骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

節目の50回です。
こんなに続けられるとは思ってもいませんでした。
これも偏に読んでくださっている皆様のお陰です。
ありがとうございます。

と言う訳で、今話はまとめ的な語りです。
毎回会話形式なので今更って感じですが
いつも通り、そんな事もあるかもなぁ、と楽しんでくださいね。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その50 語る。

「それにしてもお前にはいつも驚かされる」

ジルクニフは勢いよくグイッと杯を空けた。

毎度お馴染みの歓迎会と言う名の宴会が

中央広場で催されていた。

焚き火と酒が顔を熱らせる。

「心配を掛けてすまなかったな。しかし見ての通りエンリも孫も元気だ。ジルも仕事の事は忘れてゆっくりしていってくれ、ご馳走も何もないが自然なら売る程ある」

そう言って鈴木は明るく笑った。

「ああ、そうさせて貰うよ。しかしこの浴衣と言うのは楽だな、お前の国の服か?」

「元の世界では旅先の宿では客にそれを用意していてな、まぁ部屋着の延長みたいな物だ。もっとも俺はそんな身分じゃ無かったから話で聞いただけだがな」

「それで?その孫たちはこれからどうするんだ?あと母親のエンリも魔法が使える様になったのか?」

「それがこれもまたどう言う理由かエンリは魔法が使えん。少し顔色が悪くて死なない、だけだ」

「…だけってお前。そこが重要だろうよ、全く」

「まぁそう言われればそうなんだが。なっちまったのは仕方ないじゃないか、そうだろう?」

「あなた。この村では私たちの物差しでは測りきれませんよ?」

「そうだカルカの言う通りだ。ところで、苦しくないか?なんなら部屋でゆっくりしても良いんだぞ?」

鈴木は妊婦を気遣う。

「そうだぞ。男の話に付き合うのも退屈だろう。あっちで楽しめ」

ジルクニフはそう言って女子ばかりのサークルを指差した。

「じゃあ邪魔者は退散いたしますわね」

カルカは軽くウインクして立ち去った。

「気が効く嫁じゃないか…大事にしろよ?」

「…気楽な独り者に言われたくないよな。だがアレには随分と助けられている。正直に言うとな、今回の訪問も踏ん切りを付けてくれたのはアイツなんだ」

「だと思ったよ。お前は妙に優しい所があるからな、俺の顔を見られなかったんだろ?」

「妙にってのが引っかかるが、まぁそんなとこだ」

「それで…孫の事だったな。俺も爺さんも驚いてるよ」

「爺もか?」

「ああ、まるで言葉を覚える様に魔法を会得して行くんだ。それも属性の枠を越えてな」

鈴木は辺りを見回しフールーダを見つけて手招きする。

「陛下、お久しゅうございます」

「堅苦しい挨拶は抜きだ。爺、元気そうでなによりだ」

「今な、チビたちの事を話してたんだ。それで爺さんの意見も聞きたいってジルが」

「早速だが専門家としてどうなのだ?」

「ふ〜む…如何にせん他に例がありませんので比較は出来ませんが、100年に一度あると言われているプレイヤーの降臨に匹敵するかと」

「…それ程か!?」

「天才と言われたアルシェでもアレ程の速さで上達はしませなんだ。勿論、他の高弟たちにもそんな者は居りません」

「俺もなビックリしてるんだ。身体の成長だけじゃなく脳も成長してるみたいでな、産まれて数ヶ月なのにもう読み書きが出来る」

「なにしろ這うより飛ぶ方が早かったですからな、あれには驚きましたぞ」

「だったら安泰じゃないか、この村も」

「そう…簡単にはいかんよ、ジル」

「ん?何故だ?」

「考えてもみろ。世の中を渡るのに必要なのは知識や能力だけか?図書館の中だけじゃあ人は育たん」

「つまり?」

鈴木は指で地面に字を書いた。

「俺の国の文字で、優しいを意味する。こっちだけの意味は人、こっちは憂う、思いやるって事だ、2つ合わさって1つの文字になっている」

「ほう…」

「それでなこの文字にはもう1つ意味があって優れている、とも読めるんだ」

「お前の国の言葉は難解だな、1つの文字に2つ意味があるのか…」

「いや、全く違う意味は持たん。つまりな、人を思いやれる者は優しいとなり、そんな者は優れているという事だ」

「それを学ばせて行くと?」

「そうだ。チビたちはこれから永遠の時を過ごして行く、口で言うのは簡単だが実際に永遠なんてものは簡単じゃない。限りがあるが故に懸命に生きるが、限りがないとしたらどうだ?」

