ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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第二章『紅の鎧 -Answer-』《無駄だ、やめておけ》

  1

 

 一夏がシャルルが実は女性だった事の問題でゴタゴタしている頃、篠ノ之箒は部屋で悩んでいた。

 箒は正直に言うと織斑一夏のことが好きなのである。

 

 好きになった理由、それは小学生の頃にいじめを受けていたところに一夏が助けてくれた、そしてその後に優しくしてくれたからである。

 好きになる理由など、そんな、実はちょっとしたことだったりする。

 

 そして、小学生のとき箒は春樹に相談した事がある。その時、一夏を誰よりも知っていて、尚且つ自分と一番仲が良かった人物が彼だからだ。

 箒は勇気を出して一夏が好きなことを春樹に話した。すると春樹は笑顔で応援すると言ってくれた。そのときは本当に嬉しかった。結構気を使ってくれたし、色々と協力してくれた。

 

 そしてある時、箒は一つの決断をした。剣道の大会で優勝したら一夏に告白をする。好きだと一夏に伝える。その為に剣道の大会に優勝するんだと。

 そしたら春樹は剣道の稽古に付き合ってくれた。箒が優勝できるように、とアドバイスもしてくれた。正直嬉しかった。良い友達を持ったと思った。

 

 しかし……。

 

 そのときだ、箒の姉、束がインフィニット・ストラトスを開発し、そして『白騎士事件』により篠ノ之の家系は全員保護対象にされ、そして地元を離れる事になってしまった。

 

 もちろん剣道の大会で優勝する事――いや、出場すらできず、一夏に告白することも叶わなくなってしまった。

 

 その後の箒はちょっとした自暴自棄になり、力任せの剣道をしていた、自分のイライラを解消するだけの剣道。そこにスポーツマンの精神などというものはなかった。

 確かに剣道で勝った。剣道の技量では相手より上だった。

 しかし、箒は何か空虚感に襲われていた。何故なら、剣道というスポーツを楽しんでいなかったからだ。

 

 ただ自分の力を、自身が満足する為だけに振り回していただけだった。

 

(そう……あのときの私は、まるであのラウラ・ボーデヴィッヒのようだ)

 

 箒はラウラの今までの模擬戦を思い出す。

 自分の力を相手の事も考えずに振り回す。それはまるで過去の自分を見ているようで、とても不快だった。

 

(駄目だ、奴の事を考えては。今は……)

 

 箒は考えてる事が全く違うものになっている事に気付いて軌道修正した。箒が一夏と再会して二か月が経ったが、やはり一夏の事が好きだった。この気持は変わることは無かったのだ。

 

 そして、彼にどう告白しようかと悩んでいた。

 

 箒は怖かった。彼に告白する事が。

 

 もし彼に振られてしまったら? 告白したせいで避けられてしまったら?

 

 考えただけで怖くて怖くてしょうがなくなる箒。

 

(そうだ、こんなときは春樹に相談すれば……)

 

 箒は携帯電話を取り出して春樹に電話をかける。

 1コール、2コール、3コール、そして4コール目の途中で春樹が電話に出る。

 

『もしもし、どうした箒?』

「あ、春樹か。実は相談が……」

『何、やっぱ一夏の事か?』

 

 やはり春樹にはなんでもお見通しなのだろうか。箒はいきなり正解を言われてドキッとした。

 

「そ、そうだ。実はな――」

 

 箒は自分が考えている事を全て話した。

 一夏に告白しようか悩んでいる事、そしてもしかしたら、嫌われたり、避けられたりするのではないかという考え。

 その箒の悩みに春樹はため息をつき、その後いきなり笑い出したのだ。

 

「なんだ、馬鹿にするのか」

『まぁ、そんな感じ。確かに一夏は鈍感だけど、面と向かって告白すれば大丈夫だよきっと。箒結構可愛いし、自信持ちなよ。あんまり遠回しにアピールしてるだけじゃ一夏は気づいてくれないぞ?』

