ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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第四章『その英知は何をもたらすのか -Match-』《それはどうかしら!》

  1

 

 クラス代表決定パーティーを終え、部屋に戻ってきた一夏と春樹の二人はある意味疲れ切っていた。

 二人とも部屋に帰ってくるなり、それぞれのベットにダイブすると、ふかふかの布団が、身体を包み込んでくれた。とても心地よく、ついそのまま寝てしまいそうな感覚に陥る。

 

「今日はお疲れ、一夏」

「ああ、疲れたな」

「そうだな、早く寝ようぜ」

「ああ、そうするか」

 

 二人は、制服を脱いで、シャワーをどちらが先に使うか、じゃんけんをした。結果は一夏の勝利。一夏は先にシャワーを使い、最初に眠る事ができる権利を得た。

 

「じゃあ、先使わせてもらうぞ~」

「ああ。早くしろよ」

「分かってるよ」

 

 一夏は自分の着替えを持ってシャワールームに入っていく、そして春樹は今後の事を考えた。

 

「さて、どうしたものか。一夏、まさか本当にお前がな……今頃だけど」

 春樹は一人呟いていた。なにやら意味深な事みたいだが、今この現状では何も分からないのがもどかしい。

 すると、春樹は携帯電話を手に取り誰かに電話をかけた。プルルル、と電話のコール音が春樹の耳元で響く。三コールほど鳴ったところで相手が電話に出た。

 

「もしもし、束さん?」

 

 その電話の相手の束とは、かのISの開発者であり、篠ノ之箒の姉である篠ノ之束のことである。

 

『もしもし~春にゃん? どうしたの~?』

 

 電話からは陽気な軽い感じな声が聞こえてくる。その声は可愛らしく、束と箒、どちらが姉なのか声だけでは分からないぐらいの幼さを感じる。

 

「その春にゃんって呼び方よしてくださいよ……。で、一夏の事なんですけど」

『はいはい、分かってるよ、春樹の聞きたい事はね。やっぱり一夏は春樹と同じだろうね。昨日の戦闘映像見せてもらったけど、IS起動が二回目であれだけの動き、そうじゃないと理解できないよ』

 

 急に言葉が軽い感じから重い感じにシフトする。それに合わせたように春樹もいつもより声が低めになる。

 

「やっぱりですか。で、箒の方は?」

『箒ちゃんは、そうだね。とりあえず、IS自体は完成してるんだけど――』

「対応するコアが見つかっていない」

『うんそう、一夏のコアは分かりやすかったんだけどね~』

「そうですね。で、俺の機体って、いったいアレは何なんです?」

 

 そう。春樹のIS、熾天使(セラフィム)は他のISと比べて極めて異端なデザインだった。装甲はとても薄く、とてもスマートなボディ。まるでISではないものを見ている様だった。

 

『ああ、ビックリしてくれた~? 春にゃんの新しいISはとてもスマートなボディで、即応性がアップしたんだよ。ただ、シールドエネルギーは犠牲にしたんだけど、春にゃんなら大丈夫だよね。どう? 気に入ってくれた?』

「はい、気に入りました。最高の機体ですよ」

『気に入ってくれて何より~! 結構あれ作るのに苦労したんだよ~」

「それはそれは、ありがとうございます、束さん」

 

 すると一夏がシャワールームから出てきた。

 

「ふぅ~、いいぞ、春樹」

「おう。じゃあこれで……はい」

 

 そう言って通話を切る春樹。そして立ち上がってシャワールームに入ろうとした。

 

「って、春樹、誰に電話してたんだ?」

「ああ、ちょっとな」

 

 春樹は誤魔化すように颯爽とシャワールームに入っていった。

 一夏はそんな春樹を見て首を傾げた。

 気になった一夏はシャワールームに侵入し、春樹の携帯電話の履歴を確認しようと企んだ。

 

 そっとシャワールームのドアを開け、洗面所に立ち入る。さらに奥にシャワーがあり、洗面所には春樹が脱いだ制服がある。一夏はそっと春樹の制服を広げ、春樹の携帯電話を探した。横からはシャワーの流れる音が続いている。どうやら春樹は一夏に気付いていないらしい。一夏はそのチャンスを逃さないように素早く携帯電話の履歴を確認した。

