試験終了の放送が流れ、スタート地点に戻って来た俺達。
「なんだかんだ自然たっぷりで、キャンプみたいで超楽しかったですねー」
「そうか?俺は親父に似た様な事させられてたからあんま新鮮味はなかったかな……まぁ退屈はしなかったけどさ」
「とりあえずまともなお風呂に入りたいですわね。島では簡単な水浴びしか出来なかったので……」
話す三人の後ろを歩きながら、スタート地点に集まって来た受験者を確認する。どうやらポックル以外は原作と変わらない面子のようだ。
飛行船に乗り込みシャワーを浴び終わった俺が歩いていると、クラピカとゴンに遭遇した。俺に気づいたゴンは顔を拭うと手を振って来た。
「ゴン。話の続きだが、私もレオリオもお前がいたからここまで来られた。本当に感謝している……だからそう悔やむ必要はない」
「……うん、俺の方こそありがとう!じゃあキルアや黒子達の所に行ってくるね!」
どうやら良い感じの話が二人の間に起こっていたらしい。少し気恥ずかし気なゴンはそう言って走り去っていった。
「すまねェな、邪魔したか?」
「いや、問題ない。それにお前には話したい事があったんだ。一方通行」
そこへ間が悪い事に、ネテロによる面談の放送が流れた。最初に44番……ヒソカが呼ばれる。
「面談か、どォする?話はそれが終わってからにするか?」
「そうだな、急ぐような話でもない。面談が終わってからにしよう」
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「では黒子くん、まずはハンターになりたい理由を聞こうかの」
三人の中で最初に呼ばれた黒子はネテロと面談を行っていた。
「そうですわね……。明確にどのようなハンターになりたいと言うビジョンはありませんが、世界を見て回りたいとは思っていますの。その為にハンター証があれば便利だから、というのが理由でしょうか」
もちろん原作を見に来たとは言えないのでそれらしい理由を答える黒子。
「ではお主以外で最も注目している受験者は?」
「……405番、ですわね」
「一番戦いたくないと思う受験者はどうかの?」
「44番、301番は戦いたくありませんの」
「お主らを除いて念を使える二人じゃな。妥当な所じゃろう……うむ、下がってよいぞ」
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「理由はそーですね……、特にないですけどハンター証あれば超便利かなーと」
「注目とかは特にねーですね」
「んー、強いて言うなら44番と301番ですかね。負けるつもりはねーですけど、勝てるかどうかは超微妙ですし」
次に呼ばれた絹旗も同じ質問に答える。
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「理由は……ガキ二人の付き添いってとこか、放っとくのは何か不安だしなァ。ハンター証も持ってて損はねェし」
「特にいねェが選ぶとしたら404番」
「いねェな」
「ふむ、良いじゃろう。お主ら三人は念も使えるようじゃし試験は問題なかろう。主に限って言えば、よくぞその歳でそこまでの技術を身に付けたものじゃ」
質問に答えた俺にネテロがそう告げて来る。
「アンタに言われてもな」
オーラ操作技術だけならネテロをも超える精度で行えるかもしれない。無論、能力込みでの話だが。しかしそれ以外の体力や戦闘技術、オーラの質などは比べるまでもなく向こうが上だ。能力なしの戦闘では間違いなく勝てない。
「そらワシも伊達に長生きしとらんからの、年の功というやつじゃ」
面談も終わったので退室しようとした俺の背に、ネテロが声をかけて来た。
「……お主からはどことなく、かの大陸と似たような雰囲気を感じるわい」
その言葉に一瞬足を止めてしまう俺だったが、返事をする事もなくそのまま退室した。
先程のネテロの言葉……、かの大陸とは暗黒大陸の事だろう。試験中、ネテロの前で露骨に能力を使った試しはない。にも関わらず俺の異常性を感じ取ったという事だ。やはり念能力者として、ハンターとして、一線を画す実力をもっている達人というだけある。それに、ネテロに俺の持つ能力を勘付かれた所で警戒する必要もないだろう。
面談が終わり、再び合流した俺とクラピカは人のいない部屋に腰を落ち着けた。
「ンで、話って?」