「張り合いが無くなる?」

「そうだ。生きる意味を見失ってしまう。そうすると死なないは死ねないとなり、苦痛となるだけだ」

「無限の地獄」

「やむを得ぬとは言え俺のせいでこうなった。息子や孫はそんな地獄へは行かせん」

ジルクニフはじっと目を閉じて聞いていた。

(不死に憧れが無かったと言えば嘘になる。だがその立場に居る者のこの覚悟はどうだ?俺の願いなど無いものねだりの子供のそれと変わらんではないか!)

「俺はお前に謝らなくてはならん様だ。このジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス、まだまだ未熟者だった」

「…陛下、ジル」

「爺、人を導くのにここで良い、などは無いのだな」

「お前…なに主人公面してんのよ?殴るよ?」

「台無しだな、サトル」

「ハハ、それでな俺も息子もまだ不死については学ぶことがが多いのだ。爺さんやキーノの方が先輩だからな」

「そうなのか?」

「ん?話してなかったっけ?俺や息子が居た世界は少々複雑でな、それについては割愛させて貰うが不死を自覚したのはこの世界に来てからだからついこの間なんだよ」

「そうなのか…初耳だぞ。ずっとそうなのだとばかり」

「いや違う。だから複雑なのだが、少なくとも俺は人間だった」

「聞けば聞く程、頭が痛くなる話だな。もっと飲もう」

「おいおい、大丈夫か?」

「な〜に、これしきの酒で潰れる程、ヤワではない」

「ジルは耐性の指輪をしておりますので」

「な〜んだ、そう言う事なら大丈夫だな」

「お前は以前、世界を手中に収めようとも魔王になろうとも思わんと言っていたが、今でもそれは変わらんのか?」

「変わらん。そんな事に興味はない」

「それはそのチビたちにもそうなのか?」

「それは知らん。俺の孫だがその人生まで干渉はせんよ、そこまで我儘じゃないんでな」

「ただ」

「ただ?」

「出来れば良い人生を歩んで欲しいとは思う。いつまでもこうして良い酒が良い友と楽しめる、そんな人生だ」

「抽象的だな」

「目標なんてそんなモノなんじゃないか?具体的な目標なんてその時に思いつく範囲内だろう、と思うぞ」

「どうもお前と話していると俺の人生がどんどん否定されて行く気がする」

「それは仕方ない。なにしろ俺は普通じゃあり得ない体験をしているのだから。さっきも出たプレイヤーって連中もそうだった筈だ」

「分かるのか?」

「分かるとも。だからこそだ。息子やエンリやネムや、ラナーやお前。出会ってなかったなら俺も世界征服に走っていただろうよ」

「出会い…か」

「そうだ、出会いだ。誰と出会い、何を感じるか。それは机上では学べん」

「だから敵対する者にも慈悲を与えるのか?それ程の力があれば間違いなく俺なら殲滅する」

「それはジルが失われた世界を知らんからだ」

「失われた世界?」

「うん。元の世界は人間の都合の良い様にだけを考えて色々と作り変えてきたんだ。結果、大きな歯車は壊されてしまって世界は失われた」

「具体的には?」

「虫が鬱陶しいからと世界中の虫を殺し尽くしたらどうなる?植物はその虫によって受粉しているのだぞ?またその虫を食料としている鳥なども居る、そしてその鳥を食っている動物も居る、小さい歯車がいくつも噛み合ってより大きな歯車を動かしている」

「なるほど」

「こんな種族は人間の害になるとか、こんな森など伐採して全て農地にしてしまおうとか。全ての中心に人間を置こうとするのは間違いだ。言い方を変えれば中心に居たいのならもっと周りを見なければいけない、自分はどの中心に居るのか、とね」

