骨と卵   作:すごろく

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嫌いな登場人物が居ないので困っている作者です。
なるべくハッピーになって欲しいのですが、そうも言ってられない人たちが出てきます。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その5 波乱の城塞都市。

犯罪者たちを王都へ移送する途中に補給を兼ねて

エ・ランテルと言う街に立ち寄る事になった。

 

「確かその街にはエンリの幼馴染が居るんだっけ?」

 

暗黒面事件以来元気の無かったエンリだが

幼馴染の話を振られて久しぶりに笑顔を見せた。

「はい、そうなんです。ンフィーレア・バレアレ君と言って薬剤店をお婆さんとやってるんです。」

 

「ほう、世間は狭いとはよく言ったものですなあ。エンリさんとバレアレ氏は知り合いでしたか。」

並んで馬を歩かせていたガゼフが口を挟む。

 

「ガゼフ殿もご存知なので?」

(そんな有名人なの?)

 

「バレアレ製薬店と言えば王都にも聞こえた有名店。あそこのポーションは品質が非常に高いのですよ。そして聞いた話ではそのンフィーレア君とやらはタレント持ち、そちらの方でも有名人です。」

 

(New Word ktkr !タレントってまさか歌って踊るとかじゃないだろな)

「ガゼフ殿、そのタレントというのは?どうもこの辺の事情に疎くてね。」

 

「そう言えば今更ですが、その黒髪と黒目。南方からの旅人ですかな?これも聞き齧りで申し訳ないのですが、南方の方はその様な髪や目の色をしているそうなのです。」

 

「まあ、そうです。ニッポンと言う国の者です。ご存知ですか?」

 

「ニッポン、、、失礼、全く聞き及んだ事はないですな。

ああ、話が逸れました。タレントでしたな。タレントと言うのは特殊な能力の事でして、タレント持ちは生まれながらにその能力を有している者の事です。確かンフィーレア君はどんなマジックアイテムでも使う事が出来る能力だったと記憶しています。」

 

「マジックアイテム!?」

パンドラズ・アクターが食いつく。

 

「そ、そうです。マジックアイテムですが…」

 

「失敬、息子は大のマジックアイテム好きでしてね。マジックアイテムと聞けば黙っておれんタチなのですよ。」

(俺もだけどね)

 

「そうですか、なら王都の市にお出掛け下さい。様々なマジックアイテムが売られています。市はこれから行くエ・ランテルにもありますが規模は小さいのでお目当てが見つかるかどうかはお約束出来かねます。」

 

「父上、是非!その市と言う所に行きましょう!」

 

(うわぁ!食いつくなぁ!まあ俺も行ってみたいけどさ。でも金がないんだよなぁ…。無一文で飛ばされたからなぁ…。異世界転生でいきなり無一文ってどうよ?死に戻りとかしないだろうな?)

 

「で、エンリ。そのンフィーレア君とは暫く振りか?」

 

「いいえ、少し前にもカルネ村へ仕事で来てましたので会いました。薬の材料になる薬草が森で取れるんです。それの採集で。あと私が取った薬草を売りに来る事もあります。たまーにですけどね、道中が危険なので。」

 

「ほう、あの森でそんな物が取れるのか。」

 

「ンフィーレア君は宝の山だって言ってます!彼は凄いんですよ、サトル様。薬剤師の腕も良いしタレント持ちで魔法も使えるんです!自慢のお友達です!」

エンリは嬉しそうに語った。出会ってからこんなに嬉しそうなエンリは見た事がない。

 

「そうか、それは是非会ってみたいものだな。」

 

「ハイ!ご紹介させてください!」

 

「隊長!そろそろ検問所です!」

 

ーーーーー

 

エ・ランテルの検問所は城塞都市だけあって厳重そうだったが、王国戦士長自らが率いた部隊には何の審査もなかった。

 

「お陰で助かりました。何せ身分を証明出来るような物は何一つ持ち合わせていないので、あの警備ではまさに門前払いでしたよ。」鈴木は頭を下げて礼を言った。

 

「何を仰る!恩人に対して当たり前の事。頭など!さあ、上げて!上げて!」

ゴツいガタイのガゼフが焦る姿が少し可愛く見えてエンリはクスりと笑った。

 

「ん、ゴホン!と、兎に角無事にエ・ランテルにも着きましたし私は捕虜をこの都市の警備隊事務所にある牢屋に入れてきます。手続きなどで少々時間がかかるやも知れませんので、サトル殿を付き合わせるのも心苦しい。先に宿屋に行ってそこでお待ち下さいますか?勿論、宿屋にはご案内しますよ?」

 

「うーん、それも良いですが、、、その宿屋と言うのは私たちだけが泊まるので?」

 

「いやいや、私と警備の者数名もご一緒します。後の者は近くに兵士寮のような物があるので、そこへ。ここは軍事拠点の様な使われ方もするので、そんな施設もあるのですよ。」

 

