ボーダー隊員達がガチで塗りあう時が来た?   作:枝久桜

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第1話

「二宮隊の宿敵は太刀川隊だそうです」

 

〈2014年3月3日 PM 18:30、ボーダー本部 二宮隊作戦室〉

 

B級ランク戦最終戦2日前、

防衛任務を終えた二宮隊の攻撃手(アタッカー) (つじ)新之助(しんのすけ)とオペレーターの氷見(ひやみ)亜季(あき)が作戦室で寛いでいると、そこへもさもさの髪のチャラそうな青年 犬飼(いぬかい)澄晴(すみはる)が〝何かのケース〟を片手に入ってくる。

 

(つじ)ちゃんにひゃみちゃん、スプラトゥーン2やらない?」

 

と、テーブルに向かい合わせに座る2人の隊員に〝スプラトゥーン2〟とロゴのあるゲームソフトを差し出す。

 

「なんですか?これ」

 

「あ、弟がやってるのを見た事がありますね」

 

2人が少し興味を持ってくれたところで、犬飼がにやりと笑う。

 

「イカした奴らがナワバリ巡ってインク塗り合うゲームなんだけど、やってみると意外と面白いんだよね」

 

「人気ありますもんね。さすが任○堂」

 

犬飼(いぬかい)先輩がそういうなら俺やってみます」

 

早速、ゲーム機(×3)を用意して、各自ゲームを起動する。基本的な要素を聞いた(つじ)はまず使えるブキの種類の多さに意外性を感じた。

 

「ブキって色々あるんですね」

 

「でしょう!ちなみにおれは〝ヒーローシューターレプリカ〟ってブキ使ってる」

 

「〝シューター〟ってことは銃を使ってないんですか?」

 

ボーダーでいうところの〝シューター〟となると、我らが隊長 二宮(にのみや)出水(いずみ)のような銃型のトリガーを使わないスタイリッシュな人達のイメージが強い。

 

「いや?形がおれの使ってるのと似てるから使ってるだけー」

 

そう言って、実物の画面を見せてもらうと確かに犬飼(いぬかい)の使っている銃の形状にとても似ている気がする。

とりあえず、(つじ)は初めてということで普段使い慣れている〝弧月(こげつ)〟に何となく近いものを感じる〝パブロ〟を選択する。

 

「じゃあ、俺はこの〝パブロ〟ってやつを使いますね。ひゃみさんは?」

 

「私はとりあえず何でもいいから〝チャージャー〟?を使ってみる」

 

鳩原(はとはら)先輩……」

 

〝チャージャー〟というと、見た目が狙撃手(スナイパー)が使うものととても似ている。

1年近く前に二宮隊には狙撃手(スナイパー)が1人所属していたが、とある事情で《近界(ネイバーフット)》へと姿を消してしまっている。

今思い出してもとても優しい先輩だったと(つじ)は思う。

 

「辻ちゃん?センチになってる暇ないから早く準備してね」

 

3人が楽しげに進めようとしていたそこへ、3人の上司であり、隊長の二宮(にのみや)匡貴(まさたか)が作戦室に帰ってくる。

 

「お前達、何をしている」

 

「あ、二宮(にのみや)さん。お疲れ様です」

 

「今、犬飼(いぬかい)先輩に誘われてゲームをしようとしてたんですよ」

 

テーブルの上に置いてあるパッケージを見て、二宮(にのみや)は呟く。

 

「〝スプラトゥーン〟か」

 

瞬間、(つじ)氷見(ひやみ)の2人が一斉に二宮(にのみや)の方を向く。

ボーダートップクラスのトリオン量を持ち、射手(シューター)の頂点に君臨する〝あの〟二宮(にのみや)匡貴(まさたか)の口から出たまさかの「〝スプラトゥーン〟か」に2人は驚愕を隠せなかった。

 

「……知ってるんですか?」

 

すると、犬飼(いぬかい)が捕捉するように言った。

 

「あ、二宮(にのみや)さんには1週間くらい前にソフトをプレゼントしてるからね」

 

3人のゲーム画面から二宮(にのみや)は、これから〝ナワバリバトル〟をするのがすぐ分かった。

 

「〝ナワバリバトル〟をするのか」

 

