枝久桜です!2年以上もお待たせして申し訳ございませんでした!
ここだけのお話、この話自体は保存済みにしていたのですが
その先の展開を考えるのができていなかったのと
スプラ3で若干、脱落してしまっていたせいもあり
投稿できず早2年、ネタ切れ気味になって放置しておりましたが
ほんのもう少しだけ頑張ってみようと思います!
「カッコいい
〈2014年3月9日 PM 12:00、ボーダー本部 王子隊 作戦室〉
ボーダー本部所属B級5位 王子隊。
ボーダーの数ある部隊の中でも特に「足が速い部隊」とされ、局所戦を得意とする部隊である。
そんな彼らもまた、B級ランク戦も終わり、作戦室でゆったりとゲームに興じていた。
「カシオ。冬場に暖かい作戦室で食べるアイスって素敵だと思わないかい?」
と、ハーゲン◯ッツのクリスピーサンド(キャラメルクラシック)を一口頬張りながらスプラトゥーンのハイカラニュースを適当に流し読みするのは、王子隊の隊長である王子一彰。そして、王子の横では王子隊の隊員である樫尾由多嘉が熱心にサーモンランに取り組んでいた。
「なんでですか!?わざわざ寒い冬に冷たいアイスを食べるなんて頭がおかしいですし、それはおれのアイスです!」
「とても美味しいよ。カシオ」
冬場に食べるアイスというのは、
夏場に食べるアイスとはまた違った体験をさせてくれるものなのだ。
例えるなら、夏場にエアコンのガンガン効いた部屋で熱々のおでんを食べると冬のありがたみを感じられる。そんな感じである。
「冬場に食べるアイスって、特別な気分に浸れて僕は好きなんだよね」
どっかで聞いたようなセリフを吐きながら、
王子はゲーム内のラウンジへとやってきた。
「ところでご存知ですか?今日からボーダーでは『ボーダースペシャルフェス』……通称『ボスフェス』なるものが開催されるらしいのですが!」
カシオが聞いてくるので、王子も少しはにかみながらクリスピーサンドの最後の一口を食べ終えた。
「あぁ、そういえばそんなことをスミくんが言ってたっけ?もしかしてカシオは参加したいの?」
「いえ、そういうわけではないんですが……」
あのカシオが珍しく言葉に詰まる様子を見て、王子は面白がるようにカシオの頭を撫でた。
「いいよ。じゃあ、クラウチが来たら一緒にやろうか」
「あ、でも。1チームの参加人数は4人ですよ?あと1人必要です!」
「羽矢さんじゃ駄目なのかい?」
「よくわからないのですが、先程、「推しが死んだ!」と泣き喚きながら帰ってしまいました」
あぁ、なるほど。
王子は全てを察した。
つまり、どちらにしろあと1人を探し出さねばならないということか。
誰か適当な人間はいないものか。
「あ、そうだ……」
王子はボーダーで支給されている端末の連絡帳に登録されている
「弓場さん、た、助けてください!スミくんに襲われてるんです!カシオがやられました!今すぐ作戦室に来てください!」
ピッ。
「ふぅ……これでよし!」
「何も「よし!」なところありませんでしたよね!?なんで犬飼先輩をダシにしてるんですか!?」
「普通に呼び出しても面白くないだろ?せっかくランク戦も終わって気が緩みかけてるだろうから、ちょっとした遊び心という奴さ」
と、嘯く王子。
その数秒後のことだった。
「王子ィィィ!!無事かァァァ!」
王子隊の作戦室に転がり込むように入室してきた髪型の決まったメガネの男性。弓場隊の隊長 弓場拓磨である。
弓場は、作戦室内を見渡してから部屋の隅の方でゲームに興じる王子とカシオを見て、頭に「!?」を浮かべる。
「どういうことだァ……王子ィ……」
「あ、弓場さん、お疲れ様です。実は今、スプラトゥーンをしててスミくんに襲われそうなところなんですよ」
もちろんこれは王子の冗談である。
