先ずはお礼を。
誤字脱字のご報告、ありがとうございました。
暖かいご感想、ありがとうございました。
お気に入り登録、ありがとうございました。
過分な評価、ありがとうございました。
しおりの設定、ありがとうございました。
とても励みになります。
自己満足で書き始めたのですが、
嬉しいですね。
読んでくれてるんだぁ〜、と考えるとです。
今回のタイトル通り、
作者も書きながら成長してゆけたらなぁと思っています。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
リイジーバレアレの朝は早い。
まだ太陽が登りきらない時間に起きる。
本人曰く、年寄りとはそういうものらしい。
顔を洗って広場で簡単な体操をする。
村に来た頃は体力も落ちていたが今はもう完全に復活している。
寧ろ、以前より活力が漲っている。
そして食堂に行く。
食堂ではツアレと当番の娘たちが朝食作りをしていて、必ず鈴木が珈琲を楽しんでいる。
要するにそんな早朝に起きているのは、用事がある者か眠らない者のどちらかだ。
「おはようさん」
そう声をかけテーブルにつく。
「「おはようございまぁ〜す」」
娘たちの元気な声が返ってくる。
以前は簡単な物を部屋で食べていたのだが、食堂で取る様になったのは鈴木に言われた言葉と娘たちの元気な声が聞けるからだ。
「はい、どうぞ」
ツアレが朝食を運んで来た。
パンに珈琲にサラダと果物。
特に豪華でもなく、ヘルシーである。
「いつも、ありがとうね」
リイジーはツアレにそう言ってキッチンの娘たちにも頭を下げる。
「気にしないで下さいな」
ツアレは笑いながら言い向かいの席に腰掛ける。
手には自分のカップを持っている。
ツアレも毎朝このタイミングで休憩するのだ。
そして3人の茶話会が始まる。
ポーションの生産状況であったり、村のちょっとした問題であったり、話題は様々だ。
鈴木もこの茶話会を気に入っていた。
ポーションは村の重要な財源だし、村民の困った事は早めに解決してやらねばならない。何せ村民の大部分は若い娘なので鈴木には不可解な事案は結構あるのだ。
そしてなりよりリイジーの昔話がこの世界の歴史を知らない鈴木にとっては知識として役に立っていた。
薬師として一流なリイジーは顧客である冒険者や組合からも
一目置かれ情報も豊富だった。所謂、ここだけの話、と言うのが耳に入って来るのだ。
「実はな、こんな物を作ってみたのじゃ」
そう言ってリイジーは小さな容器をテーブルに置いた。
「何かの薬ですか?」
ツアレがそれを手に取った。
「ポーションを塗り薬にしてみた」
そう聞いて鈴木は直ぐにピンと来た。
「それは素晴らしいぞ婆さん。高価な薬が一般にも買えるようになる、一気に市場が広がる」
元営業マンの血が騒いだ。これは儲かる。
ツアレはイマイチ分からなそうな顔をしている。
「いいかツアレ。冒険者でなくても怪我もすれば病気にもなる。しかしポーションや神殿に行けば高くつく、だろう?」
「はい。だから私たちは薬草を貼ったり、煎じたりして治します」
「それを簡単にしかも早く治せると言うのだ。手頃な値段でな。そうだろ?婆さん」
「その通りじゃ。まあ今回は塗り薬なので病気は治せんが、切傷や擦傷、打身に軽い捻挫ぐらいなら治せる」
「まあ!それじゃあお台所で作ってしまった切傷も大丈夫なんですね!」
「それで婆さん、その作り方は真似される恐れはあるのか?」
「いや。儂も苦労した所なのじゃが軟膏の主成分とポーションの割合、それに混ぜる過程の温度が微妙での。どの要素が欠けても分離してしまってモノにならん。無論、儂のポーションでないと駄目じゃ、その辺の粗悪品ではな」
「いいぞ!ならそれはカルネ村の特産品で且つ独占販売だ」
この世界にライセンス等はない、だからこそコピー商品を危惧したがこれなら安心だ。
「そうだ!肝心な事を聞き忘れていた。婆さん、実地試験はしたんだろうな?」
「大丈夫じゃ。ンフィーに言うて街道工事の現場に持って行かせてな、使ってみて貰うた。評判は上々じゃ」
「それなら私たちで試せばいいのに…。薬草取りや畑仕事なんかで結構、小さい傷は出来るんですよ?」
「馬鹿言うでない。大事な娘たちで実験出来るわけなかろう?のう、サトルさん」
「ハハ!婆さんの言う通りだ。ツアレたちに何かあったら取り返しが効かんからな」
