ボーダー隊員達がガチで塗りあう時が来た?   作:枝久桜

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第16話

「「処刑者」と書いて「マキリッサ」と読ませたい…」

 

〈2014年3月9日 PM 12:00〉

 

「ボーダースペシャルフェス」その記念すべき第1回戦は、ボーダー最強の射手こそ()()()二宮匡貴が率いる「我、嵐ぞ?」とその二宮匡貴への復讐に燃える絵馬ユズル擁する「ゾエとゆかいな仲間たち」、そして今大会最強のダークホースと称されている「ムラカミイレブン」。

誰が勝ってもおかしくはないこの白熱した対戦カード。

その実況を務めるは、

 

『さぁ、やってまいりました!ボーダースペシャルフェス第1回戦!実況は私、武富桜子がお送りいたします!!』

 

そして、武富の隣で不遜に腕を組んで座る黒髪の女性は目の前のモニターをただじっと見つめていた。

 

『解説は、冬島隊オペレーターの真木理佐さんにお越しいただきました!』 

 

武富の紹介に預かった真木理佐は態度こそ不遜なものであることは変わらないものの、一応の礼儀としてその場で会釈する。

 

『どうぞよろしく』

 

普段はランク戦の観戦場所となっているこの場所も、今日はスプラトゥーン2のフェスのためだけに貸し出されている。

そして、観戦しているB級からC級も皆、誰しも思っただろう。

 

———絶対に人選を間違ってるだろ、と。

 

なんでよりによって真木理佐を呼んでしまったのか。

普通のランク戦ならいざ知らず、言ってしまってはなんだがたかがゲームのイベントの解説に呼ぶ人物ではないだろう。絶対にもっと相応しい人間が、いたはずである。

たとえば、国近とか、柚宇さんとか、くにちかとか。

そして、観客の動揺を余所に実況席の武富は叫んだ。

 

『さぁ!もうすぐボーダースペシャルフェスの第1回戦が始まります!』

 

◆◆◆◆◆

 

選ばれたのはフェス限定で出現する特殊ステージである「トジトジ」。

時間経過と共にステージが次々に隔離されていくという一風変わったステージである。

隔離された場所はバトル終了まで解放されることはなく、仮に隔離されたステージにチームの誰か1人がいるだけでその場所を塗り尽くすことが可能。隔離されているために他のチームが塗り返すこともないため、隔離されたステージに入るということは大幅なアドバンテージの1つともいえる。

※あくまで書き手個人の感想です。

 

さて、そんな特殊ステージに放り込まれた総勢12体のイカ達。

Y字型になったステージのそれぞれ端からのスタートとなった各チームのイカ達が一斉に動き出す。()()()()を残して。

その全く動かないイカを不審に思った武富が小首を傾げた。

 

『おや?「ムラカミイレブン」に誰か動いてないイカがいますね?なにか戦術的なメリットでもあるのでしょうか?』

 

そんなものはあるはずはないのだが、

真木理佐は冷静に分析を始める。

 

『余所見してたらいつの間にかスタートしてたってところじゃないかな』

 

『なるほど!確かによくあることですね!』

 

そして、ムラカミイレブンの1人「むらかみです」を除いた3体のイカは人数的不利をものともしない勢いで自陣の塗りから入る。

が、

 

『おっと!「我、嵐ぞ?」の「ニノミヤ」さんが敵陣に突撃していくぞ!』

 

「我、嵐ぞ?」の「ニノミヤ」を除く3人が自陣の塗りを進めていく中、単身で敵陣に乗り込んできた「ニノミヤ」。

その大胆さに真木理佐が思わず息を呑む。

 

『自陣の塗りは味方に任せて自分は敵の殲滅に入る。これは腕にかなりの自信がなければできないことだ』

 

そして、真木理佐のいう通り、単身で敵陣に乗り込んだ「ニノミヤ」がブキである「クラッシュブラスターネオ」で次々とイカを葬り去っていくではないか。

さすがはボーダー最強の射手。勝手は違ってもその動き、最早シロウトではない。プロである。

 

『さすが二宮さんと言ったところかな。ゲームでも手は抜かないか』

 

