すいません!
予告で言ってた通りに展開しない様です。
ちょっとだけ盛るつもりが…。
兎に角、読んでみてください!
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「珍しいお客様だね」
巨大な龍は上半身を持ち上げた。
「キーノ、それに…」
「パンドラズアクターです」
「これは失礼。そうだったね。それでこんな所までわざわざやって来て何用だい?」
ーーーーー
「あら?お父さんとジルさんは?」
「大自然と闘うって湖に」
「…はぁ、全く大袈裟ねぇ。ただの釣りでしょ?それも餌も付けないで、ひたすらに竿を垂れてるだけの」
「ジルさんもそれは言ってたのですが、サトル様がそれこそが自然との勝負だって。餌を付けて釣り上げるのは誰でも出来るからって」
「じゃあお昼には帰るわね?」
「ツアレさんがお弁当作ってましたよ?」
「…そう。じゃあ長期戦ね。あと…小悪魔たちは?」
「ネムを先頭に探検だってウーやクーも連れて」
「はぁ〜、あの子たち女の子だって言うのにドンドンやんちゃになっていくわね。毎日毎日泥だらけで帰ってくるし、よくあれで怪我しないわ」
「それはヒールをかけてるからでしょう?」
「だったらクリーンも覚えて欲しいのよね、お洗濯だって大変なんだから…」
「そんな生活魔法は女子供の魔法だってサトル様とお爺ちゃんが」
「女だし子供ですっ!もう!あのお爺ちゃんたちは仕方ないわね!」
そこへ別の娘がやって来た。
「村長さん、お客様です」
ーーーーー
「実はな…私たちは結婚したのだ」
龍は驚いて目を見開く。
「…馬鹿な!そんな話は聞いた事が無い!」
「それでも事実です。本日はキーノがどうしてもと言うのでやって来た次第です。それに別にお伝えしたい件もありましたしね」
「君は…その…」
「貴方たちが呼ぶところの従属神ですよ、ハイ」
「キーノの素性は知っているのかい?」
「勿論」
「長く生きているが…驚いたよ」
「反対すると思っていた」
「まさか。人の恋路を邪魔する程、僕は意地悪じゃないよ。それにドラウディロンの様に種族を越えた愛もあるしね」
「随分とイメージとは違ってソフトですね。ではもう1つの件もお話ししましょう」
「そちらが本題だろう?」
白銀の竜王は不敵に笑った。
ーーーーー
「おい。これのどこが自然との格闘なのだ?」
かれこれ2時間もただ竿を垂らしていたジルクニフは
痺れを切らせて問い詰めた。
「分からんか?大地の息吹を感じるだろう?」
鈴木は何を言っているのだと言う顔で答える。
「適当な事を言うな。何故、釣りで"大地の息吹"なんだ」
「例えばの話だ。大体、そんなイライラしてたら釣れる魚も逃げちまうぞ?それとも腹が減ったのか?」
「ったく…ああ言えばこう言う…。しかし少し減ったきたな、食うか」
「バスケットにツアレが作ったサンドイッチがあるから食え。俺は要らん」
「珈琲ぐらいは一緒にどうだ?」
「頼む」
ジルクニフはいそいそと昼食の用意をする。
「皇帝だからそんな事は出来んと思っていたが意外だな」
「餌もまともに付けられん奴に言われたくないぞ」
「こりゃあ一本取られたな」
「ところで、さっきの白い蜥蜴小僧は何者だ?」
「ああ、リザードマンの集落が向こう岸にあってな。そこの族長の息子だ。珍しい色だろ?」
「お前、そんな所にも知り合いが居るのか…」
「ちょっとした縁でな。偶に干物とか持って来てくれるんだ」
「スローライフ…か」
「ん?」
「なんでもない」
ジルクニフはサンドイッチを頬張った。
ーーーーー
「見てみろ。もう既に先客が居るではないか」
豪華な馬車を指差してレイブンは従者に言った。
(こんな噂は広がるのが早いのだ。うかうかして気が付いた時には皿は空っぽだ)
「お待たせしました。村長が応接室でお会いします」
「娘。手間を掛けたな。礼を言う」
レイブンは極力丁寧に振る舞った。