「なんか嬉しいような、工事現場の人に悪いような…」
ツアレは微妙な笑みを浮かべた。
「ヨシ!じゃあ今朝はここまでにして、次はこれの生産計画と販売計画だ。各自、考えておいてくれ。勿論、他の連中にも伝えるのだぞ、アイデアは多い方が良いからな」
ーーーーー
「ここの問題わかる?」
アルシェはセリーに問いかけた。
自室だと妹たちが居て気が散るので、ツアレとセリーの部屋でフールーダからの宿題をしていた。
「ああ、それね。これとこれがこうだから…こうすれば…ほら、出来た!」
「そっかー!セリー、天才!」
「煽ても何にも出ないよー」
歳が近いのもあり2人は仲が良かった。
魔法の勉強もそうだが、今はガセフたちが遠征中なので薬草取りの時は2人チームで護衛任務もこなしていた。
「村長さんのお腹、すっごく大きくなったよね」
「うん、お姉ちゃんも驚いてた。普通より大きいんだって」
「妹たちみたいに双子だったりして」
2人はクスっと笑った。
「最近、ンフィーさん変わったよね」
「そうそう、変わった」
「なんて言うか…前から優しかったんだけど…ちょっと頼りない感じ?してた」
「やっぱ父親の自覚ってのが出来たのかなぁ」
「男の人って女で変わるってお姉ちゃんが言ってた」
「そうなの?」
「うん。ガセフさんも最初は凄く怖かったんだって。ザ戦士みたいな感じでさ。それがクーレさんと一緒になって柔らかくなったって」
「ふ〜ん、そーなんだ。じゃあブレインさんも変わるのかなぁ」
「好きなの?」
「まさか!歳が違うよー」
「誰にも言っちゃ駄目だよ。実はお姉ちゃんね、ブレインさんの事が好きみたいなの」
「えーーー!ホント?」
「前にカッコいいって言ってた」
「セリーはそれでいいの?2人きりの姉妹なのに…」
「ん?別にいいよ。お姉ちゃんが幸せになるんだったら」
「私たちにも出逢いあるかな?」
「無理だろーねー。サトル様、その辺無茶苦茶厳しいから。仕方ないけどね、お姉ちゃんもそうだけど他の人も男の人には随分な目に遭わされたから」
「だよねー、私も父親みてるから頼りないのは御免だし」
本もノートも閉じられ2人のトークは夕飯まで止まらなかった。
ーーーーー
「パンドラズアクター様はまだお帰りにならないのかしら」
エルフの1人が溜息混じりに呟いた。
3人のエルフはこれまたチームで果樹園の雑草取りをしていた。
「噂で聞いたけど、あの時のマントの子と良い仲だって」
「えー、本当?」
「今回の遠征も志願して行ったらしいよ、あの子が来るからって」
「ショックー!ワンチャンも無い?」
「無い、無い。諦めなって」
「所詮が奴隷上がりの叶わぬ恋かー」
「シーっ!それ禁句だからっ!ゼッタイ他で言っちゃ駄目!」
「あ、ゴメン!」
「他にもアタシたちと似た様な人たちが居るからね。言葉には気をつけないと」
「そーだよー、アタシたちなんか本当にラッキーだったんだからさ。あのままだときっとあの馬鹿の盾で死んでた」
「だよねー。こんなの恵まれ過ぎだよ。サトル様に耳も治して貰ったしフカフカのお布団に美味しいご飯」
「アタシなんか今でもこれは夢じゃないかって思う時があるよ」
「あるある。目が覚めたら元の生活になってるやつ」
「勉強もさせて貰えるんだもん、夢みたいだよ」
「フールーダ様の話って本当かなぁ」
「アタシたち3人で最強になるって話?」
「アンタの治癒魔法とこの子の支援魔法、それとアタシの攻撃魔法。サトル様も言ってた。一本の矢は折れても三本の矢は簡単には折れないんだって」
「恩返ししないとね」
「そーだよー。でもそれは村の人たち皆んな言ってる。皆んな助けて貰ったんだから何か村の役に立たなくちゃって」
「サトル様って凄いよね」
「最初はおっかなかったけど。今じゃアタシの神様だよ」
「あの時はいくら、神様助けてください、ってお祈りしても何も変わらなくて殴られたり蹴られたりしてた」
「神様なんて居ないって泣いてた」
「居たんだよね、神様」
3人のエルフはしんみりと頷き合った。
ーーーーー
「ネム姉様、お姉様になるの?」
薬草を仕分けしながらウレイリカは尋ねた。
「んーーー、よく分かんないけどそうみたい」
ネムは手を休めて答える。
「アルシェ姉様が言ってた。エンリ姉様は大事な時期だからお家に行って騒いじゃダメって……」
クーデリカは少し寂しそうだ。
「それはお婆ちゃんにも言われてる。だからお家にじゃ静かにしてるの」
