ボーダー隊員達がガチで塗りあう時が来た?   作:枝久桜

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第8話

「みかみか、煽りイカに遭うの巻」

 

〈2014年2月23日 PM 20:19、ボーダー本部 通路〉

 

B級ランク戦も終盤に差し掛かったある日のこと。風間隊の隊長 風間蒼也と太刀川隊の隊長 太刀川慶が私服のまま遅めの夕ご飯の為にラウンジに向かっていた。

 

風間(かざま)さん 今週暇なら 久しぶりに個人戦やらない?」

 

「やらない そもそもお前は 大学のレポートは もう終わったんだろうな? 今回は本当に手伝わないぞ」

 

過去幾度となく、手伝わされてきた太刀川のほとんど手についていない課題作業。

思い出される地獄の1週間徹夜祭り。

忍田本部長の命によって二宮、来馬、堤の4人体制で臨んだあの日々を風間は永遠に忘れないだろう。4日目辺りで鈴鳴支部の面々が倒れた隊長を連れ帰って行った悲劇を繰り返してはならないのだ。

 

「大丈夫大丈夫 ピンチになったら 二宮(にのみや)の所に行くからさ」

 

しかし、そこはボーダー最強の攻撃手。

だいぶピンチであるはずなのにこの余裕。

C級隊員はこの図太さを見習うべきである。

 

「懲りない奴め そのうち二宮(にのみや)に 蜂の巣にされるといい」

 

「怖いこと言わないでよ 風間(かざま)さんだけは 俺の味方をしてくれるって信じてる」

 

「何を言ってる?俺は頻繁に 今後こそお前の首を 〝獲ってやろう〟と思ってるぞ?」

 

と、〝首をちょん切る〟ジェスチャーが〝風間さん〟が、いかに本気であることかを物語っている。

 

「お?珍しく風間(かざま)さんが やる気出してる こりゃ次のランク戦が楽しみだな」

 

「ランク戦といえば…」で思い出した風間が急に眉間に皺を寄せて太刀川に詰め寄った。

 

「それはそうと太刀川(たちかわ) この間のB級ランク戦の解説で 三上(みかみ)に恥をかかせてくれたようだな」

 

B級ランク戦 中位の部 ROUND3にて解説を担当した太刀川と迅。その実況が三上だったのだが、試合後の総評の際に彼女の解説に最後余計なことを言ってしまったようでそれを迅にも指摘されたことで三上を赤面させてしまっていたようなのだ。

 

「え、今更!?まぁ、あの時は 言いすぎたような 雰囲気はしてたけど ていうか (じん)にも責任あるような……」

 

バツが悪そうに口を尖らせる太刀川の様子に風間は驚きのあまり思わず口元を手で覆ってしまう。

 

太刀川(たちかわ)……お前その場の空気なんてものが 読めるようになったのか?」

 

一つ歳下とはいえ、後輩の成長を垣間見ることができたことに喜びを感じたのか、風間が目頭を抑える。

 

風間(かざま)さんは 俺のことを〝幼稚園児〟かなんかと勘違いしてない? (じん)にも言われたら そりゃわかるよ C級もドン引きしてたし」

 

「それなら良い ただ次 うちの三上(みかみ)に 恥をかかせてみろ」

 

「……かかせたら?」

 

小南(こなみ)がお前を 真っ二つにした時のように 今度は俺がお前を 真っ二つにしてやる」

 

真顔で放たれた恐ろしい言葉に、

太刀川は血の気が引いてしまう。

 

(しばらく風間(かざま)隊室に行かないようにしよう……)

 

2人がしばらく歩いていると、

目の前から黒スーツのもさもさした青年が気分良さそうに歩いてくる。

二宮隊の銃手(ガンナー) 犬飼澄晴である。

犬飼は2人の姿を確認するや爽やかな笑顔で先に挨拶をする。

 

「あ、太刀川(たちかわ)さんに風間(かざま)さんだ!お疲れ様です」

 

相変わらず、顔が良い。

犬飼がこんなところを1人で歩いているのは珍しい気がした風間が思わず周囲を見渡して二宮(飼い主)を探す。

 

犬飼(いぬかい)か……どうした?こんなところに 1人でいるなんて二宮(飼い主)とはぐれたのか?」

 

「いやむしろ若村(飼い犬)を探してる感じですかね それよりも風間(かざま)さんに渡したいものがあるんですよ 確か風間(かざま)さんって〝Switch〟持ってますよね?」

 

突然の質問に戸惑いつつも、風間は普通に答えてみせる。

 

「ああ、木崎(きざき)諏訪(すわ)が たまにウチに来て〝世界ア◯ビ大全〟や〝ス◯ブ◯〟をしてあそんでる」

 

あの風間からまさか〝ス◯ブ◯〟が出てくると思わなかった太刀川が急に大喜びで風間の肩をガシッと掴んだ。

 

「え?マジ? 風間(かざま)さん! 今度〝◯マ◯ラ〟やろうよちなみに使い手は?」

 

「初期の頃から〝マルス〟を使っている 使い始めてから木崎(きざき)達に 負けたことはない」

 

さすが我らが風間さんである。

一流は何をやっても一流になるのだ。

それを風間さんは私達の心に教えてくれた。

※あくまで書き手個人の感想です。

 

(〝世界◯ソ◯大全〟にはツッコまないんだ)

「それでなんですけど〝これ〟を風間(かざま)さんに」

 

そう言って、犬飼はいつものように内ポケットからゲームのパッケージを取り出して、風間に差し出す。

 

「なんだこれは?ゲームか?」

 

差し出されたゲームを見て、風間の肩を掴んだままの太刀川が反応する。

 

「お?それ〝スプラトゥーン2〟じゃん」

 

