【あらすじ】
セシリアが所持しているブルー・ティアーズを開発したLocus_of_Evolution社が、新しく開発したIS、それが『ゼロ・グラビティ』。
この度、めでたく世間一般に公開する日がやって来た。
パイロットを務めるのはセシリア・オルコット!
彼女の操縦テクニックに驚かさる一夏たちだが、その奥で、何か黒いものが動き出していた。
【13年9月29日】
Episode6全体のBT兵器の設定を原作通りにしました。
『ビーム兵器→レーザー兵器』
序 章『彼女の宿命 -Desire_for_revenge-』
八月三日。
セシリア・オルコットは改良型ブルー・ティアーズの試験の最終段階に入っていた。
『セシリア、準備は良いかな? この短期間でここまで仕上げられるとは恐れ入ったよ。代表候補生に選ばれた時を思い出すと、今の君はあのときから遥かに色々と成長したと実感させられる』
「よしてください。さ、早く最終テストを終わらせてしまいましょう?」
通信機を使ってセシリアにそう語りかけるのは、Locus_of_Evolution社の代表取締役、ドゥーガルド・フィリップスである。
この一〇日間、セシリアが発案したブルー・ティアーズの改良案を基に、LOE社が開発していた武装を彼女の指揮の下に改良し、ブルー・ティアーズに装備。今ここでセシリアが身に着けているブルー・ティアーズは姿を大きく――ではいかないが、多少なりと変化がみられる。
一番最初に目につくのは背中についているBT装備であろう。
今まではレーザービットが四基、ミサイル発射砲が二門で構成されていたのだが、このミサイル発射砲を破棄し、レーザービットを四基追加した。つまり、レーザービットが左右四基ずつ、計八基のレーザービットを装備した。
元々、扱うことが非常に困難であるビット装備であるが、それが八基になったとなれば扱う事すら不可能なのではないか、という疑問や心配が生まれてくるだろう。事実、この改良案を出したセシリアに対し、LOE社の開発部の人物たちは「こんな装備にして扱いきれるのか」という言葉を出していた。これを彼女は間髪置かずに首を縦に振り、大丈夫だと言い張ったのだ。
この自信はどこから来るのだろうか、と心配しながらも、BT装備のミサイル砲を破棄してレーザービットを装備した。名前を“ブルー・ティアーズⅡ”という。
これをセシリアがどれほどまで扱えたかというと――。
『それでは、テストを始める。メニューはもう頭に入っているな?』
「はい。大丈夫ですわ。最初はもちろんBT兵器のテストからですわよね?」
『OKだ。では――テストスタート!!』
ドゥーガルドが試験スタートの宣言をした瞬間、AR映像によって、セシリアの視界にはターゲットとなるISのシルエットが現れた。それらは縦横無尽に動き回り、攻撃に当たらないように三次元機動を描き、レーザーによる攻撃を繰り返す。
セシリアはビットをすべて展開、八基のビット兵器が空中を動き回っていく。それらは一見出鱈目な動きに見えるだろうが、分かる人から見たらそれは的確すぎる動きで、ターゲットの攻撃を避けつつ、相手の動きを制限するかのように追い詰める。
まずは一機。
ターゲットがビームに当たり消滅する。
それとほぼ同時に三機のターゲットがレーザーに貫かれ、消滅した。
ビットの射撃により、彼女は次々とターゲットを射抜いていく。相手に逃げる隙を与えない。弾幕の様なレーザーという訳でもないのに、それを実行している。
一〇〇体のターゲットを消滅させるのに要した時間はわずか三〇秒ほどだった。一秒につき三体から四体ほどのターゲットを打ち抜いている計算になる。
セシリアは自分の技術に自信を持ちつつ次のテストに移行していく。
次の試験はスターライトmkⅢの改良型であるスターライトmkⅣである。これは単純な威力アップに次ぎ、新たな新装備が設けられている。この武装には銃口が二つあるのだ。一つはレーザーを打ち出す銃口。もう一つは追尾機能持ちの小型ミサイルを発射する銃口である。
この武装をスターライトに追加した理由としては、ミサイル砲を不採用にしたブルー・ティアーズⅡとの兼ね合いがある。だからこそ、ミサイル兵器はこちらに装備するしかなかったのだ。ビットによる攻撃に更に追い込みをかけるための装備と言える。
(わたくしは、強くなりましたわ。自分で胸を張って言えるぐらいに。お父様、お母様、見ていますか? わたくしは、こんなにも強くなりました)
セシリアの父親と母親は、三年前に列車の横転事故によって亡くなっている。しかも、その横転事故は原因不明なのだ。当時の記録によると、列車は決してスピード超過していた訳でもなく、急なカーブで横転した訳でもない。列車が横転したのは緩やかなカーブの場所であった。線路には石などの横転原因になるようなものは見当たらず、何もかもが謎のままに終わった事件である。
その事件が起こる日、ほぼ別居状態で、いつも離れていた両親が、その日だけ一緒に居たことは今でも忘れられない疑問点だった。
オルコット家は男がおらず、セシリアの父親は婿養子としてセシリア家にやってきたのだ。やがてセシリアが生まれ、ものごころついた頃から母親は実家の発展に尽力した母親の事を尊敬していた。だけど、一方で父親は婿養子という立場の弱さから、母親に対して常に卑屈であったことに対して、憤りを感じていたのだ。
――このような男は人生のパートナーとしてはいけない。
そのような父親を見てきた所為か、セシリアはそのように考える様になった。
だけども、そんな父親でも、父親らしいところは時折見せてくれていた。一緒に手を繋いで歩いてくれたことは忘れることは無い。プレゼントを買ってくれたことだってあった。
色々と成長して様々な知識を身に着けた今なら、父親の事を理解できるような気がする。
(お父様は、きっと生きる様が不器用な人だったのかなって、そう思います)
両親を失ってからは家を守るために、彼女は一般教養や政治など、様々な分野の勉強を頑張ってきた。今ではオルコット家も、その遺産も無事にある。
今ではもう、死んでしまった両親には会うことは出来ない。でも、彼女にはIS学園を通してたくさんの仲間が出来た。後ろはもはや振り返らない。今は前だけを見て、彼女は突き進んでいる。
――すべては、真実を知るために。
セシリア・オルコットはテストを終えて墓地へと来ていた。
その目的は勿論、セシリアの両親の墓参りである。
彼女は定期的に両親の墓参りに来ていた。IS学園に入学してからは、長い間墓参りをしていなかったが、長期の休みに入り、帰国したということでこうやって墓参りに来ている。
セシリアは花束を墓の目の前に置いて、こう言った。
「お母様、お父様。わたくし、成長したと思いませんこと? お父様とお母様は天国で仲良くしていらっしゃるかしら? 未だにお父様はお母様に頭が上がらないのでしょうか、ウフフ……。あのね、わたし、これから仲間を助けるために、お父様とお母様が死ぬことになった事故について、その真実を掴むために動き出すの。出来れば、わたしの活躍を天国から見ていてね。……成長したわたくしの姿を、見ていてください……」
彼女はその場で目を瞑り、一呼吸おいてから墓に背を向けて歩き出す。
夏の夕日は何所までも赤く辺りを染め、彼女と両親を照らしていた。