「そうだな。……一方通行は幻影旅団と呼ばれる盗賊集団を知っているか?」
そのクラピカの質問は、これからの話の内容が察せられるものだった。半ば予想していたが。
「A級の賞金首だろ?ジャポンにいた頃も噂には聞いてた。悪名だけどなァ」
もちろん原作での知識を持っている俺は、旅団についてある程度の情報は知っている。それでも分かっている事は多くないが。
「その通りだ。そして、私の一族……クルタ族を皆殺しにしたのも奴らだ」
「だからハンターになりてェ訳か」
クラピカなりに俺を信用してくれた為、こうして話してくれているんだろう。原作の知識で知っていた事だが、やはり本人の口から聞かされると重みを感じる。
「あぁ、緋の眼……。クルタ族固有の身体特徴だ。感情が昂ると瞳の色が燃えるような深い緋色に変色し、その状態で死ぬと瞳は緋色に染まったままになる。その輝きは世界七大美色に数えられる程だ」
自身の瞳に手を添え、歯を食いしばるように話すクラピカ。
「殺された同胞の亡骸は、一人残らず眼が奪われていた。……旅団の奴らを捕らえ、仲間たちの眼を一つ残らず取り戻す。それが私のハンターになる理由だ」
「……何でまた俺に話そうと?」
クラピカの独白に何と返そうか一瞬迷ったが、下手な慰めは不要と判断してその話をした真意を問う。
「一次試験で初めて会った時に思わず出身を尋ねてしまったのは、お前の瞳の色を見てのことだった。在り得ないとは理解していたがそれでも、もしやと思ってしまったんだ。瞳の色はもちろん、お前の容姿は少々人目を惹く……良からぬ事を考える下衆がいないとも限らない。人体収集家などと言う下らぬ趣味の持ち主もこの世には少なくないからな」
俺の眼を見て言うクラピカ、ようするに俺が心配で警告してくれているのだろう。ゴンに良くお人好しと言っているが、本人も大概お人好しである。
「そォいう事か。忠告はありがたく受け取っとくぜ」
「そうした方がいい。この試験での実力を見るに問題ないとは思うが、一応伝えておこうと思ってな」
話も一段落した所で、身体を休める為に休憩所へ向かう事にした。
「けど、気を付けた方がいいのはお前もだろォ。幻影旅団なンていう特級の犯罪集団を相手にするンだ」
「覚悟は出来ている。それに、まずはハンター試験に合格しなければ仲間の眼も、旅団の事も始まらないからな」
「そォか、俺も緋の眼の事で何か分かったら伝える様にはする。無理すンな……とは言わねェが、無謀な事はすンなよ」
「あぁ、すまないな」
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飛行船に揺られる事三日。俺達は最終試験会場であるハンター協会が運営しているホテルに到着した。屋内にある大広間に案内される。
「最終試験は一対一の変則トーナメントで行う。これが組み合わせじゃ」
「うわ、ギタラクルとじゃねーですか。超嫌っていったのに……」
「私はゴンとハンゾーのどちらかと……。お兄様はクラピカとヒソカのどちらかとですわね」
発表されたトーナメント表を見る限り俺達三人の中で、ハンターの資質としてもっとも評価されているのは黒子だろうか。まぁ妥当な審査だろう。絹旗は原作には興味を示しているが、ハンターという職業自体への関心は薄い。俺はハンターの資質というよりはオーラ操作技術などの辺りを評価されている気がする。
「合格条件は至って単純……たった一勝すればええ。組み合わせが公平でないのは、この試験を通しての成績や印象の良い者に多くのチャンスが与えられている訳じゃな」
「それって納得いかないんだけど、もっと詳しい評価条件教えてよ」
抗議の声をあげるキルアにネテロが首を振る。
「それはならん。採点内容は極秘事項でな……ただ、最も重要なのはハンターとしての資質評価とだけ言っておこうかの」
不満気な表情を隠せないキルア。しかしネテロは気にせずに話を続ける。
「武器あり反則なしの何でもあり、勝利条件は相手にまいったと言わせる事。ただ、相手を死に至らしめた者は不合格じゃ。不合格者が出た時点で残りの物は自動的に合格じゃな」
そうして第一試合のハンゾー対ゴンが始まった。飛び出したゴンだが手刀で首を打たれ脳震盪を起こす。その状態になっても敗北を認めないゴンに半ば拷問のように攻め立てるハンゾー。
「実際、見ていて気持ちの良いものではありませんわね」
