ガンダムビルドダイバーズ ブレイヴガールフラグメント   作:守次 奏

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フリトレでブライダルとときんを手に入れたので初投稿です。


第五十九話「Sフィールド、閃光の果てに」

 アヤノたちが強引に侵入を試みたSフィールドは、ジオン軍チームの本拠地であるということも手伝って、まだまだ味方側の戦力との比率には大きな偏りがあった。

 だが、それは比率だけを見ればの話であり、アヤノたちが打ち破ったWフィールドの綻びを通って到達したフォースもあれば、真っ当に、Eフィールドの乱戦を勝ち抜いて押し通ったフォースもあるということだ。

 要するに、蠱毒の壺と化したEフィールドを突破してここに辿り着いたダイバーは、それ相応の猛者であるということに他ならない。

 

『GNディバインブラスター、マルチロック、セット』

『キョウヤ様の行く手を阻むなら、このユーロペが絶望を教えよう……』

 

 リスキル不意打ち裏切り、文字通りになんでもありな無制限のフリーバトルが解禁されたディメンション、「ハードコアディメンション・ヴァルガ」において、その遭遇が絶対の死を意味するような強敵──フィールズ・オン・エネミーの渾名を戴くダイバー、「キョウスケ」がその言葉を呟くと、操る機体、【ディバインダブルオークアンタ】が構える槍状の武装、GNロンゴミニアドの先端にソードビットが纏わり付く。

 さながらドライツバークのようなバレルを形成することで放たれたその一撃は、雷鳴や閃光という言葉ですらも生ぬるく、数の利を活かして襲い掛かろうとしたジオン軍チームのダイバーたちを、将棋倒しのごとく薙ぎ払っていく。

 バレルとしての収束と、中継点における拡散の二つの役割をソードビットに担わせることで、さながら拡散波動砲のように威力を保ったままセパレートするGNディバインブラスターの威力にアヤノは舌を巻きながらも、露払いを彼がやってくれるのならとばかりに、一直線に「ドロス」への到達を目指して機体を加速させた。

 キョウスケが敵のダイバーを薙ぎ払ったのなら、その隣でCファンネルを巧みに操り、流れ弾を防ぎながら、「Sフィールドに侵入した敵機の迎撃に当たる」と宣言したNPDジオングの首をギリギリとねじ切ろうとしているのがユーロペだった。

 個人ランキング120位。14位のキョウスケと比較して順位こそ開きはあるものの、依然ユーロペがGBNの中でも指折りの強者であるという事実に変わりはなく、その物静かそうで楚々とした外見に反して、相手の首を容赦なく締め上げてねじ切りにかかるアグレッシブな姿勢が、彼女の本質を表しているといってもいいだろう。

 

「すごい! 水着コンテストの時の人だよね? あんなに強かったんだ!」

「……ええ、そうね。私も何が何やらって感じだけど」

 

 ともかく、数的不利を覆せるような存在と、Sフィールドにおいて最大の障害となりうるであろうNPDのジオングを足止めしてくれる存在がいるのなら、「ビルドフラグメンツ」としては心配することなど何もない。

 すれ違いざまに、攻撃を仕掛けてきたゲルググJを一刀両断すると、アヤノはあくまでも「ドロワ」をターゲットスコープに合わせて覗き込み、ユーナたちと同様に進撃を続けていく。

 

「メグ、ジャマーのリキャストはどう?」

「んー、ちょっち間に合わないかな、でも大丈夫! こんな時のためのパーフェクトパックだかんね! 行くよカグヤ!」

「はい! 背中はお願いいたします、メグ!」

 

 鉄風雷火が吹き荒ぶ戦場こそが自分の居場所だとばかりに目を輝かせたカグヤは「無銘朧月」を鞘から抜き放つと、大物に対しての特効火力となりうるアヤノとユーナを先行させるために、「ドロス」周辺に陣取っていた相手チームのガンプラを、瞬く間になます斬りへと処す。

 無慈悲に告げられる刑死の一撃に、反応できたダイバーはまだ幸運だったといってもいいだろう。

 上半身と下半身が泣き別れをしたことで初めて撃墜されたことを認識したザクF2型を操るダイバーは目を白黒させたまま、断末魔も上げずにテクスチャの塵へと還り、返す刀で振るわれたカグヤの剣風は、背後からの奇襲を試みていたガンダム試作2号機の盾を真っ二つに斬り裂いていた。

 

