「あの先輩、犬は飼ってないけどトナカイは飼い慣らしてるみたいですよ?」
〈2014年3月6日 PM 17:30、ボーダー本部 ラウンジ〉
B級ランク戦も終わり、遠征選抜試験も控えた3月の初め。
ボーダー本部のラウンジでは進学校通いのオペレーター女子達が和気藹々と食事していた。
その中で、タブレットを片手で操作しながら攻略サイトを見ている玉狛支部のオペレーター
「うーん やっぱりギアパワーって厳選した方がいいのかな?」
スパゲティをフォークで巻き取りながら何を話しているかと思えば、先日、玉狛支部に突如として送られてきた〝スプラトゥーン2〟の話である。
そして、それを隣で聞いている嵐山隊のオペレーター
「そう聞かれても わからないよ〜
「このゲーム みんなでやるのは楽しいんだけど ついつい熱が入っちゃうのが怖いんだよね〜」
「最近、とりまるくんも始めたって聞いて
楽しそうに談笑する ごく普通の光景である。
しかし、そんな中で〝ただ一人〟だけ浮かない顔をしている女の子がいた。
A級3位
「
(言えない……ボーダーのスプラトゥーンブームは 〝わたしからかもしれない〟だなんて……!)
どうやら
◆◆◆◆◆
〈2013年12月25日 PM 18:55、ボーダー本部 通路〉
(
今日は一年に一度のクリスマス。
ボーダー内には防衛任務や同性同士での集まりやらで恋人と過ごせない隊員達の怨念がこれでもかと言わんばかりに漂っていた。そんな中でも〝癒し〟は確かに存在していたようで……。
三上が隊長が時間の都合上、提出し損ねた書類を代わりに届けようと通路を歩いていた時のこと。
(あれ?あそこにいるのって……)
ふと、視線の先に目を向けると、
黒スーツ姿のもさもさした髪の好青年が、何故かトナカイの被り物をした学生服の男子を首輪に繋いで歩いていた。
二宮隊の犬飼澄晴と、香取隊の若村麓郎である。
犬飼は三上が遠目で見ていたのに気が付いたのか、若村の首輪に繋いだロープをしっかり握り締めながら三上に近づいてきた。
「メリークリスマス!
「あ、はい……そうなんですけど……」
(なんで
三上が首輪に繋がれたままの若村をチラチラと見ていると、犬飼がロープをグイッと引っ張って事情を語り始めた。
「あぁ、もしかしてこれが気になる?今日はクリスマスじゃない?てことでそこで見かけた
よく見ると、若村の右手には大量のクリスマスプレゼントが入っているのだと思われる白い麻袋が抱えられていた。
そして犬飼の隣では同い年に醜態を晒され、もう全てを諦めた若村が何を言うでもなく、遠い目で壁を見やっている。
(正直 本当に帰りたい……)
「これから
(これ以上 オレに何着せるつもりなんだよ!?この人!?)
東のところへ行くということで、奇しくも行き先は同じではあるのだが、正直、トナカイの被り物をしている若村とその手綱を握る犬飼の隣を歩く勇気と根性は、流石のA級3位でも持ち合わせてはいなかった。
「い、いえ……」
(うぅ……時々、
「忘れるところだった!
と、若村の抱えていた白い麻袋からゴソゴソと〝ゲーム機らしきものが映った赤い箱〟と〝パッケージ〟を4つほど取り出して、三上に差し出した。
「それは……〝ゲーム機〟ですか?」
「そそ!たしか
予想外のクリスマスプレゼントに三上は目を丸くする。ゲームソフトならいざ知らず、ゲーム機ともなれば、決して安い物ではないはず。それを弟妹の分も含めて4つも貰うなんて悪い気しかしない。
「で、でもこんな高いものを何個もタダじゃ貰えませんよ」
三上が大袈裟に手を振って断ろうとすると、犬飼は「大丈夫 大丈夫」と押し付けるようにパッケージを手渡した。
「財源はボーダー職員からの寄付で賄われてるからね」
この組織は本当に大丈夫なのだろうか。
いくらクリスマスだからと言ってこんなところで貴重な財源を使ってしまって。
今頃、会議室で唐沢さんが元気に資金集めに奔走している姿が目に見えるようだ。
「そうだ なんならソリも借りるから おれを乗せて引いてってよ 歩くの疲れた」
この先輩はこの先輩で、どこまでもフリーダムである。年下の女の子を前にして、弟子にソリを要求する精神はさすが元A級部隊と言わざるを得ないだろう。
「ただでさえ 同い年にトナカイの被り物を見られて 恥ずか死にそうなのに 全身タイツの上にソリを引かせるってどこのドSですか」
「しょうがないじゃん
苦労話のように話しているが現状、本件での一番の被害者は何もしてないのに師匠の無茶振りでトナカイコスプレをさせられそうになっている若村のような気がするが、惜しい事に三上は何も言えなかった。
「ちなみに今日の夜は
そう、毎年クリスマスやらイベントがあると、嵐山隊が公式ホームページで配信をしているのを聞いたことがあり、おそらく今年もクリスマスにあたって何かイベントでもするのだろう。
