ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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第二章『守りたいもののために -Force-』《お前達は誰だ?》

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 授業が終わり、昼休み。相変わらず外を眺めていた箒に一夏は話しかけた。

 

「箒、おーい箒。飯食いに行こうぜ。春樹、お前もどうだ?」

「あ、ああ……いいな。よし行こう」

「ほら、春樹も行くってよ。ほら箒も行くぞ」

 

 しかし、箒はちょっと低めの声で不機嫌そうに言った。

「私はいい」

「そういうなって、ほら立てよ」

 

 と言って箒の腕首辺りを掴んで無理やり立ち上がらせようとする。箒は慌ててながら言った。

 

「な、わ、私は行かないと……」

「はあ……いつまでそう不機嫌なんだよ。そんな箒は嫌いだぞ、俺は」

 

 そう一夏が言った瞬間、箒は焦った。自分が変な意地を張ったせいで一夏を不機嫌にさせてしまったからだ。箒は慌ててさっき言ったことを訂正した。

 

「あ、すまん一夏。じゃあ、行くとするか」

 

 箒は顔を赤くしながら言った。しかも一夏は箒の腕首から手を離し、今度は箒の手を握り、手を繋いで食堂へ向かおうとした。箒はこの状況に訳がわからなくなっている。舞い上がって我を失いかけていた。

 

「春樹行くぞ~」

「ああ、一夏」

 

 春樹は思っていた。その手を繋ぐという行動が無意識での行動というのが箒にとって良いのか悪いのか。

 

 春樹は笑顔になりながら箒を引っ張り、一夏の後ろについていく。

 そして、食堂へと向かう。一年生の教室からは食堂は少々遠い。それも仕方が無いと妥協して、少しばかり長い距離を歩いた三人は食堂へと着く。

 

 食券を買って、食堂のおばちゃんにそれを渡す。自分の頼んだメニューが来るのをまちながら、一夏はさっきの箒の態度についてちょっとした説教をしていた。

 

「あんなに意地張らなくていいのに、やっぱり素直な方が可愛いと思うぞ?」

 

 突然そんなことを言い出す一夏に顔を赤くしながら箒は言葉を返した。

 

「そ、そ、そうか。素直なほうが良いのか……」

「ああ。なあ春樹?」

 

 すると春樹はなぜ俺に振る? と考えながらも一夏の言葉を肯定した。

 

「ああ。そうだな」

 

 このとき春樹は思った。また一夏の無意識でのその行いか、と……。恐らく、一夏と箒の間ではちょっとした意味合いのすれ違いがあった。

 

 一夏は「どんなやつでも素直なほうが良い」という意味で言っており、箒は「素直なほうが自分は一夏に可愛く見られる」という純粋な気持ちで受け取っていた。箒の受け取り方も間違いではないが、微妙な意味合いのすれ違いは見て感じてむず痒い。

 

 箒は幸せな感情に包まれていたところ、現実に戻される声が耳に響いた。

 

「はい、日替わりお待ち!」

 

 そこには一夏と春樹、箒の分の日替わりランチが並んでいた。箒はその声を聞いて現実に戻される。どうしようもない事なのにちょっと不機嫌になる箒。自分の分の日替わりランチを取るなり一人でさっさと行ってしまった。

 

 一夏は不安そうに春樹を見ながら言う。

 

「俺、なんかしたか?」

「いや、お前は恐らく悪くないよ。たぶん……」

 

 一夏の質問にちょっと自信なさげに答える春樹であった。

 そして、箒の待つ席へと向かった。

 二人は箒が確保してくれた席に座る。箒は「遅い」と言ったが、二人は笑って誤魔化し、三人は昼食を食べ始めた。少し経ったところで一夏が二人に話しかけた。

 

「なあ、春樹、箒、ISのこと教えてくれないか? このままじゃ、セシリアと春樹にストレート負けしちまう。対戦相手に頼むのもちょっとおかしい話だけど、どうだ、教えてくれないか?」

 

 この前向きな姿勢も、春樹の助言があってこそだ。以前の一夏なら、こんなことを言わないだろう。相変わらず、ISから当酒ていたはずだ。

 

「別に一夏はクラス代表になる気は無いのだろう?」

「そんなわけに行くか! やる前からやっぱ俺はいいです。ってそんなかっこ悪いこと出来るわけないだろう」

「むっ……」

 

 箒は自分の失言に自分で自分を怒っていた。

 そこに、上級生らしき人物が近づいてきて一夏と春樹に話しかける。

 

「ねえ、君達ウワサの子でしょ? 代表候補生の人と戦うって聞いたけど、でも君達素人だよね? 私が教えてあげようか、ISについて」

 

