ミューズ森林地帯、学校の見える一角。
『―――SPコマンドより、SP3。
護衛対象の移動を確認したか?コピー?』
そこには、何もいなかった。
『コピーザットSPコマンド。
こちらの護衛対象は、ビガザウロ搭乗後同校友人のゾイドへ送る模様。
その後の予定は不明。コピー?』
いくら、森林地帯と言えど、大型ゾイドが通れるほど大きく広く育った木の生い茂る場所だ。
舗装路もあるために、誰が見てもそこには何もいない。
『コピーSP3。
SPコマンドよりSP各機、これより、SP3からの情報を元に護衛対象に追従する。
コピー?』
『『『コピーザット!!』』』
しかし、何かいる。
極めて小さい音だが、何かが歩く音が聞こえる。
だが……だれも、その存在を知らない。
***
ミューズ学園ゾイド用格納スペース、その『E組』と書かれた一角にて、
「……丸聞こえだなぁ……私がテロリストだったら大変ですよ?」
誰にともなく、狭いコックピットの中、オラージュがつぶやく。
彼女のいるここ、つまりこのゾイドのコックピットは、ひどく狭かった。
狭いのだが、目の前のコンソールと計器以外が外の様子を映すほぼ周囲モニターとなっており、狭さを忘れてしまいそうになる。
この技術を地球ではコフィン(棺)システムというらしい。言いえて妙だ。
ともかく、そんな強烈なコックピットの中、通信機がとらえた暗号通信を解読し、そのまま再生したものを彼女は聞いていた。
「ふ~む……やっぱり、「あの軍」の電子機器の弱さは泣き所だよなぁ……
妨害電波とか索敵は一級品なのに、通信の暗号化が下手だよなぁ……
電子戦は、帝国ゾイドが今じゃ一級品だよね?」
ぴ、ぴ、と電子機器を弄り、『光学迷彩な上に赤外線・レーダー波処理装甲で見えない相手』への愚痴をこぼす。
と、その視界にふと、大きな赤いハサミが見えた。
「……あら、君もそう思うのかしら?」
そのハサミの主にそう問うと、ハサミがカチカチとならされる。
彼女の乗るゾイドは、見た物に強烈な印象を与える姿だった。
丸い。
丸いとしか言えない、平べったいゾイドコアのような、いやこれはガンスナイパーWWの後ろの円盤というか、
そう、まるでレーダードーム。派手で真っ赤なレーダードームだ。
そこに、足が数本後ろから生え、丸い胴体の下に、車輪の付いた車体があり、正面には実は高性能センサーな大きなクリアカラーのお目めが存在感を見せ、両脇には中にガトリング砲をもつハサミがある。
お分かりいただけただろうか?
カニである。カニ型ゾイドなのだ。
このカニ型ゾイド、地球では食えば死ぬといわれた自然濃縮毒のデパート『スベスベマンジュウガニ』の野生体を元にした、帝国製SSゾイド。
その名を、「EZ‐061 キラードーム」という。
「まぁ、電子戦ゾイドだものね~?
キラードーム君は頭がいいものね? 誇りという言葉をわかるくらいには」
この言葉に、そのレーダードームそのものの胴体をくるくる回すキラードーム。
喜んでいるようだ。
と、そんなキラードームが突然その顔を左に向け、ある一角を見る。
「ん?」
そこから、ガコン、ガコン、と、言う足音と共に、ビガザウロが歩いてくる。
「会長さん、こんなところでまた会うだなんて奇遇ですね?」
と、オラージュはすぐに通信を入れる。
『あ、オラージュさん!! そして『ご神体様』も!』
「キラードーム教徒でしたか、会長さんは」
『可愛いフォルムですしね~、キラードーム君』
クゥ、と鳴きながら、首をキラードームへ向けるビガザウロに、大きくハサミを上げて横に右往左往するキラードーム。
食われるとでも思って威嚇しているのだろうか? ビガザウロは口がない上に、草食だが。
そんな様子にも、二つのゾイドの主はアハハ、と笑う。
ズシィィン、とやたら重い足音が来たのはこの時だった。
『―――ふいー、ようやく追いつきましたよ~』
「あら、リナさん……あらら?」
と、通信機からは、同じ紅茶部の友人ことリナの声がした。
しかし、ゴジュラスに匹敵する足音をリナのライガーゼロが……と疑問に思い見れば、ああ成程と納得できる姿をしていた。
背中に背負うは、巨大な大砲。
2問の砲―――レールガンとビームの2種を同時に撃つことから『ハイブリットキャノン』と称される砲を支える胴体は、所狭しと、四角く分厚い緑色の装甲を持つ。
装甲の中にちりばめられた、ミサイルハッチらしき意匠、その数の多さだけで一瞬あっけにとられる。
顔の両脇、センサーや放熱板に混ざり見える、やはりミサイル。
これがライガーと呼べるのか?