「そ、そうなのか?」

『ああ、一夏はそういう奴だよ。あいつは鈍感の中の鈍感だからな。気を惹こうとしてアピールしてるだけじゃ、あいつは答えてくれないよ。だから、好きなんだという事をはっきり伝えるんだ』

「……分かった。いつもありがとう、春樹」

『ああ、俺はいつもお前達の味方だよ』

 

 と春樹は言い残して電話を切った。

 

(面と向かって、はっきりと……か……)

 

 言うだけなら簡単だ。しかし、そこに踏み出すまでが最大の障害である。

 やはり不安と羞恥というものが邪魔してそこまでに踏み込めない。ましてやこの六年間思い続けてきた男性だ。そしてその想い人に再会した。幸いにも彼は箒のことを忘れずに覚えていてくれた。箒はなによりそれが嬉しかった。

 

 だけど……面と向かって告白して、結果がダメだったら?

 やはり考えただけで怖い。だけど、春樹の言った通り、伝えないと何も始まらない。

 

 だから――。

 

(よし、なら今度の学年別トーナメントで納得のいく成績を収めたなら……一夏に告白しよう……うん!)

 

 箒には専用機はない。だからこの学年別トーナメントで勝ち抜くのは至難の業であり、箒の現在の腕では専用機持ちに当たっただけで勝てるかどうか危うい。

 今まで一夏や春樹、そしてセシリアと練習を続けてきた。確かにISの操縦は入学当初に比べて遥に上達しているのは箒自身も実感していた。

 

 だけど、それだけ。専用機持ちの操縦テクニックにはまだ及ばない。

 こういったISのトーナメントを行うときは、専用機持ちの独壇場にならない為に機体に規制(リミッター)をかけることになっている。その専用機のスペックの程度にもよるが、責任者の教師の判断によって、武器の出力と機体自体のスペックを量産機以下にする事になっている。

 

 これで機体性能で勝つことは不可能になるし、求められるのはその操縦者のテクニックのみ。

 しかし、そのテクニックは流石専用機持ちと言うべきか、非常に上手である。伊達に専用機を預けられているだけあり、結構前からISを操縦しているのだろう。

 

 ここで箒は疑問を感じた。

 織斑一夏と葵春樹である。

 過去に何かありそうな春樹はともかく、一夏はクラス代表を決めるときのあの春樹との戦闘。あれはおかしかった。確かまだISの操縦は二回目であり、そしてあの操縦テクニック。おまけに春樹に勝ったのである。

 

(一夏……お前は何だ……)

 

 箒は一夏の存在に疑問に思ったが、そんなことはどうでもいい、と思い、ベッドにもぐりこんだ。そして箒は眠りにつく。

 

 

  2

 

 

 二日後、量産型IS『打鉄』の使用許可を得ることが出来た箒はセシリアと共に特訓を行うことにした。

 

 ちなみに一夏はこの場にいない。彼とは今あんまり練習したくない。これは箒の一夏への告白のため戦いであり、一夏にその為の練習など見て欲しくなかった。

 だから箒はセシリア・オルコットに頼んだ。春樹は練習に付き合えないそうなのでここにはいない。

 

 そのとき、セシリアはなぜか残念そうな顔をしていた。

 箒はそんなセシリアを見て彼女はやはり春樹のことが気になっているのか、と思う。

 

「すまないな、セシリア。練習に付き合わせてしまって」

「いいえ、大丈夫ですわ箒さん。お友達のせっかくのお誘いですもの。学年別トーナメントも近いことですし」

 

 箒とセシリアは春樹や一夏を通して仲良くなっていた。今や名前で呼ぶほどのお友達だ。

 セシリアの専用機はブルー・ティアーズであり、ビットによる全方位攻撃が特徴的な武装を持った機体である。

 箒は彼女と一夏がいつも行っている練習をやってみることにした。セシリアが攻撃、そしてそれを一五分間避け続けるアレである。

 

「やってもいいか?」

「ええ、構いませんけど……」

 

 二人は飛び上がり空中へ、そして――。

 

「じゃあ、行きますわよ!」

 

 そう言ってスターライトmkⅢを放つ。それをかわす箒。

 そして、ブルー・ティアーズを解き放つセシリア、ビットが箒を囲み、全方位攻撃を仕掛ける。

 

 無数のレーザーが彼女を襲う。箒は慌てて、間一髪で避けていた。しかし今のははっきり言ってまぐれだった。運が良かっただけだ。次も避けれるとは言い難い。

 

(一夏はこんなのを毎日やってたのか……。これを一五分間逃げ切るのか?)