 

 そこには篠ノ之束の表示。それを確認した一夏。するとシャワーの音が止む。一夏は慌てて最初となんら変わりない状態に手早く戻し、シャワールームから去った。

 

 

  2

 

 

 次の日、クラスにて一夏と春樹は女子達と話していた。最近はそれなりにクラスの女子と仲良くなってきた二人は、ある意味安堵している。

 

 話の内容は近日に行われるクラス対抗戦についてだ。

 現在、専用機持ち生徒がいるクラスは一組と四組であり、一夏たちのいるクラスは一夏と春樹とセシリアの三人。四組には四人いるらしい。

 

 そして、中国人の編入生がやってきたという話も出ている。学校が始まってまだ数日しか経っていないのに編入生とは、どんな事情があるのだろうか……。

 

「ま、クラス対抗戦は私達のクラスと四組だけだから余裕だよ」

 

 とある生徒がそう言うと、教室の入り口の方からなにやら聞き覚えがあるような声が聞こえてきた。

 

「それはどうかしら! 二組にはこの私が来たんだから、そう簡単にはいかないわよ!」

 

 そこにいたのは少々小柄でツインテールの女の子が右手を腰に当てて立っていた。

 一夏と春樹がそこにいる女の子をじっと見つめる。その人が自分達の知っているあの人だということをよく確認して、一夏と春樹は一斉に声をかけた。

 

『鈴じゃないか! 久しぶりだな!』

 

 二人の声がきれいにハモる。

 彼女は彼らが小学校五年生の初めに転校してきた中国人の女の子、凰鈴音(ファン・リンイン)その人だった。

 

 鈴音は彼らが中学校二年生のときに突然転校してしまったのだが、なんというめぐり合わせだろうか。

 この学園では箒といい鈴音といい、一回別れてしまった人たちとよく再会する。

 一夏と春樹はなんだかんだ言ってとても嬉しかった。

 

「そう、中国の代表候補生の凰鈴音よ! 今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 

 その鈴音の発言にクラスがざわめく。そして春樹は微笑みながら言った。

 

「ほー? あの鈴がそんなことを……。これはどうするか。なあ一夏?」

「ま、できるだけやってみるよ。そうか、鈴も代表候補生なんだな……」

 

 一夏はしみじみそう思ってしまった。

 小学校五年生から中学校二年生の三年間だけだが仲良くやってきた親友の一人だ。それが中国の代表候補生となって自分の前に現れた。まさかこんな事になるとは思いもせず、ただ懐かしき親友の再会に胸を躍らせていた。

 

 そして春樹も一夏の隣に立って。

 

「そうだな、鈴も代表候補生なんだよな。でも、相変わらずちっこいなぁお前は」

 

 と、頭をポンポン叩きながら言う春樹に怒ったのか、鈴音はこう言った。

 

「な、なんて事いうのよアンタは!」

 

 と叫んだその瞬間、黒いスーツに身を包んだ美しい女性が鈴音の後ろに現れた。その女性は鈴音の頭に拳骨をする。

 

 ゴンッ!! という鈍い音が教室に響く。

 

 鈴音は突然の衝撃に驚いて両手で頭を押さえ、

 

「痛った~。って、何を――」

 

 鈴音は振り向き、拳骨をした人物を確認するなり言葉を失った。

 なぜなら振り返ってそう言おうとした相手は織斑千冬だったからだ。

 

「もうショートホームルームの時間だぞ」

 

 鈴音はまずいといった感じの苦い顔をした。そしてなぜだか言葉が硬くなる。いや、身体も強張っていた。

 

「あ、ち、千冬さん……」

 

 こんなにも鈴音がガチガチになるのは理由があり、どうも千冬のことが苦手なのだという。その理由としては、やはりあの目力と、どことなく漂わせる怖い雰囲気だと彼女は言っていた。

 

