皇帝なんてどんな生活していたのか
知るよしも無いのですが
多分、忙しかったんだろうなぁとお察しします。
訳の分からない魔獣は居るしゾンビも湧く
そんな中で国を治めるんですから
並大抵の精神ではもちません。
温泉でも作っておけば良かったかな?
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「おはようございます!皇帝陛下!」
「ジルクニフ陛下!おはようございます!」
娘たちが次々と元気よく挨拶をしてくる。
宴会の翌朝、ジルクニフは酒抜きも兼ねて散策を楽しんだ。
「その"陛下"は止めてくれないか。どうも休暇が満喫出来んのだ、良ければジルと呼んでくれ」
「え〜、じゃあジルさんでは?」
「おお、それで良い」
「では、ジルさん。朝食の支度が出来ましたが、食堂で食べます?それともテラスで?」
「サトルはどうするのだ?」
「サトル様はいつも朝早くに食堂でリイジーさんやツアレさんと済まされてますので…」
「…そうか、では私も食堂へ行こう」
ジルクニフは少し残念そうにそう言った。
パンと珈琲、サラダとフルーツと言う村のいつもの朝食が並んでいた。
「健康的ですわね」
「爺もそう言ってたな……と、これは甘い!」
「朝採れた苺です、お気に召しましたか?」
「こんなに甘い苺は初めてだ!なぁ?カルカ」
「本当に。まるでお砂糖をかけた様」
「レイナースの話で村の果物は質が違うと聞いてはいたが…ここまでとはな。これも例の精霊とやらの加護か?」
「はい、そうです。リーダーはピニスンと申します」
「何?リーダー?他にも居るのか?」
「今は数名ですかね。偶に森に様子を見に帰ったりしますので…」
「あとで会いたいが可能か?」
「勿論です。お食事が済んだら案内しますね」
「カルカよ。見るもの聞くものが初めて尽くしだ。大袈裟ではなく見聞が広がる」
「それは良う御座いました。産まれてくる子にも沢山の物を見て多くの人に会って欲しいものですね」
「そうだ、その通りだ。井の中の蛙になってはいかん」
「ゲロゲーロ」
入り口辺りで下手な蛙のモノマネが聞こえた。
「もう少しマシな真似は出来んか?」
「おはよう、ジル、カルカ。昨夜はよく眠れたか?」
「俺は酔って寝てしまったが、カルカは遅くまで話し込んでいたらしい」
「ほう、それは興味深いな。相手は誰だ?」
「悪趣味ですよ?ガールズトークの相手と内容をお尋ねになるなんて」
「トップシークレットか?」
「ハイ」
「ウチの嫁には勝てんぞ?俺も舌戦には自信があったが連敗中だ」
「それぐらいが丁度いいってガセフが言ってたな」
「ところで今も話題にしてたのだが、ここの果物は絶品だな。それとこのドレッシング!名のある料理人か?」
「ツアレだよ。会ってなかったかなぁ」
「あの青い髪の男の嫁さんか?」
「ブレインな。そうそう」
「何処かで修行してたとか?」
「いや、俺が娼館で拉致られてるのを助けた」
カルカの顔が曇る。
「大丈夫、昔の話だ」
「そうですか…昨夜もお話ししていたのに、そんな事は少しも感じられませんでした」
「例の八本指か?」
「そうだ」
「では喜べ。先日、その残党の潜伏先が割れてな。一網打尽にしてくれたわ」
「そうか!」
「ああ、レイナースが指揮を取ったんだが、凄い剣幕だったそうだ」
「オンナの敵ですもの、当然でしょうね」
「そうか、そうか。おーい!みんな!ジルが八本指の残党狩りをしてくれたそうだぞ!」
「ち、ちょっと待て!サトル!」
「だってツアレだけじゃないもんな。アイツらに酷い目にあったのは」
娘たちがキャーキャー言いながら集まってくる。
その中にツアレも居た。
「ありがとうございます!これでスッキリしました!」
「あとでレイナース姉様にもお礼言わなきゃね!」
「もう…姉様、なんにも言ってくれないから」
「ね、姉様?」
「ああ、この子らは尊敬する同性は皆んな姉様って呼ぶんだ。一種の敬称だな」
(この村はやはり変わってる)
ジルクニフはそう思いパンを頬張った。
「パンも美味いな」
