骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回は連載っぽいですよ。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その45 潮の満ち引き。

「ふう〜、ちょっと作り過ぎちまったかな…」

薪の山を前にブレインは額の汗を拭った。

「ちょっとアンタそんなに作ってどうすんのよ」

通り掛かったクレマンティーヌは呆れて言う。

「これが中々良い鍛錬になるんだ。手先だけでは上手く行かない、こう、腰をな…」

身振りを交えて説明を始める。

「はぁ〜、なんでアタシがアンタに薪割りを指南して貰わなくちゃいけないのよ。物には限度ってモンがあるでしょうが」

「どうしようか?」

「とりあえず、小屋に運んでよ。ああ、ちゃんと崩れない様に積んでね。危ないから」

「へいへい、ったく人使いが荒いな」

「なに言ってんだか…どうせツアレちゃんに良いトコ見せようとしたんでしょ?魂胆見え見えなんだからね」

「なんで、そこにツアレが出てくるんだ?」

「バレバレだっつぅの。アンタ、色々とちょっかい出してるって噂になってるよ?」

「ち、ちょっかいってナンだよ!俺はだなぁ…」

「ハイハイ、分かった分かった。そんでどうなのよ?」

「ん?」

「あぁ〜、鈍感大魔王だったね。ちゃんとツアレちゃんに告白したのかって話」

「そんなの別に改まってしなくても…」

「やっぱりね。ウチの人もそうだけど、それじゃ女は困るの!」

「別に困る事はねぇだろうよ。ちゃんと責任は取るんだからよ」

「そんなの当たり前じゃない。責任取らなかったらアンタ地獄見るよ?」

「ツアレってそんなに嫉妬深いのか?」

「馬鹿!違うよぉ。サトル様に見せられるんだよ」

「それなんだけどよぉ、あの人ってそんな凄いのか?」

「こないだの漆黒の一戦見たでしょう?魔力を解放しただけで一般兵は即死、アタシたちが訳が分からない内に決着ついてたし」

「おお、アレな。一緒で国宝取られて死んでたもんな、ありぁあビックリした」

「この世の中にやっちゃいけない事が2つあるの」

「…2つ?」

「アンタも仲間だから教えてあげる。1つはサトル様を怒らせない、もう1つはサトル様を悲しませない」

「1つ目はなんとなく察しがつく、2つ目は?」

「アタシが地獄の底まで追い詰めて殺すからだよ」

「お前…なんでそこまで…」

「アタシはね、あの方に今日を貰ったの。今日が無けりゃ明日も無いでしょ?分かる?」

「…………」

「まぁその内分かるよ。兎に角、ツアレちゃんにはキチンと言いなよ?それでサトル様に報告する、イイ?クドい様だけどツアレちゃん泣かしたら誰もアンタを助けてやれない。多分、息子さんでも止められない。それこそ、こないだ法国の馬鹿どもが森で待ち伏せしたよね。あれ、ウチの子たちに怪我が無かったから正直ホッとしたんだよ。もし誰か何かされてたら今頃法国は地図から無くなくってた」

そう言い残してクレマンティーヌはスタスタと去って行った。

(なんか俺、とんでもねぇ村の一員になったかも)

ブレインは鈴木の部屋の方を見てそう思った。

 

ーーーーー

 

「父上、釣れませんね」

「…そ、だな」

「父上、ひ…」

「ストップ!そこまでだ!それ以上何も言うな!」

「昼ご飯はどうしましょう?と言いたかったのですよ?」

「お前なぁ、紛らわしいのは止めろよ。無い心臓がドキドキしたじゃないか」

「ちょっといいか?」

「ん?なんだキーノ」

「さっきから2人の会話がまるで理解出来んのだが」

「それはな。こいつがこのパターンであるキーワードを言うと必ず何か事件が起こるんだよ。まぁフラグってやつだ」

「ふ〜ん、それでもう1つは餌も付けないで魚が釣れるのか?」

「それは仕方ないんだ。これは趣味だからな」

この日はキーノを連れ立っていつものポイントで竿を垂れていた。

季節は移り変わり世の中は平和そのものであった。

 

