「と、取り合えずみんないいかしら!?
一応、皆でクラスの委員を決めておきましょう!」
と、ガタッ、と立ちあがり、見た目通りの事をあのメルヴィンが言いはじめる。
「あー、そう言えば」「決めといた方がいいよなぁ……」
なんて気のない返事を言いつつ、全員が立ち上がる。
「はーい、メルヴィンさーん! とりあえずあなたが委員長でいいですかー?」
「いきなりね! というか、そんなに私を委員長にしたいのかしらぁ!?」
と、余りにも典型的なツッコミをくらい、余計にこれほど委員長にさせたい人間はいないな、と思うリナ。性格が悪い。
「それに、仮にも一応は西方大陸、それも民主国家ヘリック共和国領の出身よ!
私は皆が認めない限り、そういうトップになる気はないわ!」
まるで、伝説のヘリック共和国大統領、ヘリック・ムーロア2世が守護霊にいるかのような言葉だった。
「だそうですよー?」
そんなわけで、全員はどうぞどうぞと一糸乱れず委員長の座を彼女に明け渡した。
「ちょ、あなた達考えないの!?」
「考えない、というよりは考えられる人が誰かという事を見据えての判断でしょうねー。
という訳で、『委員長』! 次の指示をお願いします!」
お願いします、と言う言葉が、メルヴィンを委員長にクラス全員が仕立てあげた事を今、示した。
「……うぅ、また委員長になってしまったわ……」
「仕方ないですねー、仕方ないですねー、キャラ的にー。
まぁ、安心してくださいよー、私副委員長に立候補しますし」
え、と意外そうな顔をするメルヴィン。
「……な、なんでまた……」
「えー、だって副官ポジション、ってよくないですかぁ?
なんかこう、頭がよく見えると言うかぁ?」
「そんな理由!?」
「まぁまぁ、ちゃんとお仕事しますからー、クラスに配るプリント持っていくのさぼったりするほど不真面目じゃありませんよぉ?」
「……何か釈然としないわ……あ、でも」
ガシリ、と突然リナの肩に手を置くメルヴィン。
「あら、そう言う趣味ですか?」
「違うわよ!
いい、あなたはどうも頭が回るようだし、正直言って、今後の授業でも多分戦力になるのは確実よ。
こき使うからそのつもりでいてほしいわね。それだけよ」
その顔は、予想以上に真剣そのものだった。
「……どうこき使うつもりで?」
「そりゃ色々ね。こんな学園に入るぐらいだもの、あなたもゾイド乗りとして名をはせたいとは思っているだろうし、腕を磨きたいでしょう?」
「うわ……メルヴィンさん、ひょっとして案外体育会系?」
否定も肯定もしないが、視線はリナから離さないようだ。
「もう一度言うけど、3年間こき使ってやるわよ。覚悟しなさい」
「あははは……」
ひょっとして、面倒な役回りをもらったのでは、と思うリナだった。
***
「さて、全員良く聞きなさい!
いい、もしも自分がやりたい係がある人間は、今から2分間だけ発言を許可するわ。
それ以降は私がすべての人事を決めるわ! 異論は認めない!!」
と、いう言葉と共に、クラスの係分けが始まる。
「さぁはじめ! 発言権はそれ以降認めないわよ!!」
案外、メルヴィンはすごいテキパキと人事を決めて行った。
「良し、後の意見は無いわね!
ここからはすべて私の独断で決めるわ!」
と、程よく強行的、的確に人の意見を聴いてのクラスの役割分担を決め、なんとチャイムが鳴る10分前にすべてを片付けていた。
「では、解散!
……ふぅ、疲れたわ、本当……」
***
さて、昼休みとなった。
「リナ殿! 図書室に一緒に行きませんか!?
初期骨ゾイドちゃんたちの本がここにはあるそうですよ!」
「おぉ~、良いですね~!
行きましょう!」
突然のオティーリエの言葉に、すぐにリナは紅茶とサンドイッチの手を止めて答えた。
「でも、一応はその前にランチだけ済ませてもいいですかぁ?」
「あ、これは失敬!
どうせですし、一緒にいいですかね?」
「いいですよー」
では、と言って、すぐに自分の席から弁当の包みらしきものを持ってくるオティーリエ。
「隣の方、席は借りてもよろしいでありますか?」
「あー、いいよいいよ。僕もちょうどここの学食に行こうと思っていたところだから」
と、そこにいたごく普通のなんか優しそうな男子生徒に断って席を駆り、隣のリナの席とドッキングする。
「やっぱりメシはどの時代も憩いの場! 腹が減っては戦が出来ぬ、と東方大陸の友人も言っているでありますし」
「ですねー♪ ところで、オティーリエさんは、どんなお弁当を?」
と、それに答えるように包みを開け、その中から金属製らしい銀光りする弁当を開ける。
そこにあるのは、じゃがバター2個、でかいソーセージ2本、分厚いスパム、ホウレンソウのバター炒め。
「うわ、戦時中並に質素!!