『な……ッ、サイサリスのシールドだぞ、なんでこんな……!?』

「申し訳ありません、斬れるものは斬れるので……全て斬って、押し通らせていただきます!」

 

 勇ましく宣言するカグヤはその言葉通りに、盾を失って動揺したガンダム試作2号機を縦に真っ二つに斬り裂いて、次なる獲物を求める飢えた獣のように、貪欲に己へと群がってくるジオン軍チームのガンプラを全て、一刀の元に斬り伏せる。

 その背中を狙う狙撃手に対してはメグがパーフェクトパックによる火力で牽制を行い、アヤノとユーナは二人が作り上げた道を駆け抜けていくかのように、「ドロス」へと肉薄していく。

 

『クソッ、どうなってるんだ!?』

『Wフィールドの防衛ラインが抜かれた! ジオングはユーロペに足止めされてるし、ドロワにはよくわからん奴らが接近してる!』

『よくわかんないってなんだよ、情報は正確に──!』

 

 意図した形ではないとはいえ、ある種電撃戦のような奇襲を仕掛ける形となったアヤノたちの奮戦は、ジオン側チームを困惑させるのには十分すぎる材料だった。

 まずは「ドロス」の防衛を優先すべきだとするフォースと、そのまま放っておけば自軍の戦力を大きく削いでくるディバインダブルオークアンタの、キョウスケの対処を優先すべきだとするフォースとで意見が分かれて、さながらギレンの死によって指揮系統が混乱した原作におけるジオン軍のごとく、敵のチームは混乱に陥っていた。

 だが、それでも多くが「ドロス」の防衛に回ったというのは賢明な判断だったのだろう。

 いかに「ビルドフラグメンツ」の機体がパワーアップしているとはいえ、それでもアヤノたちの実力はキョウスケやユーロペのように突き抜けているわけではない。

 押し寄せてくるダイバーたちをアヤノはバタフライ・バスターBによって、そしてユーナは強化されたその拳で打ち砕いていくが、破竹の勢いを保っていた侵攻速度は徐々に低下して、前線に集まった敵機の処理を余儀なくされているのが現状だ。

 そして、それを観測していたキョウスケにも、旗色が悪くなってきたことはよくわかっていた。

 かなりの数の敵機を減らすことには成功したものの、生憎ここはジオン軍チームの本丸だ。

 その全てを消し飛ばすとなると相応に時間がかかる。

 ──ならば、どうすべきか。

 幸いにもこの戦いはPvP形式とはいえレイドバトルだ。

 自分一人で全てを何とかしなくてもいいという辺り、普段やっている完全ソロでの攻略よりは幾分か楽であることに違いはない。

 

『ユーロペ、だったな』

『ええ、わたくしはユーロペ、キョウヤ様に愛を捧ぐ者……して、「ヴァルガの主人」がいかなる御用なのでしょう?』

『僕はそんなに大層なものでもないよ。それはともかく、ジオングを任せてくれないか』

『と、申しますと?』

『「ドロス」は彼女たちに譲る。僕はそのための露払いだ』

『……なるほど、そういうことですか。ならば、承知いたしました』

 

 この時点で敵の本丸に最も接近しているのは「ビルドフラグメンツ」で、彼女たちの実力は自分たちにこそ及ばないとはいえ、非常に高い水準を保っている。

 ならば、「ドロス」の攻略は彼女たちに一任して、自分たちはその脅威を根こそぎ取り除いた方が効果的だと、つまるところ、キョウスケの主張はそういうものだった。

 淡々と告げる彼に対して、ユーロペもまた自らの役割を果たす機械であるかのように、ジオングへとCファンネルを叩き込むと、キョウスケとスイッチする形で、愛機である【ガンダムAGE-2プレアデス】を、ドロス方面へと急行させる。

 

『ええい、更にやるようになったな、ガンダム!』

「悪いが、お喋りをしている余裕はない」

 

 紋切り型の台詞を言い放つNPDに対して無情に宣告を下すと、キョウスケは手にしていたGNロンゴミニアドを分離させ、二振りの剣として、オールレンジ攻撃の嵐を掻い潜りながら、ジオングへと斬りかかっていく。

 その手際は鮮やかという言葉ですら足りるものではない。

 元々ソロでのレイドバトル攻略を生業としていることも手伝って、個人ランキング第14位というその輝かしい戦績が示す、アクティブユーザー二千万の頂点近くに立つその実力を見せつけるかのように、キョウスケはジオングからの全ての攻撃を回避し、有線である都合上オールレンジ攻撃が使えないクロスレンジに肉薄すると、瞬く間にソードビットと斬撃の連携でジオングを解体する。

