ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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第一章『心の隙間を埋めてゆく‐Tacit_Understanding‐』《人の変化》

  5

 

 セシリア・オルコットとシャルロット・デュノアは久しぶりの再会に喜していた。

 しかし、久しぶりの再会がこのような形になるとは、思いもしなかったであろう二人。

 彼女たちは更識クリエイティブ本社の地下に設営されている束の組織基地のとある会議室で話し合っていた。その内容は、これまでのことと、これからのこと。

 

「シャルロットさんにこうやって再会するなんて、思いもしませんでしたわ」

「うん、私も。こうやって、戦いの中に身を置くだなんて思いもしなかった」

 

 それは、セシリアも同じ気持ちだった。

 彼女は最初、再びあの楽しい日々に戻りたくて葵春樹の行方を追っていた。それが、ゼロ・グラビティというISによってすべてが変わってしまった。

 暗部組織の抗争に巻き込まれ、両親は亡国機業(ファントム・タスク)の創立者だったことが判明し、これからの事を考えた。その結果、真実を掴みとるために、彼女は今、ここにいる。

 

「わたくしたちは、それぞれの目的があってここにいる。その目的を達成するためにお互いに頑張らないと、ですわね」

「そうだね、頑張らないと!」

 

 小さくガッツポーズをするシャルロットだが、次第に顔をにやけさせ、

 

「でさぁ、セシリアは春樹の事キッパリ諦めたそうだけどぉ、そこんとこ、どうなのかなぁ?」

「え!? いきなりすぎますわ、そんな――」

 

 いきなりの恋話しに戸惑いを隠せないセシリアだが、シャルロットはそんな彼女に構うことなくグイグイと言葉で押していく。

 

「本当に春樹の事がどうでもよくなったのなら、今はどうなのかな?」

「それは、その……今はいませんわ。わたくしが求める男性像が変わってしまった今、その男性を探している途中です」

 

 セシリアも、先日の事件を通して変わったのだ。それは生き方も、考え方も、つまり、そういった恋の事だってそうだ。先日の事を経験する前は、正直言って色々なことが子供だったような気がする。そう考えられるのは、一皮剥けて大人に一歩でも近づいたからだろうか。

 

「そっかぁ、やっぱり一か月というう時間は、人を変化させるのに十分なものだねぇ。夏休みが始まってから、セシリアは何か変わった気がする。いや、気がするんじゃなくて、本当に変わったんだね」

「それはシャルロットさん、あなたも同じですのよ? 今はずいぶんと表情に余裕があります。発言も前より大胆になっている。夏休みに入ってから、シャルロットさんも自分を変えるのに十分な出来事があったようですわね」

 

 それはお互いさまであることに気付くのは、そう時間はかからなかった。

 この会話の流れと、お互いのその顔つきで分かってしまうのだ。

 お互いに、壮絶な出来事を体験したということを。

 

「やっぱ人間って、きっかけ一つあれば変われるもんだね。それがたとえ、大きい事でも小さい事でも」

「ええ、そうですわね。本当に色々なことがありました。この短期間でたくさんの出来事が。それって、そのひとつひとつが大事なものなんだと思います」

 

 人が何かをきっかけに変わるという事は、それは成長した証なのではないか。

 それがどんな方向であれ、自らの意志で進んだことに違いはない。

 その一歩こそが人としての成長であり、大人に一歩近づいたことになるのだろう。

 彼女らはまだ一六歳。それは、大人に近づいていく時期でもある。

 子供でもない、大人でもない、どちらでもない成長期。それが、この時期なのだ。

 この頃の人はとても多感で、様々なことに刺激を受ける。

 しかし、その出来事ひとつひとつが、成長するための経験値であり、人生の中の一ページとなる。

 それはとても大切なもので、かけがえのないもの。嬉しいことも、辛いことも、そのすべてが大事なものなのだ。

 そして、またこれからも彼女たちは成長し続けるだろう。ここにいるセシリアとシャルロットだけでなく、一夏たちも。そのすべての人間が成長をすることだろう。

 今、彼女たちが置かれている状況がイレギュラーなものだったとしても、それは一つのシチュエーションでしかない。どんな状況であれ、精一杯生きる。

 それこそが、大人になるための第一歩になると、そう信じている。

 

 

  6

 

 

 同時期、更識クリエイティブ社員食堂にて、キャシーとブルーノは早めの昼食を取っていた。

 しかし、その様子はまるで、泥酔女が男に絡んでいる様にしか見えなかった。社員食堂にはアルコールなど売っていないのに。

 

