ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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第一章『新しい仲間 -Choice-』《だったらここにいろ!》

  10

 

 

 一夏たちは練習を終えて寮へ戻ろうとしていると、春樹が目の前からやって来た。

 

「よう、練習終わったのか?」

「ああ、それより春樹、お前いままで何処に行ってたんだ?」

 

 春樹はこの一夏の質問を華麗にスルーして自分の用件を話す。

 

「一夏、箒、俺についてきてくれ。えっと、シャルルとオルコットはすまないけどここでお別れだ」

「そうですか、分かりましたわ」

「うん、分かった。一夏、部屋で待ってるよ」

 

 セシリアとシャルルはそれぞれ、一夏と箒が抜ける事を了承し、先に部屋へ戻っていった。そして、その二人の姿が見えなくなると、春樹は真剣な眼差しで一夏と箒の二人を見た。

 

「これから行くのは千冬姉ちゃんのところだ。一夏、箒、真剣な話だからしっかりとした態度でな」

 

 一夏と箒の二人はなにやら雰囲気がシリアスだということを意識してしまい、呼吸も妙にゆっくりになってしまう。

 

 黙り込む一夏と箒、そして春樹。結局、織斑千冬の部屋につくまで一切喋る事はなかった。

 

 春樹は千冬の部屋のドアをノックすると、中から入って良い、という声が聞こえてきた。春樹はドアを開けて、一夏と箒を部屋に入れる。

 

「さて、これから俺と織斑先生がお前らに重要な話を言う。耳の穴かっぽじって良く聞けよ。一度しか言わない。そして、すぐに理解するのは難しいだろうが、無理やりにでも理解しろ。分かったな」

 

 春樹は二人に少々無理強いをさせるが、気にする様子はない。この三人は千冬の目の前まで行くと、千冬は口を開いた。

 

「では、はじめるとするか。とりあえず春樹のことだ。今まで束の下へ訪ねていたのは……聞いているな?」

 

 一夏と箒は「はい」と同じ答えを出す。

「なんでそうなっているか分かるか? それはな……現在、篠ノ之束は命を狙われている」

 

 箒は驚いた。やはり嫌ってるといっても実の家族である。命を狙われていると聞けば驚かないわけはない。

 そして一夏も同じく驚いていた。行方不明というのは知っていたが、まさか命を狙われているとは思わなかった。

 

「ん、まてよ……。じゃあ春樹が束さんの下に行く理由ってのは――」

 

 春樹は一夏の言葉を遮るように答えた。

 

「その通り、俺は束さんの身の安全を守るために動いている。そして……先月このIS学園を襲った謎のIS……あれは、束さんの命を狙っている集団がつかったものだろう。恐らくはテストだろうな。どれだけ強いか試す為に」

「ちょっと待て、じゃあ、そいつらのそんな兵器のテストごときで鈴は大怪我を負ったのかよ!」

 

 一夏は興奮して、つい叫んでしまう。それを春樹はおちつけ、とたしなめた。

 彼は大人しく引き下がる。

 

「一応、こういった事態に関しては基本俺が解決することになっている。そして本題だ。なぜお前達二人をここに呼んだのか――」

 

 千冬は春樹の言葉を続けた。

 

「それは、一夏、箒、お前達を束が必要としているからだ。現状ではここまでしか話せないが、きっと近いうちに束と会うことになるだろう。その時に詳しい話を聞く事になる」

 

 一夏と箒は結局のところ、話しが良く分からないでいた。もっとも、情報が制限されている時点で、深いところまでは理解できなかった。しかし、なんとなくは理解していた。

 

 春樹は束さんの命を守る為に動いており、それはある組織からの攻撃を守る為である。そして、束さんは一夏と箒を必要としている……。

 箒は自分の姉の命が危ないことを知り、しかも春樹が自分の姉を助けてくれている。それだけでも春樹には感謝している。

 

 そしてもう一つ。近いうちに姉に会う事になる事を箒はどうしようかと思っていた。自分が今まで嫌っていた姉。でも今回の話を聞いて少し複雑な気持になっていしまった。心にはなにかモヤモヤした感じがする。しかしそのモヤモヤも姉と会う頃には直っている事を期待していた。

 

「しかし春樹。なぜ今そのことを私達に?」

「箒、良い質問だ。でも考えてみろ  いきなり、はいじゃあ一緒に戦うんでよろしく。って言われても困るだろ? だから、そんな事を近いうちにお願いされるって分かってもらっていた方が良いと思ってね。でもそのときが来るまでまだ時間はある。ゆっくり今話したことを考えていてくれ」

 

 ちょっとした沈黙の後、一夏が急に立ち上がり喋りだす。

 

「待ってくれ、ちふ、織斑先生も……この事に関わっているんですか?」

「実はな織斑、昨日、束から直々に聞いてな。協力関係になった」

「そう、ですか……」

 

 千冬は昨日、春樹を捕まえて束に連絡を取ってもらった事である。 束はあんまり千冬には関わって欲しくなかったが、千冬が自ら進んで協力してくれるというなら、お願いしたいと言ってきた。

 

 千冬が、

 