「この戦いのルール上仕方ねェな」
結果として、三時間経ち腕を折られても粘るゴンにペースを握られたハンゾーが負けを認めた。その結果に異議をたてるゴンだったが、ハンゾーに殴り飛ばされて気絶し運ばれていった。
「次は私ですね。正直、超戦いたくねーんですが……」
「本当にヤバくなりそォなら助けてやるよ」
面倒そうに進み出る絹旗にそう言うと、いくらか安心した様子で前に出て行った。
「第二試合、絹旗対ギタラクル!」
対峙する二人だが、試合開始と同時にギタラクルが両手を上げた。突然の事に固まる絹旗と審判。ギタラクルが審判を見据えカタカタと震える。どうやら降参らしい。
「……で、では絹旗様の勝利という事で」
下がって行くギタラクルを複雑そうな表情で見送った絹旗が戻って来た。
「なんか、これはこれで超微妙な感じになるんですけど……」
「合格出来たのだからいいのではなくて?」
俺達の中で最初の合格者となった絹旗。ギタラクルは恐らく、キルアと当たる為に降参したんだろう。もし先にキルアが勝ち上がっても、その時は次で勝てば良い。組み合わせ的にヒソカと当たることもないので合格は確実だ。
「お前が合格した事だし、最悪俺と黒子が落ちても問題なくなったなァ」
一人でもハンター証を持っていれば、制限区域などには入れる。俺達二人が不合格になるとは思わないが。
第三試合はクラピカ対ヒソカ。クラピカもそれなりの実力者ではあるが流石に相手が悪い。しかし、ヒソカがほぼ絶に近い状態で自身に制限をかけながら戦っているのである程度戦いにはなっている。しばらくしてからクラピカに何かを囁いた後、降参した。
「まぁ、ここで負け上がればお兄様と戦えますものね……」
降参したヒソカが俺を見て笑みを浮かべてきた。
「超やる気満々ですねー」
「やっぱこォなンのかよ……」
「その前に私の番ですわね」
第四試合は第一試合で負け上がったハンゾーと黒子の戦いだ。オーラによる強化と能力がある黒子だが、戦闘経験はあちらに分がある。容易な戦いではないだろう。
「黒子にはちょっと不利なルールですよね」
「空間移動での攻撃は殺傷力が高いからな」
そもそも空間移動での直接的な攻撃は黒子の性格上、余程の事がない限りしない筈だ。
「第四試合、黒子対ハンゾー……始め!」
合図と同時に黒子に肉薄するハンゾー。ゴンの時と違い、手加減をしてくれるような気配はない。空間移動で背後をとった黒子、しかしハンゾーは冷静に振り返りながら移動した黒子と距離を取った。
「四次試験の時にも見てたが、マジで消えてやがる……。変わり身の術や空蝉の術の亜種みたいなもんか?そういやお前もジャポン出身だったな。もしかして忍者の末裔だったりすんのか?」
「残念ながら違いますの。話す暇があるとは、随分と余裕ですわね!」
いいながら黒子が鉄芯を取り出して投擲する。先端が尖ったりはしていないもののオーラによる強化もあり、当たれば只ではすまない。
「今度は棒手裏剣かよ!やっぱ忍者だろお前!?」
鋭い投擲に叫びながら回避するハンゾー。距離を取るのは不味いと判断したのか再度、黒子に向かって走りだした。
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ハンゾーから突き出された拳を何とか捌く黒子。
(体術では向こうが上ですわね。しかし反応出来ない程ではありませんの……身体能力はオーラによる強化を以てしても、同等程度でしょう)
ハンゾーと自身の実力差を冷静に思考する黒子。オーラと能力の有利があっても、戦闘が成立する程の経験の差に歯噛みする。
思考しながら空間移動を発動する。即座に振り返ったハンゾー、しかし黒子が現れたのはその真上だった。反応が遅れた隙をついて踵落としを叩き込むが何とか防御を間に合わせたハンゾー。予想以上に重い攻撃に顔を歪ませる。
「くそ、中々いい蹴り持ってんじゃねーか……」
手加減をするつもりはなかったハンゾーだが、今の一撃で油断出来る相手ではないと判断し雰囲気が変わる。
「年下で女ってのもあって甘く見てたぜ。……もう油断はしねぇ」
真剣な面持ちで仕込み刀を抜き構えるハンゾーに、黒子も鉄芯を構える。そこからは仕込み刀での攻撃を中心に攻めるハンゾーだったが、鉄芯による防御と空間移動での回避を交えて応戦する黒子。ほぼ互角の戦いが続いていたが黒子が動いた。