「学校では織斑先生と呼べ。さっさと自分のクラスに戻れ、邪魔だ」

「す、すみません……」

「また後で来るからね。逃げないでよ、二人とも!」

 

 と言って鈴音は自分のクラスに帰っていった。

 

 

  3

 

 

 そして昼食時、一夏たちみんなで食堂の方へ来ていた。

 鈴音は相変わらずラーメンを頼んでいる。昔から彼女は日本のラーメンが好きだったのだ。

 

「相変わらずラーメンが好きだなぁ、鈴」

 

 春樹は鈴音に向かってそう言うと、彼女はこう言った。

 

「だって日本のラーメンって美味しいんだもん。なんで私の国より美味しいのよ」

「たぶん出汁(だし)とか、麺とか、そういうのをこだわって作っているからじゃないかな?」

 

 一夏が思うことを言うと、鈴音は納得したかのような仕草をして、先に座っているからとテーブルの方へ向かって行った。

 昼食が完成するなり、自分の日替わりランチを持って鈴音のことを追いかける。次に春樹も自分の昼食を持って一夏の事を追いかけた。

 

 開いている席に座る一夏たち。なぜか知らないが、一夏と春樹と鈴音が使っているテーブルの周りにはその他に誰もいない。一緒の席に座ろうとしないのだ。

 そんな光景を見るなり、春樹は箒に向かって、大丈夫だからこっちに来い、と手招きした。

 

 彼女は言われるままにこっちの方へ近寄り一夏の隣に座る。

 すると、セシリアも居合わせ、せっかくだから一緒に食べることにした彼女は、春樹の横に座った。

 

「一夏、とりあえず鈴の事教えたらどうだ?」

 

 春樹は彼女達の疑問に答えるべく、一夏に鈴音の事を説明するよう促した。

 

「あ、そうだ。箒は鈴の事知らなかったもんな。えっと、箒が引っ越してしまった次の年に鈴が転校してきたんだ。まぁ、彼女とは良くも悪くも小中学校時代を共に過ごした親友ってとこかな……」

 

 凰鈴音は一夏と春樹にとってよく一緒に遊んだ良き女友達だった。

 日本にいた頃はそこで中華料理店を営んでおり、良く一夏と春樹はそこの中華料理店に食事に行ったものだった。

 

 そのときには鈴音が凄く歓迎してくれていたものだ。

 

「そうねぇ。あの頃は楽しかったわね~」

 

 と彼女が言うと、一夏はとある疑問をぶつけてみた。

 

「ってか、いつ代表候補生になったんだ?」

 

 という疑問に答える鈴音。

 

「まあ、中国に帰ってから、色々とあってね。てかアンタ達こそニュースで見たときビックリしたじゃない!」

 

 一夏と春樹はあの入試試験の時にISを動かしてしまった。

 あの時はメディアに大きく取り上げられ、全国ネットでそのことがニュースになっていた。『ISを動かす事ができる男現る!』の様な感じで放映されていたのだ。

 

「まあ、俺らもまさかこんな事になるとは思わなかったよ。ISを動かせるだなんて、自分でもビックリだ」

 

 春樹は鈴音に入試試験当時の事を言い聞かせる。

 その一方、一夏は昨日の春樹の電話相手が篠ノ之束だったことについて気になっていた。

 なぜ、春樹は束と連絡を取っているのか。正直、春樹は彼女とはあんまり仲良くなかったし、今になって電話するなんてどういうことだろうか。

 そもそも箒の姉は行方不明ではなかったのか。彼女と自分の知らないところで何かしらの交流があったのか。色んな考えが頭の中で渦巻いている。

 

「って一夏、聞いてる!?」

 

 鈴音が考え事をしていた一夏に声をかけた。一夏は焦りながらそれに応答する。

 その際、春樹の方をチラッと見るが、特に気にしていないようなので変に焦った自分が馬鹿だったと思う一夏であった。

 

「で、何だって?」

 

 一夏は何の話だったか鈴音に尋ねた。

 

「はぁ……だからあんた達の入試のときの話よ」

 

 だが、一夏は慌てた様子を隠し切れないまま応答してしまった。

 

