圧倒的台本回!
……圧倒的、中二病回……。
「ひぃっ! ご、ごめんなさいっ! 『近づいちゃいけない』なんて知らなかったんです!」
「……へえ、小耳に挟んだこともないって?」
「本当ですっ! だから、許し……!」
「一つ、冥土の土産に教えてあげる」
「アンタが妖怪で在り続ける限り、私はアンタを殺し続ける。例えアンタが何も罪を犯していなかったとしても、ね」
「ひっ! やっ、やめ───」
「貴女……誰? えっ……私?」
「そうだよー」
未だ困惑しているこいしに、ギッハはのほほんとそう返す。全ての者に向けてきた笑顔をこいしにも平等に向けていたが、ふと気になって萃香の方に振り返る。
見れば、勇儀が倒れた萃香の元に駆け寄っていた。額を軽く叩きながら、反応があるか確かめているようだ。
「あちゃー……ちょっとやりすぎちゃった感じかな。メイちゃーん、クラッカーまだ残ってるー?」
「残ってるよー! ……まったく、しょうがないんだから……」
ギッハの言葉に小さくため息を吐き、メイは懐からクラッカーを取り出して萃香の元へと歩き出す。パーティーグッズの一種である、青い円錐。
さとり達には驚きの表情が見られたが、おそらくクラッカーを知らないから驚いているということではないのだろう。現に、この幻想郷には既に『外』から流れ着いたクラッカーが人里を中心に広まりつつある。
だが、クラッカーとはパーティーなどで使うものであり、今の状況でクラッカーを使う意図が全く読めない。心を読んで探ってみようかと考えているうちに、メイは萃香の元までたどり着いた。
「さて、じゃあいくよー」
掛け声と同時に、メイはクラッカーの紐を引っ張る。中からは勢いよく紙テープやら紙吹雪やらが飛び出し、そこら中に舞い散った。が、しかし。メイのクラッカーからは、何故か
そのことにメイとギッハ以外の全員が不思議そうな顔を見せたのも束の間、軽く頭を押さえながらではあるが萃香がむくりと起き上がった。目立った外傷も無く、すぐに立ち上がれるほどに回復している。
「なっ!? 萃香、大丈夫なのか!?」
「えっ? ……うん、どこも痛くないよ?」
「……ふう、こんなもんかな」
軽く手をはたき、メイは静かに萃香の元を去る。それを引き止めたのは、勇儀の声だった。
「……なあ、さっきのは何なんだ?」
「……ん?」
「店で飲んでた時はそんなに聞かなかったが……お前らは一体何者なんだ? 何が目的で幻想郷に来た?」
「うーんと……幻想郷の、探検?」
「とぼけるなよ。他にも何かあるんじゃないのかい?」
「って言われてもなぁ……だって私、ギッハちゃんに着いてきただけだし」
そう言い、責任を押し付けるかのようにギッハの方を向く。ギッハの方はというと、何が起こっているのかまるで分からないといった表情でメイを見つめていた。
何とも言えない気まずい空気の中、流れを変えようとフランドールことフランが口を開く。
「とりあえず、お話するならさ、もっと違うところにしない? 流石にここだと、ゆっくり話せないと思うし」
「そうだねー……じゃあ、幻想郷巡りは一旦お預けかな。
「えっ? えっと……全員入るかは分からないけど、応接間なら……」
「応接間ね、分かったー! というわけでみんな、
ギッハは右腕を振り回しながら呼びかけ、自身もさとりの元へ歩み寄る。萃香達も含め全員がさとりの周囲に集まった所で、ギッハは唐突にさとりのサードアイに触れた。目を瞑りながら、サードアイに触れ続けること約十秒。目を開き、ギッハは右手でフィンガースナップを繰り出す。
その瞬間、周囲の空間が一瞬で地霊殿の応接間へと遷移した。壁に立ち並ぶ本棚には心理学に関わる書籍がぎっしりと詰まっており、部屋の隅に飾られている観葉植物はよく手入れがされているのかみずみずしい輝きを放っている。
「えっ!? ここって……地霊殿よね? なんで? さっきまで外にいた筈なのに……」