まるで足の生えた弾薬庫。
その名を、ライガーゼロ・パンツァー。
実に共和国らしい、詰め込み武装っぷりを見せるCAS換装状態だ。
『重いんですよねぇ、この競技用『黒プリン』CAS!!
材料代ケチってんじゃないですよぉ、もう…!!』
愚痴をこぼしつつ、どしん、と動くライガーゼロのクロムウェルとリナ。
クロムウェルの足の可動部分、キャップと呼ばれる丸い部分から、すでに軽く蒸気が出ている。
「黒プリン…?」
『地球に、パンツァーの元、いやなんていうか……ともかく!
戦車、っていう兵器があって…!!
私の、故郷の奴に、黒くて重くて、遅くて硬くて火力がある!!
『ブラックプリンス』っていう戦車が!!』
そこまで説明して、クロムウェルがもう駄目と言わんばかりに腹ばいになる。
『うおっ!?
……ああ、重すぎ……と言いますか、外も暑いのにここもめちゃくちゃ熱いじゃないですかぁ~……!』
しゅぅぅぅ、と足の駆動部から、見てわかる程危ない雰囲気の水蒸気が出る。
『リナちゃーん、無理して競技用パンツァー着る必要もないんじゃ……』
『わかってます、わかってますとも!!
でも、今日は慣れのために着て帰ります!』
と、リナの言葉に、二人は気づく。
「……リナさん、もしや……『アレ』、お買いになるおつもりで?」
『ちょっとお高めでしょうけどね~、『お買い物の日』はテスト後1週間ちょいです。
制動距離も基礎構造もほぼ同じ。
なら、着といて慣れておくべきです』
という言葉足らずな説明に、通信機越しに理解する二人。
そういうつもりなら……
『でも、リナちゃん?』
『はい?』
『今日、気温36度だって』
『………『N組航空隊チーム』気象観測班情報?』
『『ふかひれ君チーム』の気象予報は当たるよ?』
『その妙に美味しそうな名前何とかなりませんか?じゃなくって、なら8割7分でまぁ、そうなるって感じじゃないですか……』
うわぁ、と悲痛な悲鳴を上げる。リナも、クロムウェルも。
そして、つい苦笑を浮かべるオラージュ。
『これから湖の対岸の美味しいステーキハウス『BIGザウルス!!』に行くんだよ?
大丈夫?』
『言っても40キロは巡航出せますよ、黒プリンなクロムウェルでも!』
『リナちゃんは耐えられるの?』
『そっちは精神論マシマシでも、無理ですよ!!』
なぜでもという接続詞を使ったのか。まぁ、それはいいとしよう。
「お二人とも、ランチをご一緒に?
私もいいですかしら?」
オラージュは、ここまでの会話でわかった二人のここからの予定に興味を持ち、そう提案する。
『おぉ! ちょうどよかったです♪
一緒に行きましょう!! リナちゃん、今日は思いっきり精神論を使っちゃいましょう!!』
『ちえー、まぁ頑張りますよ~。
あーあー、なんでレオマスターじみたことを私が』
「『ゼロ乗れるだけでもう、レオマスターじゃないですか!』」
はははは、と笑いあい、さてとパンツァーが立ち上がる。
『いきましょうか~!! ほらほら、クロムウェル!! とりあえず今日へばってたら、明日はもっときついですよ~?』
『がんばれー、クロムウェルくーん!!』
「さてさて、なかなか珍道中なメンツですね?」
先頭の歩幅に合わせ歩くビガザウロの後ろから、ゆっくりついていき始めるキラードーム。
ふと、そのレーダーに、何もいない場所の機影を捉える。
『こちらSP3。対象の移動を確認! 追尾する! コピー?』
『コピーザットSP3。逃がすなよ?』
「逃げませんよ」
静かに、通信は開かずに、オラージュはこの『謎の相手』に答えた。
***
遥かなる上空を、サラマンダーが飛ぶ。
眼下の大地では、24ゾイドやワークトータス、ワーカーゴドス達が、アリのように学校の近くの開けた大地を改造していく。
そして、反対側の湖、そして周りの木々に囲まれたゾイド用の道には……
***
ガシン、ガシン、と、ビガザウロ、ライガーゼロ・パンツァー、キラードームの順に移動していく。
その中に、なんとも気の抜けた、ウクレレ調なBGMが、通信機越しに流れる。
「「「わたっしは~♪ 荒野の~♪ 運び屋さ~ん♪」」」
突然、3人はきれいに声を合わせ、気の抜けた歌詞を口ずさみ始める。