 その時間は、ユーロペによる攻撃でダメージが蓄積していたことも手伝って、およそ一分と数十秒といった風情だった。

 

『ええい、冗談ではない!』

『ジオングが落とされたぞ、どうするんだ!?』

『誰でもいいからFOEさんを止めろ!』

『できるかバカ! そんなことよりドロスを守るんだよ!』

 

 脱出したジオングヘッドは原作通りにア・バオア・クー内部へと撤退していくが、残されたジオン側のダイバーたちは堪ったものじゃないとばかりに頭を抱え、次はお前だとばかりに「ドロス」をそのターゲットに定めたのか、道中の敵をソードビットで斬り刻みながら進撃する白亜のダブルオークアンタを、親の仇のように睨みつける。

 だが、それしかできないのもまた事実だった。

 本丸であるSフィールドに配属された実力派フォースであったとしても、個人でレイドバトルのリアルタイムアタックを始めるような暴威の化身に抗う術など持ち合わせていない。

 突き進むディバインダブルオークアンタを阻止しようと、懸命にその進路へとサザビーやケンプファーが立ちはだかるが、その全てが数秒にも満たない間にテクスチャの塵へと還されて、台風の目のように、キョウスケを中心とした周囲には空白地帯ができあがっていた。

 しかしそれは、あくまでもキョウスケにとっての作戦でしかない。

 冷静なダイバーたちは本丸であるドロスの防衛を優先しているものの、混乱に浮き足立ったダイバーたちはキョウスケに気を取られて、「ビルドフラグメンツ」が既にドロスへと肉薄していることが頭から抜け落ちてしまっている。

 アヤノは、この状況を好機と見た。

 自分たちを数の暴力で圧殺しようとしていたジオン軍チームの狙いがキョウスケと、そして新たにエントリーしたユーロペへと向いたことによって、相対的に自分たちを狙う敵の数は少なくなっている。

 ならば、仕掛けるのであれば今しかない。

 

「カグヤ、メグ、背後は任せたわ。私とユーナはドロスを落とすわ!」

「了解いたしました! 御武運を、アヤノさん、ユーナさん!」

「オッケー、それじゃあ背中は任せて安心ってね!」

 

 アヤノが発した号令に従う形で、背中合わせになったカグヤとメグは、ドロスの防衛に残った残存戦力を一手に引き受ける。

 

「ユーナ、行くわよ!」

「はい、アヤノさん!」

 

 そして敵の包囲網に綻びが生じたのならば、Wフィールドの時と同じように、クロスボーンガンダムXQとアリスバーニングガンダムブルームのトランザムと、バーニングバースト・フルブルームでそれを無理やりこじ開けることは容易いはずだ。

 アヤノがトランザムを起動するのと同時に、ユーナもまた愛機の必殺技を解放して、その全身から炎を揺らめかせて、包囲網の穴を掻い潜りながらドロスへと肉薄していく。

 

『飛び出したのがいるぞ!』

『速いぞォ!?』

『つっても、迎撃なんてどうやって──!?』

「余所見をする時間があるとは、随分と余裕ですね」

 

 赤熱化し、光の翼を拡げて飛び立つクロスボーンガンダムXQと、纏った炎を翼のようにして羽ばたくアリスバーニングブルームの比翼連理を見届けたジオン軍チームのダイバーたちは、その影を踏もうと追撃に移ろうとした。

 だが、その隙を突くかのように、ユーロペのガンダムAGE-2プレアデスが、ガナーザクウォーリアの首を締め上げて強引にねじ切ると、コックピットへと容赦のない貫手を叩き込んで撃墜する。

 温厚そうなダイバールックに見合わず、バイオレンス一色な彼女のファイトスタイルにある者は恐れ慄き、ある者はアヤノたちの追撃を諦めざるを得なくなり、捨て鉢になってユーロペの首を獲るべく襲い掛かっていく。

 しかし、それが焼け石に水であることは他でもないジオン軍チームのダイバーたちが何よりもよくわかっていた。

 乱戦が続いているEフィールドの均衡も崩れ、防衛ラインを下げてSフィールドまで後退してきた集団を追い込むように、その陣頭で暴れ続けていた「リビルドガールズ」や「BUILD DIVERS」が、とうとう本丸に侵入してきたのだ。