 

 無理だ。

 

 箒はそう思った。ただでさえ今までセシリアは一夏と練習してきて射撃の精度も上がっているし、一夏も攻撃を避けることに関してはとてつもなくスキルアップしているはずだ。

 到底自分が敵うような相手じゃない。

 

 そう思った。

 

 だけど、箒はその後も何発かかわす事の出来た。

 セシリアはその攻撃を何回かかわされて驚いていた。彼女は量産機の打鉄で、しかもセシリアは一夏との練習で、スキルアップをしているはずなのだ。

 

 なのに、つい最近まで春樹に基礎的な事を教えてもらっていた彼女が、今こうして自分の攻撃をかわしている。

 

 その事実が信じられなかった。

 基礎は完全に出来ている。後は臨機応変に対応する応用力を養うだけ、という状態だという事。つまり土台作りは完全に終わっていた。

 

(何だ、さっきはまぐれでかわしたと思ったが、当たるかどうかギリギリだがかわせる……?)

 

 箒も自分でもよく分かっていなかった。身体が動いてくれる、危なっかしいが、何とかかわせる。

 

 しかし、ギリギリの綱渡り状態だった為か、ついにセシリアの攻撃がヒット。たった三分間であったが、毎日練習して日々成長しているセシリアに初めて挑戦、しかも打鉄で三分間耐えられただけでも凄いことだろう。

 

 二人は一回地上へ降りて、話し合うことにした。

 

「箒さん、凄いですわね。基礎はもうちゃんと出来てるみたいで」

「ああ、自分でもビックリだ。まさか私がここまで動けるとはな。危ないところは沢山あったが」

「後は戦況に合わせれる応用力を鍛えていけばいいですわね」

「うむ。ではもう一度いいか?」

「ええ。行きますわよ、箒さん」

 

 二人がもう一回さっきと同じ練習を始めようと、空へ飛び立とうとしたそのときであった。いきなりの砲撃が二人を襲った。

 いきなりの砲撃であったのだが、セシリアと箒の二人はそれを難なく避けた。

 

 二人の前に現れたのは黒く、そして大型のレールカノンが右肩部のスラスターに取り付けられているのが特徴的なその機体。ドイツ軍IS部隊隊長専用機、シュヴァルツェア・レーゲンであった。

 

「ラウラ……ボーデヴィッヒ……」

 

 セシリアはISの画面に映し出されたシュヴァルツェア・レーゲンのスペック情報を読んでそう呟いた。

 

「どういうつもりだ、いきなりこちらに砲撃してくるとは!」

 

 箒は怒りを露わにしながらラウラに対して怒鳴る。

 だが、彼女の怒号に反応することなく、冷徹に、静かに、そしてなおかつ挑発するようにラウラは言う。

 

「イギリスのブルーティアーズと量産機の打鉄……。打鉄はともかく、イギリスのは資料を見たときの方が強く感じたな」

 

 そのような言動の彼女に対し、箒はこれ以上彼女に何を言っても無駄だと思ったから、何も言わないようにした。

 

「さて、古いだけが取り柄の国は余程人材不足なのだろうな。そして量産機を使っている奴は……学年別トーナメントにでも向けて特訓といったところか……。一つ言っておく、無駄だ、やめておけ。どうあがいても専用機持ちには勝てない」

 

 ラウラはあからさま過ぎるほどの挑発を二人にしていく。セシリアと箒の二人はラウラの挑発にまんまと飛び掛る。

 

「コイツ……余程、ぶん殴って欲しいみたいだな」

「ええ、箒さんの言う通り。これだけの事を言って、吼えるだけかと思って?」

「ふん、なら。二人がかりで私に挑んで来い」

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