新幹線「のぞみ6号」死者の指定席   作:新庄雄太郎

1 / 8
新幹線で毒殺が発生した


一章 カプセル

西鹿児島発・寝台特急「なは」新大阪行きである。西鹿児島駅を19時05分に発車する。7号車は、個室ツインの列車である。高木昭は、女と一緒に乗り込んだ、ベットは2段になっている、二人並んでシートに座った。

 

発車前に、ドアがノックされた。

 

「車掌でございます。車内改札をさせていただきます。」

 

高木は、切符を持って立った。ドアを開ける。

 

その時女は、窓の外を見ていた。改札して、

 

「よい、ご旅行を」

 

と言って、車掌が去る。ドアはロックする。ここで2人きりになる。新大阪には、明日の9時26分に着く。

 

高木は、42歳になる、厄年である。彼は会社員である。そろそろ課長になりたいところだ。

 

だが、まだ課長補佐だった。会社のために夢中になって働いた来た。女房が38歳、子供が2人、なかなか、浮気する機会もなかった。

 

もちろん、ツイン個室を予約するには、20日くらい前にしないと席は取れない。つまり鹿児島で拾ってきたというような女ではない。

 

東京の場合は、寝台特急「はやぶさ」に乗って翌朝には西鹿児島に到着するが、新幹線「ひかり」の場合は博多から特急「つばめ」に乗って西鹿児島へ行くことが出来る。

 

ピィーッ!

 

と、警笛を鳴らし、山陽で朝を迎えた。

 

9時26分、寝台特急「なは」は定刻通り新大阪へ到着した。

 

「やっと、大阪か。」

 

「えーと、えーと、26番ホームか。」

 

新大阪駅・26番ホームに、新幹線「のぞみ6号」東京行が止まっていた。午前9時52分に着いて、2分停車で54分に発車する。

 

ホームには、発車のベルが鳴っていた。

 

車掌の藤原は、車内改札に回っていた。4号車に入る。そこに中年の男が、のどを搔きむしり苦しんでいた。

 

「お客さん、どうしました。」

 

ベルが鳴り終わり、列車がガタン、と揺れた。近くの客たちは立ち上がる。男は床に這い、すでに動かなくなっていた。

 

「死んだ。」

 

と、誰かが言った。

 

車掌は、男の首筋に触れた。

 

手首も握って見た、脈はなかった。

 

「すみません。触れないでくださいよ。」

 

と言って車掌は走っていく。しばらくしてもう1人の車掌を連れてきた。

 

「どうします。」

 

「亡くなっているのか。」

 

「ええ、亡くなっているようです」

 

あと15分ほどで京都駅に着く。病人ならば京都駅で降ろす。死んでいれば終着駅の東京まで運んでいかなければならない。それが決まりである。

 

「どうやら、毒物による死ですね。」

 

1人の車掌は連絡のために走る。もう1人の車掌がやって来る。死んだ男の隣には、40ばかりの女が坐っていた。

 

その女は、どうしたらいいかわからずにうろうろしている。他の乗客も、立ち上がって見ている。

 

「あたしは、どうなるのよ。」

 

「すみません。別の席を探しますから、それに第一発見者ですし、お話もお聞きしたいので」

 

「冗談じゃないわ。第一発見者は、あなたじゃないの。」

 

女は、車掌を指さした。

 

「ええ。でも。隣に座っていらしたのですから」

 

「あたしは、何も知らないわよ」

 

「どうだったのですか、話していただけますか。」

 

「あたしは、窓際の席で座っていました。そこにこの人が来て坐ったんです」

 

「発車のベルはなっていましたか」

 

「ええ、鳴っていました。あたしのあとから乗って来たんです。ちょっと頭を下げて、座ったと思ったら、苦しみ始めました。そのときに、車掌さん、あなたが来たんです。あとは、あなたがご存知のはずです。」

 

「東京までですか」

 

「そうです。ちょっと仕事で」

 

「そうですか。」

 

新幹線は、京都駅に着いた。

 

私服の鉄道公安隊員が2人乗り込んできた。車掌が案内してくる。

 

「死体は、ここですね。」

 

「ええ。」

 

「どうですか。」

 

「これは青酸だな。」

 

「えっ、という事は毒殺か。」

 

「はい、毒殺と思われます。」

 

「とにかく、東京の方へ連絡しましょう。」

 

「分かりました、すぐに報告してきます。」

 

「頼む。」

 

 

 

 

 

 




新幹線300系の事件については「新大阪発 21時18分の死角」にも登場しています

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。