ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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行間三《凰紅花》

 凰鈴音へ仕事の依頼の話が来るのは意外なほど早かった。一日も経たない内に依頼の内容が決まったのだ。

 その内容は、霧島レポートを手に入れること。その文書は日本へと渡ったことが分かったらしい。だから、彼女は近い内にまた日本へと渡ることになってしまった。

 

「あの、お母さん。私ね、また日本に行くことになっちゃった」

「そう……。ねえ、鈴音。日本の生活は、やっぱり楽しい? 一夏君たちと一緒の方がいいのかしら?」

 

 鈴の母親、凰紅花(ファン・ホンファ)はちょっぴり寂しげな雰囲気でそう言った。

 

「うん、そうね。一夏や春樹たちと一緒に過ごした時はとっても楽しかった。IS学園に行くために日本へもっかい帰った時に、また一夏と春樹に再会して、やっぱり楽しかった」

「そっか。ねぇ、覚えてる? 鈴音が中学校三年生のときに言ったこと」

 

 中国へと帰り、中学校三年生となった鈴音はISに興味を抱き、国家代表を目指すべく、まずは代表御候補生になるためにISに関する勉強を頑張ったのだ。そして、その努力は実ることになり、今となっては立派な代表候補生となった。

 夢を叶えるためにそこまで努力する理由は、彼女の一つの願いからだ。

 

――私が国家代表になったら、お父さんと仲直りして!!

 

 当時中学校二年生だった鈴音が中国に帰ったのは、両親の離婚が原因だ。

 鈴音はその活発さからよく男の子たちと遊ぶことが多かったが、その中でも一番仲良くしていたのは織斑一夏と葵春樹だった。そのときが一番幸せだったのかもしれない。だけど、その幸せも両親の喧嘩によって壊れてしまった。

 仲直りして欲しい、というのは自分のワガママだということは重々に分かっている。自分はあのときの時間を取り戻したいだけなのだ。あの、楽しかった時間を。

 彼女の母親も、その提案に思わず頷いてしまったのだ。だから彼女は頑張ることが出来た。分からないことだらけのISの学問を、その願いと想いだけで努力し続ける事ができた。

 自分の願望が叶うまであと一歩なのだ。

 霧島レポートというものを見つけることが出来れば、自分には大きなバッグが付くことになり、国家代表への道もグッと縮まるはずだ。そう信じている。

 

「覚えているよ。忘れるわけないじゃない。それは私の一生のお願いなんだから」

「そうよね。ねぇ鈴音。また日本に戻るなら……その、日本にいるお父さんにこの手紙を渡してくれないかしら」

「うん、分かった……。って、お父さん日本にいるの!?」

「うん、そうなの。今は日本にいるんだって。お父さんのお友達から連絡があったの」

 

 それは初耳だった。だって、自分はついこの前まで日本に居たのに、そんなことは一切教えてくれなかった。いや、教えてくれなかったんじゃない。教えれなかったんだ。まだ母親の決意が固まっていなかったのだろう。

 そして、その決意は固まった。この手紙の中に、母親の気持ちのすべてが書いてあるのだろう。

 

「言っておくけど、絶対に中身は見ないでね。それを見ていいのはお父さんだけ。分かった?」

「うん……」

 

 もしかしたら、これで自分の目的が果たされてしまうのかもしれない、と今から期待で胸が膨らむ。その手紙の内容がネガティブなものだという考えは今の彼女にはなかった。もうちょっと手を伸ばせば手に入る幸せな時間。大好きな家族と過ごした日々。

 

「じゃあ、今の内に荷造り済ませちゃいなさい」

「はーい!」

 

 その元気な返事はまるで子供のようだった。

 第三者が見たらどれだけ痛々しく映ったのだろうか。今の鈴音は、どこかしら壊れてしまっているのかもしれない。自分の求めている幸せな時間を追いかけるのに必死なのだ。そして、それがもう少しで果たされそうになっている。

 周りが見えなくなってしまうのも仕方がないのかもしれない。

 

「もうちょと。もうちょっとで……。よし、やってやる!」

 

 荷造りの為に入った自分の部屋で、彼女はそう呟いた。

 彼女の中では家族との幸せな時間はどんなものよりも大事で、取り戻したいものだ。年頃の女の子なら、男女のお付き合いとか考えてもいいものだが、彼女にはそんなものはなかった。彼女は家族の事しか考えられない。

 ただ、両親が離婚するまでは一夏や春樹に好意を寄せていたこともあったが、それが恋心なのかも気付けないまま、こんな事になってしまった。

 紅花はそんな娘の事を心配していた。娘が自由に使える意志、想い、行動、そのすべてが自分たちの喧嘩と離婚で狂ってしまったのではないかと、ただ後悔し続けた。この状態の娘を放っておくわけにはいかないと思う。

 だから、こんな関係はもう終わりにしたいと考えた。

 母親とその娘は思う。

 

――もう、すべてを終わりにして、元に戻したい。

 

 と……。

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