「東さん、マジ一生ついていきます!」
〈2014年3月7日 PM 17:30、ボーダー本部 東隊 作戦室〉
「さて、今日は防衛任務も休みだし、ゆっくりとするのもいいな」
明日提出の書類を片付け、椅子の背に思い切り体重を乗せる。B級 東隊の隊長
今日の防衛任務は休み。
部下であり、教え子である小荒井、奥寺はソロランク戦へ、人見は用事があるからと今日は顔を出してはいない。
静まり返った作戦室内で1人……。
これは、ゆっくりしないという選択肢がなかった。
思えば、これまでの教え子達は皆、癖が強すぎる面々ばかりであった。
黒スーツにやたらとポケインしたがる射手の王、チャーハンで同年代を薙ぎ払うセレブオーラ、口を開けば「
悪い子達ではないのだ。悪い子達ではないのだが、いかんせん〝我が強すぎる〟のだ。
最近の子供達は皆、あんな感じなのだろうか。
なんて思い出に耽りながら、飲み物でも買ってこようかと席を立ち上がり、扉の前まで行こうかとしたその時だった。
東が扉の前に立つより先に、電子扉が開いたのだ。そして、複数人の男女がぞろぞろと作戦室内に流れ込んでくるではないか。
「失礼します
そう言って、小脇に少女を抱えて入室してきた黒スーツの青年
「ご無沙汰してます
そして、その二宮に対抗するかのように小脇に2人の〝男子大学生〟を抱える女性
「…………うーん どうした?お前たち」
ああ、これはゆっくりと休めそうにない。
そう覚悟した東だった。
そんな東に話を切り出したのは、二宮。
「単刀直入に言います。俺とスプラトゥーン2で チームを組んでください」
「ん?チーム?スプラトゥーン?」
頭に疑問符を浮かばせる東に二宮は空いてる手を差し伸べて提案する。
「はい 先日
「話が少し見えないのと、お前がその小脇に抱えた
と、二宮の小脇に抱えられた少女
「は〜〜な〜〜せ〜〜!胸に触るな〜〜!セクハラで訴えるぞ〜〜!」
「触ってないし、少しうるせぇ」
「助けてくださ〜〜い!
泣き目で訴えかけてくる国近に東は「まぁ、離してやれ」と言ったところで二宮もさすがに気まずくなったのか国近をその場で丁寧に降ろした。
「うん、それで?
東が尋ねると、加古は小脇に抱えた2人の男子大学生を降ろして、背後に立っている来馬から〝ドーム状にご飯が乗せられた皿〟を受け取る。
「新作のチャーハンができたので
なるほど。遂にここまで来てしまったか。
地面に倒れ込む
おそらく、加古の新作チャーハンを食べたことで、太刀川と堤は死んだのだろう。
そして、来馬は巻き込まれはしたものの〝運が良い〟ので死ななかったというところか。
さらに二宮に味見してもらおうとしたところ、拒否されたので
「よし
「ありがとうございます」
ほぼ即答である。
だが誤解してほしくはないのが、加古のチャーハンには味の当たり外れが確かにある。無論、彼女がちゃんとした手順を持ってチャーハンを普通に作ればハズレはない。ただし、〝普通に作れば〟の話である。
それに味覚がおかしいわけでもないのだ。ちゃんと奢りの焼肉の味くらいは判別できるし、この間のランク戦では風間と綾辻にチョコレートを渡したと言う話ではないか。味覚は正常なはずなのだ。だが、好奇心が太刀川と堤を殺す。
なんと罪な女なのだろう。
そんな現時点で太刀川と堤を薙ぎ倒すほどの破壊力を秘めた
二宮も死にたくはないだろうが、東だって死にたくはないのだ。
「
「お前、一度でもその
「
「お前のところの〝
「わかったわ そこまで言うなら勝負よ!私が勝ったら……この場にいる全員に私のチャーハンを食べてもらおうかしら!」
その時、空気が一瞬にして凍ったのがわかった。
東や二宮はもちろん、地に伏し、もはや
「嫌だあ……死にたくない死にたくない死にたくない……!」
ぶつぶつと繰り言を呟く国近も二宮の腕の中で恐怖に慄きながらぷるぷると震えているのが東の目で見てもわかる。
「上等だ それなら俺たちが勝った場合は 2度とその
「あなたにそんなことを 言われる筋合いはないわ」
その時、その場にいる全員の心の中で戦いのゴングが盛大に鳴り響いた気がした。
各々がアイコンタクトで自分が二宮と加古のどちら側につけばいいのかの損得勘定を始める。
結果、来馬以外のメンバーは満場一致で二宮に付くことを決意!
