とある狩人の一方通行   作:爪楊G

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感想、誤字報告等ありがとうございます。


10話

 

 

 

「いい加減に機嫌直したらどーですか?」

 

 試験会場のあるザバン市に向かう飛行船の一室、絹旗が俺にそう言って来た。

 

「…別に不機嫌って訳じゃねェよ」

 

「確かに最後の最後だけとは言え、まさかお兄様の反射を突破するとは思いませんでしたの」

 

 天空闘技場でのヒソカとの戦いは結局俺の勝利に終わったが、黒子の言う通り最後の最後でヒソカは反射を突破してカウンターの一撃を俺に与えた。

ヒソカ自体限界を迎えつつあった事と反射を突破したものの完全にではなかった…とは言え俺は硬で無防備な状態だったのであの一撃はかなりこたえた。

 

 絶と能力による回復の促進で既に完治したが。

 

「そのあたりは流石ヒソカって感じじゃないですか?」

 

「まァ、今後はヒソカレベルかそれ以上の使い手とやる時は反射の設定式を変えながら戦う様にはする」

 

 そもそも実戦では出来るだけ相手を接近させるつもりもないので一応の話だ。

されると思ってなかった反射も突破されたので、もう油断はしない様にする。ヒソカレベルで出来るならこの世界の上位層なら通常設定の反射なら突破可能という事だ。

 

 …後は、俺自身心のどこかで念を使える様になって調子に乗っていたのもあるだろう。

やはりオーラを用いた近接戦闘は俺には向いていない…とは言わないが、それよりも能力主体で戦った方が強いし安全だ。

オーラの操作は達人級だが、特質系の俺は系統的にも近接には向かない。と言うよりオーラで殴るより触れて血流操作なり生体電気を操って気絶させるなりで終わる話だ。

 それはそれとして、念の修行は続けるが。

 

「反射を突破される可能性が十分にある事を知れただけでも収穫はあった」

 

 そう思わないとやってられないのもあるが。

 

「過ぎた事は忘れてハンター試験に集中した方がよろしいのではなくて?」

 

「そーですね、試験自体は余裕だと思いますけど問題は会場に行く為の定食屋ですよね」

 

「合言葉の『ステーキ定食』『弱火でじっくり』は覚えていますが定食屋の場所がわかりませんの」

 

「確か、言ってた様な気がしないでもないが細かい所は覚えてないしなァ。調べた方が良いな」

 

 部屋に備え付けられたパソコンの検索サイトを起動する。

二人が後ろから覗き込んでくるが気にせず続けた。

 

「ザバン市にある定食屋は37店舗、確か隣にでけェ建物があった筈だ。その条件で絞り込むと…」

 

 地図を確認して条件に該当する定食屋が一軒だけあった。

 

「場所はツバシ町で店名は…、『めしどころ ごはん』って超まんまですね」

 

「試験開始日は明日ですから今日は近くのホテルを取りましょうか」

 

「だな」

 

 件の定食屋から比較的近場のホテルを予約する。

 

「そういえば黒子の念能力はまだ完成しないんですか?」

 

 ハンター試験への憂いも解消された所で絹旗が黒子へ聞いた。

 

「まだですわね、試験中には完成すると思いますが」

 

 鉄芯を具現化させる黒子。

 

「鉄芯を具現化させられる所まで来てンなら後は効果を付与させるだけだからな」

 

「ええ、ですがそれが中々難しいんですの。原作でもそのあたりの修行法は描かれていませんでしたし…」

 

 物を具現化させる為の修行の描写はあったが、確かに能力付与の修行や方法はなかった。

 

「ですが、思わぬ収穫はありましたわ。私が具現化させた鉄芯が形を留めておける射程は約10m…しかし、空間移動で飛ばした場合はその射程関係なく鉄芯は維持されていた(・・・・・・・)

 

「なんでですかね?凝で見ても超しっかりオーラは繋がってなかったのに」

 

