骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回は半分ぐらいしかありません。
でも、作者が描きたかった鈴木悟が凝縮されています。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その46 祈り。

「エンリ!エンリ!しっかりおし!エンリ!わかるかい!お婆ちゃんだよ!エンリ!エンリ!」

リイジーの声が部屋に響く。

何か異常が起こっているのはその声色で伝わる。

「どうした!何んだ!おい!」

鈴木は外から怒鳴る。

 

ガチャ

 

ドアが開いてリイジーが出て来た。

「婆さん!どうなってる!?」

鈴木はリイジーの肩を揺する。

「父上!力が強すぎます!」

慌ててパンドラズアクターが諌める。

「す、すまん!つい…」

「落ち着けて聞いて欲しい。先ず、赤ん坊は無事じゃ、元気な五つ子で全員女の子じゃ。だが…」

ゴクリ、飲み込めない筈の唾の音がするようだ。

緊張の糸が今にも切れそうなぐらいに張り詰める。

「母体が危ない」

鈴木は安堵の表情を浮かべる。

「なんだそんな事か…なら心配要らん。俺のポーションで…」

「効かんのじゃ」

「だから俺のなら…ちょっと待て…あった!これだ」

鈴木は袋から金色に輝く小瓶を取り出した。

「最上級のポーションだ。俺も数本しか持っていない貴重品だが、エンリの為なら全く惜しくは無い、使え」

鈴木はグイッと小瓶をリイジーに手渡す。

「だから、効かんのじゃよ…赤いポーションで止血は出来たのじゃが、脈がドンドン弱くなってきておる」

「そんな馬鹿な…お産だぞ?怪我でも何でもないじゃないか!」

「だから原因に皆目見当が付かんのじゃ…微かに意識はある様じゃがのぉ」

「ふざけるなっ!そんな話があるか!?一体ナンの呪いだ!俺か!?俺が原因か!?なら俺を呪えばいい!さあ殺せ!俺を殺せ!」

「父上!落ち着いて!兎に角ここで騒いでも仕方ありません、一旦表へ出ましょう」

パンドラズアクターは引きずる様に鈴木を外に連れ出す。

「何故だ!何故、いつも俺から奪う?親父の顔も知らん、優しかったお袋は俺の為に過労死した。やっと出来た仲間は去り、訳の分からない世界に飛ばされて、それでも仲間が出来て家族も出来た…それを…それを奪うと言うのか!?俺が一体何をした?頼む……頼むからこれ以上俺から奪わないでくれ…頼む…頼むから」

膝をつけ倒れ込む様に地に伏した鈴木の姿に周りはかける言葉が見つからない。

クレマンティーヌはキッと空を見上げて叫んだ。

「許さない!ゼッタイに許さないからな!今すぐ降りて来い!アタシと勝負しろ!」

パンっ、と乾いた音がした。

ツアレがクレマンティーヌの頬を叩いた。

「お、お姉ちゃん…」

「貴女まで狼狽てどうするの!今こそサトル様を私たちが支えるんじゃ無いの?しっかりしなさい!」

「…ツアレ」

「すまない…みんな…今の醜態は忘れてくれ…。もう大丈夫だ。少しエンリの様子を見てくる」

そう言うと鈴木はゆっくり立ち上がりパンドラズアクターに支えられながら建物に入っていった。

「あんなサトル様は見た事がないです」

「ご自分の事なんて…初めて聞きました」

「フールーダさん、何か知りませんか?」

「我が無知を恥じておる。人1人救えんで何が深淵ぞ、全く今まで何をしてきたのか…」

「ドラウさんは?」

「すまぬ。右に同じじゃ…妾も無力をこんなに口惜しく思った事はない」

「ちょっと私も中へ行ってくる」

突然そう言ってキーノは歩き出した。

その表情は何かを決した様だったので、誰も止められなかった。

 

ーーーーー

 

「エンリ…俺だ。サトルだ。聞こえるか?」

エンリの閉じた瞼がピクリと動く。

「よくやったぞ。元気な赤ん坊だ。さあ、見てやってくれ。目を開けておくれ…」

リイジーはもっと話しかけろとサインを送る。

「なぁ覚えているだろう?お前はこの村を必ず再興すると言ったよな…これからだぞ?これからだよ…だから…なぁ?」

微かに指が反応する。

「パンドラズアクター。指輪の力でも駄目か?」

「ユグドラシルのポーションが効かないとなると…恐らく。それに万が一逆方向に作用した場合、取り返しの効かない事に。それでもヤルと仰るのなら…」

「エンリのレベルでは蘇生魔法も使えんだろう。このまま何も出来ずに待つしか無いのか?」

「申し訳ございません。私にも…」

パンドラズアクターもまた我が身の無力をこれ程まで感じた事はなかった。すると誰かが袖を引っ張る。

見るとキーノが後ろに立っていた。

クイっと顎をしゃくり外へと誘う。

「どうしました?今は父上の側から離れたくないのですが」

「実は…な。一つ方法があるのだ…」

言い難そうに下を向く。

「教えて下さい。今の私は悪魔に魂を渡しす覚悟もありますよ」

「あのな…」

キーノはパンドラズアクターに耳打ちする。

「…それはっ!」

思わずパンドラズアクターは頭を抱える。

 

ーーーーー

 

エンリの顔色はドンドンと白くなり、息も薄くなってきた。

鈴木が握りしめる手も氷の様に冷たい。

(俺は…暖かさも与えてやれないのか…)

「お湯を、誰か沸騰したお湯を持ってきてくれ」

絞り出す様に声を出す。

鈴木は沸騰した湯に自らの手を入れる。

「サトル様!?」用意した娘が驚く。

鈴木は温めた手で再びエンリの手を握る。

何度も何度も繰り返す。

その虚しくも儚い行為に娘たちは涙を拭う事も忘れる。

「なぁ、エンリ。名前はどうしよう?5人も居るんだ、大変だぞ?」

勤めて明るく語り掛ける。

「俺はセンスが無いからなぁ。そうだ!ジルに考えて貰うか?」

「エンリはどんな名前が良いと思う?」

「可愛い名前がイイよなぁ。皆に愛される名前だ」

語るのを止めない、それは止めてしまうと全てが終わってしまうかの様だった。

部屋には鈴木の声だけが響く。

その時、エンリの唇が動いた。

「何だ?言ってみろ!ほら!」

鈴木は耳を口に近づける。

ほんの少しの音も聞き漏らさない様に聴力を最大に引き上げる。

「…た…の…み…ま…」

「何だ?馬鹿を言うな!聞こえん!聞こえるものか!」

「……あ…か…ち…や…ん」

「そうだ!お前の赤ちゃんだ!元気だぞ?抱いてやれ!」

「…あ…り…が…」

「駄目だ!エンリ!許さん!しっかりしろ!負けるな!」

「ああ!誰か助けてくれ!エンリを!俺の娘を!」

 

「父上。お話が」

「黙れ!今はそれどころじゃない!」

「エンリを助ける方法が」

「何!?」

 

ーーーーー

 

神を呪ったクレマンティーヌも今は膝を折り

一心に祈りを捧げる。

祈りなどした事もないブレインも手を合わせる。

 

奇跡。

 

己の力のみを信じ技を磨き剣を奮った者たちは

奇跡を望み神に縋る。

 

ーーーーー

 

「…そんな事を………」

鈴木は絶句した。

「父上、時間がありません。ご決断を」

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

強い鈴木悟。
弱い鈴木悟。
優しい鈴木悟。
そして、大好きな鈴木悟。

描けてましたか?

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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