本気で作戦室に犬飼が王子を襲いに来てるなら王子なら弓場は呼ばない。まず、
「スプラトゥーン……だと?」
スプラトゥーンの存在は、弓場も認知しているところではあった。
何やら今、ボーダー内で空前のブームを巻き起こしているそうじゃないか。相手をインク塗れにしながら自分の
「王子ィ!そんな危ねぇゲームはすぐ止めろォ!」
「え?危ないですか?そんなことないと思いますけど」
「いいから早くそのゲームを渡せェ!」
弓場は王子の下まで歩み寄るや王子の手にしているSwitchを強引に奪い取ろうとする。
「うわっ!何するんですか弓場さん!カ、カシオ!助け———」
「自業自得ですね」
そんな王子と弓場のくんずほぐれつな状況の中、王子隊の作戦室に1人の男子隊員が鼻歌混じりにやってくる。
もっさりとした髪に右目の下に泣き黒子のあるサンバイザーのイケメンこと生駒隊の隠岐孝二である。
「こんにちは〜。王子先輩いてます?水上先輩に頼まれて来週の防衛任務のシフト持っ———」
そこで隠岐の体がピタリと止まった。
王子に弓場が馬乗りになって一台のSwitchを奪い合う軽い地獄絵図を目にした隠岐が戦慄する。
「カ、カツアゲ!?」
「違うんだ!オッキー!助けてくれ!弓場さんに襲われる!というか現在進行形で襲われてるんだ!」
「いいからさっさと〝
この世の中に地獄絵図というものが存在するなら、間違いなくこれのことであると、隠岐は隣数軒の作戦室に響き渡るくらいの大声で叫んだ。
「ホンマに作戦室で何してんですか!?」
物凄い誤解を多く含む王子の言い方のせいもあるが、隠岐も何を勘違いしたのか顔を両手で押さえながら王子隊室を
「見損ないましたよ、このわいせつ隊長ぉ!」
そう捨て台詞を残して作戦室を飛び出した隠岐。
このままでは明日の朝刊から「わいせつ隊長」の名を欲しいままにしかねない王子が自らの名誉の為に樫尾に命ずる。
「マズイ!カシオ!オッキーを追うんだ!絶対に逃すな!」
「了解です!」
カシオが隠岐を追って作戦室を出て数十秒後。
未だSwitchを手放さない王子の背中を取り押さえている弓場の眼下には、カシオの見事な亀甲縛りで連れて来られた隠岐がなんとも言えない表情で目の前の王子を見据えていた。
「なんでカシオが亀甲縛り知ってんねん……」
「昔テレビで見て覚えました!」
さて、樫尾の生真面目さが前面に現れたエピソードはさておき。まんまと捕まってしまった隠岐を前に、王子は息を無駄に切らしながら冷静に隠岐に語りかける。
「ハァ…ハァ…!さて、オッキー。まずは話し合おうじゃないか」
「いや、どう見ても話し合う体勢やないですよ、これ……。どう見てもこれから拷問されるところですやん。それ以前によく馬乗りにされた状態で聞けましたね。尊敬モンですわホンマに」
未だ背中から王子を取り押さえている弓場が堂々とした態度で王子の手からSwitchを取り上げようとする中、王子はしれっと隠岐に事情を説明し始めた。
「実は今、『ボスフェス』が開催されていてね。その人数合わせにオッキーが欲しいんだ」
「ああ、スプラのイベントですかい。ええですけど、おれSwitch持ってませんよ?」
王子と孝二が揃って床に組み伏せられている
「弓場さんはこちらにいらっしゃいますか!」
ボーイッシュな髪型に日に焼けた褐色の少女 弓場隊の
何やら手にはとても既視感のあるゲーム機が握られているが……。
「おや?オビ=ニャンじゃないか。どうしたの?」
そう気さくに挨拶をする王子。依然として弓場に馬乗りにされている状態だが、帯島はそんなことには全く気にすることなく……否、むしろ
「外岡先輩から「弓場さんが王子先輩に助けを求められて作戦室を飛び出した」と聞いて慌てて止めにきました!」
それを聞いて、「なるほど」と弓場が納得した様に頷きながらも、帯島の手にしているゲーム機が気になるようでつい声に出してしまう。