 確かに繋がってはいなかったし驚きはしたが俺と黒子で話してみて一つの仮説を立てた。

 

「おそらくではあるが黒子の空間移動の仕組みに関係してンだろうよ、そもそも空間移動は実際には名前の通り転移じゃなく移動だ。点と点じゃなく線での移動だからな」

 

 実際に空間移動で転移する際も僅かにラグが発生する、それでも普通に移動するより遥かに早いが。

 

「滅茶苦茶雑に分かりやすく言うと、一枚の紙を空間として紙の対角が転移の対象と転移先だとしたら、その紙を折り畳んで対角を重ねるのが空間移動だ。厳密には違ェが大体そォいう認識で良い」

 

 11次元の演算で言うと他の要素もクソ程絡んで来るがやっている事はそんな感じだ。

 

「ここで重要なのは最初に言った点じゃなく線での移動って事だ。結論を言っちまえば、黒子が空間転移で飛ばした場合に限りオーラは11次元上で繋がってる(・・・・・)

 

 実際に黒子に鉄芯を飛ばして貰って、11次元を観測しオーラを確認した。

俺が11次元を含む演算が初めてだったので手間取ったが。

 

「ほぇ~…でもそんな事ってあるんですか?」

 

「実際にそうなってンならあるって事なンだろうよ」

 

「本来ならそのあたりは制約でカバーしようと考えていましたが手間が省けましたの」

 

 黒子の念能力はさっきも言っていた通り試験中には形になるだろう。

絹旗はあまり発を必要としない強化系だし、俺は特質系だが現状発が必要かと言われるとあまり必要とは思わない。

 

「発も別に急ぐ必要はねェ、ハンター試験は念が使えるだけで合格出来ンだろ。ヒソカとイルミにだけ気を付けりゃいい」

 

 イルミはこっちから何もしなければ安全と見ていい、ヒソカは…俺は兎も角黒子と絹旗はまだ発展途上だと判断している筈だから狙われないだろう。

 

「ヒソカは試験中のどこかで一方通行に超喧嘩売って来そうですけどねー」

 

「そン時は加減なしにブッ飛ばすからいい」

 

 話していると目的地であるザバン市に到着した事を知らせるアナウンスが飛行船内に響いた。

 

「着いたようですね」

 

「ザバン市って何か観光出来るような所ありましたっけ?」

 

「行きてェなら勝手に行ってこい、俺は行かねェぞ」

 

 出る準備をしながら絹旗と黒子はどこに行くかを話している。

さっき地図を見た限りは特に何かある様には感じなかったが俺には関係ないので何も言わない。

 

 どうせ明日は走らされまくるので今日は動きたくない。

 

 

 

   ————————————

 

 

 

 翌日、俺達は件の定食屋に向かっていた。

 

「昨日は結局超何もなかったですねー」

 

「まァそンな事だろうとは思ったが」

 

「えーと、住所はツバシ町の2-5-10だったのでこの先の突き当りを曲がった所ですわね」

 

 道を曲がった所で目的地が見えた、デカい建物の横に建っている平凡な定食屋だ。

 

「…マジで普通の定食屋だな」

 

「カモフラージュっていうのもあるんでしょーけどいまいち気分が超締まらないですよねー」

 

「そんな事より早く入りますわよ!」

 

 興奮した様子で黒子が急かしてくるので入店する。

黒子が原作を好きなのは知っている。原作自体は既に始まっているがここからは直接介入する事になる為、テンションも上がっているのだろう。

 

「いらっしゃーい!ご注文は?」

 

「ステーキ定食」

 

 店長らしき中年の男に黒子が答える。

合言葉を言うのは黒子がやりたがっていたので特に何もいう事なく任せた。

 

 黒子の注文に男が反応を見せた。

 

「…焼き方は?」

 

「弱火でじっくり」

 

「奥の部屋にどうぞー」

 

 何故かドヤ顔で言い放った黒子を気にする事なく店員の案内に従って部屋に入る。

ご丁寧に店員が鉄板にステーキを用意してから出て行くと、部屋が下降し始めた。

 