「その説明もちゃんとするよー。ほら、座って座って」
まるで家人かのようにさとり達をソファに誘導し、自身はメイの隣を陣取る。二台のソファが横長のテーブルを囲むように置かれている応接間で、ギッハとメイと萃香、勇儀が横並びに座ってさとり、こいし、フランと対面する形になっている。こいし達にも軽く自己紹介を終えたギッハとメイは、説明する内容を考えながら話を始めた。
「さて……何から話せば良いのかな。まずは、裏想郷のことからかな?」
「それは私も気になっていたことですね。……でも、どちらかと言うとさっきの瞬間移動の方が知りたいです。あれは何なんですか?」
最初に質問を投げかけてきたのはさとりだった。顎を手でさすりながら、ギッハがソファに
「んーとね……まず、みんなって『何とかの程度の能力』っていうのを持ってるよね? 例えば、心を読む程度の能力だとか、無意識を操る程度の能力とか」
「私とこいしの能力……ですね」
「そうだね。実を言うと、私も持ってるんだ、その『無意識を操る程度の能力』っていうの。最初に
「いや……どういうことか全然分かんねえ。もっとちゃんと説明してくれ」
「あー……じゃあ先に『裏想郷』の説明の方から済ませちゃおうか。裏想郷っていうのはね、なんというか……こう、もう一つの幻想郷みたいな。そんな感じの場所で、名前とか色々違うけどここにいるみんな、『もう一人の自分』が裏想郷にいるんだよ」
「私も? 私や勇儀も、ギッハみたいな感じで裏想郷に『もう一人の私達』が居るの?」
「うん。萃香ちゃんは……多分、【
「物騒だなぁ…………因みに、もう一人のあたしはどんな感じなんだ?」
「勇儀はー、【
「すないぱー……? よく分からんが、結構違うってことなんだな?」
「そうだね……あ、だいぶ本題からズレちゃってるや。とにかく、裏想郷っていうもう一つの幻想郷があって、そこにはみんなとは違う『みんな』が居るわけなんだよね。で、ここに居るみんなと同じ能力を持ってるんだけど……それとは別に、『系数禁術』っていうのを使える子もいるんだよね。色々と強すぎて、使っちゃダメーってことで『禁術』って名前らしいよ」
「『系数禁術』……それが、瞬間移動の正体なの? それじゃあ、萃香さんと戦ってた時に使ってた『スキマ』は? あれは何なの?」
「それも『系数禁術』だよ。私の、ね。系数禁術は全部で……えーと、いくつあるんだっけ、メイちゃん?」
「66種類。その内、今確認されてるのが10か11」
「そうそう、66個。それぞれ全部違う能力らしくってね。で、私が使えるのが……
「……チートすぎやしません?」
「そういう
「いや大分違う気が……そうだ。そういえばさっきメイちゃん、音の鳴らないクラッカーを使って萃香さんを治してたよね? あれは?」
「ん? あぁ……あれは私の『系数禁術』だね。
「……ギッハちゃんにもう一つ質問。地霊殿と……新霊殿、だっけ? ギッハちゃんが住んでる所。あそこと造りが一緒だから分かったとかかも知れないけど……どうして、地霊殿の応接間がここだって分かったの?」
「あ〜……んとね、実は私、
何故かソファの上で正座をし、必死に自身のボキャブラリーから最適な言葉を探すギッハ。それと自身が抱えていた疑問に関係があると睨んだフランは、ずっと疑問だったことを口に出す。
「……あのさ。ずっと気になってたんだけど、さっきギッハちゃん……だっけ。その、ギッハちゃんがさとりさんのサードアイを触ってたじゃん? あれは何だったの?」
「あっ……それだ! 思い出した思い出した。『サイコメトリー』だ。私ね、その人が今何を考えているのかとかは分かんないけど……残留思念って言うのかな。物体に残った『思い』とかを読み取ることはできるんだ。それでサードアイを触って地霊殿に関する記憶を見せてもらって、ここを特定したってわけ」