 と、その先輩の女子生徒が言った瞬間、春樹と箒は凄い勢いで……。

 

『結構です!!』

 

 と叫んだ。これには一夏もビックリした。まさかこの二人がこのようなアクションを起こすとは思いも思わなかったからだ。

 春樹は一夏と箒の間に変な虫が入り込まないように。箒は一夏の近くに上級生の女子が一夏にものを教える。というシチュレーションが恐ろしくて必死に言ったのだ。

 

「俺が――」

 

「私が――」

 

 ほぼ同時に春樹と箒は自分のことを一人称で呼び、そして同時にこう言った。

 

『教える事になっていますので!!』

 

 あまりに息が合っていたので一夏は微妙に引いた。上級生の先輩も負けじと言葉を紡ぐ。

 

「君達も一年生でしょ? 私は三年生。私の方が上手く教えられると思うなぁ」

 

 しかし、こちらも負けない。すぐさま次の言葉を繰り出す。

 

「私は篠ノ之束の妹ですから」

「俺は織斑千冬の弟分ですから」

 

 実にこの二人、言い放題である。箒はさっきまで束に対してはイライラしていた原因だというのにこの有様である。使える、自分が有利になる言葉は遠慮無く使う。今の二人は何が駄目で何が良いのか。その線引きなど気にしていなかった。

 

『ですので結構です!!』

 

 またもや春樹と箒の言葉は同時に発せられていた。

 

「教えて……くれるのか?」

 

 一夏は大丈夫なのかと不安になりながら二人に尋ねた。すると二人は力強く首を縦に振り肯定した。一夏は変な不安に駆られながらも放課後になるまで待っていた。

 

 

  5

 

 

 食堂の一件で一夏の特訓のコーチをすることになった春樹と箒。

 そして現在放課後になり、ISについて教える事になる。座学が春樹、実技が箒担当ということに決まった。

 

 放課後の教室には一夏と春樹と箒しかいない。いや、正確には教室の外、つまり廊下には人がいる。どういうことかというとお察しください。

 

 ともかく、教室の外で覗いている女子達は無視して春樹によるIS解説が始まった。

 

「では一夏、ISの戦闘について教えるが、これは頭で考えることじゃないということだけまず教えておこう。戦闘中はゆっくり考えている暇なんて無いからな」

「まあ、多分そうなんだろうけど……で、何に気をつければいいんだ?」

「まずは動き続けろ、ということだ。動かないISなど射撃訓練の的のようなものだ。そして空を飛ぶときはとりあえずイメージしろ。深く考えるな。ISは自分が行きたいところへ飛んで行ってくれる自分の翼だと思って、自分が華麗に空を飛んでいることをイメージするんだ」

「はあ、イメージ……動き続ける……」

 

 一夏はなんとなく分かった。という風な感じだった。そんな一夏を見て春樹は補足した。

 

「まあ、まだISは起動したのは入試のときの一回だけだしな……。しかも一夏はほとんど動かしていなかったようだし」

「ああ……知ってた?」

 

 実は入試試験の一夏の相手は山田先生であった。しかし、開始早々訳もわからず一直線に突っ込んできた山田先生を避けるとそのまま山田先生は壁に激突。ノックダウンしたらしい。

 おそらく、山田先生は世界的に有名になったISを動かせる男子の一人である一夏と戦うことになってあがってしまったのだろう。あの先生は元代表候補生だし、IS学園の教師をしている時点でISの操縦は凄く上手いはずだが……。

 

「まあな……。で、話は戻るがISは――」

 

 そして一時間後、春樹による座学は終わった。

 

 話したことはIS最低限のことである。ひとまずセシリア・オルコットのISであるブルー・ティアーズについての情報などだ。

 

 セシリア・オルコットが操るブルー・ティアーズは未だ開発・実験途中である第三世代ISである。第三世代ISの特徴は操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵器にある。

 

 例えばセシリア・オルコットのブルー・ティアーズの場合、特殊兵器としてこの機体名の由来であるブルー・ティアーズがある。これはビット兵器であり遠隔操作でビットを飛ばし、相手を狙撃する事ができるものだ。

 六機中四機がレーザービットで、その名の通りレーザーを照射することができる。

 そして、残りの二機はミサイルビット。ミサイルを発射する事ができるのだ。

 

 等々、特殊な装備を持っているのが第三世代ISの特徴だが、実験・開発中ということもあってか燃費が悪いという問題が残っている。

 

 とりあえず、未だ自分達に贈られるという専用機が到着してない以上、そのISのスペックも分からないし、どんな装備があるのかも分からないのでそこからの対策は不可能だ。したがって、授業でやった事を分かりやすく、要約して一夏に教えた。

 

 そして春樹は一夏に、

 