「つーかさぁ、なんでこうなっちゃうわけ? くっそ! あー腹立つ。マジで、ねぇ、何なの?」

 

 見た目が中学生にも見えるような女性が、ガタイの良い男に突っかかっている光景はとても奇妙なものだった。しかも、男の方が押されている。

 今、更識クリエイティブの社内ではちょっとした話題となっているのだ。

 食堂で中学生の女の子がマッチョ男をいじめている、と。

 

「いやー、なんて言うかさキャシー。それは大分前に終わった話だよね。これじゃ未練しかないじゃない。過去を捨てきれない面倒くさい女じゃない。そういうの、みっともないと思うな、うん」

「うっさい! 私の気持ちなんて分からないくせに、知ったようなこと言わないでよ。私と彼はずっと前から結ばれてたのに、なんでこうなっちゃうのかなぁ。ねぇ、ブルーノ、もう一人の春樹を作ってよ。コピーじゃなくて本物の。我らがリーダーのようなね」

「いや、それ、シャレにならんからね!? つーか、酔っ払ってるのキャシー?」

「酔ってるわけないでしょ! お酒なんてここにあるわけないじゃない! アンタは脳筋野郎と思ってたけど、本当に脳みそまで筋肉で出来ているのね」

「なぁ、ぶん殴っていいかな? もう女だからとか関係ないよね? ここまで暴言を吐いたんだ。殴っても大丈夫だよね?」

「アンタ、こんなところで殴ってただで済むと思ってんの? 人の目を気にしなさいよ脳まで筋肉野郎」

 

 キャシーお前が言うな、と思うブルーノだが、それ以上言うと何をされるか分かったものじゃないので、彼はいち早く冷静さを取り戻し、スッとその場から立ち引く。

 見せ物になっていたことに気付いたブルーノは額に汗を流しながら、失礼しましたー、と自分のお盆を持ってそそくさをその場から逃げるように去る。。

 後ろから、逃げんのか、あぁ!? とかヤンキーっぽく言っている女性は無視して一人で社員食堂からその身を出した。

 自分たちを見に来た社員でいっぱいになっていることに気付いたブルーノは、とても恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。しかし、このことはもう過去の事だ。取り返しのつかない事なのでキッパリと忘れる事にしよう。

 そんなことより、食堂に残してきてしまったキャシーだが、大丈夫なのだろうか。

 冷静になったブルーノは、再び食堂に戻ると――。

 

「ねぇねぇ聞いてよ。私の好きだった人がね、他の女に取られちゃったの。しかも相思相愛。私はその二人を応援していたはずなのに、やっぱりその男の事を諦めきれなかったみたいなんだよね」

 

 なんと、社員と話し合っているではないか。

 しかも、女性社員から慰めの言葉を貰っているではないか。

 見た目が幼いからこそできたことだろう。見た目だけ言えば、キャシーはとても可愛いのだ。金髪で、ツインテール。碧い眼。まるでお人形さんのような見た目の彼女は、女性からしても、男性からしても可愛く映るだろう。うん、見た目は。

 しかし、その実年齢は二二歳であり、腹黒い短気な女なのだ。

 だから、ブルーノは心の中で叫ぶ。

 

――その女の見た目に騙されてはダメだあああああああああ!!

 

 と。

 しかし、もう遅い。あの女の周りにはある空間が構築されている。みんなを虜にするような空間がそこにあるのだ。巧みな演技で人々の心を掴むその技術は、さすがキャシーと言えるだろう。

 その技術で、いったいどれだけの男が騙されて情報を奪われたか、両手両足の指を合わせても足りないだろう。

 ああなっては、自分でもどうしようもないと思ったブルーノはキャシーに背を向けて立ち去ろうとしたのだが、

 

「でさぁ、私の友達の筋肉バカがいてぇ、なんと、脳みそまで筋肉で出来ているようなお堅いバカ男なのよねぇ」

「上等だゴルァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 その後、あっさりと言い返されたブルーノちゃんでした。

 

 

  7

 

 

「ねぇゆっきー、デートしない?」

 

 それは突然の提案だった。

 ゆったりと布仏の家で過ごしていた結城と本音、そして楯無の三人だったが、本音のその言葉によって慌てふためくことになる。

 

「ちょっと待て。あのさ、本音の今の状況分かって言ってる? 今外を出歩くのは危険すぎるぞ!」

「でも暇すぎるし! それに、その……ゆっきーと一回もちゃんとしたデートしたことないし。あ、危ないのは分かってるよ? でも、私は、えっと、ゆっきーの事が大好きだから。えへへ」

 