「「「おもっしろいこっと♪ なーにっかー♪ 無いかなー♪」」」
その歌と共に、少々ライガーゼロ―――クロムウェルの足が悲鳴を上げる中、それなりの速度で進み続ける。
「「「わたっしは~♪ 荒野の~♪ 運び屋さ~ん♪」」」
もうすぐ、湖も半分を超える。
目的地も見えてくるあたりだった。
「「「おもっしろいこと~、なーにっか~♪ 探そうかな~♪」」」
そこでも歌はやめずに、ひたすら歩を進める。
この歌、かつて惑星Zi上にいたとされる「伝説の運び屋」が、危ない場所から辺鄙な場所まで制覇しつつ広めた歌らしい。
らしいというのは、歌詞が適当な部分があり、各地で伝わってる歌が微妙に違う事と、その謎の『伝説の運び屋』の存在自体、伝説以外聞かないためだ。
「「「私は~♪ 荒野の~♪ 運び屋さ~ん♪」」」
そんな歌を歌いながら、3体は目的地のステーキハウス『BIGザウルス!!』に到着する。
***
「いらっしゃい!!
お、なんだお嬢ちゃんまた来たのか……って、お連れさんも随分美人ぞろいじゃねぇか!!
うれしいねぇ、花があってよぉ!! よっしゃ、全品10%引きにしてやるよ!!!」
禿げ上がった頭、筋肉質な体と黒い肌という姿の威勢のいい声と笑顔に歓迎され、3人は湖の見えるテーブルに案内される。
「いつもごめんなさいです」
「むしろいつもありがとうよ!!
お嬢ちゃんはいつものでいいか、お二人さんは? おっとゆっくり決めるかい!?」
と、リナとオラージュに言う店主に、二人は苦笑してしまう。
「うーん、みんなちょっと量が多いかなぁ………
あ、私1ポンドコロコロステーキセットで!! ソースは東方大陸風で!!」
「美味しそうですけど、あんまり食べちゃいけないかな……
1ポンドコンボ、リブとハンバーグ、ソースはネギ塩とデミグラスで」
「あいよ!! ライスは1ポンドまで無料だがどうする!?」
「「1ポンドで!!」」
「よっしゃ、わかった!!」
オーダー入るぞー、と去っていく店主を見ながら、ふと二人は向き合う。
「「食べますねぇ、随分?」」
お互い、可笑しくなって笑ってしまった。
「ふふふ………いや実はもう、黒プリンな競技用パンツァーの操縦でだいぶ体力持っていかれましてねぇ……朝も割と簡素でしたし」
「私は実は朝ごはん抜いちゃっていまして……」
「二人ともちゃんと食べなきゃだめですよ?
私は朝ごはんは、スパゲッティとベーコンエッグでした!」
「「それは食べ過ぎでしょう!」」
はははは、と3人は笑いあう。
「……それで、会長?」
ふと、待ち時間もそこそこに、リナがそう声をかける。
「はい、では、
そろそろ本題に入りましょうか」
そう、二人は、イオナに呼ばれてここまで来たのだ。
「イオナさん、なぜ私達をここへ?」
と、尋ねると、イオナは視線を窓へ……湖へ、つまりはその先の学校の方向へ向ける。
「……いま、学校の方では、残ってる方たちにはメルヴィン副会長の元、全校へ向けて明日の『春の終わり砲火後作戦』に向けて、紅白の発表がされています」
あ、と二人はすぐさまゾイドギアを取り出す。
共通規格という名の昔から変わらない姿の、しかし中身はもっと使い勝手のいいこの端末の、
立体映像に触れソーシャルネットワークサービスのアプリを起動する。
学校のアカウントから、すでに学校を離れた人間へ向けての緊急メッセージが届いている。
一応、昨日のうちに彼女から「直に発表もするがどうしても早く帰る場合はSNS経由で知らせる」とは言っていた気がする。
「……不真面目な人間にはキツイことをしてくれますねぇ、委員長」
「いや、真面目に見せかけて、これは見事に、こちらの組を罠にはめたようですね」
「ええ、メルちゃんはあれで結構頭が回りますしね。
昨日の内に赤と白の組分けが完了した内に、生徒会内に知らされるや否や、自軍用のグループをSNSで作成、『我が軍は学校へ居残り、直ちに作戦会議を』と号令を出したのでしょう」
「普段の指揮やら作戦立案は私にお任せしておいて、こういうことするからあの委員長は委員長できるんですよねぇ。ただの真面目ならだれもついていきはしませんし」
「ふふ♪ でも、真面目だから、会議中のこっそりお菓子は駄目なんですって」
「それは、もう校則違反では?