「ところでお前たち子供はまだか?」

「はぁ…そろそろかと思うのですが出来ません」

「ちゃんとヤッてんのか?」

「それなりに」

「やっぱり異種混合競技ってのは難しいんだなぁ」

「ちょっとイイか?」

「だからナンだよ?」

「アンタたち親子は当事者の女性が目の前に居るのに、いつもそんな風にデリカシーの無い会話をするのか?」

「キーノ、それは違いますよ。父上は心配してくれているのです」

「ぱんくんの事は大好きだが今の答えには賛同しかねる」

「だってキーノはウチの息子の嫁なんだからもう家族じゃないか。家族の間で恥ずかしいも何もあるもんか」

「変だろ?その理屈。あの白黒娘と大して変わらんぞ」

「そう言えばその白黒娘はどうしてる?いつまでもフラフラしていては他の娘たちに示しがつかん」

「それなりに警備やら雑用やらをしております。本人も初めての生活らしく楽しんでいる様です」

「ふ〜ん、なら良いが。中々に屈折した育ち方をしている様だからな、気を付けてやってくれ。もう村人の一員だし」

「畏まりました」

「キーノも偶には薔薇の連中に手紙ぐらい出せよ?仲間だったんだからな」

「それなんだが…どうやらラナーが妊娠したそうだぞ?」

「なんだよ!教えろよ!」

「だってそれを言ったら絶対私たちの方は?って責めるだろ?」

「う!先読みしたかっ!」

「当たり前だ。伊達に嫁はやって無い」

「そうか…ラナーも母親になるか…アレも変わった娘だったからなぁ。あの…なんだっけ?地味な亭主」

「クライム」

「そうそうクライム、クライム。心配してたんだ、上手くやっていけるかなぁって」

「ラナーがグイグイ引っ張って行くから良いんじゃないかなぁ」

「父上、ウチの村長夫婦も似た関係ですね」

「おお!そう言えばそうだな!聞いた事があるぞ、女房が強い方が家庭円満になるって。お前んトコもキーノが強いのか?」

「な?コッチに振るだろ?絶対そーだと思ったよ…」

 

(良いなぁ…長閑だなぁ…親子水入らずってのはきっとこうなんだ)

餌も付いてない竿の先が作り出す波紋を見つめ、キャラが全て魚貝類の名前だったアニメを思い出していた。

 

ーーーーー

 

それは突然やってきた。

 

「お湯!お湯の用意よ!」

「急いでお婆ちゃん呼んで来てっ!」

「しっかりね!大丈夫よ!」

「ほら!そこ空けて!」

 

エンリが破水したのだ。

 

「父上!大変です!直ぐに医務室へ!」

「来たかっ!わかった!直ぐに行く!」

 

(落ち着け!落ち着け!深呼吸だ!スー、ハー、スー

、ハー)

 

「あなた!ブレイン!見張りをお願い!ネズミ1匹入れないで!」

「「おう!」」

 

「お、お姉ちゃん…ど、どうすればいい?」

「貴女はアルシェちゃんとおチビちゃんたちの面倒を見てて頂戴。心配しなくても大丈夫、私たちがついてる」

 

「「お姉様」」

「うん。大丈夫、少ししたら、あなたたちもお姉ちゃんになるんだから。今は大人しく待ってようね」

(神様!村長さんを頼みます!)

 

「お、お婆ちゃん!僕、どうしよう」

「えーい!情けない子だねぇ!親父になるんだ、しっかりしなっ!」

 

「フールーダ殿、我らはどうする?」

「ドラウ殿、どうもこうも用無し故、ここで待つとしましょう。儂の知る限り、村始まって以来の非常事態じゃ」

 

「おい、白黒。私たちはここで待機だ」

「一体何が始まる?」

「お前が待ち望んでいた出産だ」

「本当か!?実は立ち会った事は無いのだ」

(産婆じゃあるまいし…無いよ普通は)

「それでここで待機してどうなる?」

「あーもーいちいち煩い奴だな。この村はな、こんな時に限って色んな事が起きるんだ。だから我々は遊軍として何かあればそれに対処するんだ、分かったか」

「それ、フラグって言うんじゃないのか?サトルが言ってたぞ?」

「………しまった!お前が余計な事言うから……」

(どうしよう……何かあったら私のせいだぁ〜)

 

「産まれたか!?」

「そんな直ぐに産まれる訳ないでしょう!犬や猫じゃないんですよ!」

 

「ハイ!そこで息んで!」

「はぁーっ!死ぬぅーっ!」

「弱音吐かない!お母さんでしょ!」

「助けてーっ!」

「私の手をしっかり握って!」

「エンリ!正念場じゃぞ!」

 

(一体何が起こっている!?どうなってる!?

それになんだこの緊迫感…)

 

「ンフィー!ウロウロするな!ドンと構えておれ!」

「そんな事言っても…お義父さん」

 

「ぎゃーっ!」

 

「エンリっ!」

「落ち着け!心配ない!」

(これは…!父上の手が震えている…それ程に?)

 

「さあ!来るよぉ!お前たち!準備はいいかいっ!」

 

「!」部屋の前の3人の男は息を飲む。

 

「エンリ!」

「んはぁっ!」

 

永遠とも思える長い時間が流れた。

何度も波が寄せては返す。

潮が満ちるのを待つ様に。

 

 

「おギャア!おギャア!」

 

「おお!おお!産まれた?!」

 

「おギャア!おギャア!」

 

「おお!双子だ!双子だ!」

 

「おンギャア!おンギャア!」

 

「…み、三つ子?」

 

「ンギャア〜」

 

「え?え?」

 

「ギャア!」

 

「え?え?え?なに?なに?え?」

 

「サトル様!5つ子ですっ!」

 

一瞬阿保になった鈴木だが我を取り戻した。

そして天に吠えた。

「でかしたぁーっ!エンリ!でかしたぞぉーっ!」

 

(これ程感情を剥き出しにされるとは…いやはや、これが生命の神秘…ですか)

 

「エンリちゃんがやったよぉ〜!5つ子だよぉ〜っ!」

クレマンティーヌがガセフたちに聞こえるように叫ぶ。

 

「さあ!我々も行こう!」

キーノは番外と部屋に向かう。

 

それまで待機していた者が集まり出した。

 

「さあ!ンフィー!行ってやれ!そして褒めてやってくれ!」

鈴木はンフィーの背中をドンと押した、その時。

 

「エンリ!エンリ!しっかりおし!エンリ!わかるかい!お婆ちゃんだよ!エンリ!エンリ!」

部屋の中からリイジーの叫び声が聞こえた。

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

話は続きます。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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