広報部隊はクリスマスも大変。
「だから今日の
(クリスマスだからディナーでも誘おうかと思ってたのに……)
「お互いにクリスマスぼっち……略して〝クリぼっち〟なわけだし ここまで来たら最後まで付き合ってよ」
好きな人とのクリスマスの夢も潰え、醜態も晒した若村に最早、怖いものは何もない気がして、大人しく犬飼に付き合う事にしたのだった。
「くっ…わかりましたよ……」
(可哀想な
「あ
唐突にそう聞かれ、三上はここまで来るのに見かけた隊員達の姿を思い出す。
そういえば、ラウンジで影浦隊の面々が食事をしていたのを見たような気がした。
「そういえば ラウンジに
それを聞いて、犬飼は途端に目を輝かせる。
「おっ まさにクリぼっちの代表格といっても過言ではなさそうな2人だね!さっそく行こうか」
若村の首輪を繋ぐロープを引っ張り、さっそくラウンジへ向かう犬飼と若村。
「そのうち本当に
その背中を三上はただ見守る事しか出来なかった。
(師弟関係って色々あるんだなぁ……)
◆◆◆◆◆
〈2013年12月25日 PM 19:29、ボーダー本部 風間隊 作戦室〉
「はぁ……なんかすごいものを見た気がする」
東に資料を渡し終えて作戦室に帰還した三上。
犬飼から貰ったゲーム機をそのまま東隊作戦室に持ち込んだせいで、東だけでなく、東隊の
何はともあれ道中、犬飼達と鉢合わせせずに帰って来れて良かった。そして、作戦室には防衛任務を終えて、寛いでいる風間隊の
「おかえりなさい
「ただいま……って
「ああ、これは生配信の準備ですよ オレと
ゲーム実況……言葉だけで意味を読み解くなら、誰かのゲームしているところをリアルタイムで実況するということだろうか?
「へえ……面白いの?」
「
そして、歌川が三上の大荷物をさりげなく受け取る。
「ところで この大荷物は なんですか?」
「これ……貰ったの
すると、歌川がパッケージを見て、
「珍しいですね……しかも〝スプラトゥーン2〟ですか 丁度オレ達もスプラトゥーン2をやるんですよ よろしければどうです?」
つまり、それは生配信に参加してほしいということだろうか?さすがに貰ったばかりのゲームをやった事もない配信で披露するのは無理があるし、何より二人に迷惑がかかってしまう。
「でも どんなゲームかもわからないし 生配信なんでしょ?2人に迷惑かけると申し訳ないよ」
「大丈夫ですよ なんかあればオレがフォローします 顔出しもしないので比較的安全ですよ」
歌川がここまで言ってくれているのに、無下に断るのも気が引ける。
それに、2人の様子を見ている限り、かなり手慣れているようだし、楽しそうなので少しくらい言葉に甘えるのも吝かではない。
「じゃあ……少しだけ……」
そう言って、歌川からコントローラを差し出された三上だったが、
この後、まさか〝あんな悲劇〟が起ころうとはこの時の彼女には知る由もなかった。
to be continued…
第7話閲覧ありがとうございます!枝久桜です!
さて、今回の話を書くにあたって、枝久的に少し考えさせられるポイントがありました。
それは、『犬飼先輩って〝烏丸先輩〟のことをなんて呼ぶんだ!?』ということです。
ええ、すみません。めちゃくちゃどうでもいいことかもしれないんですが、私的にはえらく考えさせられました。
そこで先日、通話しながらスマブラで遊んでいた友人とこんな会話をしていました。
枝久「犬飼先輩って、烏丸先輩のことをなんて呼んでたっけ?私、〝烏丸くん〟だと思ってんだけど」(*´ω`*)
友人「んー、悩むとこやけど〝とりまるくん〟やろな」(*´・д・)
枝久「なんだと……!?んなわけあるかい!鳩原先輩ですら〝烏丸くん〟呼びなんやぞ!いくら小南先輩と仲良いからって呼び方まで〝とりまるくん〟やったら……ヤバいで」(; ・`д・´)
そんな時、対戦ルームに途中参加で入ってきたもう1人の友人が通話の一部始終を聞いていて、いきなり
友人B「〝京介くん〟じゃね?」(`・ω・´)キリッ
枝久&友人「」( ´•ω•`)( ´•ω•`)
枝久達はそっと通話を切りました。
多分、原作ではまだ犬飼先輩は烏丸先輩のことを名前で呼んでいないと思うので、これからもしも「とりまるくん」および「京介くん」って呼ばれてたら、素直に友人に土下座して謝った上で速やかに訂正します(既に絡みがあったのだとしたら誰か教えてください!)。
そして皆様はどうでしょう?
もし呼ばれてなかったとしたら犬飼先輩は〝烏丸くん〟〝とりまるくん〟、枝久達的に大穴となっている〝京介くん〟呼びだと思いますでしょうか?わたし、気になります!
次回以降もほどほどにキャラ達を崩壊させつつ、ほのぼのとさせる話にしていくつもりなので次回も閲覧お待ちしております。(三3三)