「あとは感覚だ。実際にISを動かしてどうすれば良いのか直感でやるしかない」

 

 と言った。

 これも手元に自分達が使えるISがあればもっと別な事が出来たのだが……。

 

 

  6

 

 

 そして、この次は箒による実技である。とは言っても訓練機のISの使用許可も貰っていないのでISを使用してでの訓練は不可能だ。

 

 ということで、現在三人は道場へ来ている。

 そこで一夏と箒は竹刀を持ちながら会話をする。

 

「よし、一夏。今はISが使えない。だから今日は剣を握って戦闘の感覚をなんとなくでいいから掴もう。ということだが、良いか?」

「ああ、分かった。じゃあやろう」

 

 と一夏は言い、箒と剣を交じる。

 実は今日の特訓の全ては春樹と箒の二人で考えている。二人に分野を分けたからといって別にそれぞれが勝手に考えた事ではない。ということを補足しておく。

 

 一夏は現役の剣道部である箒と対等にやりあっている。まさに防戦一方で、譲らない戦いであった。

 

 この一夏は中学校では帰宅部だったのだが、なぜこれだけの動きが出来るのかというと、春樹と一夏は二人で体を鍛え続けていた。そう、あの『事件』がきっかけで……。

 そのとき春樹は思った。「大切な人を守れるだけの力が欲しい」と……。そして一夏は「大切なものを守れる力が欲しい」と……。その事件があってから考えるようになった。そして彼らは強くなるためにひたすら体を鍛えていった。

 

 その事件を語るのはまた後ほど、ということにして欲しい。

 

「一夏、やはり強いなお前は……」

 

 息を若干切らせながら言う箒。しかし一夏はまったく息は切れておらず、まだまだ余裕の表情である。

 

「なぁに、まだまだだよ俺なんて。春樹はもっと凄いからな……。しかし箒、もう息がきれてるのか? ちょっと早いんじゃないか? もっと体力をつけた方がいいと思うぞ?」

 

 箒はその言葉に凄く反論したくてしょうがなかった。実際、箒も剣道という運動は続けてきたし、体力にもそれなりの自信があった。

 

 しかし、自分の目の前に居る男。一夏は考えられないほどの持久力があった。普通の人ならどんなに運動していてもこれぐらい動けば息切れくらいする。

 だが、一夏はこれだけ動いても息切れしない。まだまだ余裕の表情をしている。

 ようするに一夏はとんでもないほどの体力と持久力を持っていた。

 

(一夏、何があった? なんでそんなにも強い? しかも春樹はもっと凄いだと……。あいつらはいったい何のためにそこまで強くなる?)

 

 箒の頭の中は疑問でいっぱいだった。ちょっとした混乱が起こっている箒の状態を一夏が見逃すわけも無く……。

 

「箒、試合中に考え事とはな……」

 

 と小さく呟き、大声で、

「隙あり!!」

 

 と竹刀を振った。箒は驚き、一夏の握られた竹刀は箒の頭の上一センチメートルくらいで止まっていた。

 

「あ…………、すまない一夏……気を乱してしまった……」

「いや、いいさ。おい春樹、久し振りにやらないか? 試合」

 

 そう言って一夏は春樹に竹刀を投げて渡した。パシッという竹刀の音が鳴り、春樹は強くその竹刀を握りしめた。

 

「ああ、いいぞ。本気でいこう」

「そのつもりだよ!」

 

 一夏と春樹は素早い。箒が最初に感じたことがそれだった。この二人はいい意味でどこかがおかしい。そう思った。

 

 この二人は剣道の動きではない。どちらかというと剣術の動きである。ようするに敵を殺しに行く動きである。そこにスポーツマン精神というものはない。相手を殺す。それに特化させた動きを二人はしていた。箒は一夏と春樹の二人をしっかりと見ながら思った。

 

(一夏……春樹……お前達は誰だ?)

 

 少なくとも箒の目には戦っている二人は別人のように見えた。まるで、本気で相手を殺しに行く侍のように。

 

(お前達はなんでそこまで……。私はどうすれば?)

 

 正直、箒は戸惑っていた。今の彼らは彼女の知っている二人ではない。そのことが彼女の胸がもやもやする感じに襲われていた。

 

 箒が変な感じに襲われながらも、二人の方の決着がついた。春樹の竹刀の先が一夏の顔の前に突き立てている。

 

「はあ、やっぱり強いよ春樹は」

「いや、一夏も強いよ、結構危なかったし」

 

 二人は笑っていた。それを見て箒は少し安心できた。なぜならば、箒自身が良く知っている二人の顔になっていたからだ。

 

 箒はこの場で起きた事を、この二人の戦っているときの表情を忘れることはなかった。否、忘れる事などできなかった。

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