仕込み刀の一閃を鉄芯で防ぎ、掌底を繰り出す。それを危なげなく防いだハンゾーだったが、その姿が消えて逆さまの体勢で同じ場所に現れる。
「なっ!?がっ……!」
流石のハンゾーも突然の事に動揺し、黒子の蹴りをまともに喰らってしまう。吹っ飛びながら何とか体勢を整えるハンゾーは表情を歪めて肋骨を抑えている。しかし、黒子もまた肩を抑えていた。蹴りは喰らったものの、咄嗟のカウンターで黒子に手傷を負わせていたハンゾー。休ませまいと鉄芯を投擲する黒子。
「そんな真似もできんのか……」
鉄芯を避けながら呟く。すかさず迫ってくる黒子に向け、仕込み刀で牽制した。先程の正体不明の攻撃への警戒と、ダメージの回復に努める為守りに入るハンゾーに攻め手がなくなった黒子。膠着状態に入ったかと思われたが……。
「このまま戦えば、私が勝利する可能性が高いですの。降参するなら今の内でしてよ」
そう言った黒子に鼻で笑うハンゾー。
「冗談だろ。さっきのゴンみたく根負けして負けを認めるのはともかく、まだ負けると決まってる訳じゃない戦いで降参する程、俺は素直な人間じゃないんでな」
ハンゾーの言葉に深く息を吐いた黒子は鉄芯を握りしめ、もう片方の手をハンゾーからの死角となる背中に回して鉄芯を具現化させた。
「……試験で使うつもりはありませんでしたが、致し方ないですわね」
黒子の纏う雰囲気の変化に身構えたハンゾー。次の瞬間、ハンゾーの胸に鉄芯が突き刺さっていた。
「いつの間に……っ!?いや、そんな事より痛くもなんとも……っ」
知らぬ間に自身の胸に刺さっていた鉄芯。だが痛みも、異物感すらもない状況に何とか冷静を保とうとしながらハンゾーは後方に下がり鉄芯を引き抜こうとする。
「『ジャッジメント』」
黒子の言葉と共に、動きを停止させるハンゾー。その顔は驚愕に満ちている。
「身体が、動かねぇ……!?」
度重なる異常に冷静さをかいて、必死に動こうとするハンゾーの仕込み刀が突然破壊される。次いで、その腕に投擲された鉄芯が命中した。
「っ……!」
「加減はしたので折れてはいない筈ですの。これでも降参しないと言うのなら、次は折りますわよ……」
しばらく沈黙が場を支配していたが、ハンゾーが口を開いた。
「……分かったよ。降参だ」
その言葉に安堵の表情を見せる黒子。
「簡単に負けを認める程素直じゃないが、意地でリスク管理を怠る程馬鹿じゃねーのさ俺も。……ったく、これじゃ俺がゴンよりも根性なしみたいじゃねーか」
だから嫌だったんだよ降参するの……、と愚痴りながら動くようになった身体の動作を確認するハンゾーは黒子に向き合う。
「嬢ちゃんはもうちょっとポーカーフェイス練習した方が良いぜ。相手を痛めつけるのに慣れてないのが丸分かりだ。どいつもこいつもお人好しでいけねぇや……」
————————————
第四試合は黒子の勝利で終わった。戻って来た黒子は勝った割には悔し気な表情だ。
「結局、念能力を使わされてしまいましたの」
「仕方ねェだろ。致命傷なしで勝つには戦闘経験の差がでか過ぎる。……肩見せろ、止血してやる」
能力で肩の傷に止血を施す。余力を残して勝った様に見えた試合だが、黒子にとっては見た目以上に苦戦を強いられた戦いだっただろう。初見殺し性能の高い空間移動に加えて、これまた初見殺しの念能力を使ってようやく取れた一勝だ。そもそも非念能力者に肉弾戦で勝ててない時点で、経験不足という他ない。これは俺や絹旗にも言える事だが。
「まー能力の試運転が出来たと考えればそう悪くないんじゃねーですか?」
「そォだな。経験不足は今悩ンだ所でどォしようもねェよ」
「そうですわね。今は合格出来た事を喜ぶことにしましょう」
これで絹旗に続いて黒子が合格となった。残す所は俺一人だ。笑みを浮かべるヒソカと視線が合う。
「超頑張ってくださいねー」
「お兄様であれば問題ないでしょうがお気を付けて」
二人の言葉に手を振り、ヒソカと戦うべく俺は中央へ向かうのだった。
トーナメントはポックルの位置に黒子が。
一方通行がボドロの前にヒソカと、絹旗がギタラクルとで後は原作通りです。
ようやく黒子の念能力をお披露目出来ましたね。詳細はまだ先という事で……
ハンゾーは天空闘技場の時キルアに一応格上判定もらってたんで念抜きなら相当な強さなんだろうなとは思いますが、能力と念能力の二段初見殺しの犠牲になってもらいました。許せ。