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次の日の事だ。放課後、一夏と箒とセシリアとでISの練習をする為にアリーナまでやってきている。その場に春樹の姿はなかった。
とりあえず一夏は春樹に毎日やるよう言われた練習を始める。
セシリアが射撃を本気で当てに行き、そして一夏はそれを十五分間避け続けるというものである。
セシリアは素早く動く標的をいかに狙い撃つか、そして一夏はその射撃を避ける。そうすることで、お互いに確実にレベルアップさせる。という魂胆である。
「いきますわよ、一夏さん」
「おう、いつでも来い!」
セシリアは早速ビットを展開し、全方位射撃を繰り出す。一夏の周りからレーザー撃が飛んでくる。そしてそれを縫うようにかわす。
そして肩慣らしを終わらせたセシリアはスターライトmkⅢの攻撃も織り交ぜて攻撃する。自分で自分の攻撃リズムを崩す事で、相手のリズムを乱してバランスを崩させるという攻撃。
そしてこれがもっと上達したならば、全ての攻撃において一定のリズムというものが消滅する。相手はリズム感を感じることができず、戦いにくくなるのだ。
セシリアはまだそこまで到達はしていないが、相手のリズムを乱すという事はできる様になっている。
一夏もその攻撃には戸惑い、違和感を感じるし、危うく攻撃に当たりそうにもなる。このセシリアの攻撃には悩まされている。しかもセシリアは本気で当てに来ているので、それもまた厄介だ。
「へぇ~、一夏もオルコットさんもやるね。あの相手のリズムを乱してやる攻撃は中々のものだよ。そしてそれを避けている一夏も凄いね、普通だったら何回も続けて避けれるものじゃないよ、あれは」
箒はシャルルに今行っている練習について補足する。
「あの練習方法は春樹が考えたんだ。一夏のISは近距離武器しかないから、ああいうセシリアの全方位射撃をかわし続けるのは良い練習になると」
「確かに一夏はその装備しかないなら、こういった弾幕をはられるような相手を相手にしていれば、自然と突破口を自分で見つけれるようになるし、オルコット さんもあの高速機動を相手にしているから、自然に射撃能力が上がっていく……。なるほど、お互いに競いあう事で、気付かないうちに上達していくんだ」
そして十五分間の時間が経った。結果は一夏の逃げ切り。要するに一夏の勝利である。そして二人は地上へ降りてきた。
「はぁ……また一夏さんの勝ちですわね」
「いや、セシリアも十分な強さだよ、正直危ないところもあったしな」
「でも、負けは負けですわ」
落ち込むセシリアにシャルルは励ましの言葉を送った。
「でも、今回はオルコットさんが負けたけども、勝てないってことは無いと思う。だから、もっともっと頑張れば一夏に勝てるよ!」
なんだか、励ましの言葉なのか怪しい感じではあるが、シャルル本人は励ましているつもりである。ただ、セシリアがどう思っているのかは分からないが……。
「そうだ、一夏。僕と模擬戦でもしない?」
「お、いいぜ。色んな奴と戦えればそれだけでいい経験になるからな。しかもシャルルのそのISはもちろん専用機なんだろ?」
「うん、そうなんだ。僕の機体は――」
シャルルのオレンジ色に塗装されたそのISはラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡである。
この機体は名の通り、第二世代量産型ISのラファール・リヴァイヴのカスタム機であり、基本性能を限りなくチューンし、追加武装を行う為の
「なるほど、その大量の武装で距離を選ばない攻撃が可能なんだな。でも、それだけの武器を入れ替えて戦うって、ちょっと難しいんじゃないのか?」
「それは大丈夫だよ、僕の得意技は状況判断が良い事なんだから。自分で言うのもなんだけどね」
「そうなのか。特技があるっていいよな~」
「一夏だって得意な事あるじゃん、その剣術とか。ま、とりあえず模擬戦やってみようよ」
「おう、そうだな。じゃ、いくぞー」
一夏とシャルルの二人は飛び立ち、二人は向き合っている。箒の合図で二人は一斉に動き出す。
一夏はシャルルの攻撃方法がわからないから変に攻撃ができなかった。しかし、シャルルも攻撃を出さない。下手な動きをすれば一気に距離を縮められる可能性があるため、相手の動きを待っている。
(シャルル、そっちが動かないならこっちから攻撃させてもらうぜ)
一夏はこの動かない試合を何とかする為に自分から攻撃を仕掛ける事にした。
するとシャルルは先ほど得意と言っていた素早い武器変更を行った。これは
だから、この機能は使用頻度が低い武器には対応しておらず、
そして、このシステムを最大限に引き出すには、その状況に合致している武器を素早く判断して適切な武器を選んでやる必要がある。
シャルルは小型のビームライフルを取り出し、一夏へ放つ。一夏はそれを避けるが、すぐに的確な射撃が一夏を襲う。しかしそれも持ち前の高速機動でかわす。
一夏はシャルルの目の前に到達できたので、練習用低出力の
「一夏、動きが単調すぎるよ。そんな直線的な動きじゃ当たらない」
シャルルは避けた後、ビームライフルを構えて一夏の後ろを撃とうとするが、かわされた後の一夏の対応がシャルルの予想より早かった。シャルルの射線上からは一夏の姿が消えており、一夏は気がつけばシャルルの真上にいた。
一夏はかわされた後、上昇して反るような形で動き、シャルルの上を体が逆さの状態で取る。そこから降下して斬りつけようとする一夏であったが、そこでシャルルの
(な、何? 何が起こったの?)
シャルルは驚いていた。あのタイミングは普通はかわせない。しかし、一夏はそのタイミングで回避ができるほどの力があった。
「へぇ、一瞬でそこまで……。やるね一夏」
「ふぅ……今のは正直やばかった。お前の状況把握の能力はすげえな」
するとそこに、とある女性の声が聞こえてきた。
「ふん、その程度か? 織斑一夏」
ラウラ・ボーデヴィッヒ。
彼女がそこにいたのだ。彼女は漆黒のISに身を包んでいる。
彼女のISは第三世代のシュヴァルツェア・レーゲン。右肩の大型の砲撃砲レールカノンが印象的である。
「織斑一夏、この私と戦え」
「はぁ? 今はシャルルと模擬戦を行っているんだよ、それなら後にしてくれ」
「なら、力ずくで――」
ラウラはレールカノンの発射体制に入った。しかし、それはIS学園の先生方に邪魔される。
『そこの生徒、何をやっている!』
生徒の誰かが、このことを先生に報告したんだろう。流石世界のIS乗りを鍛えあげる学園。対応が早い。
「ふん、邪魔が入ったな……」
ラウラはISを解除し、そしてすぐさまこのアリーナから立ち去っていった。
「なんなんだ、アイツは。どういうことなんだ、一夏」
ラウラはあの時、確かに撃つ気でいた。無理やりにでも戦闘に持っていこうとしていたのだ。一夏とラウラの間には何かがある。箒はそう思ったのだ。
「やっぱり、オルコットさんの言う通り過去に何かがあったんじゃないかな。一夏の気付かないところで」
シャルルは今日のショート・ホーム・ルーム後の会話を思い出して答えた。
「一夏さん、心当たりは?」
セシリアも一夏の事を心配していた。しかし、一夏は本当に心当たりが全くなかったのである。なぜなら自分はドイツまで行った事もないし、もしそういう展開だったら自分より春樹の方がありえる話しだろう。
「う~ん……そうだ、春樹に聞いてみよう。アイツならなにか分かるかもしれない」
一夏は一時期ドイツ軍にいて、ラウラと親しい存在にある春樹に聞くしかないと思った