なんて言ってしまうと、私も休み時間にお菓子を食べることができなくなりますね?」
確かに、と笑みをこぼす。
そして、これらの情報の意味を、答える。
「……成程、この3人は同じ組ですか」
「ええ。
私も先に知る立場となったので、行動を開始したんです」
静かに、まるで「ゴキブリが出たからすぐに逃げました」かのようなニュアンスで語るイオナ。
しかし、内容はその比ではない。
「なるほど、通りで」
と、オラージュはそういうとおもむろに、ゾイドギアに何かの機器を取り付け、ボタンを押す。
パチン、と感電したような音が近くから響き、何かが落ちる。
3人がふと見るとそこには、小さなクワガタムシが――――いや、クワガタムシ型ゾイド「ダブルソーダ」に酷似したものが、ぴくぴくと動いていた。
「『ブルーデビル』…!
盗聴、いや盗撮されてたってところですか……!」
「きっとE組の敵の誰かですね。あらあら、私も同じ組だというのに、気づかないと思っていたのでしょうか?」
ぴ、ともう一度同じボタンを押し、今度は少し離れたテーブルに堕ちたのか、きゃあ、と悲鳴が上がる。
「……念のため、が効いたみたいです。
これ、バッテリーを消費するのであまり使いたくないのですけれどもね」
と、ゾイドギアの画面右端のバッテリーゲージが赤いラインに達するのを見て、オラージュは謎の機械を外す。
「つかぬことを聞きますけど、それは?」
「自動追尾型指向性ジャミングウェーブ発生装置ですよ♪」
「うへぇ……!?!
……E組って、やっぱり我々C組とは相性悪そうです。N組とは別方向で、戦いたくない」
「でしょう?
まぁ、我々は『きわめて弱い』ゾイドが多いですし、まともに戦うととても誰にも勝てませんが」
「E組がまともに戦うという状況を詳しく問いただしたいです」
ふふふふ、と3人は笑う。
意味が分かると、相当穏やかではない内容だったが………
「……さて、じゃあもう盗聴の心配はないでしょう。
リナさん、そしてオラージュさんにはまず編成表を見てもらいます。
それで、一緒に作戦を考えましょう!」
イオナの言葉に、二人は静かにうなずく。
それで、と言って、イオナは明日の編成表を広げる。
―――今日はここも混んでいるせいか、それとも時間がかかる物のせいか、まぁ、大まかな概要を考える時間の間に、注文の品はこなかった。
「―――やはりここは、ルール上問題はないですし、明朝の奇襲が第1段階ではベストでしょうねぇ」
「明日は、相手方に隙を与えたくないので、リナさんはクロムウェルをいつもの高速形態でお願いしますね?
場合によってはイェーガーCASで高速部隊を率いてもらいます」
「了解♪」
「私が前線でスカウターもしなきゃいけないですね……うわ、E組のえげつない方々がだいぶ赤組に……」
「『アカ』は抹殺しないと、民主主義の白としては♪」
「「ふふふふ……♪」」
と、そんな会話をしている横に、
「ふ~、いやまったく酷い暑さよね~」
「そうッスね~、テストやってらんないッスもんね~!」
「ペッパー氏、その様子では捨てるでござるね、今日は~」
何やら騒がしい一団がやってくる。
いつの間にか隣が開いてたのか……などと思ううちに、見ない制服の女子高生3人が座る。
はしたないと言える粗暴な座り方だ………
「……どこでしたっけアレ?」
「この先のレッドコロニーの『公立アレキサンドル高等学校』の制服ですよ。
若干オツムが残念ですが、全学生ゾイドバトルランキングだけ上位中堅の」
「ああ……いた気がしますね……そんなの」
ひそひそひそ、と聞こえない声でしゃべる3人に、その集まりの中心にいたツインテールの女生徒がこちらを見る。
「あれ? あんたたち何処高?」
「うお!?! クロエ氏!! アレレアキャラですよ!!