 折角なのでステーキを食べ、丁度食べ終えた所で部屋も下降を終えた。

 

「着いたか」

 

「行きましょう」

 

 試験会場に入ると、先に到着していた受験者達が一斉に見て来たが無視する。

 

「受験者の方ですね!では、これが貴方達の受験番号札です。頑張ってくださいね!」

 

 ビーンズと思われる人物からナンバープレートを受け取る。

番号は俺が391で黒子が392、絹旗が393だ。結構ギリギリだったらしい。

 

「それにしても超薄暗い所ですね」

 

 二人が広い地下道を見渡していると

 

「やぁ♥こんな所で会うなんて偶然だね♥」

 

 いつの間にか接近していたヒソカが話し掛けて来た。

それに気づいた二人はそそくさと俺の後ろへ回った。

 

 こいつら…。

 

「チッ…、お前もハンター試験受けてたのかよ」

 

 知ってはいたが一応そう言っておく。

それにしても、俺との試合でのダメージが目立たない程度には治っている。どう足掻いてもこの短期間に自然治癒するレベルの怪我ではなかった筈なので、十中八九念能力だろう。

 

「まぁね♥ハンター証は持ってるだけで色々便利だし♦」

 

「それは否定しねェよ」

 

「僕は去年も受けてるから何か分からない事があったら教えてあげるよ♥」

 

 ヒソカは前年度のハンター試験は、試験官に手を出して失格になっていた筈だ。

 

「どォせお前の事だからロクでもない事して失格になったンだろ」

 

「良く分かったね♥でも大したことじゃないさ♠あまりにも力不足の試験官がいたからちょっと手解きしてあげただけだよ♣」

 

 嗤いながらトランプをシャッフルして言うヒソカ。

その身体からは殺気が滲み出ており、周りの受験者達が距離を取り始めた。

 

「あっそ、どォでもいいしお前に聞く事もねェからさっさとどっか行けよ。殺気駄々洩れで鬱陶しいわ」

 

 しっしと手を払う。

 

「それは残念♥…また戦おう♦」

 

 手を振り離れて行く。

 

「勝手に言ってろ」

 

 受験者達の中に消えていったヒソカ。

そこで漸く二人が口を開いた。

 

「やはりヒソカに気に入られていますわね」

 

「超分かってましたけどねー」

 

 先程からヒソカと話していたせいか受験者達があからさまに俺達を避けているが、都合がいいのでそのままにさせておく。

同類と思われるのは癪だが…。

 

 壁に寄り掛かり試験開始を待つ。

目を閉じてじっとしていると黒子が声を上げた。

 

「来ましたわ来ましたわ来ましたわよ!」

 

 俺の服を引っ張りながら興奮した様子で言う黒子。

視線を投げるとそこには小太りの男に話しかけられている3人組が見えた。

 

 話しかけているのはトンパだろう、そう言えば俺達には接触してこなかったが…。

 

「あンま露骨に反応しすぎンなよ、怪しまれても面倒だし」

 

「言われなくても分かっておりますの」

 

「どーだか、黒子は何だかんだ超分かりやすいですからね」

 

 突然、地下道内に叫び声が響いたが、ヒソカだろう。

確か、受験者の腕を斬り落としていた筈だ。気にする必要もないので無視する。

 

 トンパとの話し合いが終わった3人が歩き出した、偶然だろうが俺達の方に歩いて来る。

原作での主人公達だ、まだキルアは合流していないがそれでも多少は気になってしまう。

 

 不自然でない程度に観察していると3人の内の1人、民族衣装の様な服装の金髪の青年、クラピカと目が合った。

何故か動揺した様な顔で呆然としている。

 

「クラピカ?どうしたの?」

 

 某ヒーローとはまた違ったツンツン頭の少年、ゴンがクラピカの異変に気付き問いかけている。

 

「おい、どうしたってんだよ。そんな間抜け面して」

 