ーーーーー
「やぁ!初めましてだね!ジルクニフ!僕はピニスンだよ!宜しくね!」
「ず、随分とフレンドリーなんだな精霊って」
「俺もよく知らないがコイツが特別なんだと思うぞ」
「何だよ!サトルの友だちなんだから僕の友だちだろ?間違ってる?」
「素晴らしいわ!ピニスンさん!その通りだわ!」
「だよね!えっと…カルカだっけ?宜しくね!」
「友だちの友だちは皆んな友だちだ。私が強く推奨する理念です!」
(強く推奨されたアップデートしてデータ吹っ飛んだ事あるんだよなぁ)
鈴木は嫌な事を思い出してしまった。
「と、とにかく打ち解けて良かったじゃないか」
花の栽培で盛り上がる2人を残して鈴木たちは
広場に戻ってきた。
「ラナーも妊娠したそうだな」
「誘おうかとも思ったんだが遠回りになるんでな、こちらも妊婦同伴なので見送ったよ」
「それはそうだ。こんな所で産気づいたら大事だからな。それで法国の方はどうなった?」
「お前の脅しが効いて大人しいものだ。まぁ自慢の戦闘集団と至宝も失ったんだ無理もなかろう」
「じゃあなんだ、ほら、戦争してたエルフの国に攻め込まれたのか?」
「それは無い。そっちは種を蒔いたからな」
「種?」
「エルフっ子の提案でな。新しいエルフの国は素晴らしいとビラを撒いてやったんだ。そしたら若いのを中心に逃亡が流行ってな、軍は崩壊寸前だ」
「大丈夫なのか?新しい国に攻めて来たりしないだろうな?
不穏な動きがあればいつでも力になるぞ。なんと言っても新国はあの子らの希望だからな」
「また、親バカ根性を出す」
「しょうがないだろう、あの子らはウチの息子が助けたんだから…息子の責任は親の責任だ」
「その息子はキーノと良い仲だそうじゃないか。正真正銘の孫が出来るんじゃないか?」
「それは無理だと思ってるんだ」
「なんで?」
「キーノは12で止まってるんだぞ?」
「早い子ならもう出来るぞ?まだ、なのか?」
「聞けるかっ!いくらなんでも」
「いや、勘違いしてないか?俺が言ってるのは初潮の事だ」
「し、し、初潮!」
「声がデカい!」
「すまん」
「なんならウチのにそれとなく聞くように言おうか?女同士ならどうと言う事はないだろう」
「いや、それならエンリに頼む」
「後は…息子のムスコか。お前が創ったんだろう?そこの所はどうなってるんだ?」
「覚えてない」
「え?」
「だから、覚えてないんだって!男として創ったから付いてる筈なんだが…」
「なら問題ないだろう」
(あの頃、モモンガさんも作りなよって皆が言うから作ったけどまさかそれが子供を作るとかどうとか考えてもいなかったよ)
「なんだっけ?」
「ん?」
「息子の種族って言うのか?それよ」
「ドッペルゲンガー」
「それってどう言う特徴なんだ?」
「他人の姿を模写出来る、その場合元の能力の80%まで出せる」
「え!?お前にも化けられるのか?」
「可能だ」
「だったらお前が2人居るのとほぼ同じじゃないか!」
「まあ、そうなる」
「おいおいおいおい!聞いてないぞ!そんな事!」
「言ったって仕方ないだろう?」
「そりゃそうだが…」
「しかし、だ。だったらキーノ次第で初孫誕生だぞ?」
「だから、なんでそう…あ!そうか!」
「飲み込めたか?」
「息子が普通の人間の男に化けたら…」
「そう言う事だ」
「よし!爺さんとも相談してキーノを3つぐらい歳取らせられないか研究しよう!」
「お前、一応言っとくが2人の了解取ってからにしろよ?」
「あ、当たり前じゃないか!」
(この骨野郎…独断でやろうとしてたな…)
「いやぁ〜!実に意義のある会談だっなぁ!ジル!」
(やっぱり)
ーーーーー
「出過ぎた真似とは重々承知しておりますが、お考え直して下さい!」
「好機なのだ。今を逃すとこの先ずっと我が家は冷や飯を食べる事になる。お前の忠義は嬉しいが今回ばかりは聞けぬ」
「…しかし旦那様」
「もう言うな。これもお家再興の為。可愛い我が子の為なのだ」
ーーーーー
「レエブン卿が?」
「ええ、入った情報によると今朝早くに馬車を仕立てて向かったそうよ」