(良かったぁー!そちらは勝手にやってくれなんて言われたら金無いからどーしよーかと思っちゃったよー。俺とアイツはいいよ、飯も食わないし寝ないからどうにでもなる。でもエンリたちにまさか街中で野宿しろなんてな。築き上げた信頼が根底から揺らぐって!今の状況から考えて、ガゼフも一緒って事は勘定は戦士隊持ちだ、これはリーマン時代の経験からまず間違いない。なんていっても"恩人"だからな。恩人に割り勘はないわー、ないわー。)

鈴木は先ずは一つのミッションを遂げた事に安堵した。

 

「だそうだが、エンリ。宿屋で一休みするか?」

(飯もタダで食い放題だぞ?俺食わんけど。)

 

「サトル様はどうされます?宿に入られるのなら私も一旦入ってお身の回りを少し片付けてからンフィーレアの所へ行きたいのですが、、、」

 

「なんだ私の事を気にしているのか。なら気にする事はない。私と息子は特別なアイテムを付けているので疲労はせんのだ。だからンフィーレア君の顔を見たいのなら、そちらを先に済ませよう。」(ンフィーレアってエンリの恋人だろ?幼馴染とか言ってたけど、あんなに嬉しそうに話してたんだからいくら俺でもバレバレだよ。)

鈴木は道中考えていた。

エンリを助けた恩恵は"王国戦士長との出会い"で受けた。

旅に付き合うかと言ったが、それは勢いだ。現実的に鈴木やパンドラズ・アクターの超人異形種コンビと少女幼女コンビが旅なぞ出来るわけがない。ンフィーレアが薬剤店をやってるならそこで住み込み従業員にしてもらえば安心だ。上手くいけば永久就職も出来るかも知れない。

 

「良いんですか!?いえ、宜しいのでしょうか?」

 

「なんだ、やっぱり遠慮してたのか。

はは、馬鹿だなぁ。良いに決まってるじゃないか。」

 

「あ、あり、ありがとうございます。」

 

「こんな事ぐらいで泣く奴があるか。ほら、涙を拭け。可愛い顔が台無しだぞ?第一、そんな泣き顔じゃンフィーレア君にも嫌われてしまうじゃないか。」エリンの頭を撫でながら優しく鈴木は言った。

 

「え?…そう…ですよね。合わせる顔がない、ですよね…えへ」エンリは一瞬キョトンとしたが涙を拭いてニッコリと笑った。

 

(この御仁は強さだけでなく優しさも併せ持たれているようだ。いやはや、私なんぞが敵う相手ではなかったな…)

ガゼフは己が目指す理想像が目の前に居る満足感に神に感謝した。

「お話はしっかりお聞きしました。こちらの用事が済み次第、遣いの者をバレアレ製薬店に出しましょう。それまでごゆっくりと歓談していて下さい。」

 

ーーーーー

 

鈴木たち一行はガゼフと別れ、エンリの道案内でバレアレ製薬店を目指していた。

「息子よ、どう思う?」

「突然、どう?と言われましても。父上。」

「だからぁ、エンリの事だよっ!」

「エンリの事、でございますか?」

「そうだよ、エンリの事。どう思う?」

「だから!何がどう思うのですかっ!?」

「うわっ!なにキレてんだよ?」

「キレては居りません。父上がからかうからです。」

「ごめん、ごめん。別にからかうつもりじゃなかったんだ。

そのな、エンリとンフィーレア君の事だよ。」

「それでしたらエンリが幼馴染と。」

「違う、違う。ま、違わなくは無いけど、違う。」

「私、さっぱり分かりません。」

「まーお前は知恵者だがある意味で無垢だから仕方ないか…。これは男女の問題だ、息子よ。」

「だんじょのもんだい?」

「そう、恋の話さ。」

「父上、妙に嬉しそうですね?」

「まーな、他人の恋バナは良いツマミになるからな。」

 

エンリの「役目」はもう終わったと思う事。

このままで旅を続けるのは無理がある事。

袖触れ合うもなんとか、エンリには幸せになって欲しい事。

などなどを鈴木はパンドラズ・アクターに語った。

 

「なるほど。お優しい父上らしいお考えですね。私はどちらでも良いのですが、父上の嬉しそうなお顔を見て決めました。エンリには幸せになってもらいましょう!」

 

「たしか…この角を曲がった…あった!

サトル様!着きました!」

 

ーーーーー

 

駆け出したエンリは勢いよく扉を開けたが、その場にへたり込んでしまった。

「あ、あ、あ、、、」

慌てて後を追って開いた扉から中を覗くと、店は荒らされ人が倒れていた。

「おばあちゃん!」

エリンが倒れている人間に駆け寄った。

(頭から血が出てるじゃないか。強盗か?)