 スーツ姿でサングラスをかけた長身の男、レオリオだろう。

視線が交差したままだったが二人に話しかけられて漸く気を持ち直したであろうクラピカ。

 

「……間抜け面はどちらかと言うとお前だろうレオリオ、そう言われるのは心外だな」

 

「んだとぉ!?」

 

 声を上げるレオリオを無視してクラピカが話し掛けて来た。

 

「不躾に見る様な真似をしてすまない」

 

「…目立つ見た目してンのは自覚してるし、見てたのは俺もだ。気にすンな」

 

「そうか、そう言って貰えると助かる」

 

 クラピカに続いてゴンとレオリオもやって来た。

 

「俺、ゴン!よろしく!」

 

「ったく、誰が間抜け面だ誰が…。俺はレオリオってんだ、よろしくな!」

 

「私はクラピカだ」

 

 ゴンに続き、2人も名乗って来た。

 

「私は白井黒子と言いますの。どうぞ、黒子と呼んでくださいまし」

 

「私は絹旗でいーですよ」

 

「…一方通行だ」

 

「黒子に絹旗に一方通行だね!よろしく!」

 

 流石、原作主人公と言えるコミュニケーション能力だ。

 

「よろしくお願いしますの」

 

「よろしくでーす」

 

 二人がゴンやレオリオと話している所にクラピカが話し掛けて来た。

 

「すまない、これも不躾だとは思うのだが一方通行はどこの出身か聞かせて貰えないだろうか?」

 

「あァ?出身?」

 

 ……ああ、そう言う事か。

先程からのクラピカの様子に漸く合点がいった。

 

 気づいて見れば簡単な事だ。

クラピカの視線は先程から俺の眼に集中している、人と話す時は目を見て話す…何ていう事ではなく本当に俺の眼を見ていたんだろう。

 

 俺は紫外線等も反射している影響で髪は白く、目が赤い所謂アルビノだ。その眼は鮮やかな赤…人によっては緋色とも取れる。

クルタ族の緋の眼は感情が昂った時にしか変わらないがそれを分かっていても聞かずにはいられなかったんだろう。

 

「ジャポンっつーヨルビアン大陸の北にある島国だ、あンま聞いた事はねェかもな。あそこにいる二人もそうだ」

 

「…ジャポンか、知識としては知っている。独特な文化を持っているとか…、そうか、ジャポンか」

 

「独特って言っても一部はそォだが大体は他の所と変わらねェよ」

 

 残念ながら俺はクルタ族ではない。

クラピカも分かってはいただろうから、既に落ち着いた様子だ。

 

「ありがとう、あまり見ない容姿だったから気になってしまってな」

 

 クルタ族の事は流石に言えないからそういう風に言うしかないだろう。

その後は話す4人を眺めながら、ジャポンについての話だったりをクラピカとしていた。

 

 目覚まし時計の様な音が爆音で地下道内に鳴り響く。

 

「ただ今を持って受付時間を終了致します。これよりハンター試験を開始しますので此方にどうぞ」

 

「行きますわよ、お兄様!」

 

「行こう!クラピカ!」

 

 少し離れた所で話していた俺とクラピカに、黒子とゴンが声をかけて来る。

 

「行くとしよう」

 

「そォだな」

 

 歩き出した試験官、サトツに着いて行く。

 

 主人公達と出会い、原作の最初の大きいイベントであるハンター試験が始まった。

ここからは俺達が関わる関わらないに限らずこの世界は大きく動き出す事だろう。

 

 まずは目先のハンター試験に集中するとしよう。

そんな事を考えながら、徐々に上がって行くペースに合わせて歩調を早めた。

 

 

 





 やっと原作介入ですね。



 黒子の11次元上で云々はちょっと都合良すぎる感はあるけどやっぱ彼女には鉄芯使って戦って欲しいんでこういう形にしました。
3人の中じゃ一番安定感には欠けるんでこのくらいならまぁ…、って感じで許してください
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