第1位に輝く少女だった。

 見た目だけではない。

 基本的に、小さなドジが多い。

 運んでいた山のような書類を、誰かとぶつかってばらまくは序の口、

 生徒会長の言葉の最後、礼をしてマイクにぶつけるは、皆の記憶に新しい。

 登校で急ぎ過ぎて、頭にナイトキャップをかぶったまま気づかなかった、はなんと今朝で12回目。

 そして、そう言った部分を弄る場合の表情が……これで校内でファンクラブができたともいわれる。

 ああ、生徒会長。

 彼女こそ、たぶん

 

 

 ミューズ学園のマスコット。

 

 

 

「むぅ~~~~~~…………!」

「じゃ、会長であり我らがこの部の部長でもあるので、どうぞどうぞ♪」

「……これで機嫌治すわけじゃないですからね~……もう…!」

 コホン、とそこで咳払いし、イオナは顔を引き締める。

「では改めて、本日の紅茶を」

 そして、事前に適切な温度で茶葉を蒸らし、淹れたばかりの紅茶を冷たい氷のグラスで一気に冷やす。

「今日は、『フライハイト』。

 西方大陸でのフレーバーティーの代表的な物です♪」

 そして、ことりとアイスティーを差し出す。

「ありがとう~……スンスン、いい匂い……じゃあまずはいただきまーす……」

 とりあえず、といった様子で、淵に口をつけ、スス~と一気に、

「あの、紅茶を一気に飲むのは、ちょっとはしたないですよ?」

「ん……え、それは」

 と、顔に笑みは浮かべている物の、どこか迫力のある声音を出すイオナに、手を止めるDJサオリン。

「はしたないですわね」「……やめた方がいいな……」「まぁまぁ、初心者なのだから」「はぁ……委員長……」「まぁ、これも起こりうることか」

 口々に言うセリフに、一瞬針の筵のようなものを感じる。

「う……なんかごめん……」

「初心者だから今回はいいですよ?

 初犯は見逃すものじゃないですか~♪」

「それ次は無しってことじゃん、リナちゃぁん……」

 彼女の気持ちももっともだが、

 

 

 

 ここにいる人間は、割と紅茶のマナーにうるさいところがあるので仕方がない。

 

 

 

「じゃ、真面目に味のリポートに戻りまーす」

「次は一気になんてできないように氷大目にしときますね」

「会長が一番怖いよ!?

 じゃなくって、リポートだよ、リポート!」

 さて、と強引に話を進める。

「……これ、なんだか懐かしいというか……アレ、あれ何だっけ……

 果物の匂い……なんだっけ、すごく懐かしい香り……」

「よかったですよぉ、舌だけはマトモで♪」

「一言多いぞー! 校内美女ランキング上位なのにそれ以上上がれないやつー!」

「別にそこそこの顔だと思われればいいですし」

「負け惜しみじゃないのが悔しい…じゃなくって!」

 と、顔をリナから生徒会長に向ける。

「先生、お願いします!」

「はい♪

 この「フライハイト」は、『レオマスター伝説の英雄』バン・フライハイトの苗字から取られた、彼の愛した果物「パパオ」の皮に、香りに癖の少ない「ニューダジール茶葉」と組み合わせてできた、独特の香りに定評のある紅茶なのです」

 先生、と言われてちょっとうれしいのか、ほわほわと上機嫌な様子で話すイオナ。

 しかし、説明がわかりやすい。

「あー! パパオだ~!!

 アレ最近食べてないな~、美味しいよね~? 匂いもこ」

「「か・お・り、

 もパパオその物でしょう?」」

 ずい、とリナとイオナの二人が、笑みを浮かべたまま物凄い迫力で言葉を修正する。

「か、香り、ね、う、うん、いい香り……」

「でしょう~?

