お話は再び「のんびりカルネライフ」に戻ります。
ほら、よくあるじゃないですか。
あの話のその後はどうなったんだろう?
え〜、あの人たち何処行ったの?
作者なんてそれが書き出した動機ですから
書いてる本人が自分の書いたその後が気になって気になって仕方ありません。
病気ですね(笑)
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「皇帝陛下、この度はおめでとうございます。そしてこの様な席にお招きいただきありがとうございました。村民を代表して御礼申し上げます」
バハルス帝国皇帝ジルクニフと聖ローブル王国元女王の披露宴は帝国宮殿で盛大に行われていた。
復興で多忙を極めている村の面々も息抜きと観光を兼ねて
祝宴を楽しんでいた。
「貴殿がエンリか…いや、ありがとう。ささやかな宴だが楽しんで行ってくれ」
ジルクニフは満面の笑みを浮かべエンリと握手した。
「おい、見たか?あの皇帝が満面の笑みだぞ?」
「ああ、カルネ村の村長だろ?滅多に表には出て来ないらしいが彼女に関する噂はどれも規格外だ」
壁際の貴族たちがヒソヒソ話を始めた。
「噂?あの妊婦にどんな嘘があると言うのだ」
「なんだ、知らないのか?エ・ランテルの外れにある辺境の開拓村の村娘だったんだかな、スレイン法国に襲われて村人は全員殺された、その事件ぐらいは知っているだろう?」
「ああ、帝国の兵に偽装して村々を襲ったってやつだろ」
「そうだ。その襲われた村の1つカルネ村の唯一の生き残りがあの妊婦とその妹だ」
「それぐらい別に珍しい話でもないだろう。偶々、村から離れた場所に居たとか上手く隠れていたとか」
「噂その1。姉妹で法国を撃退した、そして、ほら、彼処に居る元王国戦士長ガセフ・ストロノーフに捕らえた賊を引き渡した」
「まさか!ありえないだろう…政治的な何かでガセフが嘘を言っている、とか?」
「疑り深い奴だな。まあいい。その件はそうだとしておこう。では噂その2だ」
「勿体ぶるなよ」
「エ・ランテル共同墓地でのアンデッド大量発生事件を解決した」
「確か…邪悪な秘密結社が絡んでた事件だよな?」
「ズーラーノーンだ。これには証人も居るぞ?冒険者組合に属している冒険者達だ」
「ちょっと待て!その話は私も聞いた事があるぞ。解決したのは2人の超人的な冒険者だろう」
「その冒険者の後ろ盾が彼女なんだよ。実際、同じ宿の同じ部屋に泊まっていた事が確認されている」
「…証拠があるのか…」
「噂その3。これが凄いんだが、王国と帝国の平和合併を扇動した」
「おいおい、いくらなんでもいきなり国家間の問題解決なんて無理があり過ぎるだろう…」
「そう言うと思った。ほら、証拠が歩いて来たぞ」
「あれは……黄金姫じゃないか!まさか証拠って王女か?」
エンリとラナーは軽く抱擁し親しげに談笑を始めた。
「な?」
「待て待て!カルネ村は王国領土にあるんだろ?そこの村娘と王女が何であんなに……あれでは幼馴染じゃないか…」
「規格外だと言ったろ?さっきの皇帝と言いラナー姫と言い、単なる招待客に対する態度じゃないよな?」
「…そう…だな。確かに」
「そして4つ目が来たぞ?」
「まだあるのか!?って誰だ?あれ」
「竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルス。今は王位を譲っているから元女王か」
「まさか…竜王国との同盟も彼女の力が関わってるとか言わないよな?あれは竜王国を襲っていたビーストマンを撃退したからだと聞いているぞ?」
「それを手配したのが彼女だ。事実、王国からも帝国からも兵は出ていない。出したのはカルネ村だ」
「ハハ!なんだ私を担いだのか!全滅したカルネ村の何処に兵が居る?なんだ、そう言うオチか!」
「出たのは、たった2人。ほら、ガセフの横に居るドレスの女性と…今皇帝と話しているローブ姿の奴だ」
「何者だ?」
「オンナの方はスレイン法国漆黒聖典の元第9席次。ローブの方は詳しい情報が無いがマジックキャスターだそうだ」
「マジックキャスター?」
「フールーダ様の昔の知り合いらしい。なんでも若い時に一緒に修行したとか」
