ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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終 章『覚悟と決意 -To_The_Future-』

 葵春樹は目を覚ます。いったい自分は何所にいるのだろうかと、辺りを見回した結果、そこはドイツ軍の医務室だと分かった。

 

「起きたか、春樹」

 

 そこにいたのは織斑千冬とラウラ・ボーデヴィッヒであった。そして隣のベッドには篠ノ之束が寝ていた。そして他のいくつかのベッドにも見慣れたIS部隊のメンバーが寝ていた。

 体の全体がだるく、そして痛むのを我慢しながら身を起こす。

 

「俺は……結局どうなったんですか?」

 

 千冬が春樹の質問に答えた。

 

「今回の襲撃でドイツ軍基地が半壊、シュヴァルツェア・ハーゼの隊員も二人死んだ。しかし、守るべき対象は守りきったんだ。そこは誇って良いと思うぞ」

「そうですね、この任務で散っていった仲間達には笑顔で感謝しないといけませんね……」

「そうだな」

 

 春樹はここで泣いて悔やんでもしょうがないと思い、前向きに考える事にした。

 今回のこの襲撃は誰のせいでもない。しいて言うなら襲撃してきたあいつ等のせいだ。

 だけども引っ掛かる事がいくつかある。

 自分はあの戦闘の後、意識を失い、気が付けばこの医務室で寝ていた。

 あの戦闘では一人は身動きできない状態に持って行けたのだが、もう一人、アベンジャー1と名乗っていた人物の行方を春樹は知らなかった。

 

「そういえば、奴らの内一人は捕まえる事ができたんですよね? 何か分かりましたか?」

「……それがな。自爆した」

「え?」

「奴の体とISものとも爆発して跡形もなく吹き飛んだんだ」

「情報漏洩を防ぐ為、ですかね?」

「おそらくな。暗部組織かなんかだろう。手がかりも、奴らの目的も分からないままになってしまった」

 

 アベンジャーと名乗った二人……奴らの目的はなんだったのか。篠ノ之束や織斑一夏、そして葵春樹を殺してなんになるのだろうか。

 春樹は考えた結果、もしかしたら俺がISを動かせることに関係があるのだろうと考えた。そして奴らの話からすれば一夏もISを動かせるのかもしれなかった。

 すると束も目を覚ました。

 彼女は目をこすってあくびをしながら身体を伸ばす。

 

「ん~っ、……あ、ちーちゃん、春樹……」

「束か、起きたんだな」

「うん。なんか……ごめんね。特に春樹には沢山助けてもらっちゃった。ありがとうね、春樹」

「え、あ……はい。大丈夫ですよ」

 

 素直に感謝されるとなんだか恥かしくなってしまった春樹、そして自分は束のために何をしたんだろうか、と思った。

 そして、もう一つ。彼の中で何より引っ掛かっていたことだ。

 それを聞くために、彼女を呼びかける。

 

「ラウラ……」

「なんだ? 春樹」

「いや、これからお前は隊を引っ張っていく事になるだろうけど……大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない」

「千冬姉ちゃん、ラウラの奴、こんなこと言ってますけど」

「ま、お前が一人前になるまで私が扱いてやるからな、訓練が再開したら覚悟しておけよ?」

 

 千冬は少し鼻で笑いながら言った。

 

「は。了解いたしました、教官」

 

 春樹は相変わらずのラウラを見て笑う。つい先ほどみんなの隊長だったエルネスティーネ・アルノルトは死んだ。そして次期隊長がラウラになり専用機を受け取ったのだ、シュヴァルツェア・レーゲンを。

 隊長を任せられるとは生半可な気持ちでは務まらない。だが、ラウラなら隊員を引っ張っていくと言う責任を背負っても大丈夫だろう。

 専用機を持つ。これは力の使い方を間違えた者に与えた場合はいろんな人を悲しませる。現段階で最強とうたわれる兵器なのだ。一歩間違えれば、世界を滅ぼしかねないほどの性能を持っている。

 

「ところでちーちゃん」

「なんだ、束」

「これから春樹と二人きりで話したいんだ。ちょっと二人で出て行ってもいいかな?」

「二人でか? そうだな、今IS部隊のブリーフィングルームが空いている。あそこは何の被害にもあってないからそこに行け」

「ありがと、ちーちゃん」

 

 束は笑顔で千冬にお礼を言って、そして春樹の手をつかんだ。

 

「さ、行こうか春樹」

「あ、はい」

 

 引っ張られるように医務室から出て行く二人。そしてそこに残ったラウラと千冬は顔を合わせるなり、ラウラから千冬に話しかけた。

 

「教官、一つ聞きたいことが」

「何だ?」

「教官は……何故あれほど強いのですか?」

 

