とある狩人の一方通行   作:爪楊G

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暇と筆のノリが継続しているので投稿です。

今回の投稿で暇はともかくノリが限界を迎えそうです。


5話

 

 

 

 

 

 天空闘技場に来てから一週間。

合間に念の修行を挟みながらだった為、漸く100階に上り詰め個室を与えられたが俺達は最初に取ったホテルに宿泊したままだった。

 

「いいんですか?せっかく個室貰ったのにこのホテルに居たまんまで、此処も結構な値段する所ですよね?」

 

「あンな粗末な部屋に居られるかよ。それに、金使うのは嫌がらせも兼ねてンだ。お前らだけ闘技場の方の個室に行けばいいじゃねェか」

 

 嫌がらせ?と首を捻る絹旗を無視して、コーヒーを飲み干した。

 

「嫌に決まっているでしょう!こんな高級ホテルの住み心地を覚えたらあんなゴミみたいな部屋で住めるわけがありませんの!」

 

 淑女は淑女でも、ダメな方の感じになっている変態の猛抗議に溜息が出る。

 

「まァいい、今日は試合組んでねェから念の修行すンだろォが。とっとと始めるぞ」

 

 両手を差し出し二人に触れる様に促すが絹旗から待ったがかかった。

 

「部屋の中ばっかりじゃあれなんで今日は外でやりましょうよ。ほら、自然の中でやった方が超良さそうな感じがするじゃないですか」

 

「現状、纏も完全には成功してませんからね。ある程度オーラを留める事は出来ているので後少しだとは思うのですけれど…」

 

 普通に考えれば俺が精孔を開閉しているとは言え、1週間である程度オーラを留められる様になったと言うのは破格の速さと言える。

二人が恐らく基準として考えているゴンやキルアの才能がイカレているだけだ。

 

 俺はズルをしているのでノーカウントだろうな。

 

「リラックス状態の方が纏は上手くいくらしいしな。とりあえず外でも中でもいいからとっとと行くぞ」

 

 

 

   ————————————

 

 

 

 天空闘技場から少し離れた所にある自然公園。

ここらに来る観光客なんかは闘技場目当てでこのような公園には滅多に人は来ない。

 

 最初は1時間程度でへばっていた二人だが、今では4、5時間程度は精孔が開いた状態でいられるようになった。

常時バイタル確認をしなくても良いと判断した為、俺は俺で一応念の修行を行っている。

 

 最初は必要ないと思っていたが、これが案外楽しい物で今は練と隠を見破る為の凝、そして円を中心に修行している。

防御特化の堅なんかは能力がある為、現状は必要ない。

 

 纏に悪戦苦闘している二人を一瞥して俺自身も意識を集中させる。

今回は、能力を使わずに俺自身の技量だけでやってみる。

 

 身体全体から発生するオーラを掌握。精孔を開くのは黒子と絹旗の二人で慣れた物なので、その時の感覚に従って精孔を一気に開く。

 

 瞬間、爆発的に増加したオーラの勢いで周りの木々が大きくしなった。

激しく燃える炎の様に揺らめくオーラを今度は目に集中させ、凝を行う。

 

 暴れ狂うオーラを整えるのに多少手間取ったが、オーラの流れを整えて目へと集約させていく。

目に集まるオーラが増えていく度に遠くの景色がはっきりと視認できるようになった。

 

 本来の役目である隠を見破る事は試せないが、視力が劇的に飛躍したので凝自体は間違いなく成功している。

目に集めたオーラを今度は右手へ。

 

 さらにオーラを拳に集中させると、光を放ちながら輝き出した。

そのまま拳を地面へ叩きつける。

 

 強化された腕は本来の俺では不可能な力強さと速度で地面へ吸い込まれて行く。

破壊音が響き渡り、俺を中心に数m程度のクレーターが出来上がった。

 

「…こんなもンか」

 