「知ってるのか?太刀川(たちかわ)

 

聞かれた太刀川は〝コントローラーを操作するジェスチャー〟をしながら笑って答える。

 

国近(くにちか)が最近ハマってんだよ面白そうだから俺もやってる」

 

「そうかお前は 大学のレポートそっちのけで ゲームをしているような奴だったのか」

 

と、太刀川を軽蔑するように視線を逸らした風間に太刀川は必死に弁明を試みる。

 

「いやいや ちゃんと飯も 食ってるよ?」

 

「レポートは?」

 

「まだです」

 

「やはり忍田(しのだ)本部長に報告する」

 

「ごめんって!風間(かざま)さん!」

 

肩から一気に足元に縋り付くA級1位の隊長を尻目に風間は渡されたパッケージの意味について問う。

 

「ところで犬飼(いぬかい)これはどういうことだ?俺の誕生日プレゼントというわけではないだろ?」

 

「いや、今日は三上(みかみ)ちゃんの誕生日じゃないですか? 実はクリスマスに三上(みかみ)ちゃんに同じものを渡したんですけど 風間(かざま)さんと遊べたらきっと三上(みかみ)ちゃん喜びますよ」

 

勝手なイメージだが、

三上はあまりゲームに馴染みが無いと思っていた風間がコントローラーを手に楽しそうにゲームをしている三上の姿を想像する。

 

「あの三上(みかみ)が ゲームをしてるのか 意外な一面を見つけたな」

 

「しかも最近、風間隊(かざまたい)のみんなで ゲーム実況してますよね?」

 

犬飼の一言に風間の顔が一瞬だけ曇ったように見えた。そして、悲しげな瞳でこう呟く。

 

「楽しそうなことをしているんだな」

 

(あ、ちょっと落ち込んでるな風間(かざま)さん)

 

そして、犬飼も携帯端末をポケットから取り出して画面を2人の前に差し出す。

 

「丁度いま 生配信してますよ こんな感じです」

 

そこには、〝スプラトゥーン2〟と思われるゲームの画面の横に流れるように書き込まれるコメントの数々が映されていた。

時折、菊地原が流れてきたコメント対してちょっと毒を吐いたり、それを歌川がフォローしたりとかなり楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 

「言ってくれれば 俺も遊んでやったものの……」

 

(あ、結構へこんでるな風間(かざま)さん)

 

部下達が自分を差し置いてゲームに興じていることに多少なりも寂しさを感じていた風間が唇を噛み締めている。

そんな風間に犬飼がさらに追撃を繰り出す。

 

三上(みかみ)ちゃんも 今ではすっかり様になったらしくって 非公式ファンクラブもできてますよ」

 

この一言がトドメとなったのか、

風間の心にほんの少しの〝対抗心〟が芽生え始める。

 

「〝うち〟の三上(みかみ)はアイドルじゃないぞ」

 

そうしてしばらく動画を見ていると、何やら〝誰かが泣いているような声〟のような音が聞こえてきた。

 

「おいさっきから 啜り泣く声が聞こえるんだが どういうことだ?」

 

状況がよくわかっていない様子の風間に犬飼が納得した様子で答える。

 

「〝初心者狩り〟ですね たまにいるんですよ 自分よりランク低い相手を狙ってキルするプレイヤーとか」

 

言われてみると先程から特定のプレイヤーばかりがどんどん倒されていくのがよくわかる。

状況から察するに三上のアバターが狙われているのだろう。

太刀川も納得したように頷く。

 

「ほら〝弱い敵から落とす〟ってやつだな」

 

たしかにそれが〝戦場〟から理解はできる。

しかし、言ってしまえばこれはたかがゲームである。楽しくやるための娯楽に何故、わざわざ敵を作るようなことをするのか理解ができなかった。

 

「たかがゲームだろ?何故、ここまで執拗にやる必要がある?こいつらは何が楽しいんだ」

 

「優越感に浸るため じゃないですか?よくはわからないですけど」

 

「コメントもすっげぇ荒れてんじゃん」

 

太刀川の言う通り、三上がやられているであろう瞬間に書き込まれているコメントにはそれはそれは三上を倒し続けてるプレイヤーに対する怒りのコメントが溢れまくっていた。

 

三上(みかみ)ちゃんファンクラブが 怒りのコメ書き込んでますね」

 

すると、あまりに狙われ過ぎた三上を慮って歌川が焦った様子で謝り倒したと思えば、途端に画面が暗くなってしまった。

 

「あ、生配信終わっちゃった」

 

それを見て、風間は颯爽と作戦室の方へと足の向きを変える。

 

「どこ行くんだよ?風間(かざま)さん」

 

三上(みかみ)を泣かせた奴を 泣かしに行く」

 

あまりに無謀なことを言い始めた風間に未だ風間の足に縋り付く太刀川の腕の力がさらに強まる。

 

「無茶だ!風間(かざま)さん!スプラ初心者は 高ランクプレイヤーには勝てない!」

 

たった今、犬飼から渡されたばかりなのだ。

装備もギアも揃えられていない今の風間では数ヶ月やってきた三上を何回も倒したプレイヤーは倒せない。

 

———しかし、我らが〝風間さん〟をそこら辺の男と一緒にされては困る。

 

「プレイ時間の違いが、戦力の決定的な差でないことを、教えてやる」

 

そう言い残して、去っていく風間。

その場に残された太刀川と犬飼はただ風間の背を見守ることしかできなかった。

 

風間(かざま)さん……何も赤い彗星みたいなこと言わなくても……」

 

そして、太刀川はふと思い出す。

 

「あ、飯を奢るついでにレポート手伝ってもらおうと思ったのに……」

 

やっぱり、この人はブレなかった。

 

to be continued…

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