「そんな話は聞いた事がないぞ?」
「私もそう思ってフールーダ様の高弟や陛下の側近にそれとなく探りを入れたさ。しかし返ってくる答えは皆同じだった」
「緘口令…だな」
「恐らくな。だから深追いはやめた、粛清されては堪らんからな」
ドラウディロンはエンリのお腹に何かを語りかけながら撫でている。
「そして…極め付けはアレだ」
「おお!其方がエンリ殿か!その節は我が故郷を救って貰い感謝の言葉もない。今、ケラルトを呼ぶからな」
カルカは侍女にケラルトを呼びに行かせた。
「陛下の御側室様で元のローブル女王が礼だと?それにケラルトは現女王じゃないか…それを呼び出す?」
男は空いた口が塞がらなかった。
「ほら、オールスターになったぞ?」
そこにはジルクニフとカルカを囲む様に、ラナー、ドラウディロン、ケラルトと姉のレメディオスが揃い、エンリのお腹の子についてあれこれと話をしていた。
そしてその輪に鈴木やフールーダも加わる。
「全てがあのエンリ・エモットと言う娘に繋がっているのさ」
「一体どんな力があると言うんだ?外見からは全く想像出来ん…」
「フールーダ様やローブ男が足元にも及ばない大魔法使いってのが結論だ」
「それが今まで人知れず?この国には魔法学院もあるんだぞ?」
「その結論が決定的になったのが、この前の漆黒聖典の逆襲事件だ」
「あの返り討ちにあって全滅したって言う?」
「壁際で何か玩具みたいなのに熱中してる髪が白黒の少女がわかるか?」
「あれだけ特徴があればわかるさ。明らかにこの場で浮いてるし」
「あれが法国の国宝を守っていた絶死絶命・番外席次だ」
「それこそ噂だろ!?一歩も法国から出た事がないって、それがあんな少女!?」
「今、法国の2つの国宝はカルネ村、いや、エンリの手元にある、と言ったら?」
「だからあの少女がついて来てるって言うのか!?」
「あの少女は国宝の、いや強大な力を秘めたマジックアイテムの守護者なのさ。邪悪な者に奪われない為にね」
「……エンリは強大なマジックアイテムをも使いこなせ尚且つ神聖なる大魔法使い」
「しかしその道は決して平坦ではなかった。血塗られた道さ。故に着いた渾名は"血塗れのエンリ"」
「…なんか鳥肌が立って来た。血塗れのエンリ…恐ろしい」
「私たちみたいな一貴族が関わってはいけない人物なのだよ、決してな」
「触らぬエンリに祟りなし、か」
ーーーーー
「どう?エンリ、しっかり食べてる?」
「ハイ!とっても美味しくて太っちゃいますよ」
「いいの、いいの、それはお腹の子の物なんだから」
「そうそう、しっかり食べて元気な赤ちゃん産んでね」
「しかし食べすぎてお腹が大きいのか元々なのか区別がつかんな」
「もう!だからサトルさんはデリカシーが無いって言われるんですっ!」
「そうだぞ、サトル。少しは女心を勉強しろ」
「アラ?まるでご自分は違うみたいなお言葉ですわね」
「いやだぁ〜カルカったらもうお尻に敷いてんの?」
「ち、違うわよ!何言い出すのケラルトったら」
「なんかこんなやり取り見るは久しぶりで…涙が…」
「レメディオスさんって泣き上戸?」
「お姉様、少し呑み過ぎですよ?」
「そうそう少しぐらいはお嫁さんが強い方が家庭円満ですよ」
「ラナーとこはちょっと意味が違うけどな」
「それには同意する」
「そんな事言って良いんですかぁ?ジルクニフ様」
「ジルクニフ様はよせ…特にお前にそう呼ばれると背筋が寒くなる」
「相変わらずだな、ジルもラナーも」
「ドラウディロンさんはもう良いんですか?」
「ん?ああ、もう終わった。なんか肩の荷が下りてな最近は良く眠れるのだ」
「それでいつカルネ村に?」
「近々にな引っ越そうと考えておるのじゃ」
「許可したんですか?サトル様」
「約束したからな。村長の許可も出たし、復興のついでに家も建てる」
「そうだ、サトルよ。今回の災難に各国から義援金が出ているんだ、受け取ってくれ」
「へー、それは助かる、なぁ?エンリ」
「うわぁ〜、ありがとうございますぅ〜」
「しかしカルカから話には聞いていたがサトル殿は本当にアンデッドなのだな」
「レメディオスさんだっけ?サトルでいいよ。仲間には皆んなそう呼んで貰っている」