 ラウラは襲撃してきたあの黒いISと対峙したときの千冬の戦闘が頭から離れなかった。

 あの時はエルネスティーネの方に集中していたのだが、しっかりと千冬の戦いも目に焼き尽くしていた。

 大佐ですら一瞬でやられてしまったのに、千冬は奴らと対等に戦っていたし、あの時は二対一であったのだ。しかも束や春樹、そしてラウラを守りながらの戦闘だった。

 ラウラはワイヤーブレードを一回使用するだけで精一杯だったのだ。あのときの春樹、そして千冬の戦闘は頭から離れる事はなかった。

 

「そうだな、私には弟がいる」

「春樹ですか?」

「いや、確かに彼も大切だがな。私の実の弟だよ」

「確か、織斑一夏……でしたよね?」

「そうだな、私は実の弟が凄く大事だ。色々とあってな、最初は一夏と二人で暮らしていた。春樹が私達と一緒に暮らすようになったのは一夏が小学生になったときの事だったな。春樹には悪いが、私にとって一夏はたった一人の血の繋がった家族なんだ。だから、一夏を守る為、そして強くするために私は強くなった」

 

 千冬が語っている姿は微笑んでいて、とても優しく感じた。ラウラには千冬のこのような表情は見たことがなかった。

 いままで千冬を尊敬してふれあってきたが、このような表情になった事はなかった。はじめて見る千冬に戸惑いを感じるラウラ。

 そして、いままで感じたこともないような感覚に襲われた。胸の奥がキュッと締め付けられるような良くわからない感覚に。

 

(教官、なぜそんな顔をするのです? いったいなぜ?)

 

 そんな疑問を持つが、それを表情に出すことなくラウラは言う。

 

「あの、教官……。これからも……よろしくお願いします」

「期待していろ、みっちり扱いてやるからな」

 

 そのときの千冬はいつも通りの千冬の表情になっていた。

 ラウラはこのときに何か分からないモヤモヤを感じていた。

 

 

 

 春樹と束はIS部隊用のブリーフィングルームへ来ていた。

 

「じゃあ、春樹。お話の続き……しようか」

「はい」

 

 束は椅子に座る。

 

「春樹の遺伝子にはね、普通の人にはない特別な因子があるんだよ――」

 

 春樹の身体についての事を詳しく聞かされた。はっきり言って信じられないようなことではあった。何故なら……春樹がISに乗ると、コアが強く反応し、そして、春樹のその因子も強い反応を示していた。お互いに反応し合うように。恐らくこれがISに乗れる理由なのではないか、と。

 しかも、そのとき普通では考えられないような出力をISは出していたらしい。

 

「それで私は考えたんだ。これが本当のISのコアの力なのではないか、ってね」

 

 春樹は立ったまま、手を握り締め、束の話を黙って聞いていた。

 

(これが本当なら……一夏もISを使うことが出来るのか? あいつらが言っていた事と合わせると、恐らくそうだ……)

 

 そして束は話を続けた。

 

「で、春樹に頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと……ですか?」

「そう、私のところに来ない?」

 

 春樹は少し考え、

 

「……どういう事です?」

 

 束は目を瞑り、一呼吸置いて再び目を開いた。そしてゆっくりと口を開け、

 

「今回のこのドイツ軍基地への襲撃は私がターゲットだった。で、天才束さんはこんな事を考えた。表舞台には出ない暗部組織が何かを策略している。そして今回の私といっくん、そして春樹を殺すのが奴らの目的の一部分。その大きな目的は分からないけど、殺そうとするという事は奴らの目的の障害となるものである事は間違いない。だから――」

 

 束は立ち上がって、

 

「この暗部組織の計画が世界的に危険な事ならば、それを止めたい。私が生み出したISで悪い事をするなら、絶対に許さない」

 

 束は春樹の両肩を掴む。

 

「……春樹、だから私にその力を貸して欲しい。本当は年上のお姉さんが年下で、まだ中学生の春樹に助けを求めるのはみっともないという事は分かってる。でも、私はあいつらのような奴らは許せないんだ。お願い……春樹……お願い……」

 

 束は俯きながら必死に春樹に助けを求めていた。

 そんな束に対して春樹は微笑みながら、束の手を握って言った。

 

「束さん、俺……こんな俺でも誰かを助けれるなら喜んでお受けします。束さんを守ることが、みんなを守ることに繋がるなら……俺は束さんを命をかけて守ります」

 

 このとき束は感じた。春樹の目は戦士の目になっていた。戦うものの目……それはあらゆる覚悟と目標を掲げ、その目標の為に血眼で頑張る。そのような目をしていたのだ。

 束はそんな春樹に対して特別な感情を抱いてしまった。このときの春樹が誰よりも頼もしく、逞しく、そしてカッコよく見えた。

 

(私、まだ中学生の春樹に……? 嘘、ありえない……でも……)

 