しかし、「ニノミヤ」の周囲のイカ達も黙ってはいない。

これ以上の進撃を許さんとイカ達が「ニノミヤ」を一斉に包囲し始める。

特に「ニノミヤ」封殺に動きを見せたのは「ゾエさん」と「おれがじんゆういちだ」「ポカリスエット」「Kage」の4体。

通常のスプラトゥーンならば、ステージには2チームしかいないが、今回はボーダースペシャルフェス仕様の三すくみ戦である。

本来ならば、混戦になればなるほどキルを取られやすくなるものだが、驚くべきことに「ニノミヤ」を包囲する4体の()()は同じ。

 

———先に「ニノミヤ」を潰すこと。

 

そのためには共闘も辞さない覚悟でやらねば、「ニノミヤ」は倒せない。もしも「ゾエとゆかいな仲間たち(イカ「ゾエチーム」)」と「ムラカミイレブン」で潰し合えば、それこそ「我、嵐ぞ?」の思う壺である。

 

「ムラカミイレブン」の「ダイハード2」はブキが「パブロ」である以上、「クラッシュブラスターネオ」持ちの「ニノミヤ」には勝てないし、「ゾエチーム」の「Yuzuru」は「我、嵐ぞ?」の「ストームマウンテン」と「とりまるです」を1人で相手取らねばならない。

 

しかし、「ニノミヤ」だって、()()()()()()()()と一緒にされては困る。

Proコントローラーを手にしてから早3ヶ月半。

「ニノミヤ」の成長は———青天井の如く、止まることを知らない。

その圧倒的な操作スキルは、僅か3ヶ月半で彼を世界ランク2位に押し上げ、名実ともにボーダースプラ界の頂点に君臨させ、最強の名を欲しいままにした。

 

「ニノミヤ」こと二宮匡貴は生半可な気持ちでスプラトゥーン2をプレイするイカ共に豪語する。

 

———ぬるいスプラトゥーンしやがって。

 

その言葉通り、「ニノミヤ」の周囲を取り囲むイカ達は一向に「ニノミヤ」を捉えることができず、人数的な不利も相まって「我、嵐ぞ?」の塗りが益々苛烈になってくる。

 

そして、その時は来る。

 

『おおっと!ここでステージの分離が始まったァ!』

 

『隔離されたゾーンに入れるか……ここが()()()()()()()()()

 

真木理佐の解説に、武富が小首を傾げる。

 

『どういうことですか?』

 

『確かにステージが隔離されれば、隔離されたゾーンは()()することが可能だし、それは大きなアドバンテージになる。けど、それは裏を返せば、隔離されたゾーン以外は塗りに行けないことを意味する』

 

『塗った後に加勢にはいけないんですか?』

 

『隔離されたゾーンに他の敵がいれば、自滅できるけど、それだと孤立した意味がなるなるからね』

 

『つまり、隔離されたステージを取るためには、人数的不利を抱えなければならいということでしょうか?』

 

『ま、どちらを取るかは、その人間次第だろうな』

 

そして、ステージ中央に、ドーム状の物体がゆっくりと降りてくる。

塗り的には「我、嵐ぞ?」がほとんどを塗り尽くしており、他2チームも隔離された部分は諦めるつもりなのか中央からどんどん遠ざかっていく。

 

しかし、「ゾエチーム」の「Yuzuru」だけは違った。

 

『なんと!ここで「ゾエとゆかいな仲間たち」の「Yuzuru」くんが隔離されたゾーンに侵入ゥ!』

 

序盤における単身突破の「ニノミヤ」への意趣返しのつもりだろうか。残りの時間での逆転の塗りを捨ててでも隔離されたゾーンの塗りを取りにした「Yuzuru」の大胆さに真木理佐も思わず「フッ…」と笑みを溢す。

 

『ドーム内の塗りを取りに行ったか』

 

そして、「Yuzuru」に続いて、「ニノミヤ」までもが隔離されたゾーンへ侵入していく。

 

『こ、これは!!』

 

『「ニノミヤ」さんと「Yuzuru」の一騎打ちだ』

 