「じゃあ私の事も呼び捨てにしてくれ、サトル」
「オーケー、レメディオス。これからも宜しく」
「何だ何だ?随分と打ち解けてるじゃないか」
「ラナーがな。愛について講義してくれたんだ。小さい事に拘っていては大きな物を見落としてしまうとな」
「えっへん!」
「「「あざとい!」」」
「さて、どうだ?そろそろこの退屈なパーティーはお開きにしてプライベートな二次会をやらんか?」
「おいおい、主役とは思えぬ発言だな」
「これ程のメンバーが集まっているんだぞ?ハイ、サヨナラじゃあ勿体ないじゃないか」
「じゃあウチの連中も呼んで良いか?」
「勿論だ。なんなら娘たちも呼んでやれ」
「あなた…酔ってますわね」
「当たり前だ!やっとお前を我が手に入れたのだ、こんな嬉しい夜に酔わない馬鹿は居らん」
「「「ヒュー!ヒュー!」」」
「分かった、分かった…これ以上、皇帝陛下の品位が下がらぬ内に河岸を変えよう。爺さん、頼む」
「心得ました。おい!そこの者、我らはこれから国家元首会議をする。場所を用意せい、無論この事は極秘事項じゃ」
「さっすが、年の功。咄嗟の嘘が上手い!」
「じゃあ!次行こーっ!」
「「「オー!」」」
千鳥足のジルクニフは鈴木に担がれていた。
ーーーーー
「は〜いっ!この旗が目印ですかね〜」
娘たち一行は披露宴の時間を利用して帝都観光をしていた。
案内役兼護衛役はレイナースが買って出た。
「久しぶりだなぁ〜」
アルシェが懐かしそうに街並みを見ている。
「そっか、帝都に居たんだもんね」
「そうそう、ここでサトル様を見かけて世界の終わりと勘違いしちゃって…今度はそのサトル様と戻って来てるんだから世の中なんてわかんないよね」
「なに年寄りみたいな事言ってんのさ。それよりどっか面白い所知らないの?」
「面白い所かぁ〜、あの頃は食べていくのに精一杯だったから…」
「なんかゴメン」
「あ、いやいや、気にしないで。セリーだって同じ様なものだったんでしょ?」
「まーね。アルシェとあんまり変わらないよ」
「そうだろうと思って良い店紹介するわよ?」
レイナースが間に入って来る。
「良い店?」
「そうなのよ。とっても美味しいスイーツのお店。興味ない?」
「「ありますっ!」」
「ウフ、そうこなくっちゃ!じゃ早速行きましょう!」
「でもレイナースさん、なんか少し街の雰囲気が変わりましたね」
「そう?ズッと居ると分からないけど…変わったって言えば、そうね…奴隷制度が廃止になったのが大きいかな」
奴隷制度と聞いてエルフたちがビクッとする。
「あ!ゴメン!気がつかなくて…」
「いえ…だけど…その話詳しく聞かせてはいただけませんか?」
「…私は別に構わないけど…本当に良いの?」
「お願いします」
「分かった。じゃあ、お店に行ってからね」
一行はワイワイと言いながら一軒のスイーツ店に着いた。
「こんにちわぁ〜」レイナースが声をかける。
「おや、これはレイナース様。こんにちは」
厨房から髭面の男が顔を出す。
「あ〜〜〜っ!」アルシェが大声を出す。
「アルシェ!?」
「ロバー!」
盛り上がる2人を尻目に一同はキョトンとしている。
クイクイとセリーがアルシェの服を引っ張る。
「知り合いなの?」
「知り合いも知り合い。ワーカーやってた時のメンバーなんだよ!」
驚いたのは案内したレイナースだ。
「へぇ〜、世の中が狭いって本当なのね。アルシェちゃんとおじさんが知り合いだったなんて…」
「紹介してよ、アルシェ」
「うん!えーとね、本名はロバーデイク・ゴルトロン。元は上級神官だったんだけど神殿のしがらみに嫌気がさしてワーカーになったの。とっても優しいんだよ!」
「褒め過ぎですよアルシェ。今は甘党が高じてスイーツ店のオヤジです。そんな事より、さぁさ、どうぞ皆さん入って腰掛けて下さい。とっておきを出しますからね」
「キャ!とっておきだって!」「楽しみ〜」
娘たちは嬉しいサプライズに興奮気味だ。
「レイナースさんはよく来るんですか?」
「そうだな。週に3回ぐらいかな?」
「そんなに!?」
「甘い物は女子の主食だから。特にここが開いてからは通い詰めね」
話していると店員がワゴン一杯に色とりどりのスイーツを運んでくる。