 この戦いの趨勢はほとんど決したといってもいいだろう。

 別々の陣営に配属されたことで、個人的な喧嘩に勤しんでいるタイガーウルフとシャフリヤールの姿を一瞥すると、とうとう「AVALON」に押し切られて、Sフィールドへと後退していたロンメルは自嘲するようにふっ、と小さく笑った。

 

『全く……やってくれたよ、「ビルドフラグメンツ」』

 

 ロンメルが苦々しく呟いたその名を冠するフォースがいるのは、Sフィールドの最前線にして自軍の最終防衛線。

 光の翼を拡げ、すれ違い様に防衛に回ったガンプラのコックピットを胴薙ぎに斬り裂くアヤノと、そして炎を纏った拳で真正面から相対したダイバーを打ち砕くユーナの勇姿を一瞥して、溜息をつく。

 最早誰にも「ビルドフラグメンツ」の進撃は止められなかった。

 加速に伴うGのフィードバックに歯を食いしばりながらも、とうとう弾幕砲火を掻い潜ってドロスの元に到達したアヤノは、両手に保持していたバタフライ・バスターBをブーメランのように投擲すると、腰のマウントラッチに接続していた「クジャク」を構える。

 

「やるわよ、ユーナ!」

「はい、アヤノさん! いくよ、アリスバーニングブルーム!」

 

 そして、全てのエネルギーをブラスターモードの先端に収束させて巨大なビームサーベルを作り上げると、アヤノはそのライザーソードに匹敵する一撃を、ドロスの巨体へと叩き込んだ。

 それを見届けたユーナは全身に纏わせた炎を更に勢い良く噴き出させると、自分自身を一つの弾丸として、瀕死となったドロスを撃ち貫くべく、思い切りブーストを噴かして機体を加速させていく。

 

「応えて、アリスバーニングブルーム! おおおおおっ! 全力、炎、パーンチっ!!!」

 

 ユーナの言葉に応えるかのように燃え盛るアリスバーニングブルームの姿は、ガンプラというより、最早不死鳥のようで、その威容にあるダイバーは圧倒され、あるダイバーは絶望に迎撃を取りやめる。

 切り裂かれ、燃やし尽くされたドロスは炎の中に沈んでゆき、それはとりも直さずジオン軍チームにおける事実上の敗北を意味していた。

 ドロスが落ち、EフィールドもWフィールドも陥落した今、真の本丸にして最後の砦であるア・バオア・クーが落ちるのも、最早時間の問題でしかない。

 ──ああ、終わった。

 誰が先にその諦めを口にしたのかはわからない。

 だが、それはたちまちジオン軍チームに所属するダイバーたちに伝播して、地の底まで落ち込んでいた士気は底をぶち抜いて深く、深く、どこまでも沈み込んでいく。

 

『EX……カリバァァァァッ!』

『トランザムブーストモード、クロススクエア……! GNディバインブラスター、シングルロック、セット!』

 

 Sフィールドに集った猛者たちが、チャンプとキョウスケの必殺技を嚆矢として、次々にア・バオア・クーへと各々の必殺技を放つ。

 その傍らでアヤノに叩き斬られ、ユーナに貫かれたドロスが炎の花を咲かせて爆ぜる。

 全てが炎の中に沈み込んでいく中で、ドロスが解けてテクスチャの塵に還っていくのを背後に、アヤノは機体そのものを弾丸として巨大な敵を打ち抜いたユーナを労うかのように、アリスバーニングブルームをそっと抱きとめた。

 

「お手柄ね、ユーナ」

「ありがとう、アヤノさん! でも、メグさんが、カグヤさんが……何よりアヤノさんがいてくれたからだよ!」

「……そうね。ありがとう。私も……貴女がいてくれたから、頑張れたわ」

 

 真正面から褒められるのは、相変わらずなんだかむず痒い感じがして慣れなくとも、ユーナから向けられたその好意をも抱き締めるようにアヤノは目を伏せると、微かに頬を赤らめながら、ユーナの言葉に答えを返す。

 

【Raid Battle Ended!】

【Winner:Team-EFSF!】

 

 そして無機質な機械音声がアヤノたちの、連邦軍チームの勝利を告げるのと同時に、ユーナとアヤノもまた、小さく拳を固め、喜びもあらわに、再び互いの視線を交わして微笑み合うのだった。




決着、シーズンレイド
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