ここで印象を悪くするのは悪手だ。
「誰だ?あれ」
ブレインはカゼフに尋ねた。
「エリアス・ブラント・デイル・レエブン。元の六大貴族の1人だ」
「そんな大層なオッサンが何の用だ?」
「知らん。だが、中々のキレ者と言う話だった」
「いいのか?サトルさんもジルさんも釣りだろ?」
「別に武力でどうのこうのじゃないし、エンリで問題無いだろう。それに皇帝が来ているのは知らん筈だ」
「お待たせしました。カルネ村の村長をしています、エンリ・バレアレです」
(随分と顔色の悪い娘だな。パーティーで見かけた時はそうは思わなかったが…)
「こちらこそ。突然お邪魔してすまなかった。申し遅れた私はエリアス・ブラント・デイル・レエブン」
「存じております。お話しは出来ませんでしたがパーティーでチラッとお見かけしましたし」
「ハハ、エンリ殿はお顔が広いですからな、あの夜は次から次に顔繋ぎが現れて大変だったでしょう」
「そんな…こんな辺境の村の小娘が…舞い上がってしまいました」
(その辺境の村娘が周辺の国家元首と友人だから訳がわからんのだ)
「ごほん、それで付かぬことを聞くが…他にも誰か来ておるのかね?」
「はい。父の友人がご夫婦で遊びに来ています」
(父?今、父と言ったか?確かこの村はこの娘と妹を残し法国に全滅させられたと聞いている。義父…か?いや、それならそう言う言い方をする…)
レイブンは頭を高速回転させる。
しかし明確な正解には辿り着けない。
「…あの…どうかされましたか?」
「いや!失礼した。そ、そうだ!お子さんが産まれたそうでが?それも5人も!」
エンリはパッと笑顔になる。
「そうなんですよ!5人もいっぺんだったので、もう死ぬかと思っちゃいました…実際死んだんですけどね」
「え?」
「え?」
「じ、実はね、私にも息子が1人居て…そりゃあもう可愛くてね!」
「そ、そうなんですか…」
(一体この人、何の話に来たのかな?)
「単刀直入に言おう。娘さんを1人、我が家に頂けないだろうか?いや、領地の大部分を没収されたとは言え、このレイブン家、まだまだ衰えてはおらぬ故。決して苦労はさせぬと誓う」
エンリは紅茶を吹きそうになった。
(ちょ、ちょ、ちょっと待って!まだ赤ちゃんよ!そりゃあ空は飛んでるけど…)
「どうだろう?レイブン家とこのカルネ村に血筋が出来れば、互いに損のない縁談になると思うんだが。聞けば村の再興がライフワークだとか。だったら我が領地からも移住させよう。一気に村の人口は増えて活気付くぞ?無論、増えた人口の色々なサポートも約束する。どうだ!?」
ここぞとばかりに畳み掛けるレイブン。
(こう言う時に妙な駆け引きは無用!)
「ママ!ただいま〜っ!」
フワフワ浮かんだ幼児が5人、窓の外から声を掛けた。
ーーーーー
「プレイヤー級の赤子が5人も産まれたぁ〜っ!?」
白銀の竜王は露骨に狼狽えた。
かつて魔人と対峙した時でさえ、これ程の醜態は晒さなかった。
「お、落ち着けツアー!」
キーノが慌てて宥める。
「これが落ち着いて居られるか!100年も経ってないのに一度に5人も現れたんだぞ!?」
「いや、だから、現れたと言うか、産まれたのだ」
「同じだ!こうしては居れん!直ぐに殲滅に行かねば!」
「だから落ち着けと!お前は幼児を殺すのか?それで世界の理とやらが保てるのか?この人非人!」
「僕はドラゴンだ!人じゃない!」
「可愛い姪っ子に指一本でも触れたら、この国ごと灰にしますよ?」
パンドラズアクターは凄む。
「ぱんくんも待って!2人とも冷静になれ!頼む!」
睨み合う2人、アタフタとするキーノ。
沈黙が流れる。
「キーノ、すまない。私も少し興奮した様です」
「僕も同じだ。キーノ、すまなかった」
キーノは深く安堵の息を吐く。
「いいか、よく聞いてくれ。今までのパターンとは絶対的に違うんだ、わかるか?」
「説明してくれ」