――何を言っている、昔からの仲じゃないか。お前を春樹にだけ任せてられんよ。

 

 と言うなり束はベラベラと言ってはマズイ事まで千冬に話していた。これは束が千冬を信用している証だろう。そして頼りにしている事も。

 

「なんにせよ、今の事は頭に残してもらえれば問題ないよ。あんまり今は深く考えないでくれ。そのときが来たときに悩んでくれれば良いから。じゃあ解散で。部屋に戻ってくれ」

 

 春樹がそう言うと一夏と箒は立ち上がり、なにやら暗い感じで部屋を出て行った。今話されたことで頭の中がいっぱいいっぱいなのだろう。

 

 

  11

 

 

 一夏は部屋に戻ってきた。そこにシャルルは居なかった。シャワールームから水が流れる音が聞こえた。シャワーを浴びているのだろうか。

 

 一夏はベッドに腰かけ、さっき聞いた事を思い出す。

 春樹があそこまで強い理由。それは束を助けたいという意思の現れだろう。

 

 一夏はようやく分かった。恐らく春樹は守りたいものができたからこそ、あれだけ強いんだ。目標はただ一つ。篠ノ之束を守ること。なんて簡単で難しいことだろう。しかし、それを遂行する為に彼は強くなった。そう一夏は思った。

 

「あ、そういえば……」

 

 一夏は何かを思い出しそう呟いた。たしか、ボディーソープが切れそうになっていたはず。もしかしたらシャルルが困っているかもしれない。そう思った一夏は換えのボディーソープを手に持ってシャワールームへと向かった。

 

 一夏がドアを開けて言う。

 

「シャルル、ボディーソープ切れてなかった……か……」

 

 シャワールームにいたその人はシャルル……ではない。外見は非常にシャルルに似ているのだが、身体が女性のものである。女性の象徴であるその胸元が膨らんでいる。

 

(あ……これは……どういう……ことだ? シャルル?)

 

 正直戸惑いを隠せない。衝撃が強かったからか身体が動かない。もう一夏の頭の中は、目の前に裸の女性がいる。ちょっと見えたし儲かったな。というものではない。決してない。

 

 つい先ほど聞いた束の話に今度はシャルルが女性だった(?)という二つの衝撃が一夏を襲っていた。もう何がなんだか分からなくなっている一夏。とりあえず、一夏はボディーソープを渡す。

 

「え。えっと……これボディーソープな……」

「え、あ、ありがとう……」

「じゃあな……」

 

 一夏はなぜか動かない自分の身体を無理やり動かしてシャワールームから出て行く。

 シャワールームのドアが閉まり、今湿っぽい空気の中にいたからか、シャワールームから出ると涼しい風を感じる。一夏はそれでようやく我に帰ることができた。

 

(何なんだ今日は。なんでこんなにサプライズが連続して起こるんだ? 落ち着け……落ち着くんだ。春樹が言ってたじゃないか、何事も落ち着いてやれと。そうだ、冷静に対処するんだ)

 

 しかし、別に何もやる事がなかったのでベッドの上に腰掛けて黙っていただけだった。

 一夏はじっとベッドの上に座っていると、ガチャリとドアが開く音がした。シャワールームの方からだ。シャルルがシャワーから出てきた。

 シャルルは自分のベッドの上に座る。しかし一夏と顔を合わせることはない。気まずい雰囲気が流れている。どうしようかと悩んだ末に一夏は何か飲もうか、とシャルルに聞いた。

 

「う、うん……お願いするよ……」

 

 一夏はシャワーからあがったばかりだし冷たいものでも、と思い、冷やしてあったミネラルウォーターをシャルルに渡した。

 

「ありがとう、一夏……」

「お、おう……」

 

 しかし、雰囲気はまた気まずくなっていく。もうどうにでもなれ、と思った一夏はシャルルに事情を聞く事にした。心臓がバクバクいっている中、一夏はゆっくりと口を開けて言う。

 

「もし良かったら……事情、聞かせてくれないかな? ほ、ほら! 前に言ったろ、悩みがあれば俺に相談すると良いって。言ってくれない?」

 

 シャルルはふぅ……と息を吐いて、そして思いっきり空気を吸い込んだ。

 

「実家から……そうしろって言われて……」

「お前の実家ってことは……デュノア社の?」

「僕の父がそこの社長で、その人の直接の命令でね」

「命令?」

 

 シャルルは「うん」と頷き、そして……目を閉じる。決心を決めたのかちょっと経って再び目を開けた。

 

「僕ね、一夏。父の本妻の子じゃないんだよ」

 

 一夏は驚愕した。凄く重い話であったからだ。これだけの悲しい過去を持っていて今までのあの笑顔。あれは嘘だとは思えなかった。

 

「……父とはずっと別々に暮らしてたんだけど、三年前に引き取られたんだ。そう、お母さんが亡くなったとき」

 

 三年前。ちょうどそれは自分が誘拐された年である。そして、春樹がドイツの軍へ体験入隊した年。確かに色々とあった。あの時シャルルはこんなことがあったのか、と、一夏はそう思う。

 