 いい香りでしょう? 英雄の愛した果物の香りでしょう?」

「こんなにいい香りなのに……スカンクモドキを表現するような言い方はふつうしませんよ……ね?」

 今、自分の中のロックオンアラートが物凄い音を成り立たる。

 バーニングビックバンでもくらう寸前。

 そんな途方もない緊張と絶望が押し寄せるDJサオリンに、二人はジェノブレイカー・ジェットやミラージュフォックスも真っ青の連携で攻めてくる。

「……ごめん……ちゃんと言葉は選ぶ、選びます……!!」

「「……よろしい」」

 なんで紅茶でここまで追い詰められるんだ……そう思うしかできないDJサオリン。

 

「……まったく、無作法な人ですわ……」

「あの二人はまだ、温厚に怒ってくれるはずなんだけど……」

「我々紅茶研究部の中でも、まだ大人しい方だからな」

「これが、私達だったら多分……」

「……なぁに、跡形もなくせば証拠は残らん」

 なお、残りの人員がもっと物騒なことをつぶやいていた。

 

「うぅ、なんだこれ……最後の最後で、『戦場! D組はエナジードリンク漬けなのか!?』回より怖いじゃないか……

 あ、あ、やった、放送、放送の終わりの時間だぁぁ……!!」

 と、戦々恐々の顔で腕時計を見るDJサオリンは、いそいそと変える準備を始める。

「じゃあ、みんな、今日も付き合ってくれてありがとう!!

 紅茶研究部は怖いけど紅茶はうまいよ!! 顔出してみればなんかもらえるかもね!!」

「……サオリンさん、スコーンどうぞ」

「ありがとう、顔怖いけど優しい君!! ちょっと惚れかけたぜ!!

 じゃあ、みんな、お先に失礼~~~~!!!」

 ぴゅーん、とユウジからスコーンだけ受け取って全速力で逃げるように消える。

 そんな後姿を見て、紅茶研究部は仕方ないような笑みを浮かべる。

「ふぅ……やっちゃいましたね~、部員を増やそうと思ったのに!」

「いやでも、アシュワースさん……きっと、ここマニアックだし、来ないんじゃ……」

「おーう、それは禁句でお願いしますよ~、もう何回も思う事なんですから~」

 と、ユウジの至極ごもっともな意見に、リナはむくれ顔で答える。

 気のせいか、表情の乏しく怖い顔のユウジの表情が柔らかくなったかのようなこともあったが、そこはおいておいて。

「まぁ、このメンツでも一応活動できますからいいでしょ」

「わたくしはもちろん!! 英国の流れをくむものとして!」

「…………俺、アシュワースさんについていきます……」

「私も紅茶は好きだ」

「同じく」

「息抜きにはちょうどいい」

 ポンポン、とテンポのいい返事を聞き、一通り満足する。

「それに、部長さんにとてもいいお方がいますしねぇ~?」

 その上で、リナはすぐ横にいるイオナにそう言葉をかける。

「え?

 そんなぁ~♪ わ、私なんて……」

「まさか、あの生徒会長共がこんな道楽じみた部活を承認してくれるばかりか、自分で所属してしまうとは。驚きではあるかな」

 と、レキの言葉に、えへへ、と笑みをこぼす。

 まんざらでもない表情だが、茶葉の用意の良さ、部費の管理やらなにやらに気が回り、それを生徒会長の役職の合間にできるイオナは、実際有能だった。

「まぁまぁ、そんなに褒めてもイオナさんが可愛くなるだけですし、その辺で」

「もう、始めたのはリナちゃんじゃないですかぁ~!」

 と、お互いに仲良く小突きあうリナとイオナ。

 仲がいいというか……波長でも合うのだろうか?

「……ところで、そろそろ明日の準備にD組が校庭を改造する時間だ。

 グラウンドがどう改装されるかは、会長も直前まで知ってはいけない。

 ここは、グラウンドが見える位置だから……そろそろ移動しなくてはいけないのではないか?」

 と、ヒルダの言う通り、ここから見える平野部にあるグラウンドから土煙が上がり始める。

「おっと…!

 じゃあ、みなさん早いですがここまでにしましょう!

 撤収です!!」

 はい、と皆が片づけを始める。

 さすがに優雅なティータイムとはいくまい。

 

 

 

「……リナちゃん、ところで」

「はい?」

「この後、時間はありますか?」

 と、そこで、

 イオナは、リナをある誘いをした。

         ***

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