「そうではなかった、のだな」

「そうだ。結果、大地は荒廃し大気は汚れ、海は腐ってしまった。息すらまともに出来なくなった世界など想像出来んだろう?特別な装置がなければ死んでしまうのだぞ?」

「それでよく人間は生き延びていけるな?」

「人が人を消費する様になったのさ。一部が快適に過ごせる様に大勢の人を"資源"として消費する。俺自身もそうだったが両親もそうして死んでいった」

「それで奴隷制度にあんなに怒ったのか…」

「重ねてしまったんだよ。重なってしまったが正解かな」

「治世者として肝に銘じよう」

「よろしく頼むぞ。人間には欲がある。それこそが人間たる由縁なのかも知れんが、過ぎた欲はその身を滅ぼすのもまたこの世の定めさ。それはこの世界でも言われてきた事じゃないか?」

「確かに、似た様な話は伝えられている。戒め、だな」

「俺はロクに学校へも行ってないから学識もないし治世術も備わってない。だからそこはジルやラナーやケラルトに任せる。ドラウはリタイヤしたがな」

「あの若作りババアには向いてなかったよ」

「今はハーブ作りに精を出してるぞ。アロマオイルが売れてるそうだ」

「仕事をしてるのか?」

「そりゃそうさ。本人もその方が気兼ねなくて良いってな」

「で?爺は?」

「爺さんはそう言う訳でキーノとチビたちの教育係だ。貴重だぞ?中々見つからん人材だからな」

「これは壮大な仕事でしてな。これに比べれば魔法の深淵を探るなどはちっさいちっさい。なにしろ何百年、何千年先を見据える話ですからな」

嬉しそうに白い髭を扱く。

「そんな事を言うて…本音はチビたちが成長した暁には逆に学ぼうとしておるのだろう?」 

「付き合いが長いと厄介ですな、深読みされて」

「ハハ!そりゃギブアンドテイクだよ。俺は別にそんな事は気にしてない」

「それでその…亭主は?」

「ンフィーか?あれもまた肝が据わってると言うか根っからの楽天家と言うか。自分が死ぬまで嫁が若くて娘が可愛ければそれに越した事は無いそうだ」

「ある意味で仙人だな、悟り切ってるぞ」

「だろ?婆さんも呆れてた」

「いや、来て良かった!これからの俺の指針が見えた気がする」

「ジルも親になるからな」

「そうなんだ。親になるのだ」

「大変ですよ?親って」

ニコニコ顔のエンリが立っていた。

「2人のお爺さんが甘やかしてばっかりで全然言う事聞かなくなるし…ね?」

「「そんな事は無い」」

「お婆さんはお婆さんでひ孫なんぞ甘やかしてナンボじゃ、なんて開き直ってるんだから…」

「「それは分かる」」

「こんな調子ですからね」

「それで…エンリは…その…」

「どうなのか?ですか?」

「う、うん。そうだ」

「ん〜、そうだなぁ〜。今ん所は何も考えてないって言うのが正直ですね」

「………」

「だって私たちの先は長いんです。なのに今、バタバタしてあーだこーだと考えても、なんだろうなぁって。取り敢えず、普通の人の一生分を生きてからでも遅くないって思うんです」

「流石、母親だ。実に深い、そして理に適っている」

「褒めても何も出ませんよ〜」

「サトルよ。エンリなら大丈夫だ、確信した。この母親なら立派に娘たちを育て上げるだろう。そしてお前が最初に会ったのがこのエンリで本当に良かった、でなければ俺は今頃魔王と対峙してハゲているところだった」

「ハゲの家系なのか?」

「例えだ!例え!俺はハゲて無いっ!金髪だから薄く見えるだけだっ!」

「キーノちゃんの髪も金色ですよ?」

「エンリ!お前まで!男と女では量が違うのだ」

「じゃあ、ハゲてるんじゃん」

「サトル!表に出ろ!決闘だ!」

「陛下、既に野外ですぞ」

 

「あ〜!なんなんだ!この村は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

鈴木さんは飲めないのですが
雰囲気は好きだってどこかに書いてあった気がしたので
よく宴会場面が出て来ます。

それと、後出しでオリキャラ出しましたが
鈴木さんの飲食はありません。
期待していた人が居たら、ごめんなさい。
そうでなかったら、ご安心ください。

ここで終わっても良い様なラストでしょ?

へへ、どーしよっかなぁ〜。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
(あ!癖で書いちゃった!)
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