「うむ。これまでは成人したプレイヤーが突然現れ世界を牛耳ろうとした。そうだったな?」
「その通りだ。だから僕が戦ってきた」
「だが今回は人間の娘から産まれた子だ。それが偶々そうだと言うだけだ」
「今までのプレイヤーも元は人間だった。だが強大な力を持ったために暴走し始めたのだ。今回もそうかる可能性がゼロとは言えまい?」
「エンリは人間だ…その…正確にはアンデッドだかな。そのエンリが母として未来永劫その子と共に居るのだ、暴走はありえん」
「保証があるのか?」
「私だ。私もアンデッドだが暴走はしない、違うか?」
「…それは」
「今回の事は私にも関係がある。寧ろ、私のした事で起こったと言ってもいい」
「キーノは何も悪くないのです。あれが最善でした」
「ありがとう、ぱんくん。でもやっぱり無関係じゃないんだよ」
「ツアー殿。これは脅しでも何でもなく申し上げるのですが。万が一にも不測の事態が起これば、私は魔人となりこの世界を滅ぼし父上やエンリ、キーノと新世界を創造します。付け加えれば私の種族はコピー能力があるので貴方の姿も既にコピー可能です、勿論その能力もね」
「つまり、勝ち目は無いと」
「どう取って頂いても結構です。ただ、父上も私もキーノもエンリも戦いは望まない。それは覚えておいて下さい」
「ツアー、よく考えてくれ。お前は竜王だが不死では無い。この先何百年何千年と守り続けられないのだ。世界の秩序は私たちが必ず守る、約束する」
「不死…か」
白銀の竜王はそっと瞳を閉じた。
ーーーーー
「よ、幼児が空を飛んでいる!?」
レイブンは酷く狼狽していた。
王国が帝国と和平を結んだ時でさえ、これ程は驚かなかった。
「アンタたち!ちゃんとドアからっていつも言ってるでしょ!」
「ふぁ〜い」「あ!じぃじだ!」
「じぃじ!おかえり〜っ!」「「おかえり〜」」
「レイブンさん。丁度、父が帰ってきました。先程のお話しの続きは父も同席でよろしいですねっ!」
エンリは早口でそう言うと部屋から飛び出した。
「何が起こっている?」
レイブンはまだ窓の外をじっと見つめていた。
ーーーーー
「よくある話だ」
ジルクニフは熱い蒸しタオルで顔を拭いながらそう言った。
「今だから言うが私がラナーと結婚させられそうになったのは9つの時だったんだぞ」
「それはやはり?」
「政略結婚だよ。場合によっては産まれて直ぐに許嫁に、なんて話も聞く」
「なんだそれ?でもまぁ、昔からどこでもあった事らしいから別にこの世界独特って訳でもないか…」
「もう!何を納得してるんですか!なんとかして下さいよぉ」
「よしよし、わかった、わかった。俺が行ってキッパリ断ってやる」
「まぁ待て、ここは私が行ってやろう」
「ん?」
「レイブンだろう?少し興味がある男でな」
「…まぁ、ジルがそう言うなら俺は良いが…エンリは?」
「ちゃんとお断りしてくれるなら、それでイイです」
「よし、決まった。暫くここで待っててくれ。行ってくる」
ーーーーー
「久しいな、レイブン卿」
そう声をかけられ振り向いたレイブンは、またも仰天する。
「…皇帝陛下?」
「今は休暇中だ。ジルで構わん」
「村長が言っていた父の友人と言うのは…」
「ハハ。その通り、私の事だよ」
レイブンは激しい動悸を抑えながら言葉を繋ぐ。
「い、一体全体この村はどうなっているのです?特別行政区だと言うのは存じております。しかし…それだけではないでしょう?来た時に元王室戦士長ガセフ・ストロノーフの姿も見えました。そしてお忍びで陛下まで…。でも、でも、そんな事も吹き飛ぶ物を見ました!幼児が、幼児がこう…フワフワと空中に…、ほらそこの窓の外を…」
一気に捲し立てるレイブンにジルクニフは微笑みながら相槌を打ち話を聞く。
「まぁまぁ一旦落ち着け。ほら珈琲でも飲んで。ここの珈琲は美味いぞ?なんと言っても私が豆を持ってきてやったんだからな」
ジルクニフは笑い出す。
(あの鮮血帝が笑っている?)