 今の一撃は能力を使わなかったので、分散した衝撃がクレーターと言う形で現れた。

能力で衝撃を一点に集中させれば凄まじい威力になるだろう。

 

 すると、ぱちぱちと手を打つ音が辺りに響いた。

思わず黒子と絹旗の方を見たが二人は今の音に驚いたんだろう、纏を乱しながら突っ立ってこっちを見ている。

 

 瞬時に能力を使いながら円を展開。

能力を使わない状態の俺の円は現状30m程だが、能力を使えばその範囲は300mまで広がる。

 

 ソナーの要領で円の形を細いドーナツ状に広げていけばさらに範囲は格段に上がるが、得られる情報の精度は落ちるので

今回は通常の円を展開した。

 

 10m程離れた場所にある大木の裏に人間の存在を感知。

声を掛けようとしたが、その前に手を打ち鳴らしている本人が自ら姿を現した。

 

「いやぁ~素晴らしい!練の力強さもですが、オーラを整えて凝まで持っていく速度も申し分ない!」

 

 寝ぐせの付いた髪に大きめの眼鏡、はみ出したシャツの裾は身だしなみを疎かにしている事がうかがえる。

原作でゴンやキルアの念の師匠であり、先日に闘技場で目にした人物。

 

 ウイングがそこに立っていた。

 

「あ、貴方は!」

 

 駆け寄って来た二人の内、黒子がウイングを指差し驚いている。

 

「おや?もしかして私と会った事が?」

 

 不用意に知っている風な声を上げた黒子を絹旗が小突いた。

 

「ぐぇっ、い…いえ、闘技場のロビーで見かけた事があると思いまして…」

 

「ああ、そう言う事ですね。試合を見る為に天空闘技場には頻繁に出入りしているのでその時に見かけたのでしょう」

 

 黒子の咄嗟の言い訳に特に疑いを持たなかったウイングはそう言って二人を見て眉を顰めた。

 

「二人は練の修練、と言う訳ではなさそうですね。精孔を無理矢理開く事はあまりお勧め出来ないのですが…

先程の纏も不完全でしたし」

 

 纏を維持出来るだけの集中が切れた二人はまた、オーラが垂れ流しになってしまっている。

思わぬ邂逅で修行所ではなくなってしまったので精孔を閉じる事にする。

 

「そうだな、今日はこの辺にしとくか…ほら」

 

 手を差し出し、二人が触れて来た所で精孔を強制的に閉じた。

垂れ流しになっていたオーラが常人と同じレベルの微弱な量に戻る。

 

「驚いた…。君は精孔の開閉を可能としているんですか、一方通行君」

 

 オーラの流出が止まった二人を見て、驚いた様子のウイング。

 

「…俺の名前を知ってンだな」

 

 闘技場の試合に出ているので知っていてもおかしくはないが…。

 

「ええ、勿論。君達二人の事も知っていますよ。絹旗さんに白井さんですね」

 

「おお、何だか超照れますね」

 

 照れた様子の絹旗が恥ずかしそうにしている。

 

「ズシと年が近い子達が試合に出ていたので自然と目に付きましてね」

 

「そうか、そのズシって奴は知らねェが俺達は悪目立ちしてるしな」

 

 俺達がズシを知っていてはおかしいので、一応その事を言及しておく。

 

「そうですよね、すみません。ズシと言うのは私が念能力の修行を付けている少年の事です。

君達が私を見かけた時に胴着を着た少年がいたと思います。その子がズシです」

 

「ああ、あの男の子の事ですわね」

 

 しっかりと黒子が話を合わせてくれたので違和感は与えなかっただろう。

 

「彼女達の念の師匠は君ですか?一方通行君」

 

「そンな上等なもンでもねェけどな」

 

 俺がやっている事と言えば精孔を開閉させている事くらいだ。

能力で達人並みのオーラ操作を行えはするが、念は精神が大きく作用する力だ。

精神面の事に関しては大して理解していない俺では師匠など務まらない。

 