 束は心臓をチクリと針で刺されたような刺激を否定しながら、でもあのとき守ってくれた春樹を思い出してしまい、ますます自分の感情が分からなくなってしまう。

 

「束さん……どうしたんですか?」

「え、いや……なんでもない……あ、ありがとう。春樹」

 

 束は笑顔で春樹に礼を言った。

 春樹は初めて束のこんな笑顔を見たので、少し驚きながらもその可愛らしい笑顔に見とれてしまった春樹。そんな自分が非常に恥かしく思えてきて顔が熱くなった。

 二人は非常に物理的に近い所にいた。もう目と鼻の先である。

 彼、彼女の顔が目の前にある。二人はそう思ったら急に恥かしくなってしまい、どっちと言うことなく同時に身体を離した。

 

「あはははは……」

「えへへへへ……」

 

 二人は苦笑いしながら気持ちを落ち着かせていた。そして……。

 

「なら、今すぐにでも私と一緒に来て、春樹には悪いけど、このドイツ軍基地とはお別れになってしまうけど……」

「…………大丈夫ですよ、俺はもう束さんを守るって決めましたから」

 

 しかし春樹は心残りがあった。ラウラの事である。

 彼女とは友達になれたのに、一ヶ月もしない内にISを動かして、それが理由で営倉に入れられて……そして謎のISによる襲撃。本当にあんまり一緒にいられなかった。

 彼女にとっては同い年で初めての友達だったという。だから春樹は心残りがあった。もっとラウラと遊べたらなって思っていた。

 だけど、もう彼女は一人じゃない。エルネスティーネに、みんなに認められたシュヴァルツェア・ハーゼの隊長である。春樹が兄のように、または父親のように過保護になってどうする? それはただ気持ち悪いだけだ。だから……、これでいい、と春樹は思ったのだ。

 

「じゃあ、行きましょう。さよならは言いません。だけど……」

 

 春樹は携帯を取り出してメールを打った。贈る相手はラウラである。

 

「今、ラウラにまたねって贈りました。もう心残りはありません。じゃあ、行きましょう束さん」

「……うん。行こうか」

 

 そして春樹と束はドイツ軍基地を後にした。誰にも何も言わずに、ただ、春樹がラウラに対して“またね”と打っただけである。

 

 そして春樹と束の二人は仲間集めに徹した。束の新たな組織を立ち上げる為に。

 これが暗部で話になっている『束派』と呼ばれる集団である。

 葵春樹はそこでISの操縦を磨くことになる。仲間と共に。

 

 以上が葵春樹の物語であり、そして、ここから新たな物語がもう一つ始まる。

 

 そう――『織斑一夏の物語』が。




 以上がEpisode3でございます。
  私が初めて書いた完全オリジナルストーリーはいかがでしたでしょうか? 話を書くための要素は原作からでしたけども、ストーリーラインは頑張ってみました。
 客観的に見れば設定の穴はたぶんあると思います。パッと見、自分が書いた中では無いと思っているのですが……。
 一つだけ私から言っておきますが、ここで書かれる軍については無知な私が書いたものなので、甘々で、軍事というものを舐めきったものだと思います。
 私が書くことが出来る限界なのでどうかお許しください。

 さて、今回のテーマは……いったいなんでしょうね?
 お話自体が本編ストーリーに繋げるための過去話なので……。
 と、なれば。テーマは『継承』ということになるんでしょうかね?
 ラウラは隊長から色んな物を継承した。そして、束の想いを春樹は継承した。
 そんな感じの物語だと思います。


 今回分かった事!

・一夏が何者かに誘拐された。
・謎の女の子が謎のISを操り、一夏の事を知っていた。
・春樹のDNAには特別な因子があった。それがISを動かせる原因らしい。
・謎の襲撃者、アベンジャーの存在が発覚。その目的は束の殺害。

 今回はオリジナル回という事でオリジナルキャラで物語が構成されていました。
 そして、分かった事から二点。

『ISを動かせる原因であろう因子』
 これはISアリウスにおける重要なファクターの一つです。
 原作では明らかにされていないISが女性しか動かせない理由と、なぜ男性パイロットが存在しているのか、という事を描くのがこの二次創作の目的の一つとなります。
 なぜこんなものが存在しているのか、それに注目して頂ければな、と思います。

『アベンジャー』
 今回で明らかになった束を狙う存在。
 Episode3では存在をお披露目するだけで、詳しいことはまだ描いていません。
 彼らについては段々と分かっていきます。


 さて、次のEpisode4では、ようやく原作のストーリーに戻ります。
 とは言っても、お話の内容はだいたい原作とは違います。
 基本的なストーリーラインは原作通りですが、内容がほとんど違います。
 次は海! 恋! そして戦い! 楽しみにしていてください。(Arcadia 様の方では既に投稿していますけどもw)
 では。
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