「見た物は仕方ない。順を追って話してやる、但し他言は無用だ。良いな?」
とたんに笑みは消え鮮血帝ジルクニフが現れる。
「と言う訳でな。このカルネ村はサトル・スズキを中心にしてしっかりと纏まっている、言わば一枚岩だ。これを崩そうとしてはいかん、我々はカルネ村を守護しているのだ」
「皇帝陛下が辺境村を守護…」
「私だけでは無い。お前もよく知っている元第三王女ラナーや竜王国元女王ドナウディロン、そして我が妻の故郷ローブルもそうだ。皆でカルネ村を守っている」
「何故…そこまで?」
「ヤツに強大な力があるからと言うのは否定せん。実際、私も最初は上手く取り込もうとしたからな。だがな、馬鹿らしくなって止めたんだ」
「馬鹿らしく?」
「そうだ馬鹿らしくなってだ。考えてもみろ、上手く取り込んだとしてどうなる?向こうは何千年も生きられるのだぞ?私は死ぬまでご機嫌取りだ、少しでも機嫌を損ねてみろ、魔法一つで消し飛ぶんだぞ。これが馬鹿らしくなくて何が馬鹿らしいのだ」
「それで従う方に舵を取った…」
「違う、違う!何故、従わすのと従うの2種類しか無いのだ?それでは人生がつまらんではないか」
「…人生…でございますか?」
「そうだ、人生だ。私たちがどんなに頑張っても天下を取って居られるのは長くて数十年だ、下手をすると数年かも知れん。違うか?」
「確かに…しかし、しかし、子の代に…」
「それだよ、レイブン卿」
「………」
「未来だよ。将来では無く、未来。先の先だ。それを夢見て今を楽しむのだ」
「お前は我が子可愛さでサトルの孫と婚姻を結びたかったのであろう?私の関心を引くためにな」
「!決してそのよ…」
「良い、良い。分かっておる。そしてそれを責めようとも思っておらん。だがそれで本当にお前の息子は幸せになったと言えるのか?息子が死ぬ間際に"あぁ幸せだった"と言えるか?息子のそのまた息子にも同じ様に政略結婚を仕向けるつもりか?お前の一族は未来永劫好きな者とは結ばれんのだぞ。それは一体何の呪いだ?」
「しかし…それがお家の為。領主家としての宿命です」
「領主としての責任はあるが、宿命などは無い」
「な!」
「私たちは民を導く地位にある。その責任は重い、だが宿命などは背負った覚えはない。わかるか?私が皇帝などをやっているのは私より優れた者がいないからだ。同じ様に私の子や孫が私同様に優れていると言う確証などない。それを信じているのはそう信じたいだけの親のエゴだよ。よくあるだろう?ウチのはやれば出来る、馬鹿を言うな、だったらやってみせろ、出来もしない者を待つ方の身にもなれって事だ」
「無能者は去れ、と」
「なぜ、そうYesと Noしかないのだ?呆れるぞ。適材適所と言うではないか。人を導くには足らないが物を作るのは秀でているかも知れんぞ?何が何でも、とは考えずにもっと柔軟に対応する事がこれからは求められるのだ」
レイブンは愛しい我が子の顔を思い浮かべて涙していた。
「私はな。お前を買っておる。失望させてくれるな。六大貴族から領地を没収したのはその後の対応を見極めたかったからだ。表立って反旗を翻す者や水面下で暗躍しようとする者、窮地に陥ると人間は本性を出すからな。その点お前は減らされた領地から重税を取る事もなく領民と団結して領地を盛り立てようとしている」
レイブンは絶句する。
「なんだ?それぐらいは承知しているぞ?私を誰だと思っている」
「お、恐れ入りました」
「なぁ、レイブン卿よ。立派な男に鍛えよ。そしてあの孫たちの方から、どうぞ貰って下さいと頼む様にしてやれ。それが父親の仕事だ。レールは引いてやるのではない、引く力をつけてやるのだ」
「ジルクニフ皇帝陛下…」
「泣くでない。私も今回腹を割ってお前と話せて良かったと思っている。これからも宜しく頼む」
「有り難きお言葉。このエリアス・ブラント・デイル・レエブン、生涯の進むべき道が見えました」
「どう思う?」
「頼んでおいてナンですけど、カッコつけ過ぎ?」
「だよな」
隣の部屋でわざわざラピッドイヤーまで持ち出して聞き耳を立てていた父娘はコソコソと部屋から出て行った。
お疲れ様でした。
もっとこう…スマートにお説教のつもりが…。
長台詞って難しいですね。
それと。
キーノちゃんは転移魔法が使えるので
今回は鈴木さんのアイテムで強化して
パンドラズアクターくんも連れて行ってます。
と言う説明が抜けてます。ゴメンなさい。
じゃあ、またよろしくお願いします。
ありがとうございました。