「「うわぁ!美味しそう!」」
「「いただきま〜すっ!」」
「そうですか…そんな経緯があったんですね」
ロバーデイクは珈琲を飲みながらアルシェの話を聞いていた。
「ヘッケランとイミーナは元気?」
「ええ、元気ですよ。あれから結婚して今は行商の仕事をしています」
「会いたいなぁ」
「街に帰ったら必ず寄ってくれますから、その時に伝えておきますよ。きっと2人も喜びます、心配してましたからね」
「良い仲間だったんだね」
セリーはマカロンを頬張りながら嬉しそうだ。
「もうセリーったら…食べるか喋るかどっちかにしてよ?」
「だって、めっちゃ美味しいんだもん」
「アルシェはまた良い仲間に恵まれた様ですね」
ロバーは目を細める。
「うん!今度もまた良い仲間に恵まれたよ!神様に感謝しなくちゃね!」
「良い心掛けですよ」
「成る程、知らなかったがそんな所を見るとロバーさんは神官だな」
「揶揄わないで下さいよ、レイナース様」
昔話に花を咲かせるテーブルを後に、レイナースはエルフたちのテーブルへ行く。
「待たせたわね、何から聞きたい?」
「すいません、こんな楽しい時に暗い話を聞いちゃって…」
「何言ってんのよ。そんなの気にしないの。元はと言えば貴女たちが息子さんに助けられてカルネ村に行ったから陛下が決断されたのよ?」
「そうなんですか?」
「陛下もね、気にはしてらしての。だけどあの頃はまだ王国とギクシャクしてたし他に問題が山積みでね。そこまで手が回らなかったと言うのが正解なの。だけどサトル様がね、内密に陛下をお訪ねになったの」
「…サトル様が?」
「そう。ウチの娘たちみたいなのをこれ以上増やさないでくれって、頼みに来られたのよ。それで陛下も決断したの」
「………」
「勿論、口で言う程は簡単じゃなかったわ。だってそれまでは合法だったのだから正規にそれを生業にしている者だって居たし、需要もそれなりにあったんだから」
「…だけど…私たちは…」
「そうね。分かってる。スレイン法国に捕らえられ帝国に売られた。貴女たちには被害者よ、何の罪もない。許される話じゃないよね」
「それで…解放されたのですか?その…仲間は」
「されたわ。完全に解放された」
「ど、何処へ!?」
「ある場所へ匿われている、としか言えない。ゴメンね、でもこれは"仲間たち"のためでもあるのよ」
「訳を!訳を教えて下さい!」
「貴方たちの母国の追手から守る為よ」
「…そんな…まさか」
「本当の事よ。彼等は解放された者を捕まえて再び戦場に送ろうとしている」
「…あんまりです…酷過ぎます」
「安心して。これは帝国だけの問題ではなくなったの。ラナー様やドラウディロン様も承知しているわ。だから予算も十分に組まれてるし、ゆくゆくは新しいエルフの国になるかも知れない」
「新しい…エルフの国」
「そうよ。目指しているのはそこ。人間と違って永く生きるエルフにしか出来ない事が沢山あるわ、だからこそ人とエルフは互いに理解し合って共存するべきなの。と、これはサトル様の受け売り」
「そこまで頼んでくれたのですか?」
「そうよ。魔法もそうだけど自然の力や知恵をエルフは持っている、ギブアンドテイクの関係が築けるってそりゃあもう熱心に口説き落としたらしいわよ?」
3人のエルフは周りも気にせず号泣した。
それとなく聞き耳を立てていた周りのテーブルから娘たちが来て優しくエルフたちを抱きしめた。
その様子を見ながらレイナースは言った。
「ね?今は無理でもいつか必ずこんな世界になるわ」
ロバーデイクは黙って店の扉を閉めに行った。
お疲れ様でした。
ロバーデイクさんてコック帽が似合いそうじゃありません?
パテシエっぽくないですか?
少しネタバラシすると(ネタバラシじゃないか)
護衛役にはレイナースさんとニンブルさんを付ける予定でした。
そうです、2人は付き合ってる前提としてです。
でもエルフの一件を入れたくなったのでやめました。
同じ理由で、ヘッケランさんとイミーナさんにも旅に出て貰いました。
ファンの方はごめんなさいね。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。