隔離を終えたゾーンに残された

「ニノミヤ」と「Yuzuru」———。

鳩原未来という浅からぬ因縁を持つ2匹のイカ。

ランク戦においては常に圧倒的な戦術でB級1位の座に君臨してきた二宮隊だが、

スプラトゥーンにおいては、そうはいかない。

 

「Yuzuru」こと絵馬ユズルは決意する。

 

———ここで、あんたを潰す。

 

「ニノミヤ」こと二宮匡貴は挑発する。

 

———ならば、戦え。そして証明しろ。

 

 

 

最初に動いたのは、「ニノミヤ」。

「Yuzuru」の方は、ドーム内の塗りが「我、嵐ぞ?」によって大半を占めていたのもあってか動き出しが鈍い。なにしろ地面を塗りながら「ニノミヤ」も迎撃しなければならないのだ。

生半可な集中力ではまず不可能である。

「Yuzuru」がここで「ニノミヤ」に倒されれば、せっかく取りにきたアドバンテージも無に帰してしまう。

ドームの外の人数的不利は仕方ないにしろ、おそらくドーム外の戦力差は「ニノミヤ」がドーム内に隔離されたことで縮められたはず。

 

事実、「ニノミヤ」の隔離によって、他2チームの動きが明らかに変わった。

「我、嵐ぞ?」は序盤で得た塗りを死守するために散らばりながら、戦線を維持し続けている。

「ムラカミイレブン」と「ゾエチーム」も「ニノミヤ」の事実上のリタイアを()()()()と見て、前線を押し上げんと適度な距離を保ちながら人数差を利用した射撃戦を繰り広げる。

 

外側はやや「我、嵐ぞ?」に不利に傾いてしまったものの、それでも「ニノミヤ」は信じていた。自軍の勝利を。ぬるいスプラトゥーンをしているイカ達へ()()()()()()がどういうものかを教えてやれることを。

 

「ニノミヤ」はドーム内の塗りのアドバンテージに加え、自慢のギアスペックによる射程と機動力を駆使して「クラッシュブラスターネオ」で「Yuzuru」に襲いかかる。

しかし、それでもまだ射程は「Yuzuru」が上である。僅かに塗られたインクに「Yuzuru」は縋るように後退していく。

それを好機と「ニノミヤ」も深く、斬り込んでいく。———が、「ニノミヤ」が「Yuzuru」の塗り終えたゾーンに侵入してしまったその時———「Yuzuru」のブキ「リッター4K」のサブウェポン「トラップ」が作動。

炸裂音と共に「ニノミヤ」に僅かながらだがダメージを与える。

 

———勝てる。

 

「Yuzuru」は「リッター4K」の照準を「ニノミヤ」に合わせた。あとは引き金を引けば、「ニノミヤ」を倒せる。

中央の塗りのアドバンテージは取れ、残り時間を考慮しても「ニノミヤ」が他の場所を塗りに行くことはできても逆転は不可能。

 

ボチュンッ!!

 

「Yuzuru」の攻撃は見事、「ニノミヤ」のイカを玉砕し、隔離されたゾーンに残された「Yuzuru」は、1人想う。

 

———仇は、取りましたよ。鳩原先輩

 

そして、その終わりの時は来た。

 

『試合終了ッ!!!こ、これは……!』

 

ほぼ塗り尽くされた「トジトジ」のステージ内の塗りの比率は、やはりというべきか「ニノミヤ」率いる「我、嵐ぞ?」が終始圧倒していた。

他のチームももちろん善戦はしていたが、やはり序盤の塗りは「ニノミヤ」が強すぎたのだ。

 

『勝ったのは「我、嵐ぞ?」チームだァ!』

 

「ボーダースペシャルフェス」その初日は、「ニノミヤ」が勝った。

これにより、ボーダースペシャルフェスに関心を持っていなかった()()()が目覚めることになる。

 

———「ニノミヤ」を潰すのは、俺/私達であると。

 

ボーダートップクラスのトリオン量を以てして、尚且つスプラトゥーン2でも世界2位に到達するまでの廃人ゲーマーと化した「ニノミヤ」こと二宮匡貴。彼を止められる人間は果たしてこの先、現れるのか。

 

ボーダーの猛者が跋扈するこの「ボーダースペシャルフェス」を最後に制するのは誰なのか。

 

 

to be continued…

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