「エンリ、その人がンフィーレア君のお婆さんか?」

 

「はい、そうです。一体なにが…。おばあちゃん!おばあちゃん!」必死に呼び掛けるエンリ。

 

「頭から出血している、あまり身体を揺らすな!ポーションは…ええい、どれがそうかわからんな。アクター!ポーションを出せ!早く!」

鈴木はパンドラズ・アクターからポーションを受け取ると老婆にそれを掛けた。

「これで一先ずは心配ない。エリン、隣り近所に何か知らないか聞いてこい。賊はもう付近に居ないと思うが気をつけろ。」

 

エンリが出て行くと改めて周りを見渡しパンドラズ・アクターに向かって尋ねた。

「妙だな。強盗なら商品をこうも無茶苦茶に壊さない。これは争ってその時壊されたのとは違う。ワザと壊している。そっちはどうだ?」

カウンターの奥を調べていたパンドラズ・アクターは鈴木に答えた。

「そうですね。確かに強盗にしては変です。売上にも手をつけておりません。お!気がついたようです。」

 

横にされていた老婆が目を覚ました。

「ん、ん、、、」

 

「バレアレさんですね?大丈夫、傷は癒えました。私はサトル・スズキと言う者。カルネ村のエンリの知り合いです。」

 

「カルネ村、、、エンリ、、、ハッ!ンフィーレア!孫のンフィーレアがっ!大変じゃ!ンフィーレアが拐われた!」

 

「落ち着いて!何があったか詳しく話して下さい。」

鈴木は無限水指を出し老婆に水を飲ませ落ち着かせた。

少し落ち着いた老婆は事の顛末を話し始めた。

要約すると奥で作業をしていたが物音がしたので出てみると若い女が孫を抱えて立ち去る所だった。声をあげようとしたがいきなり棒の様な武器で殴らそのまま意識を失ってしまった。

 

「なるほど、犯人はその女とみて間違いないでしょうね。

何か心当たりは無いですか…前に見た事があるとか…あるいは商売敵とか。」

 

「サトル様!わかりました!」

エンリが息を弾ませ飛び込んできた。

 

ーーーーー

 

「フードを深く被った数名が何かを抱えて共同墓地の方へ走って行ったそうです!」

 

「でかしたエンリ!そこまで足取りが掴めたら上出来だ。お婆さん、お孫さんは助けてみせますよ。」

 

「エンリちゃん、この人たちは知り合いかい?」

 

「お婆ちゃん、詳しい話は後でするけど心配しないで。サトル様たちならきっとンフィーレアを助けてくれるわ。」

 

「サトル様…。サトル様、後生ですじゃ。可愛い孫を、ンフィーレアをお頼み申します!」老婆は手を合わせ鈴木に頼んだ。

 

(孫は目の中に入れても痛くないって言うからな…)

「行くぞ!息子よ!悪者退治だっ!エンリ、ネムとお婆さんを頼んだぞ。それと近所の人に頼んでガゼフに連絡しておいてくれ、急ぎ墓地まで来るようにとな。」

 

「父上!暴れてやりましょう!」

 

(なんかカッコいい展開だぞ!人攫いなんかケッチョンケッチョンにしてやんよ!)

 

ーーーーー

 

エ・ランテル共同墓地。

悪の秘密結社ズーラーノーンは魔法詠唱者を中心にアンデッドなどを使い悪事を働くカルト集団である。その中でもトップ12の高弟が1人カジット・デイル・バダンテールは高揚していた。長きに渡る願いが今宵叶うのだ。その願いの為に全てを捧げてきた。失敗は許されない。絶対に、だ。

 

「カジっちゃーん、言われた通りガキは連れて来たんだから、ワタシとの約束もちゃーんと守ってよねー」

喋り方に特徴のある女が老人に話しかける。

 

「その呼び方は止めろと言うておろうが、、、全く。何度言ったらわかるのだ?"クインティアの片割れ"」

頭髪の薄くなった老人は半端諦めたように女に返した。

 

「わかった、わかった。アタシが悪かったよー。だからその嫌味な呼び名は勘弁してよ。無性に暴れたくなるからさー」

 

「ふん。わかればええんじゃよ。心配するな、事が済んだらちゃんと逃してやる。今後の組織の庇護も約束しよう。」

 

「ふーん、組織の庇護ねー。ンなもんは別にどーでもいーんだぁー。庇護なんか無くったってアタシは十分強いしさー、気ままに人さえ殺せれば幸せなんだぁー」

 

(英雄級の性格破綻者か、、、。こっちもお前に関わるのは金輪際御免こうむりたいわい。)

 

ーーーーー

 

「おいっ!墓地って何処だ?!」

「父上!知らなかったんですか?!」

「初めて来た街なんだぞ?知るわけないだろう。」

(あそこで、ところで墓地ってどっちですか?なんて聞ける訳なかろう?台無しじゃないか!)

「あ!アレは確かガゼフの部下!おい!ちょっと!」

非番で街ブラしていたガゼフの部下を見つけて鈴木は声をかけた。

「かくかくしかじかでな。墓地までの道順を教えてくれ。それと隊長に言って腕の立つのを寄越して欲しい。あとバレアレ製薬店に居る3人を保護してくれ。頼んだぞ!」

 

ガゼフの部下は大層驚いたが話を聞いて丁寧な道案内をしてくれた。恩人の一大事だ、疎かには出来ない。

 

迷った為にもう日が暮れかかっている。急がねば。

今度こそ2人は墓地目指して疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

私がオーバーロードを好きな理由のひとつに「勘違い」があります。
なのでこれからも色々な「勘違い」を盛り込んで楽しく出来たらイイなぁ、と思っています。

ありがとうございました。
また、よろしくお願いします。
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