 顔を赤らめて言う本音の顔はとてもかわいらしく感じた。結城はその表情だけで心臓を刺されるような痛みを感じてしまった。

 それが恋というものだろう。

 

「えっと、その、じゃあこうしようか。護衛付きでデートしよう。何かあった時は楯無さんに守ってもらう感じで行こう」

 

 結城は間髪入れずに提案した。

 今考えられる妥協案をすぐさまに考え出した。

 たしかに、楯無からは、本音を支えてあげる、という任務を任せられた。なら、本音の要求を応えてあげるのが筋と言うものだ。

 それに、楯無も本音の護衛任務にあたっている。

 つまり、このデートは絶対に行うべきものであり、楯無はそれを見守る義務があるという事だ。

 

「それで大丈夫かな?」

「うーん、本当はゆっきーと二人っきりが良かったけど、贅沢は言えないよね」

「おう。じゃあ、俺が楯無さんに提案してくるから、ここで待っていてくれ」

 

 結城は勢いよく部屋を飛び出す。外で常に気を配っている楯無に話しかけ、先ほどの本音とのデートについて話す。

 その結果、思いっきり頭を叩かれてしまった。

 

「な、何するんですか! 別にいいじゃないですか。それともなんです? 楯無さんにはおデートするお相手もいないから、だから逆上したとでも言うんですか!?」

 

 結城は気が高ぶっているせいか、言葉選びが素晴らしく適切じゃない。思いっきり彼女を怒らせるようなことを平気で言ってしまった。いつもの結城なら、こんな言葉を投げつけることなどしないというのに。

 

「本音とデートできるからっていい気になりやがってよ! あーそうだよ! 半分は悔しさだよチクショウ! なんで上手くいかないんだろうね! やっぱり積極性? 積極性こそが大事なのぉぉぉ!?」

「ちょっと落ち着いてくださいよ! 俺が変なことを聞いてしまったせいですみませんでしたぁぁぁ!!」

 

 さて、二人の間で変な時間が流れた後、落ち着いた二人は再び話すことになる。

 今度こそ、落ち着いて話し出す二人。まるで、先ほどの取り乱し様がなかったことになっているみたいだった。

 

「ま、結論から言って、ダメとは言い難いわ。だけど、簡単に良いよ、とも言い切れない。街中に出て、私一人であなたたちの監視をするのは結構。だけど、何らかの襲撃があった場合、他の人たちに危害が発生する可能性も考慮しなくちゃいけない。本音を襲う奴らは他の奴らなんてお構いなしに襲ってくるからね」

 

 そうだ、三日前の襲撃は祭りに来ている人々などお構いなしに襲い掛かってきた。そのとき、実質その場の人が人質となっていたため、戦うことが困難な状況になってしまっていたのだ。

 その時と同じ状況にするわけにはいかない。

 なら、本音のやりたいことを諦めさせるべきなのだろうか。だけど、そのことを知った本音はどんな顔をするのだろうか。

 姉が行方不明になり、自分の身も危ない状況。

 そんな彼女の支えとなっているのが自分だという事は、結城自身も分かっている。

 だからこうやって行動を起こした。

 諦めるのか? 本音の悲しい顔をさせてまで、彼女の身の安全を優先するのか? それで、彼女は幸せなんだろうか?

 否、そんなわけない。そんなことをすれば、彼女の心は追い詰められてしまう。

 今やるべきは、結城とのデートによって、本音が抱えている心の闇を少しでも照らすことなのだ。

 

「楯無さんにこういうことを言っておいて何なんですけど、あなたがダメだと言ったところで、俺は本音を連れでデートすると思いますよ。俺が優先する事は、任務であり、俺がやりたいことでもある、本音の支えになってあげる事ですから」

 

 そんな結城の言葉に楯無は溜息を吐いた。

 

「なんて言うか、本音の奴、良い人を見つけたよ本当に。よし、いいよ。デート、行っちゃいなよ」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「ただし! 剣崎君の提案通り、私が二人の護衛を行うために後ろを追っていくからね」

「はい!」

 

 結城は急いで本音に伝えに行った。

 デートが許されたことに本音は歓喜し、急いでおめかしを始めた。

 その間、結城は暇になる。何かと女の子のそういう時間は長いものだ。いったい何に時間を割いているのか、男の剣崎には想像できなかった。

 

 

  8

 

 