そして、意外と高カロリーな~……太りそう~…!」
「フッフッフ……あむ……ごくん。
これでも、ちゃんと運動しているので、ぶくぶく肥ることはないのでありますよ」
一口スパムを食べ、キリッとした顔で笑うオティーリエ。
「へぇ~……フフフ、本当にそうですかぁ…?」
「ん?」
次の瞬間、リナはオティーリエの胸を両手で正面からもんでいた。
いや、女の子らしい指でつかみきれない程大きい……ではなく、
「おっ、これはまたこの食事に似合うだけの」
どうでもいいが、ここに残っていた弁当勢の男子がガタッ、と立ちあがった。
「おうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!
り~、リリリリリリリ、リナ殿ぉ!?!」
あわてて胸を押さえて離れるが、すでに感触をリナは完全にとらえきっていた。
「感触、手で触れた面積、ついでに言えば言葉通りの細身の骨格を見越しても、
これは、88のEとみましたっ!
いやはや、エレファンダー級の大きさですねぇ~」
「なんでそれをぉぉぉ!?
じゃなくて、なんてことするのでありますかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
あはは、と笑って謝りながら、リナは何とかオティーリエをなだめようとする。
どうでもいいが、教室内弁当勢男子は、我が生涯にいっぺんの悔いなし、と言わんばかりに勝ち誇ったポーズをとっていた。
「むむむむ、じゃあ、リナ殿はどんな大きさなんでありますか!?
大声で言ってほしいのであります!!」
と、わざわざ指を指してまで大声で叫ぶオティーリエ。
予想を超える大胆な発言に少しだけ「やりすぎちゃいました」と舌を出しながら苦笑するリナに対し、
弁当勢の男子たちは、鋭い、まるで凶暴な野良ゾイドのような、野獣の眼光を放つ。
「まぁ、しいて言うのであればぁ?」
と、言ってリナはわざと胸の下で腕を交差させる。
制服の上からでもかなり自己主張が強いのはわかりきっていたが、そうやって胸を強調されると、かなり大きいことがわかる。
他が細身な物だからこそ、よりその大きさが強調されている、二つのふくらみ。
「―――――ゴジュラス級、ですかねぇ?」
その言葉がウソ偽りないのは、
少なくとも完全勝利したポーズのまま涙を流すこの場の男子たちが、保証するだろう。
「―――ところで後ろの方たちぃ♪
後で私のクロムウェルちゃんのレーザーバイトの的にされたいですかぁ?」
と、その笑顔の圧力で男子たちは一気に顔色を青く変え、ぶんぶんと高速で苦い表情の顔を横に振る。
フッフッフ、と笑うリナに引き下がり、男子たちは無言で涙を浮かべて食事に戻った。
「……これで、文句はないですよね?」
「リナ殿、恐ろしい人であります」
まぁ、それはともかく、と言ってリナもサンドイッチを再び食べ始める。
「まずは食べてからと言う事で。
あ、どうせですしぃ、こっちのニルギリ茶葉のストレートティー、差し上げます?」
「あ、アレ? 水筒2本目?」
「嫌ですねぇ、イギリス系移民なんですよ、私?
紅茶が無かったら私の先祖は確実に干からびて死んでいるに決まっているじゃないですかぁ」
と、言って、プラスチック製のコップを二つ取り出して、片方に湯気とすっきりとした香りの立ち込める赤色の液体を注ぎ込んでいく。
「まぁ、じゃあ一杯……おぉ、心が安らぐようなすっきりとした味が…!」
「あ、よかった~。普通、ドイツ系地球移民の方って、結構そう言うのに疎い人が多いですし~」
「まぁ、真面目一辺倒の堅物が多いのは認めるでありますよ~、自分も人の事言えないであります」
と、言って大きなじゃがバターの塊をフォークで刺したオティーリエは、それを一口で食べる。
「まぁ、ただ。
そう言うのであれば、イギリス系移民みたいに料理の味がまぁ、食べられるほうが良かったかもしれないでありますが?」
「ちょっとぉ、それ酷くないですかぁ?」
と、むくれるリナを尻目に、パリッ、とソーセージを噛んで咀嚼するオティーリエ。
「さっきの仕返しでありますよー、だ。
自分だって子供みたいにムキになるぐらい精神面できていないであります」
スパムはイギリス料理ですからね、と言っているのを尻目に、スパムと芋を突き刺して両方いっぺんに食べるオティーリエ。
「ん~、惑星Ziの料理もいいでありますが、やっぱり先祖伝来の、地球産の料理の方がいいでありますなぁ~」
「もぉ、良い性格していますよ!」
「そ、それはお互い様では…?」
ははは、と笑って食べている内に、二人は全部食べ終わった。
「じゃ、行きましょうか」
「了解(コピー)」
そうして二人は、気が付けば謎の友情が生まれた先程の男子たちの横を通り、教室を出る。
そうして向かった図書室で、
……まさか、あんなことが起こってようとは。