「うーん……やっぱり、こいしちゃんとは色々違う……。……ねぇ、その『裏想郷』っていうところ、私も連れて行ってもらえない?」
「えっ、フランちゃん本気!?」
突然のフランの発言に、こいしは大きく表情を変える。……いや、こいしだけではない。この場にいる全員が驚愕していた。
驚きつつもフランに言葉を返したのは、メイだった。困ったような顔で、恐る恐るというように話す。
「……それは、やめといた方がいいと思う。フランちゃんがどれだけ強いのかは知らないけど……でも、萃香ちゃんは幻想郷の中だと結構強い方なんでしょ? その萃香ちゃんが一撃で駄目になるくらいだし、裏想郷に行けばきっと
…………私達の世界の、【
「異世界のこいしぃ!? いやでもっ、うーん……そう言われると納得できる……かな……」
地上。幻想郷の東の果てに位置する、博麗神社。【博麗の巫女】である博麗霊夢の元に、さとり・ギッハ・メイの3人が守矢神社の
結局、『人間や神以外はあまり裏想郷に行かない方が良い』というメイの言葉もあってフランが裏想郷へ行くという話は頓挫した。代わりに誰か人間を裏想郷に招待して、その話を聞かせるということで地霊殿での話は終了。そこで萃香達とも別れ、今は裏想郷の存在を『異変』として調査してもらえないかという体で神社に来ている。
その道中、どこから聞きつけたのか『幻想郷の他にも常識に囚われない世界があったんですね!!!』などと言いながら早苗が(勝手に)合流してきたため、どうせならということで裏想郷調査の話に一口乗ってもらい、今に至る。
「……で、何だっけ。『裏想郷』とかいうところの調査だったっけ? 私はまあ乗っても良いけど……【
「そこは大丈夫なんじゃないですか? 霊夢さんは強いから大丈夫だって信用されてると思いますし。何より、いざって時には私もいますからね! 私の奇跡にかかればどんな相手でも───」
「まあ私やメイちゃんもいるし、仮に何かあってもちゃんと守るから安心して良いよ〜」
「うーん、そんなにやばいとこなの……?」
「ちょっと霊夢さん! 私の話聞いてました? ねえ聞いてました!?」
「あーはいはい聞いてる聞いてる。いざって時には頼りにしてるから」
「返し適当すぎません!?」
一瞥することもなく棒読みで返す霊夢に半泣きで抱きつく早苗の姿は、幻想郷の住人が裏想郷にやってくることに不安を憶えていたメイの曇った表情を晴れさせた。
全員の準備が完了したことを口頭で確認し、ギッハは裏想郷へと続くスキマを開く。霊夢達にもギッハ達の説明を済ませてはいたが、やはり霊夢にとって紫以外の人物、それもこいしと瓜二つの姿をした少女がスキマを操る光景は慣れないようであった。
「よし、準備はバッチリだよね! それじゃあ、裏想郷にれっつごー!」
「「おー!」」
「アンタらほんと元気ねえ……」
「留守は任せてください。その代わり、ちゃんと帰ってきてくださいね?」
「分かってるって。じゃあ、任せたわよさとり」
「はい、いってらっしゃい」
「ん、いってきます」
それだけ交わし、霊夢達はスキマへと足を踏み入れる。一人博麗神社に残されたさとりは、今日の夕餉を作るために台所へと向かいながら霊夢達の安否を心配していたが、気にしても仕方ないと頭を左右に振り、台所で食材の捜索を始めるのだった。
「おおう、『
「何ここ……霧でなんにも見えないんだけど……」
ギッハ達がスキマを抜けてたどり着いたのは、幻想郷では『魔法の森』と呼ばれている地域にあたる『魔法霧の森』だった。常に白っぽい霧が立ち込めているために、視界が非常に悪くあまり好まれている場所ではない。
「……ていうか、『出ちゃった』ってどういうこと? もしかして
「そういうわけじゃないよ。ただ私さ、どの地名がどこのものかとかっていうの、あんまり覚えられないんだよね。だから、基本的には『その世界のどこか』っていう指定で空間を繋げてるんだよね」
