ソードアート・オンライン プログレッシブ 四人の進道 作:壊緑茶
まさかの転校することになりました。
今回はちょっと長めです。
どうぞ。
「らあああっ!」
今俺達はまさに絶体絶命だ。
まさかこのクエストがここまで強化、難易度の上昇が施されているとは思わなかった。MPも殆ど残っていない。比較的簡単なクエストだったβ時代の経験で、ポーションは最低限しか所持していなく、HPは後9割、第一HPポーションは後1本。第一MPポーションは無し。MPの自然回復は遅すぎて話にならない。第十層で、エクストラスキル、《無窮の技巧者》という、MP自然回復をブーストさせるものがあるのだが。無いものねだりをしても今はどうしようもない。
「ナギナ!これ以上は無理だ!こいつら一体が限界だ!・・撤退は?」
「分かってる、でももう囲まれているよ!隙間を通り抜けようとすると突進でぺちゃんこに潰れるよ!」
小ボス級モンスターが六体。全てイノシシのデカいバージョンだ。一体の強さはレベル5と俺達より高い。だがHP、攻撃力共に低く一体なら二人でぎりぎり倒せる。しかし数が多すぎる。このクエストの真意を考えたいところだが、そんな余裕はない。
「覚悟して一体ずつ倒すよ。別イノシシの攻撃は全部避けて」
「オッケーナギナ。おまえこそ弾こうとするなよ」
その言葉を待っていた俺は的確に触手を弾くナギナの昨日の姿を浮かべ、そう言った。
「勿論」
彼もその気はなく、俺達は合図を出し合い、戦う。攻撃は防御ではなく、ステップで避ける。
NPC、タイカは怖いからという理由で、畑から西にある山の途中、平たくなっている処で俺達を待っている。俺達はその山の丁度峠でイノシシに遭遇した。直径一キロとまたまた結構大きな山で《ファルベカ》と農地、山を合わせれば南北1キロ、東西1.5キロはある。
実際、このクエストのみだったら広くて暇、飽きるが、ファルベカにはβの時から十種類以上の豊富でそれなりに時間の掛かるクエストがある。尤も、正式verではクエストも増えているが。
イノシシはどす黒い茶色で、鑓が身体に突き刺さり、片目を失っている。しかし全ての個体がそうとは限らなく、それぞれ体色が微妙に異なっていたり、体に刻まれている剣跡が深かったり、浅かったり、方向が九十度傾いていたりする。
凄いな。一つ一つのモンスターをデザインするのは大変だろうに。
とにかく、戦いながら誰かを守るというのは、非常に難しく、多くの集中を注ぐ必要がある。だから待っている。という設定は有難い。
もうかれこれ30分は避けては剣を入れて、避けては入れてを繰り返した。相手も雑魚モンスターではないため、圧倒的な集中を延々と続ける。
しかし、昨夜も秘薬クエで二時間近く没頭していたから、ずっとは無理だった。警戒が散漫したとき俺は遂に相手からの直接攻撃を食らってしまう。
ここ30分間体同士が擦れることはあったが、HPは減らなかった。でもこれでポーションを飲まざるをえない。最後の鈍い味を脳に送る第一HPポーションを口に含み、HPが1ドットずつ回復するのを確認した。
そして、とあるウインドウ操作をした。
先程の攻撃、イノシシのただの突進かと思ったら途中で中断し、噛みついてきた。横に移動し避けようと試みたが、腰に軽く噛みつかれ、HPバーが2割近くも減った。もしガブっといっていたら、3割は無くなるだろう。
標高200メートルの山。俺はその頂上付近にいる。気が生い茂る山中を抜け、木が同心円状に林立する峠の核心、茶イノシシに向かって斬撃を入れた。
ナギナは斜め前で茶イノシシの攻撃を避けた。頭突きと言ったところだ。彼は次に来る踏付けの技後硬直を狙い、あえて立ち止まる。当たる直前にイノシシの横に回り、盛大に空振りしたイノシシにソードスキル《バーチカル》をお見舞いした。
重低音と共に、ライトエフェクトを迸らせ腹に傷跡・・攻撃判定による赤い裂け目がイノシシにできる。その瞬間キーンというソードスキル特有の超高音を一帯に響かせた。直ぐにナギナは俺に
「今のクリティカル!一割減った!」
と言う。こっちのイノシシに追われている俺は返事をナイス!とだけ返し、同時に迫る二つのイノシシに備えた。
ナギナはソードスキルの技後硬直から抜け出し、ぎりぎり・・・次の別イノシシの攻撃を避けれなかった。
俺は視界左上に有る「Nagina」と記されたHPバーを眺め、黄緑色のヘルスポイントが大体十分の一減ったことを認める。
俺がイノシシらに備えてから一秒が経った。
ン゙ヒー!