「ああ、あのときか。あの時は春樹の様子も変だったよな。いつもの春樹じゃないってかさ…………」

 

 一夏はあの時、あの入試の日の春樹がいつもと違う雰囲気だったのを思い出した。

 そうだ、あの時IS学園の試験会場らしき所に行ってしまったのが、春樹が意図的にやった事だとしたら……。しかし、何のために? 一夏はまた頭が混乱してしまう。

 

「一夏、いったいどうしたというのだ。今日の一夏はなんか変だぞ?」

 

 箒が一夏の事を心配していた。

 彼女は今日の今このときまで一夏の異変に気付いた彼女は一夏の事を観察していた。

 しかし、妙に春樹の事を気にかけてそわそわしている様子だったのを箒は覚えていた。いったい一夏に何があったのか。箒は本気で一夏の事を心配していた。

 

 そしてセシリアも、言葉を出さないが、一夏が少し変だということに流石に気付いていた。何か春樹の事を気にしている。いったい彼らに何があったのか。気になるセシリアであった。

 

「い、いや。なんでもない。じゃあ、先戻ってるわ」

 

 一夏は食器を持って、先に戻ってしまった。

 

(やべーよ俺。もしかしたら大した事でもないかもしれないのに。なんか焦ってるよ俺、動揺しまくりじゃねえか……。とりあえず落ち着かなくちゃな)

 

 一夏はゆっくりと深い深呼吸をして教室に戻っていった。

 

 

  4

 

 

 放課後、一夏と春樹は箒と共にISの特訓をするべく、アリーナの方へ来ていた。

 更には、クラス代表選出戦で戦い仲良くなったセシリア・オルコットも同席する事になった。

 

「一夏、お前の装備はその雪片弐型しかない。じゃあ、接近戦しか出来ないわけだよな。だから、今回はセシリアと戦ってみろ。遠距離特化型のブルー・ティアーズとなら、そういった戦闘に慣れることが出来るだろうしな。とりあえず今日はセシリアの全方位攻撃をひたすら避ける練習だな」

 

 一夏の白式には、近距離戦闘用の長刀である雪片弐型しか装備がない。しかも、本来ISは後付で装備を増やす事ができる領域が存在しているが、白式にはそれが無く、完全なる近距離戦闘特化型ISであり、近距離戦闘を有利に行うための大型のスラスターによる高速移動。そして、一瞬で最高速度近くまでスピードを出す高等技術である瞬間加速イグニッション・ブーストがある。

 

 これらを使いこなせれば、相手がどんな装備だろうと懐に潜り込む事が可能だろう。

 

 しかし、あくまで“使いこなせれば”なのである。

 

 春樹の熾天使(セラフィム)はIS中でトップレベルの加速力・最高速度を誇るISだ。そして、その次くらいに低いのが一夏の白式(びゃくしき)である。

 

 こういった機体特性故に、攻撃を受ける事は許されない。正に当たらない事を前提に作られていると言わんばかりである。

 

「分かりましたわ、では一夏さん。お相手願いします」

「おう、よろしくな」

 

 一夏とセシリアは空へ飛び上がり戦闘を始めた。

 セシリアも一夏も、春樹との戦闘のときとは比べ物にならないくらい進化していた。セシリアに至っては相手の動きを予測しながらの射撃をし、一夏を苦しめている。

 一方一夏は、そのセシリアの的確ないやらしい射撃をかわしている。

 

 しかも、迷いがなくスムーズにブルー・ティアーズの全方位ビット攻撃を細かい動きでかわしているが、春樹の目には無駄な動きが多く映っていた。

 もう少し動きを小さくして、最小の動きで相手の攻撃をかわす。それまで突き詰める事が出来れば合格ラインだと思っている。

 

 そして春樹は箒の方を見て。

 

「じゃあ箒、こっちも練習しようか」

「ああ、よろしくな春樹」

「とりあえず箒はその打鉄(うちがね)を使いこなせるようにならないとな。土台作りが完成すれば、応用が利くようになるし、下手すれば専用機持ちをも倒せるようになる」

 