「それ、指定って言うんですか……?」
「うん、少なくとも私の中では───」
「ちょっ、後ろ!」
ギッハの言葉を遮るように霊夢が叫ぶ。見ると、そこには黒を基調とした巫女装束を纏った少女が、血が滲んだような臙脂色の髪を激しく揺らしながら鬼のような形相でギッハに飛びかかりかけていた。
服、靴、袖、そして髪を結うリボン。顔の両脇の髪飾りも含め全て黒で染められている巫女装束だが、左肩にかかっている襟は深緑、胸元のリボンは紺色とアクセントが何も無いわけではない。
しかし、真にそのシルエットのアクセントになっているのは紛れもなく右手に握られた黒い炎だろう。日本刀を煩雑に模したその炎はぼうぼうと燃え盛っており、親の仇に対する怨恨のようにも思えた。
「チッ……!」
だが、どういうわけかその黒い巫女装束の少女はギッハまであと数十センチという所でその動きを止め、僅かに腕を震わせている。黒い巫女装束の少女の自演ではなくギッハの能力によるものだと一瞬で見抜いた霊夢は、何も警戒していなかったかのように見えた少女の手慣れた対応に恐怖さえ憶えた。
「やっほー【
「妖怪風情が口を利くなッ!」
少しだけ後退し、【禮】は再びギッハの元へ黒い炎を構えたまま疾駆する。その内にメイは霊夢と早苗を離れた樹へと誘導し、観戦に入った。
「あれが……
「そ。
「幻想郷の霊夢さんとは大分違いますね……一体何があったんでしょうか」
「何にせよ、いきなり斬りつけてくるあたり『ここの私』は相当な危険人物だわ。確かに、私一人じゃ厳しいかも……」
「ま、ギッハちゃんの『曲空』なら余裕だけどね」
裏想郷の魄零の巫女の簡単な説明が終わる頃には、ギッハが禮をあと一歩のところまで追い詰めていた。それでも禮の方には諦めは見られず、肩で息をしながらも漆黒の瞳でギッハを捉えつつ次の一手を思案している。この状況でも絶やさないギッハの笑顔は、今の禮には強者の余裕、或いは自身への煽りのように感じられた。
「本ッ当にムカつくわね……その
その無垢な笑顔に堪えきれず禮が飛び出したその時、突如空から聞き覚えのあるような声が響いた。……特に、禮と霊夢にとっては。
「こらこら、そんなにカッカするもんじゃないぜ。血圧上がっちまうぞ?」
「……! 【魔理沙】っ!?」
その声に最も速く反応したのは霊夢だった。実はこっそり魔理沙が付いてきていて、その身に何かあったのではと危惧してのことだ。
しかし、全く同じ声ではあるが声の主は【霧雨魔理沙】ではなかった。……そう。
「……【
「とりあえず落ち着け。話はそれからだ。な?」
目元も含め、白一色と言っていいほど真っ白な服を纏って箒に跨る魔法少女。裏想郷の霧雨魔理沙である、『
「やれやれ、帰っちまったか……。よう、さっきはうちの禮が迷惑かけちまったな。すまん」
「いや、それは別にいいんだけど……あんたは、この世界の【魔理沙】? ……あいや、知らないだろうしそう言われても分かんないか……」
「【魔理沙】……か。それが幻想郷での私の名前だな? 語感的にも、なんか色々と近しい感じがするな。……っと、自己紹介を忘れてた。私は夕立毬華だ。ここ魔法霧の森に住んでるから、この辺のことは何でも聞いてくれて構わないぜ」
「……そう。私は博麗霊夢。こっちの緑色の方が東風谷早苗。まあ聞きたいことはいっぱいあるんだけれど……とりあえず、さっきの奴───この世界の私について、知ってることを聞かせてもらえる?」
「もちろんオッケーだ。でも……ここじゃなんだし、場所を変えようぜ。ギッハ、私ん家まで頼む」
「もう忘れた〜」
「マジかよ……十回以上来てるんだし、そろそろ憶えてくれても良いんじゃないか……?」
苦笑いを浮かべながら再び箒に跨ると、霊夢達を連れて毬華は自身の家に向かって箒を飛ばした。あまりの速度に、毬華が通った場所の霧が数十秒晴れるほどの速さで。