ン゙ヒー!
途端、突進。高さ1.7メートルほどの巨体がどんどん大きくなる。
二体に続いて、遠くに走って行った俺が抱えている三体目も戻ってきた。アイツも十秒後には対応しなければならないな。
はっ!
問題なく躱し、俺は時間の許す限り少しでも多くの剣を与えた。
SAOは限りなく現実世界に寄せてある。モンスターは基本的に現実世界にいる動物なので行動が似ていて、例えば今戦っているイノシシもその一つだ。具体的に説明すると、ひたすら永遠に攻撃はしてこなく、興奮している素振り、いちいち地面に鼻先を付けたり、威嚇したり、あっちやこっちを振り向いたりする。
そのおかげで後々ポップする人間型モンスターよりも簡単だ。彼らは剣を使うし、回避も上手い。又、無駄な動きが無いのだ。
だからこの30分間なんとか生存できている。
三体目のイノシシはゆっくり接近して、俺の周りを歩き、様子を窺っている。俺から見て横腹を見せるどす黒い茶イノシシの腹には赤みがかかった縦線が刻まれていた。剣の跡だ。俺が予想するに、
『NPCタイカが会ったのはこいつらの子供に相当する。村で痺れを切らした村長か誰かがイノシシの退治計画を立てて村で剣が使える人全員でここに来たのだ。最初はタイカが会ったちびイノシシだと思ったのだが、結局は子供で親分が居た。已むを得なく戦った、が撤退した』
という感じだ。
こんな伏線はβでは無かったから正式サービスで追加されたのだろう。奴の傷もβでは無かったしな。
三体目イノシシが周囲を回りながら俺を窺い始めて早三秒が経過する。決心したのか茶イノシシはまたまたゆっくり接近し、距離は一メートルまで縮まった。さすがに全長2.2メートル、体高1.7メートルあるだけあって、それなりの迫力がある。
しかし、自分とほぼ同じ背丈のため許容範囲内だ。
体高二メートルを超すと恐れを感じるようになる。三メートル以上は怖い。うん、怖い。何度か五メートル級と戦った事があるが、それクラスになると基本的に味方と共闘することになるから大丈夫。裏を返せばそれ程のデカさとなると一人では無理だな。
俺は茶イノシシの頭上に表示されるHPバーを確認し、残り一割しかないことに驚いた。もうここまで減らしたのか、と。
足を後ろに引き、体勢を低くする。戦闘開始以来剣により力を掛けよりダメージが入るようにしていた。ただの斬撃が通常攻撃とするなら、通常猛撃?猛攻?と言える。
そのかひ有ってか三分前、熟練度がまさかの53に達したのだ。β時代、ここまで上がるのに丸一日(十時間)必要とした。謎の仕様、熟練度50から53までの間少しだけポイント獲得が難しくなるというのが実在する。憶測ではあるが茅場の誕生日だと思っている。・・・
これが氷解するのは半年後か、一年後か。
そんなわけでこの53には凄いソードスキルが眠っている。「眠っている」にある通り隠しスキルだ。初期ではβで死ぬまで熟練度を上げていたのだ。デスゲームとなった現在のSAOでは絶対に行ってはならない事になったが、とにかく100までは上昇に明け暮れていた。でもいかなる理由有ってか一時期効率が二分の一になりなぜだ?と色々調査した結果。
隠しスキルだったのだ。これに勘付いているのはβテストに選ばれた千人の中で数人しか存在しないと考えている。
50から53までたったの三つだからだ。大概の人は没頭しないだろうし、何度もメニューウインドウを開いていたらキリがない。しかし俺は1から100まで毎度毎度確認するために、大量にある設定欄の中の熟練度上昇時の通知をONにしていた。初期設定ではOFFにされているが、ステータス→スキル→熟練度を省く方法がないかと探し、ONにした。最終的に集中が途切れるからOFFにしたのだが。