ラナー邸を訪ねていたラキュースは出された紅茶に手をつけた。
「…六大貴族と呼ばれていたけど、領地の大部分を没収されて最近はすっかり名前を聞かなくなっていたのよね。一時は
ザナックお兄様とも仲が良かったのだけれど」
「名前のある大貴族は全て解体されたのよね。レイブン卿は例外中の例外と聞いているわ」
「ジルがその手腕を高く買っているからよ。潰してしまうには惜しい人材だって」
「それが今になって何故カルネ村に?」
「…1つ考えられるのは、カルネ村ベビー」
「エンリちゃんの赤ちゃん?」
「そう。彼が超のつく子煩悩だって事は?」
「噂程度」
「お兄様の話では異常だって。私と政略結婚させるつもりだったらしいわ」
「本当!?」
「ええ、だけど彼の予想外の展開で王国は帝国と和平し、私は王宮を出た」
「だけどジルさんは評価してるんでしょ?だったら待ってれば…」
「そりゃあ今では私たちはジルの人柄が良く分かっているけど彼はそうじゃないもの」
「じゃあ、そのジルさんの婚礼パーティーでカルネ村の存在感を感じ取って…」
「彼らしいわね。ある意味で流石だわ。あのパーティーでのエンリちゃんの存在感は半端なかった、そりゃそうよね各国の元首と友だちの村長なんてあり得ない」
「まさか!赤ちゃんの1人と息子さんを!?」
「5人も居るんですもの。1人ぐらい、と考えるのも頷ける。サトルさんはエンリちゃんの事を娘だと公言して憚らない。だったらエンリちゃんの子供はサトルさんの孫、その1人を貰えば当代一の権力者の血縁に成れる」
「どうする?ラナー」
「ん〜。それぐらいの事なら大した事は無いのだけれど…少し気になる事があるのよね」
「気になる…事?」
「あの事があって私も行きたかったのだけれど、この身体でしょ?クライムも煩いし、出掛けられなかったのよね。それでね、ちょっと調べたのよ」
「いつも思うんだけど、ラナーはどうやって調べるのよ」
「大した事ないわ。人が集まる所に情報は集まるの。色々な状況から推測して少し呼び水を撒けば簡単よ」
「それでね。赤ちゃんがどうも"普通"じゃないみたいなのよね」
「普通じゃない?」
「そう、普通じゃない。だけど分かったのはそこまで」
「気になるわね」
「でしょ?」
「行く?」
「それが駄目なんだって。今回のクライムはとっても頑固で…初めてじゃないかしら私に逆らったのって」
「彼が!?」
「言う事聞かないなら縛るって…まあそれはそれで案外良かったけれど…」
「ちょっと何言ってるのか、わからない」
「ラキュースが行って来てよ。どうせ暇なんだし」
「失礼な!」
「じゃあ忙しいの?」
「………ヒマ…よ」
「じゃあ決まりね。ヨロシク!」
ーーーーー
「と、言う訳で行くわよ!」
「なんで俺らも行かなきゃなんねぇんだよ?」
「「はげ同」」
「ちょっと何よ!随分と冷たいじゃない!」
「だってよぉ…ホレ…例の事件で…その…キーノがよぉ」
「「軽口が叩けない」」
「そうそう、コイツらの言う通り。流石の俺様もガハハって笑い飛ばす訳にゃいかねーべ?」
「もう!意気地なしね!苦しい時こその友だちじゃない!」
「そりゃそうだけどよぉ…」
「アンタたちもそうよ!?普段は冗談ばっか言ってくせに!」
「「面僕ない」」
「もう、イイ!私1人で行くもん!いつまでもそうやってグジグジやってればいいのよ!」
ラキュースは怒って出て行ってしまった。
「どうする?」
「キレっぽい鬼ボスだけど」
「今回のはちょっと違う」
「だよなぁ〜」
「ほっとけば暴走必至」
「手が掛かる」
3人はヤレヤレと言いながら支度を始めた。
お疲れ様でした。
WEBでは死んでしまいましたが
書籍では存命でしたレイブン卿。
出て来て貰いました。
六大貴族の解体は戦後の財閥解体みたいなものかな?と
勝手に考えました。
参勤交代も候補だったのですが
話が広がらなかったので見送りました。
珍しく次回の予告ですが
ジル君が語ります。
ウォーキングしてると語りかけてくるんですよ、彼。
じゃあ、またよろしくお願いします。
ありがとうございました。