毬華の自宅には数分ほどで着いた。幻想郷の魔法の森に佇む『霧雨魔法店』とそれほど差異のない、シックな雰囲気を放つ家だ。しかし看板のようなものはなく、窓から覗く内装にも店というような感じはしない。
魔理沙とは違い、店の経営を行っているわけではないようだ。
それから毬華に聞いた話は、非常に有意義なものだった。
まず、魄零禮の幼少期について。毬華と禮は幼い頃から親交があったらしく、頻繁に会っては夕方まで遊ぶ毎日を送っていた。また現在とは異なり、幼き日の禮は妖怪達とも仲良く遊んでいたのだという。その中には、ギッハも含まれていた。
しかしある日。裏想郷の一部の住人に、『謎の力が目覚めた』という者が現れた。自らを誇示するように彼女らの頭を反芻したその力の名は『系数禁術』。封じられた66の能力の内9つが解放され、各地へと散らばっていった。偶然新たに手に入れた能力に歓喜を見せていた少女たちだったが、最も歓喜に満ちていたのは能力を手に入れた少女たちと縁を持つ弱小妖怪達だった。
彼らは欲望のままに各地で暴れ、奪い、そして殺した。まだ幼かった禮に代わって禮の母が最大級の被害を受けた『人里』へと向かったが、暴れる妖怪達が放ったのは「オレ達を殺そうもんなら、オレ達の強〜い『オトモダチ』が黙っちゃいねぇかもなァ?」という言葉だった。実際、系数禁術の力は不明な点こそ多けれど他の追随を許さない強力無比なもので、『裏想郷最強』と謳われる魄零の巫女ですら足元にも及ばなかった。
確証は無かったが、万が一系数禁術を手に入れた能力者が報復にやってきたとすれば敗戦は必死だ。暴れる妖怪達に屈することしか出来なかった魄零の巫女は、散々に嬲られたのちに惨殺された。
母の帰りを健気に待つ幼き禮がのちに見たのは、邪欲に
そして禮は、『妖怪』への復讐を始めた。母を、世界を、平和を殺した蛮族への復讐を。
望んでもいない力を勝手に与え、裏想郷を地獄へと変えた妖怪───【
次に、禮が使う三系禁術『堕鬼刃』について。
三つ目の系数禁術であり、力の所有者が最も
赤の炎は近接特化。『人間、又は神以外』が触れれば大半は即死する。
青の炎は遠距離特化。こちらも『人間、又は神以外』が触れれば即死で、刀身に攻撃力が無くなる代わりに斬撃を放つことが可能だという。
毬華も系数禁術を持っているらしかったが、あまり喋りたくないという。ギッハ達も知らないという能力が訝しげに思えたが、彼女のどことなく重苦しい曇った顔を見て詮索するのはやめた。
「……さて、私が知ってることは大体話したぜ。で、この話を聞いてもまだこの世界を何とかしようって気概……あるか?」
「……ええ。私たちが、絶対に解決してみせる。もちろんアンタも協力してくれるわよね、早苗?」
「はいっ、そりゃあもちろん! 私の奇跡は万能ですからね!」
「……成る程。似ているなあとは思っていたが…………お前があっちの【
「……あいつ? あいつというのは、一体誰のことでしょうか……?」
「いや、気にしないでくれ。それよりも、この世界を助けてくれるんだろ? 私としては、偶然とはいえ願ったり叶ったりなシチュエーションだ。……期待してるぜ」
「そっちこそ……アンタらの世界のことなんだから、私以上に頑張りなさいよ?」
「……言われなくても」
「よーし、これからも頑張るぞー! というわけで、これからもメイちゃんと一緒に幻想郷に遊びに行ってもいい?」
「幻想郷のギッハちゃんには会えたし、今度は幻想郷の私に会ってみたいなぁ……もちろん良いよね?」
「うぐ……分かったわよ。でも、幻想郷のアンタらに会えるかどうかは本人次第だから。そこだけはどうしようもないわよ?」
「「もっちろん!!」」
少女二人の溢れんばかりの瞳の輝きに負けた霊夢は、決して言葉にはせずにアンニュイな楽しみを飲み込んだ。
───ああ、また面倒事が増えたなあ、と。
五の目 夕立毬華
魔法を操る程度の能力