 霧島由実と言いう女性は自宅で溜息を吐いていた。

 彼女は剣崎結城の幼馴染で、生まれたときからお隣さんという腐れ縁である。

 ふわっとしたボブヘアーの彼女が溜息を吐いている理由はひとつ。剣崎結城の事である。

 最近の彼は少し付き合いが悪くなっていた。その理由を聞きたくても、最近は家に帰ってくる様子もなくて聞きたくても聞けない状況が続いていた。

 結城の母親に話を聞いてみても、やるべきお仕事があるからあまり家に帰れない、という事だけしか分からない。具体的にどういったお仕事なのかさえ、分からず仕舞いなのだ。

 そして、結城が最近知り合ったという女の子二人。あれはいったいどういうことなのか。

 あそこまでモテなかった彼が、女の子の友達なんていなかった彼が、なぜ突然二人も女の子の友達が出来ているのだろうか。しかも、そのうちの一人は、結城にくっついて甘えていて。

 

(何なのあの子は! 布仏本音さん! うらやまけしからん! いったい結城とどういう関係なのぉぉぉ!?)

 

 実のところ、幼馴染である剣崎結城の事は大好きな彼女は、いきなりのライバル出現に戸惑っていたのだった。

 幼馴染であることがいけなかったのだろう。二人の間には、もう既にそれ相応の距離感と言うものが出来上がっていて、そこから先へとは中々進めない関係となってしまっていた。今のこの状況を、変えたくないような、そんな気持ちもある。

 まぁ、それでも友達が増えたのは実にいいことだ。

 特に更識簪という女の子。今はIS学園の一年生だという事だが、結構話題が噛み合う相手だった。特撮ヒーローものが大好きだという彼女は、由実の趣味と合致するところがある。

 由実のオタク趣味の範囲は色々と広い。言わば雑食だろう。

 熱い少年漫画系、ラブコメ、女性向けのイケメンが出てくるアニメ、少女漫画、ボーイズラブ、特撮ヒーロー、各種ゲームに、ネットの話題等々、すべてに対応できるのだ。

 さて、暇を持て余してしまっている由実は、簪と遊びに出かけることを思いつく。

 

(どうせ、楓は孝之君とデート中で高校生活最後の青春の謳歌していることだし、女の子同士で遊びに出かけるのは悪くないよね! 悪く、ないよね?)

 

 なんだかんだで、由実と結城の幼馴染である小鳥遊孝之と、その彼の事が好きな小柄な少女である祇条楓の関係は上手くいっていた。告白して、カップルの成立まではいかないものの、こうやって夏休み中は何度か二人きりのデートに行くようになっていた。

 しかし、この由実は一緒に男などいない。唯一誘える相手である結城は、よく分からない事をやっていて、まず会う事すらままならないのだ。

 だからこうやって、簪には悪いが、甘んじて彼女と出かけることでこの暇な時間を少しでも減らそうと頑張っているのだ。

 携帯電話を手に取り、簪へと電話をかける。連絡先は、この前の篠ノ之神社のお祭りに行ったときに交換済みである。

 

「あ、もしもし簪ちゃん? 今暇かな?」

『えと、今ですか? そうですね、実家のお仕事もひと段落ついたところですし、大丈夫ですよ。何ですか?』

「まぁ、その、あまりにも暇すぎるから一緒に遊びに出掛けようよ、って事なんだけど、いいかな?」

『はぁ、由実さん。なんで同い年のクラスメイトではなく、年下の私なんですか? もしかして、友達少ないんじゃ……』

「ストップ!! それ以上は言ってはいけない。私は友達が少ない、とか、言っちゃだめだよ。それなりに友達いるから! ただ、ちょっと一緒に遊ぶのは嫌だなぁ、って。結局のところ、私のオタク趣味を分かってくれる人間が少ないから仕方がないって訳よ!」

『冗談ですよ。でも、年下にからかわれて悔しくないんですか?』

「ぐぬぬ……。く、悔しすぎる……」

『まったく、先輩って感じしませんよね、由実さんは。さて、冗談もやめてどこで待ち合せますか?』

「そうだねぇ、この後準備が出来次第、臨港パークでどうかな?」

 

 臨港パークとは、神奈川県、横浜市、みなとみらい一丁目にある公園の事だ。文字通り横浜港を臨んでおり、園内には潮入りの池や樹木など、自然が沢山ある場所だ。

 ドラマや映画の撮影、また有名な音楽アーティストがライブを行ったりと、そういった場所でも多く知られている場所である。

 

『いいですよ。では、これから準備するので』

「おっけー。待ってるよん」

 

 電話を切った由実は、急いで出かける準備をする。

 久しぶりに外に遊びに出かけるからには気合いを入れておめかししようと思う。がしかし、それが男性相手でないという事を考えるとまぁ、なんとも自分で可愛そうな奴だな、と思ってしまうのだった。

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