ミューズ森林学園の制服でござる!!」
と、度の強そうな眼鏡に長い髪をわざわざ三つ編みにしている『いかにも』な生徒が答える。
「ミューズ、って学校あったっけ? ニューリバのDガルド高校じゃないんスか?」
「ペッパー氏ぃ、そりゃ知るはずないですよぉ!
3年に一回しか生徒募集をしていない、いまいち実体のわからない高校でござるよ~?」
これが、ネットなら、草でも生やしそうな声だ。
「なんじゃそりゃ!? 学校としてやっていけんスか~!?」
髪の短い快活そうな女性とも、まぁ、軽い言動なのは見て取れる。
関わりたくない。
3人とも一瞬でアイコンタクトで語る。
「二人とも、こちらのミューズ何とかの方々ビビってるわよ~? その辺にしといたら~?」
「しかし、レアでござる~! 写真、写真を1枚いいでござろうか!?」
「……あの、見世物ではないので困ります……」
と、ゾイドギアのカメラ機能を使おうとする相手に、そう言葉で制するイオナ。
「え!? ダメ!? なぜ!?」
「いいじゃないのよ、地味で目立たないあんたらの写真の一つや二つぐら」
「自分が有名になりたいからと言って他の人間も有名になりたいわけじゃないんだって、
気づくだけの脳みそがあなた達にはありますか?」
そして、イオナは、その3人にそう辛辣な言葉を困ったような顔で紡ぐ。
「ほら、そういう浅はかな考えじゃ、後々、もっと酷い目に」
「はぁ!?! バカにしてんの!?!」
「え、はい」
と、激高したツインテールの少女に、「なんで気づかないんだろう」と言いたげな言葉を返すイオナ。
そして、ふとハッとなる。
「あ…!?
おっと……ですよね、気づきませんよね。ええ……自分を顧みない人だっていますし、こんな大きな大陸の中ですし」
「んなっ……!?!」
わーお、と表情のこわばる相手を見て、後ろのリナたちは面白そうに様子を見ている。
「でも、今日気づいていただきたいんです!
あなた達は馬鹿です。プライバシーの侵害や侮辱を自分もしていいと思いあがってしまっているんです。
でも、世の中には礼儀は必要なんです。とくに初対面の人間に、そんな場所あったかどうかだの、レアだから写真撮ろうだのはしていけないんです。
今日あなた達に教えてあげられるような人がいてよかったですね!
明日から治していきましょう♪」
その言葉の途中から、プルプルと怒りに震えた相手は、とうとう最後の言葉で、きっとイオナをにらむ。
「喧嘩売ってんのね!?! 売ってるのよねぇ!?!」
「え? わ、私はただ、その気の短いところを直した方がいいですよ、とか、
決めつけるにしては知識も知恵も足りないと言ってるだけで……」
「その喧嘩買ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!
表出なさいよぉ!? ゾイド乗ってるんでしょ!? 勝負よ、勝負!!!」
とうとう、噴火するかのような剣幕で、イオナを指さしてそう声を荒げる。
―――一瞬、イオナが笑う。
「ああ、はい……仕方ないですねぇ……」
だが、直後やれやれと言った表情でそう、弱弱しい言葉を紡いだ。
絶対嘘だ。
「喧嘩…!?」
「ゾイドで喧嘩するってよ…!」
「おい、誰か賭けねぇか!?」
と、周りもなんだか騒がしくなり、
「待てェェェェェェェェェェェい!!!」
と、あの威勢のいい店主が出てくる。
「話は大体聞かせてもらったぜ、お嬢ちゃん方!!
よっしゃ!! ちょうど店の前の砂浜が広いからよ、存分にやってくんなぁ!!
ここの所暇だったからなぁ、ちょうどいい!!
オラどうした、客共ぉ!? どっちに賭けるか決めねぇかぁ!!!」
おぉぉぉ、とその場の客もなんだかヒートアップする。
「……どうします?」
ふと、オラージュがリナにそう尋ねる。
「……肩慣らしにはいいんじゃないですか?」
「いえ……多分、『勝負になりません』よ?」
ああ、とその言葉を理解するリナ。
「だいじょーぶ、大丈夫♪
その時は素直に軽い運動してステーキ食べて帰ったってだけですよ。
明日に影響もないでしょうし」
「ああ、それもそうですね!」
にひひ、と笑うリナに、優雅にほほ笑むオラージュ。
「あんたら負けたら、全裸土下座でステーキおごりなさいよ!?」
「じゃあ、こちらがもしも勝ったら、ちょっとしたお願い事とステーキをお願いします」
そうして、些細なことから始まった、喧嘩の時間が幕を開ける。
***