(早く
(このままじゃ本当に
既に
「あ、
そう加古の満面の笑みと共に首根っこ掴まれてしまった2人。
最早、彼らに逃げる術は残されていない。
太刀川と堤は犠牲になったのだ。
東は無念に思いながらも二宮の方に滑り込むように彼と握手を交わす。
「
「もちろんです。
一方、加古に捕まった太刀川及び堤は内心で悲鳴を上げつつ、最後の抵抗を試みる。
「ま、待て加古……!俺たちさっきのチャーハンで満腹なんだ 頼むから解放してくれないか?」
「そ、そうなんだ!これ以上 チャーハン食べられないかもな……」
「でも
その時、太刀川&堤に電流走る。
自分達をここまで苦しめた「加古特製チャーハン」を、この他人事のような目でこちらを見つめていけしゃあしゃあと東とチームを組んだ二宮に〝喰わせる〟ことができる。
なんだそのご褒美は。想像するだけでニヤけ顔が止まらないじゃないか。
「しょうがねぇな
「そうだね……
◆◆◆◆◆
そうして集めれた8人の
各々、自前のゲーム機を取り出すと、当然の如く「スプラトゥーン2」を起動する。
各々のプレイヤー情報は大方こんな感じである。
二宮チーム
二宮(ユーザーネーム:ニノミヤ)
東さん(ユーザーネーム:RRR)
国近(ユーザーネーム:なんば〜わんゲ〜マ〜)
奈良坂(ユーザーネーム:たけのこのくにのおう)
加古チーム
加古(ユーザーネーム:K.Nozomi)
太刀川(ユーザーネーム:もちもちきなこもち)
堤(ユーザーネーム:ばいプッシュだ!)
来馬(ユーザーネーム:たつや)
プライベートルームを開き、8人がそれぞれ集まってくる。
そして、選ばれた対戦フィールドは
「ガンガゼ野外音楽堂」
中央に少し低い高台という名のステージがあり、この場所をイカに制圧できるかが勝利の鍵の一つになっている。故に制圧されてしまうと打開が難しく、そのまま押し切られて敗北するなんてこともままある。
マルチミサイルやナイス玉などの集まってる敵をまとめて吹き飛ばす系のスペシャルか、ビーコンなどの戦線を維持できるサブウェポンを持っていると逆転のチャンスがあるぞ!