「この前みたいになるからお外で遊んじゃ駄目って言うし、お家で遊んでも駄目じゃつまんないよ」
双子の姉妹は今ではすっかり逞しくなりネム共々真っ黒に日焼けしていた。
「じゃんぐるじむ?って言うの作ってくれるってサトル様が言ってたよ?」
「「本当!?」」
とたんに双子の瞳が輝く。
「うん。こないだね、お姉ちゃんの様子を見に来た時に約束してくれた」
「「わぁー!」」
「3人共よくお手伝いしてるからご褒美だって。後ね、クーレお姉ちゃんに絵本も買って来てくれる様に頼んだったって」
「「やったぁ!」」
「だからフールーダお爺ちゃんにちゃんと、にほんご、を教えてあげなさいって言ってた」
「お爺ちゃんて変だよねー。お姉様たちや私たちに勉強教えてくれてるのに」
「お爺ちゃんが読みたい本が、にほんご、で書いてあるんだって。にほんごは私たちの方が先に勉強してたからネムが先生だよってサトル様が言ってた」
「「ふ〜ん…」」
イマイチ分からなさそうだ。
「オトナって難しいね」
ネムはそう言って薬草の仕分けを再開した。
ーーーーー
「集合〜」
食堂に集まった娘たちの1人が号令をかける。
「じゃあ皆んな席について頂戴。これから会議を始めます」
「班長!今日は何の議題ですか?」
「今日は今度売り出す新しい薬をどうやって宣伝して売るか、です。意見のある人は手を挙げて下さい」
スッと手が挙がる。
「お!早いですね。どうぞ」
指名された娘は得意顔で話し出す。
「私たちが直接売りに行けば良いと思います」
「う〜ん。それじゃあ売りに行ってる間は作れないじゃない」
「そーかー」娘はションボリした。
「大丈夫です。サトル様も沢山の案が出た方が良いって仰ってました、だから皆んなも色んな案をお願いします」
「お試し会はどうでしょう」
「お試し会?」
「昔、ウチの村で新しい果物が取れた時にやったんです。街の広場で集まった人に試食して貰うんです」
「興味深い意見ですが怪我もしてない人に薬を塗っても…」
「あ!そっか」
「でも、先ずは広く使って貰う方法は良いと思います。他にありますか?」
「じゃあ料理屋さんとか大工さんに配って使って貰うと言うのはどうでしょう」
「なるほど。使って貰えそうな所へ宣伝するのですね」
「2回分とかの小さいのを作って主婦の方が行きそうなお店のカウンターに置いて貰う」
「これは良い意見が出ましたよ。今回のターゲットは一般家庭ですからね、主婦を狙うのはコンセプト通りですね」
「私はネーミングが大事だと思います。ポーションなんか使った事もない主婦には難しい成分は分かりにくいです。如何にも万能っぽい名前が必要です」
「切り口が変わりましたね。もう少し掘り下げましょう」
「先ずは旧王国圏内で売るんですよね。だったらリイジーさんの名前は大きいと思います」
「製造者をはっきりさせて安心させる訳ですね。確かに今までのポーションもただポーションと言う呼び名で製造者の名前は付いていませんでした」
すると1人がオドオドしながら手を挙げた。
「あの〜、リイジー印のカルネール軟膏はどうですか…」
皆は一斉に発言者を見る。
「……カルネール軟膏」「いいわね」
「なんか痛みが軽くなる感じね」口々に言う。
「これは斬新な意見ですよ。村の名声も上がってサトル様もお喜びになるわ」
皆はウンウンと頷く。
「では纏めましょう。初回お試し品として少量の物を作って需要がありそうな所へ置いて貰う。そしてそれにはラベルを付ける、名前はリイジー印のカルネール軟膏ね。ついでだから用法、効用も書いた物も付けましょう」
「でもどうやって頼みに行くのかがまだです」
「それは問題ないわ。私たちが少し可愛い格好をして頼みに行けば大抵は断らない筈よ。だって私たち可愛いし」
「ツアレさんにデザインして貰ってお揃いのにしましょう!」
「そうね、それが良いわね。話題にもなるだろうし」
あんな服がいい、こんなデザインがいいと
肝心なセールストークには全く触れずに
ユニフォームで盛り上がっていた。
お疲れ様でした。
何気ない日常を過ごしていても
人って成長するものです。
特に生きるのに精一杯だった村人たちには
平和な生活を送る事で余裕が出来たと想像しまして、
カルネ村の或る1日を書きました。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。