そこで発見したのだ。50から53までの三つ、他より明らかに遅くなっていると。最初は50というクオーターポイントだから小難しくなったと考えたのだが、54以降は元に戻った。という理由だ。
暗中模索を続け、果てに
『ステータス→スキル→熟練度の熟練度欄にある小さなボタン、詳細表示で熟練度ログを可視化し数字が並んでいる中、53になったところを見つけ、タップし選択。
「何々が何々で何々に何ダメージを与え武器熟練度が1上昇した」と細かく明記されている。更にその端に有るこのログの「削除」の右隣のボタン、見たときは意味の分からない「獲得」をタップした。ウインドウの上方に小ウインドウが表示されソードスキル《ステリー・ソルヴィング・アイウス》を取得したと出る』
となった。
一応他の54や55などの確認もしたが「獲得」さえ無く、隠しスキルだと予測した。
以上である。
まとめると50から53の間熟練度上げが難しくなるのはヒントということになる。
三分前、丁度ポーションを飲むタイミングでこれを実行した。UIがほんの少しだけ修正され超絶見やすくなったウインドウを手早く操作し《ステリー・ソルヴィング・アイウス》を取得した。
今俺は、非常に細い糸で止められているような雰囲気のイノシシに剣を向けて、それを発動しようとしている。もう一度HPバーを視認し、直後、残りヘルスポイントが一割のイノシシと全く同時に攻撃を開始した。
このスキル、《ステリー・ソルヴィング・アイウス》は三連撃。三連撃が初めて取得できるのは熟練度125の《シャープネイル》だ。だから一層の時点で使えるというのは有利になる。無論、連撃数がソードスキルの全てではないが。
剣が少数派の色、緑に光る。最も最初は斬撃・・・ではなくそのスキルに応じた構えだ。全てに違う準備動作があり、適当に振っても何も起こらない。このステリ―・・長すぎるのでSSAスキルは剣を一定の位置・・・右手を上段に、剣先を真正面に向け左手を剣身の中央部につの字の形で囲うと発動する。
はっ!!
緑色に眩く《アニールブレード》は上段から剣を高く上げ、大きく助走をつける。
ソードスキルというのは、単純な動きが殆どだ。無しでも同じ動きはできる。でも、やはり速い剣速と与ダメージが圧倒的だ。もう一つ利点がある。ソードスキルが直撃すると相手にノックバックが与えられることだ。
神速の三連撃を食らわせ、茶イノシシ、《リーパーボア》(Reaper Boar)は、イノシシとしては長い生涯を終えた。
「・・・・」
顔が青白い。
ここまで疲労するのは初めてだった。あの後全ての茶イノシシ六体を倒し終えた後、タイカが居る所まで下った俺達は、クエストの報酬を貰おうとした。
『君達・・ありがとうございます。これはお礼です。受け取ってください』
タイカはそう言った。そして俺達はまんまと騙された。
それは謝礼ではなかったのだ・・・
彼は人間ではなく人間に化けた動物。日本の
「くっそっ!まだ終わらないのか・・・」
・・・このクエストを丸々片付けるのに三時間を要した。
本当のホントの伏線は、彼は怪我さえしていなく、たぬきが化けていただけである。たぬきが人間を陥れるために、超絶強いモンスターに戦わせる。これが真実だ。
幸い、クエストの報酬は俺達が求めていたもので、安堵する。突っ走ったおかげでレベル4だ。
———お遣いクエスト!!