「しかし、白井さんの瞬間移動にも見えるあの移動術は念能力だと思っていたのですが、この様子では違う様ですね」

 

 思わず舌打ちしそうになったが何とか堪える。

念を知らない奴なら超能力だなんだと勝手に思い込んでくれるだろうし、多少齧った程度の念能力者なら恐ろしく練度の高い隠か何かで自分では見えないとでも思うだろう。

 

 このウイングは原作ではその実力は不明だったが、仮にも心源流の師範代だ。

実力云々はともかく、念に関しての理解の深さは俺などの比にならないだろう。

 

 そんな奴から見れば纏すらままならない黒子が使う空間転移は異様に映る筈だ。

 

「あ~それに関しては何といいますか…」

 

 黒子が冷や汗を流しながら言い淀んでいる。

 

「よく知らねェ奴にそんな事教えると思うか?お前も念能力者なら能力の秘匿の重要性は分かってンだろ」

 

 仕方がないので助け舟を出す。

ウイングの人柄は原作である程度把握している。これくらい釘を刺せば引いてくれるだろう。

 

「これはこれは申し訳ない。私、これでも心源流の師範代を務めさせて頂いているので気になってしまって…そうですね、深く聞かないでおきましょう」

 

 朗らかな表情は変えずにそう言うウイング。

原作ではあまり感じなかったが、こうして対面すると雰囲気と言うかある種の強者のオーラを感じる。

 

 仮にも師範代なので強いのは当然と言えばそれまでだが。

強化系は念の練度が戦闘力に直結する為、師範代クラスの練度を持っているならそもそも弱い筈がない。

 

「二人はいつから念の修行を?」

 

「初めて10日くらいですかね?」

 

「そうですわね」

 

 ウイングの質問に二人が答える。

俺に聞かなかったのはオーラ操作の精度を見たからだろう、ベクトル操作によるブーストを知らない人間が見ればそれなりに念を習得している様に見える筈だ。

 

「10日ですか!それは凄まじい速度だ…、精孔を実際に開いて修練出来るのもあるでしょうが

それを抜きにしても君達は素晴らしい才能を持っていると思いますよ!」

 

 そう言ったウイングを見て、温厚でうっかり者という性格に納得が行く。後は空気が読めない所とか。

俺が明らかに警戒して睨んでいるのに、朗らかに二人の才能を褒めている所を見ると警戒するのが馬鹿らしくなってくる。

 

 それと褒められて、照れているガキ二人もだ。

ウイングを警戒する必要があるかと言われれば、十中八九ないだろうが。

 

「纏が上手く行っていない様なので少しだけアドバイスを…纏の行う時は、体を巡る血液をイメージすると良いですよ。

頭から右半身を伝って足へ、今度は左半身を伝いまた頭へ循環する様を想像してみてください。

流れがゆっくりと感じられる様になったら、体の周りでその循環をイメージすると良いでしょう」

 

 ウイングは人差し指を立てながら二人へアドバイスを送っている。

そう言えば、ゴンやキルアに念を教える時もそんな事を言っていた様な気がする。

 

「へぇ~」

 

「そうと聞けば善は急げですわよ!一方通行、精孔を開いてくださいな!」

 

 黒子が俺の手を握りながら催促してくるが、振りほどく。

 

「今日はそれなりに消耗してンだろ、そンな状態でやっても上手く行かねェよ。明日も空いてンだからその時にしろ」

 

「えぇー、そう言わずにお願いしますの」

 

「いえ、彼の言う通りですよ。念の修行は研ぎ澄まされた精神と健全な肉体で行う物です。今日はもう休養した方が良いでしょう」

 

 ウイングに嗜められて、黒子は漸く引き下がった。

 

「君達ならすぐに纏を習得できるでしょう。これ以上の口出しは無粋でしょうから、後は一方通行君の教えに従って修練を積めばきっと良い念能力者になる」

 

「「はい!」」

 

「だから師匠じゃねェって言ってンだろうが…」

 