 打鉄は純国産の第二世代ISで、性能面では非常に安定しており、練習機としては最高のISである。

 しかしながら、この打鉄うちがねでも突き詰めていけば実戦でも十分戦えるISである。

 

「箒はさ……強くなりたい?」

 

 春樹は急にそんな質問を箒にした。すると箒は困ったように、

 

「強くなりたいか……。そうだな、出来るなら強くなりたいな」

「そうか、じゃあ、強くなりたい理由って聞いても大丈夫か?」

 

 と、追加の質問を箒にするが、更に困ったような顔をして、

 

「理由か。私は……まだ強くなりたい理由を持っていないな」

 

 箒の顔は少し自信を失ったようなものだった。それを見た春樹は微笑んでこう返す。

 

「じゃあ箒、宿題な。自分が強くなりたいのなら、その理由を考えておく事。強くなりたいならその理由をはっきりさせないとな。人間はな、目標があれば努力できるんだ。それを覚えておけよ」

「分かった。簡潔でいい言葉だな……。考えておくよ」

 

 箒は目を閉じてゆっくりと頷いた。そして目を瞑ったまま数秒。なにやら意思が決まったように先程とは目の色が違っていた。

 そんな箒を見た春樹は勢いよく、

 

「じゃあ、訓練始めようか!」

「ああ、よろしく頼む。春樹」

 

 春樹は白い翼を広げ飛び立つ。箒もそれに続き、日本の武将の鎧を連想させるグレーの機体、打鉄が空へと舞った。

 

 

  5

 

 

 凰鈴音はその四人の訓練をアリーナの観客席から見ていた。特に一夏と春樹を中心に。

 

 見れば見るほど、ちょっと嫉妬してしまう。

 

 なんせ、彼らはISの操縦がとても上手かったのだ。一夏は無数に飛んで来るエネルギー弾を華麗に避けている。ビット攻撃による全方位攻撃だというのに当たる気配がまるでないのだ。

 

 そして、春樹はなにやら基礎的なことをやっている。恐らく操縦が全然慣れていない人に教えているのだろう。

 しかし、そういう基礎的なことは、その人の実力がすぐ分かってしまうものだ。そういう土台作りがキチンと出来ている人ほど、ISの操縦は上手い。

 

 特に春樹は非常に上手だった。地上に立っている状態からの上昇。上手な人ほど、安定していて、真っ直ぐに飛ぶし、初速が速い。そして加速、上昇し、そこから急降下。それから完全停止する。

 

 つまり、地面に着く直前でホバリングし、安全に地面に足をつく方法であり、それは地面に近ければ近いほど隙が小さくなる。

 ただ、上手い人でも床上十センチ位であるが、春樹は床上一センチと言ったところでホバリングしていた。正直、狂気の沙汰である。

 

 それに驚愕した鈴音は、

 

(はぁ!? 何なのよ、アイツ。頭のネジが二、三個吹っ飛んでる!?)

 

 そして練習している篠ノ之箒はやはり地面からまだ距離があり、随分と高い位置で止まっている。

 

 普通はそうだ。まだ慣れない内は恐怖との戦いである。その恐怖と戦い、自分の技術を信じる事で初めて地面ギリギリまで寄れるのだ。

 しかし、春樹はまだISを操縦してまだ何日も経っていないはずなのに、あれだけのことをやっている。彼のISの操縦テクニックは異常だ。

 

(あいつ、本当にISに触れて数日しか経っていないの? もしかしたら、みんなが気付かないところでずっと前からISの操縦の特訓してたりして……ってないか)

 

 鈴音がそうこう考えていると一夏たちの特訓が終わった様で、その場からいなくなっている。すっかり周りは暗くなってしまい、今頃みんなは夕食を食べている時間だろう。

 彼女はとりあえず夕食を取るためにアリーナから立ち去った。

 

 そして考える。

 

 クラス対抗戦は本当に勝てるのか。今回戦うことになるアイツ――一夏という天性の才能を持っていると言わんばかりの彼らに自分は勝てるのか、と不安になっていた。

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