あの後《ファルベカ》戻った俺達はお遣いをこなしていた。
もう疲労が蓄積し過ぎで、到底戦えないからである。
一通りファルベカのクエを掃除したら、ホルンカやはじまりの街に行って、軽くコル&経験値稼ぎをしようとナギナと合意した。
何か買ってきてだの、何かからドロップするアイテムを持ってきてだの、アイテム拾ってこいだの、特に頭を使う必要は無い。
俺達は現在最もレベルの高いプレイヤーなので、ここまでの初心者用クエは簡単に行えた。
ホルンカでは、グロトカゲを狩ってきてというのも有った。村の周りは弱湿地帯で植物系モンスターが多く、グロトカゲの身体は緑に染まりぬめぬめした皮、眼球の大きさが左右対称ではなく舌をしゃーと出して襲ってきたが気色悪いで済んだ。
依頼NPC
《はじまりの街》では、未だに黒い雰囲気が漂っていて未だに発狂するプレイヤーが居る。
ナギナは心配そうに、時には
実際のところ、俺が初心者を手助けしたことがないからなのだが。
ナギナは俺の説得に応じ、深く頷く。ただ、首肯した訳ではないようだった。
いつか、ナギナがものすごく強くなった時、彼らに手を差し伸べるだろう。
《はじまりの街》「商業区」。
ここでは武器強化屋、武器屋、武具修繕屋、防具屋、防具強化屋、部位に特化した武器屋、防具屋、ポーション系ショップ、ヘアカラー専門美容院(超高い)、アクセサリーショップ、パン屋、肉屋、八百屋、飲食店、万屋(素材屋)、鑑定屋、その他もろもろなどがそれぞれ数店舗ずつ出店している。
武器の種類は壊滅的に少なく、β時代ここで販売されているのは武器種につき二つ。一つ次の村に行けば三つ、ファルベカは四つ売られていた。
ざっと見たところここは変更なし。
この商業区への用はクエスト。
『ここで商売をしていた人が売り物の素材集めでフィールドに出かけていた。
ある日、街中でレアアイテムの噂が広まる。なんでも、市場価格は1億コルにもなるというものだ。
・・・残念ながらプレイヤーは売れない。
それははじまりの街のどこかの仕掛けを動かし、秘密基地のような場所で謎解きをする。最後の部屋に辿り着くと、室内には黄金に光る宝箱があるらしい。
百年前その探検家がそこを発見し、宝箱を開いた。探検家はその中に収められていた超レアアイテムを手にし、最終的に億万長者に転身した。
でも恐ろしく価値の高い物を買える人は存在しなくついにはここら一帯を統治している王が買い取ることになり、探検家は莫大なコルを手にする。しかし、何の理由か王はそれを手放し、探検家から聞いた元の場所に返した。
噂の
お目当ての物はお宝ではなくNPCが
俺も含めたβテスターは総勢で挑んだから真相は全部分かるけれど、ナギナがつまらない!と俺に訴えるのは理解しているので詳細な解き方は控える。
どのような経緯で探すことになったかはNPCが
「お!兄ちゃん、
一緒にお宝探し行こうよ」
・・・・珍しく(?)馴れ馴れしいのだ。
「いいですよ!お手伝いしましょう」
「お!メガネ兄ちゃんノリがいいね」
というように俺の前でクエストが開始された。
「まずはどこかにあるなんかの仕掛けを動かすことだ!」
分かりにくい日本語で喋るNPCは気分が良いみたい。
商業区を出て、数分。石畳が敷き詰められている地面はコツコツと音を立て俺達三人がいることを周りに知らせる。
他人が邪魔にならないようにするためか、雰囲気作りか一時的マップに転送されるのは有難い。プレイヤーの殆どがここに留まっているからだ。そんな所で悠々とクエストを進めている人がいたら何というか・・・複雑。
—————意味分からん。
無理難題に手こずるには当たり前といえば当たり前だ。
ボアクエの方も高難易度に設定されていたから同種クエのこちらも停滞するのは当たり前といえば当たり前だ。
当たり前・・・・
無理っ!!