 ウイングの激励に突っ込みを入れるが、本人は気にした様子を見せない。

謙遜とでも思っているのだろうか。

 

「では私はこの辺りで、君達が良き念能力者になれる様に陰ながら応援していますよ」

 

「そうか」

 

「超ありがとうございましたー」

 

「ご指導感謝致しますの!」

 

 手を振る二人を横目に去って行くウイングを眺める。

想像通りのお人好しだった。得体の知れない念使いにアドバイスを送る程だとは思わなかったが。

 

「とりあえず帰るぞ」

 

「はーい」

 

「さっさと休んで明日こそ纏をマスターしますの!」

 

 原作キャラと出会って興奮している黒子を見た。

2週間程共に行動して分かっていたが、原作のファンだったんだろう。

 

 鼻息荒くホテルに戻る黒子の後ろを絹旗と歩く、俺自身念をマスターしたなどとは毛程も思っていない。

能力でオーラを解析しただけだ。そして今日ウイングに会って確信した。

 

 実際に近くで見て解析したが俺とウイング、同じオーラでもその質がまったく違っていた。

まだ水見式していないので俺の系統は分からないが、系統の違いなどという物じゃない。

 

 オーラその物の密度と言うのだろうか。

仮に俺のオーラとウイングのオーラ、まったくの同量でぶつかり合った場合、負けるのは俺の方だ。

 

 ウイングが強化系だからではない。強化系のオーラはその物の持つ強さを増幅する事に長けているだけでオーラその物が強力な訳じゃないからだ。

 

 恐らくオーラ操作技術なら能力を使えば俺が上回る。

しかし、先程ウイングが言っていた様に、念能力は肉体と精神に依る所が大きい。

 

 月並みな言葉で表現するなら、オーラその物が洗練されている…と言った所か。

原作でもどれだけの事が出来て、出来ないのか…定義はあっても描写は曖昧だった。

 

「そう簡単には行かねェか」

 

「どうかしましたか?一方通行」

 

 俺の独り言が聞こえたのか、顔を覗き込んでくる絹旗。

 

「何でもねェ」

 

 絹旗の頭を掴んで前を向かせる。

暫く怪訝な目で俺を見ていた絹旗だが、諦めたのかまた前を向いて歩き出した。

 

 今は考えても仕方がない。今は修行を積んで、200階に到達してからは相手の念能力を解析しながら理解を深めて行くしかない。

 

 当面は俺自身の念の技量向上と、能力を併用したオーラ操作を磨いて行けば良いだろう。

そんな事を考えながら、日没が早くなって来た夕焼けの空を眺める。

 

 俺は反射で実感出来ないが、10月に入り肌寒くなって来た頃合いだ。

今は1998年、来年の1999年は原作の最初のイベント第287期ハンター試験が始まる年。

 

 最初は乗り気じゃなかった念の習得だが、こうなったらとことん突き詰めるつもりだ。

ストーリーが進む度に物騒になって行く原作、この世界も限りなく近い道筋を辿るだろう。

 

 強くなっておいて損はない、今の内にやれる事はやっておくつもりだ。

 

 

 

 




何処かで高位の念能力者は相手のオーラを見たり触れたりするだけで
ある程度その実力が分かるみたいな事を見たんでそうするとオーラって技量とか
総量や潜在オーラ量、顕在オーラ量以外にもオーラその物の熟練度的な物があるんじゃないかと。

分かりやすく例えるとオーラの強さが
オーラ量×オーラ熟練度=強さとすると

仮にゴンは量100×熟練度1で戦闘力が100で

ウイングの量が50しかないとしても修行により熟練度が3だったとしたら
戦闘力は150になるのでウイングの方が強い、かもしれない

みたいな感じの事を独自解釈マシマシで勝手に考えながら書いてました。
(分かりにくかったら申し訳ない)

ちなみに今回はズシ君にはお留守番をしてもらいました。人数増えると面倒とか
そんな事思ってないです。
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