二宮(にのみや)が冷蔵庫からジンジャエールを取り出そうとする。まずい、この状況で二宮(にのみや)がジンジャエールが飲み始めようものならもう手に負えない!隊長がクールにジンジャーエールを飲んでいる前ではしゃぎ倒すなんて到底耐えられる状況ではない。

(つじ)は他の2人も同じ事を考えていることを瞬時に察知。先程、鳩原(はとはら)の私物の入った段ボールから取り出したゲーム機を二宮(にのみや)に差し出して誘う。

 

「丁度、4人いるのでよろしければどうです?」

 

しかし、(つじ)のゲーム機に二宮(にのみや)は手を前に突き出して〝否定〟する。

駄目か……。このままでは、「上司がジンジャエールを飲んでいるのを目の前にして部下達だけがゲームに興じる」という居た堪れない空気が出来上がってしまう。

 

だがその予想は、次の瞬間には覆ってしまう。

二宮(にのみや)はジャケットの内ポケットからさりげなく、ゲーム機本体を取り出して、そっと電源を入れる。

 

「………やるからには勝つぞ」

 

◆◆◆◆◆

 

とりあえず、ジンジャエールの災難は過ぎ去り、

いよいよ、一行はナワバリバトルへと突入する。

すると、二宮隊の面々の他に入ってきた〝4人のプレイヤーネーム〟に犬飼(いぬかい)が腹を抱えて笑う。

 

「あはは!相手の名前見てくださいよ!これ、本名じゃないけど特徴的に太刀川(たちかわ)隊そのままじゃないですか?」

 

二宮隊の面々の名前はそれぞれゲーム機本体の名前になっているが、他4人のプレイヤーネームは上から順に〝もちもちきなこもち〟〝エビフライヤー〟〝なんばーわんゲーマー〟〝ゆいがどくそん〟と、特徴だけ見れば〝どこかで見た〟ような名前が勢揃いである。

 

「〝もちもちきなこもち〟だと?太刀川(たちかわ)の好物に似たふざけた名前しやがって。あいつを優先して撃ち落とす」

 

「じゃあ、おれは塗りに専念しますねー。(つじ)ちゃんとひゃみちゃんはキル取られないように動いてくれればそれでいいからね。まずは動き方を覚えよう」

 

(つじ)、了解」

 

「了解です」

 

フィールドが決定して、それぞれのイカが画面に参上する。ちなみに二宮隊のイカは(つじ)氷見(ひやみ)が初心者なので、スプラシューター装備なのだが、驚くべきはその隣である。

〝クラッシュブラスターネオ〟を片手にギアパワーが綺麗に並べられた装備はまさに〝芸術〟のような出立ちをしたイカである。

だが、犬飼(いぬかい)が最初に見せてくれたブキの見た目と異なるということはまさか……。

 

二宮(にのみや)さん、装備が本気過ぎませんか?」

 

そう、この最高にイカした装備のイカは

我らが隊長 二宮(にのみや)のイカなのだ。

 

二宮(にのみや)さん、こう見えて世界ランク2位だからね」

 

「始めて1週間の人とは思えない……」

 

「きっと友達がいな………」

 

「ひゃみちゃん、それ以上はいけないから!」

 

3分間のバトルを終え、結果集計をすると

惜しくも数%の差で負けてしまった。

尤も、二宮隊のうち2人は始めて数分の初心者なので負けるのは仕方ないといったところか。

 

「いやー、これはエグいね。(つじ)ちゃんとひゃみちゃんは仕方ないとして、〝もちもちきなこもち〟が二宮(にのみや)さんばっかり集中攻撃してたから」

 

「意外と負けると悔しいですね」

 

「すみません、二宮(にのみや)さん。あまり動けていなくて」

 

3人が悔しそうにしていると、3人よりも更に悔しそうに二宮(にのみや)が静かに怒りを露わにする。

 

「……初心者狩りとはふざけたことしやがって」

 

二宮(にのみや)さんも始めて1週間じゃありませんでしたっけ?12キルくらいしてませんでした?」

 

「今から太刀川(たちかわ)隊室に行って、直接餅を撃ち落としに行く」

 

そう言って、椅子から立ち上がり

作戦室を出て行く二宮(にのみや)に3人は隊長をただ見送るしかできなかった。

 

「まだ、太刀川(たちかわ)さんだって決まったわけじゃないけど……まぁ、いっか。イカだけに」

 

to be continued…

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