結局ナギナも降参したらしく俺に助けを求めたのだが、「なんじゃこりゃー」の勢いだ。
仕組みの
南京錠で例えるならば、鍵式だったのが鍵+暗証番号を要求されるようになったような・・・
「キリトーこれ意味わかんない!」
同意。と小声言うと、
「いやいやいや、元βテスターって非テスター者にアドバイスをするためにいるんだよね?今朝から君、意地張ろうとしていたのに?」
ごもっともです。
と呟いておいて、俺は適当に逃れようと発する。
「い、いやー俺も昨日の秘薬クエ全部知っていてつまらなかったんだよなー。折角今朝のクエも変更を受けていたわけだし、楽しもうよ。ね、ナギナさん」
分かったよとナギナは返答し、身を翻して再度謎解き・・・パズルとにらめっこした。
俺は、この薄暗い空間の中、
錆びれた椅子をどかして机の下に目を向けたり、壁ぎっしりの棚を一つずつ注意深く見た。
三十分後。
「ふうー有った」
「遅い、キリト、僕は十分も前に終わらせていたんだからね」
じゃあなぜ俺を手伝わなかったのかというと、元々パズルは俺の担当だったからだ。
この地下の家、どれくらいの広さなんだろ・・・
究極的に、謎解きクエストは6時間かかった。辛い。鬼クエ。基本的にクエストは15分から30分。秘薬クエはレア武器だから一時間半ぐらいだった。比べ物にならない。
夕暮れ時。
もうソルスは朱色に変色し
はじまりの街の民家の地下からでてきた俺達はニカっと純白の歯を少し出して笑うNPCに例の品を渡された。
——《剣身の心》。
朝の《剣柄の魂》と一緒に強化すると、《
強化より進化の方が適当だが、システム上なぜか強化に位置していた。多分、単純なステータス強化ではなく、強化での+〇の効果が付くからだ。
《強靭なアニールブレード》は通常の《アニールブレード》から重さ+3と正確さ+1丈夫さ+2鋭さ+3だ。
・・・・
チートみたいな性能だ・・・
「さてナギナ、今日の目標ででっかいクエはもう終わらせた、他のクエストも全部片付けちゃお」
俺が話題を持ち出すように言う。
「うん、今朝言っていた通り、本当に安全なクエストしか受けていないようで僕は安心したよ」
「まあ、朝のあれは特別だったからな。あの様子だと明日からも無謀なことはできないよもんね。でもあのクエみたいに難易度が上がってても、それはβで得た知識があるからだし、知識さえなければただ高難易度クエストでしかない」
そうだよね、と同意するナギナ。
これからはβの知識は使いどころを考える必要があるだろう。
勿論、戦闘の経験ではβテスターの方が有利だが、俺達のようにどんどん突きって、最終的には変更された点に混乱するだろう。
一番の望みは、βテスターのような経験者がβ時代の知識で挑んで、死んでしまうことだ。
どうにかしなければならないのは分かっている。だがネットが存在しないSAOで、更にまだ序盤に分かってもらうのは不可能だろう。
俺達は、二日目にして最も腕の良いNPCの鍛冶屋に《強靭なアニールブレード》への強化を依頼した。午後九時の三分前である。
成功率は85%。少し心配だったためコルを余分に支払った。
確率を上げるためだ。
基本は素材を上乗せすることで向上する武器強化及び進化成功確率だが、この強化の場合コルを乗せるだけで良い。お値は張るが。
85%に10%追加され、95%になった。
ここで妥協しては、後々あの悪魔クエを受けなくてはならなくなるからしようがない。
Congratulations!!
黄色い文字にぼかされた白い枠線で表示された。
続いて、
Succeeded
と出る。
そのウインドウの右端に備えてある、強化後即時ステータス確認ボタンを押す。
やっぱりチート性能や・・・・
β時代から変更はなく、重さ+3正確さ+1丈夫さ+2鋭さ+3だ。
単純に考えて+9の武器だ。
ついでに普通の強化もお願いした。+2まで。
鋭さ、丈夫さにそれぞれ一つずつだ。
まだ殆どアイテムは持っていない二日目でも、ある程度のクエは終わらせたおかげでぎりぎり挑むことができる。
確率は悩むところではあるが、最初の+3までは案外普通に成功する。
それ以降は急激に不成功になりやすくなるので素材を上乗せしてやってもらわないといけないが。
これで実質的+11になる。一層の片手用直剣では最強だろう。迷宮区前の街に売っているものには初期ステータスが
このクエスト実のところ、βテスターで片手用直剣使いが皆挑戦するのだが、大抵は謎解きクエで諦めていた。今回はボアクエの方も強烈に強くなったから、これを手に入れるのはごく一部だと予想する。
それに、このクエストが明るみに出たのは二層の中盤だった。理由は《剣〇の〇》シリーズの使い道が分からなかったからだ。
更に、クエスト自体一部にしか知れ渡らなかった。これの理由はその頃には《強靭なアニールブレード》は劣れど、NPCショップで買える武器で十分だったからである。
「試し振りは明日にしよ」
とナギナが言ってきた。
今日は強靭なアニールブレードのために大分頭を使用した。もう休むべきである。
「うん。ここで寝泊まりしようか」
即時返し、質素な宿屋に身を寄せた。
誤字脱字報告宜しくお願い致します。