※書き手個人の感想です。
そして、8人……もとい8体のイカ達がそれぞれ4人ずつのチームとなってフィールドに出現する。
「まずは俺と
ステージの左右端には、ヒト状態でなら裏取りができる金網ルートが存在する。
基本的にステージ中央は激戦区となっており、
中央突破は容易ではないが、金網ルートを渡ることで比較的安全に敵陣地まで侵入することができる。
つまり、〝
そして、こと〝狙撃〟に関していえばかつてのA級1位を率いた男
「
「
まさか、ここに集まったメンバーは偶然です!とでも言うのだろうか。
そして、いよいよ「加古特製チャーハン」を賭けた命懸けの決戦の火蓋が切って落とされる。
『
『わかってますよ〜だ!』
さも当然の如く、内部通信で会話する二宮チーム。
無理やり連れて来られて不満たっぷりの国近も、なんだかんだ言ってゲームとなればただ負けるわけにはイカない様子……別の思惑が重なっていることは言ってはいけない。
一方、加古チームは左右の金網ルートは使わず、比較的近くで互いにサポートできる距離を保ちながらまずは中央の高台を取りに行く様子。
(どうせ
金網ルートは上手く使えば、打開のきっかけにもなり、奇襲にも使えるルートではあるが、そこを通るイカを警戒して人員を割けば、勿論中央の高台を取るための人数が足りなくなる。
特に「ガンガゼ野外音楽堂」は比較的〝横〟も広い構造になっており、縦横無尽に動き回られるとチャージャーがその範囲全てをカバーするのはかなり難しい。
東や奈良坂なら、そんなの関係なしに撃ち落としてくるだろうが、加古には〝秘策〟があった。
「
そう言われて、来馬と堤は2人揃って二宮の方に接近する。
どうやら加古チームにとっての脅威は二宮であるらしく、二宮がクーゲルシュライバー・ヒュー(
クゲヒューのサブは「ジャンプビーコン」。
高台が多く、陰になる場所が多い「ガンガゼ野外音楽堂」では金網ルートの真下やオブジェクトの陰に置いておくと意外と敵に気が付かれることが少なく、安全に味方の復帰を援護しやすい。
さらにスペシャルは「アメフラシ」と、中央高台や、チャージャーの敵の狙撃地点を潰すと言う意味ではかなり有能である。
※あくまで書き手個人の感想です。
「
太刀川には東か奈良坂のどちらかを釣ってもらえれば上出来。1人でも釣れれば、片方は援護するために移動するか、塗りに専念するしかなくなる。どの道、チャージャーでは塗りは期待出来ないだろう。そして、加古はヒーローマニューバーレプリカで前線を無双しまくる国近に接近していく。
「
「やばい〜!
『
そう言いながら、堤と来馬の2人を相手にクゲヒューで立ち回る二宮に〝数の優位〟は存在しないようで、2人に挟まれないように適度に移動を繰り返しながら反撃の弾丸を放つ。
『わかった 援護に入ろう』
一方、二宮から〝国近の掩護〟を指示された東も自陣の高台を降りて、国近に迫る加古に接近を試みる。
すると………
「
「た、
ZAPを携えた太刀川が降りて来た東の側面から物凄い勢いで接近してくるではないか。
余程、「加古特製チャーハン」を二宮に食べさせたいのか、目が血走ってる。
もう助からないことを悟って、せめて〝道連れ〟を増やそうという魂胆か。
「頼むよ…
言ってることは完全に悪役のセリフのそれである。
だが、東だって死ぬわけにはいかない。
もし、仮にここで惨めに敗北し、「加古特製チャーハン」を食べた場合、復帰するのに数日を要すると予想。そうなれば明日の防衛任務ができなくなる!
東が射程攻撃ではない、連続射撃で迎撃するもZAPの太刀川の機動力を前に、東があと一歩のところで削り取られるその時だった。
東の前方からの攻撃が太刀川のイカを派手に〝吹き飛ばす〟———奈良坂の〝チャージャー〟である。
『
『助かった
しかし、それと同時に
どうやら二宮もキルされてしまったようで
前線がさらに加古チーム有利へ傾いてしまう。
『すみません
『大丈夫だ ここは俺と
『
味方倒れずとも冷静さを失わずに戦線を保とうとする姿勢は、さすがは元A級1位の隊長といったところである。
本来ならここは実質的な臨時隊長?である二宮を立てて、東が前に出るべきではない。だが、東の脳裏に浮かぶ「加古特製チャーハン」……食べれば、無事では済まない
『
『