「おい……帯島ァ……それは……〝スプラトゥーン〟か?」
ついに自分の部下すらも
絶望(?)から弓場が唇を噛み締めているが、当の帯島はとても和かな顔つきでこくりと頷く。
「はい!自分は弓場さんの早撃ちを尊敬してデュアルスイーパーを使ってます!」
ピクリ。
弓場の眉が微かだが動いた。
スプラトゥーン2。今、ボーダーで最も熱く超エキサイティングなシューティングアクションゲーム。
その皆が狂ったように塗り合う中毒性から一度は
何故なら、帯島の弓場を見つめるその表情は中毒に侵されることなく、ただ純粋にゲームを楽しむ1人の———否、1匹のイカの紛う事なき〝笑顔〟そのものなのだから。
そう。スプラトゥーン2は単なる
人と人が繋がり、力を合わせて戦うことで己を高め合う本当は素晴らしいゲームなのではないだろうか。
「帯島ァ……〝戦争〟だ」
弓場のその言葉を聞いて、帯島もぱぁとした笑顔になって元気よく返事をする。
「……はい!」
そうして、弓場が王子の背から降りると拳を握りしめて天に掲げて宣言する。
「王子ィ!隠岐ィ!帯島ァ!カチコミかけんぞコラァ!」
「弓場さん。ナチュラルにおれの事を忘れないでください」
さりげなく弓場に名前を呼ばれなかった樫尾が宣う中、そんな超展開が巻き起こる王子隊の作戦室にまた1人〝厄介〟な客人が勢いよく作戦室の電子扉を開いて突撃してくる。
「ちょっと待ったァァ!」
「!?」
弓場達の視線が一斉に王子隊作戦室の入り口に向く。
そこに立っていたのは、目元を覆うゴーグルがキラリと光るボーダーの現No. 1
弓場の弟子としても有名な彼は、どこか不満げにして寂しげな表情を浮かべながら帯島達の手を取ろうとしている弓場の元へと駆け寄ると彼の両肩を鷲掴みにして叫ぶのだ。
「おれという弟子がいながら!他の弟子にも愛想を振り撒くんですか!」
「おめぇ……何言ってんだ?」
「そりゃあ!王子先輩や帯島ちゃんは弓場さんと同じ部隊だったりしたから仕方ありませんよ?けど、人数合わせで
つまり———。
「里見先輩もスプラトゥーンをしたいということでしょうか?」
「うん!」
なんて清々しいまでの嫉妬なのだろう。
ここまで潔く嫉妬されてしまうと王子も思わず、ボーダースペシャルフェスのイベントも忘れて里見に4人目の座を譲ってしまうところだった。
「うーん。けど、今回は僕と弓場さんとオッキーとオビ=ニャンの4人って決まっちゃったからな〜」
「王子先輩。わざとおれを仲間はずれにしないでください」
最早、頭数に入れられてすらいない樫尾が全てを諦め悟ったように項垂れていると、同じく弓場に呼ばれなかったショックで地面に崩れ落ちた里見に帯島がそっとSwitchを差し出した。
「里見先輩……もし良かったら、自分のを使ってください!」
「……え?いいの?」
困惑する里見に、帯島は目に涙を浮かべながら何やら熱く語り出す。
「自分、今は弓場さんの下で色々と教わっていますけど、それでも里見先輩は弓場さんの弟子ですから!兄弟子が師匠の力になれない中、自分だけ遊……じゃなかった師匠の力になるなんてできないっス!」
「帯島ちゃん……」
こちらも何やら勝手に感動して目に涙を浮かべる里見が、とうとう感極まって帯島に抱きつこうと飛び上がる。
「帯島ちゃぁぁぁぁん!ありがとぉ———」
が。
「帯島に触るんじゃねェ!」
タイミングよく帯島の前に割って入った弓場の蹴りが見事に里見の腹に正面からクリティカルヒットする。
「ゴスペル!!」
そんな断末魔を上げながら地面を転がり回る里見。
何故、自分が蹴り飛ばされたのかわからないといった様子の里見に弓場が脅すように里見を見下ろす。
「堅気の人間に……不用意に触れんじゃねぇ」
「堅気って」