「その時、デュノアの家の人が迎えにきてね。それで、その時にISの適正検査を受けたんだ。するとIS適正が高い事が分かって……。それで非公式ではある ものの、テストパイロットをする事になったんだ。でも、父に会ったのはたったの二回だけ……話をした時間は一時間にも満たないかな……」

 

 ISの適合検査を受けた。と言う事は、元々シャルルの父はそのことだけを考えてシャルルを呼んだだけということ。自分の為に愛人の子を利用した。そして 偶然にもIS適合が高かったことが分かり、その父は歓喜しただろう。そういうことがなんとなく見えてきた一夏はだんだんムカついてきていた。もちろんシャ ルルのその父親に。

 

「その後の事だよ、経営危機に陥ったのは」

「え? だってデュノア社って量産機のISシェアが世界第三位だろ?」

「結局、ラファール・リヴァイヴは第二世代型なんだよ。現在ISの開発は第三世代ISが主流になっているんだ。セシリアさんとボーデヴィッヒさんがこっ ちに転入してきた理由も、第三世代ISのデータを取る為。デュノアの方も第三世代ISの開発に着手してるんだけども、中々形にならなくて……」

 

 このIS学園に入学する生徒はISを上手に使えるようにする為だけの施設ではない。いわゆる専用機持ちの人はその用途をもう一つ持っている場合もある。

 第三世代ISを使用したデータを取ったり、その第三世代ISが持っている自己進化能力によってIS自体を進化させること、つまり、第一形態移行(ファースト・シフト)第二形態移行(セカンド・シフト)まで最低でもさせることが、専用機持ちの仕事の一つである。

 

 そして、正直に言ってしまえばここまで第三世代ISの開発が進んでいたのなら、第二世代ISは時代遅れ、と言われてもしょうがないものがある。

 

「だけど、それとお前が男のフリをしてるのってどう関係があるんだ?」

「簡単だよ。世界的にも非常に珍しく、現在確認されているISを動かせる男というのは二人だけ。そこにもう一人現れた、となれば良い宣伝になるし、僕が男なら日本で発生した特異ケース、つまり一夏や春樹に接触しやすいし、それで機体データや一夏や春樹の身体データも手に入るかもってね」

 

 もうそれは答えのようなものだった。

 シャルロットが言っている事、それは紛れもないスパイ行為に他ならない。

 

「……そう、IS学園にいるISを動かせる男のデータを盗んで来いって言われてるんだよ、アノ人にね。でも、春樹とは中々接する事ができなかったな。あれ、ばれてたのかな? でも、言ってみたらスッキリしたよ。ありがとう一夏、僕の話を聞いてくれて。それと、今まで嘘をついていてごめん。春樹にも謝らないとね」

「いいのか、それで?」

 

 一夏は若干低めな声でそう言った。そして立ち上がり、シャルルの肩をつかんだ。一夏の目は何か悲しそうで、でもシャルルの事を想ってくれている様だった。

 

「良い筈ないだろ!? 親がいないと子供は生まれない。そりゃそうだろうけどさ、でも、だからって自分の子供をそんな風に扱って良い筈ない!」

「一夏……」

 

 シャルルは驚いていた。そんなことを言う一夏に。今まで、そんなことを言ってくれる人なんていなかったからだ。

 

「俺も両親に捨てられたから……春樹も……。いや、こんな事はどうでも良い。シャルルはこれからどうするんだ?」

「どう……って……」

 

 シャルルは言葉に困った。自分は一体何がしたいのだろうか。どうせ、このままいったら…………。

 

「女だってことがばれちゃったし、本国に呼び戻されるだろうね。きっと、良くて牢屋行き……かな」

 

 一夏は考えた。どうすれば良い? こんな事になってしまったのは自分のせいだ。自分が、見てしまったからだ、シャルルが女だって言う決定的な証拠を……。じゃあどうすれば……どうすればシャルルを守れるのか……。

 一夏はこれ以上はないくらいに頭を回転させる。そして、ある項目を思い出した。

 

「だったらここにいろ!」

 

 シャルルは突然の一夏の言葉に驚く。いきなりの事でどういう意味かすら一瞬理解することが出来なかったぐらいだ。

 

「俺が黙っていれば問題ないし、もし仮にばれたとしてもお前の親父や会社は手出しできないはずだ」

 

 一夏は、自分の手荷物を漁り、そして生徒手帳を取り出し、

 

「IS学園特記事項。本学園における生徒はその在学中において、ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。ということはこの三年間は大丈夫ってことだ。それだけあればどうすればいいか考え付くだろうさ」

「良く覚えていたね、特記事項って五五個もあるのに」

「こう見えても勤勉なんだよ、俺はな」

「一夏……ありがとう」

 

 シャルルはこの二日間で見たことないぐらいの笑みを見せてくれた。

 一夏はあまりの笑顔に心臓がドキッとしてしまった。

 

 そして一夏は思った。

 

 この、シャルルの笑顔を守りたい。こんなに良い笑顔をする彼女を悲しい顔にさせたくない。だから、何が何でもシャルルのことは自分が守ってみせると。

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