そう言って、来馬と堤のヘイトを溜めるために中央高台のステージに乗り込んだ奈良坂。
それを見て、堤が反応する。
「チャージャー使いが ステージ上に登って来た……?」
中央高台ステージは既にほとんど加古チームによって塗り尽くされている。
今更チャージャーが出張って来たところで塗りが足りないので打開はできないはず。
となると……。
「〝サブウェポン〟……!」
奈良坂のブキは〝スプラスコープ〟である。
サブウェポンは〝スプラッシュシールド〟だと思われるが、それで直接的な打開効果は見られない。
ならば、一体何が目的……
すると、奈良坂は数発ほど適当な地面を撃ったと思えば、イカの髪色が〝焔のように逆立つエフェクト〟に変わるではないか。
「しまった……!〝スペシャル〟か!」
気が付いた時には奈良坂は既にスペシャルを発動しており、〝キューバンボム〟を連続して周囲にばら撒いていく。
〝スプラスコープ〟のスペシャルは〝キューバンボムピッチャー〟……インクを消費せずにキューバンボムを投げることができるスペシャルで、着弾するまでの間にタイムラグはあるものの、威力は高め。
そして、そのうちの1発が国近との一騎打ちをしている加古の近くへ設置される。
「
堤が声を上げるよりも早く、キューバンボムは炸裂し、国近の近くにいた加古のイカを爆破する。
キューバンボム含むスペシャルやサブウェポンで味方は死ぬことがない。
追われる味方を援護する戦法としては悪くないのかもしれない。
「あら?いきなり弾け飛んだわ?」
僅かな綻びが生まれた加古チームの隙を突く様に東が国近と奈良坂に勢い付ける。
しかし、そこへ先ほど倒したはずの太刀川が前線まで上がって来ているではないか。
ほぼ同時に倒れた二宮はまだスタートから少し離れた地点で塗り忘れていたところを塗っていた。
「
〝復活時間短縮〟……文字通り、自分がやられてからの復活の時間が早くなると言うもの……。
残り時間は1分半。加古と太刀川はメインに3つ装備しているところを見るとこの次にキルを取られれば、短縮時間はおよそ3秒。仮に二宮チームが1人でもキルを取られると戦力では完全に不利となってしまう。
最初から二宮チームを相手に正面から撃ち合っても勝ち目が薄いことは織り込み済み。
ならば、撃ち合いで有利を取るよりも負けてキルを取られた後の〝リカバリー〟の方が重要だと加古は考えたのだろう。
「さすが
もちろん、加古のギアにも〝復活時間短縮〟のギアは装備済み。
加古チームは全員が塗りに強い〝射撃系ブキ〟であるのと、最初強引に攻めたのがここで効いてきたのか、全体的な塗りの比率はまだ加古チームが多い。
しかし、太刀川が戦線に戻ってきても、今なら二宮も戻ってきた上での4対3でまだ二宮チームが数の上で有利になっている。
『ただいま戻りました
『なら
言いながら、東は堤と来馬のイカを吹き飛ばし、戦線復帰してきた太刀川すらも赤子の手を捻るが如く、チャージャーで吹っ飛ばす。
指揮能力だけではない。狙撃の技術も超一品級である東を前に彼らの射撃技術など赤子も同然。
一気に3人もキルをした二宮チームはこれを機として更に塗りを進めていく。
瞬く間に中央高台を制圧した二宮除く3人がいよいよ敵陣地に潜入する。
しかし、加古チームも黙って自陣を塗られるのを見ているばかりではない。
塗られた自陣を少しでも取り戻そうと積極的に前に出るも既に〝固め終わった〟二宮チームに隙はない。金網ルートで一足先に安全に敵陣地に乗り込んでいた二宮を筆頭に東と奈良坂が敵陣地の高台に陣を構えた。
そして、3分間に及ぶバトルは終わり。
結果はもちろんと言うべきか
二宮チームの圧勝という形に終わった。
「俺たちの勝ちだ……もう2度と
もうこれで「加古特製チャーハン」で犠牲者は増えない。安心したのも束の間のことだった。
来馬が最初に加古から手渡された〝チャーハン〟を手に取るとこう呟いたのだ。
「けど、そうなると……この〝チャーハン〟はどうしようか?捨てるの……もったいないよね?」
「………」
「………」
その場の誰もが口を閉じるしかなかった。
そして、この後……この残り物の〝チャーハン〟を巡る更なる〝地獄絵図〟が繰り広げられるのだが、それはまた別の話である。
to be continued…