骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

ツアーさん絡みの回です。

どう絡むかはお楽しみに!

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その53 笑顔。

「なら、いっそ出向いてやろうじゃないか」

パンドラズアクターたちの報告を受けて

鈴木はあっさりと答えを出した。

「それは良策とは思えません。今回、隣にキーノが居て尚あの頑固っぷり。またこちらから出向くとなると変に刺激する事になります」

「そこだよ。寝た子を起こさぬ様にしてきたが、これからの事を考えるといつまでも息を潜めてやり過ごす訳にはいかん。何しろ、こちらは何も悪い事をしていないのだからな」

「…しかし」

「いや、案外サトルの言うのが正解かも知れんぞ。正義は我に有りと構えるつもりは無いが、少なくとも交戦的に事を運ぶ気もまた無い。ならば大将同士がサシで腹を割って話し合うのはやってみる価値はある」

「ジル殿まで…」

「キーノはどう思う?アイツと付き合いが一番長いのはキーノだからな」

「私もお義父さんの意見に賛成です。ぱんくんは違いますが、これまでの従属神…NPCと言うのですか…は全てが魔神となりました。それがツアーのトラウマとしてある可能性はあります。しかしプレイヤーとしてのお義父さんとなら」

「しかし父上が単身乗り込むのは…」

「誰が単身と言った?」

鈴木はニヤリとして続ける。

「皆んなで出かけるのだよ。我が家族をその目で見極めて貰おうじゃないか。その上で尚、私たちを"害虫"と見做すならこちらも出来うる限り反抗させて貰う」

「「「全員で!?」」」

「ち、ち、ちょっと待て!私は話し合いとは言ったが全員と言うのは…」

「そうですよ、お義父さん!チビちゃん達も連れてなんて危険過ぎます!」

「成る程、そう言う事ですか…」

何故かパンドラズアクターだけが深読みする。

2人は同時にパンドラズアクターを見る。

「息子よ。お前には看破されてしまったか」

パンドラズアクターは得意顔で大袈裟に両手を広げポーズを決める。

「あ、カッコいい…」キーノはウットリする。

「お前ら変だぞ!ちゃんと説明せんか!」

ジルクニフは苛立ちを覚える。

「これは失礼。つまりはこう言う事ですよ。父上はツアーの正義感に賭けようとしているのです。その正義感が強ければ強い程、女子供には手を上げられない。また目前すで激昂も出来ないでしょう?自然と穏やかに話し合いに応じる」

「その通り。後は俺の進め方次第だ」

「なにか策はあるのか?」

「ない」

「無い!?今までの話は何だったんだ?」

「策士、策に溺れる。生きてきた時間は向こうの方が遥かに上だ、下手な策は見透かされるだけだ。ならば両手を広げて全てを見せてやろう。大丈夫。私の家族や仲間に邪な者は誰1人居りはせん」

鈴木は自信満々に言い切る。

 

ーーーーー

 

「なんでそんな大事な事を1人で決めちゃうんですかぁっ!」

「お、落ち着け!な?エンリ、話せば分かる」

「産まれたての赤ん坊をそんな竜王だかなんだがの前に連れ出すなんて!ジルクニフさんもジルクニフさんです!なんで止めてくれないんですかっ!」

「お、俺はだな…その…良い案…」

 

「な?村長の迫力は半端ねぇーだろ?」

ブレインはレイブンに得意顔で話す。

「実力者2人を頭ごなし…」

レイブンは信じられないと言う風にただ見守る。

 

鈴木とジルクニフはキーノに宥める様に

目配せする。

「あのな…エンリちゃん…その…隠れていてもだな…」

「キーノちゃんは女でしょう!母親の気持ちを察して頂戴っ!」

「…撤退する」

「「早っ!」」

 

「まぁまぁ、妾も一緒に行くから。同族だし下手な真似はさせんて」

ドラウディロンの助け舟。

「言ってはナンですが、ドラウさんは戦えないじゃないですか!」

「…沈没じゃ」

 

「エンリはいつもあんな風なのか?」

カルカは唖然としてガセフに尋ねる。

「う〜ん。サトルが独断専行する時はああなるけど…今日は一段上の攻撃だな」

「チビちゃんたちが絡んでるからねー。多分、私たちじゃワンパンだねー」

クレマンティーヌは諦め顔。

 

 

「エンリ、あの…」

「あなたは黙っといてっ!」

「うわぁ〜!ンフィーさんてばハナから戦力外」

「お姉ちゃん、なんとかしてよ」

「しょーがないわねぇー」

セリーがツアレに頼むと仕方なしに出馬する。

「エンリちゃん、それぐらいにしてあげなさいな。チビちゃんたちが怖がるわよ?」

「だってぇ〜ツアレさん…」

 

「「止まった!」」

 

「流石、ツアレさん。ここ1番の押しが違うわね」

「圧が凄い」

 

「…もう!娘たちには指一本触れさせませんからねっ!」

 

鈴木たちはようやく去ったエンリ台風に安堵した。

 

ーーーーー

 

「なんかタイミングが最悪じゃねぇーか?」

ガガーランはただならぬ空気に身を引き締めた。

「これは戦場の匂い」

「油断出来ない」

双子忍者も身構える。

結局、薔薇の面々は揃ってカルネ村へ行く事になり

村の入り口に来たのだが…。

「おおー!ラキュース!それにお前ら!」

キーノが嬉しそうに駆け寄る。

「ちょっとキーノ、何の騒ぎ?またどっか攻めてくるの?」

「…う〜ん。あのな…今回はウチが攻め込むんだ」

「そっかぁ!じゃあなキーノ、達者でな!」

「グッバイ、キーノ」「アデュー、キーノ」

ガガーランと双子はクルリと反転して帰ろうとする。

「ちょっと!来たばっかじゃない!」

慌てるラキュース。

「あのなラキュース。いい事教えといてやるよ。火の中の栗を拾うと火傷するんだ」

「巻き添え必至」「またもや死闘」

「勘違いするな、今度は巻き込まん。お前らには留守番を頼みたいんだ」

キーノは出来るだけ丁寧に事情を説明する。

ここで鴨に逃げられる訳にはいかない。

 

「…そう。キーノも大変ね…だったら任せて!」

 

見事に鴨は葱を背負ってくれた。

 

(期待を裏切らないよな)

3人の心中は見事にシンクロした。

 

ーーーーー

 

「コラコラ。人様のお家に行ったらお行儀良くしなきゃ駄目だぞ?」

「あ〜!走っちゃ…飛んじゃ駄目だって!」

「じぃじ!見て見てぇ!本当のドラゴンだよ!」

「火とかブォーって吐いちゃうかなぁ?」

「ウロコ?すっごく硬い!かっちんこっちん!」

「この鎧カッコイイ!ママー!ちょっとだけ着てもいい?」

「ドラゴンとリザードマンって親戚?」

 

「…………」

 

「キーノ。あれ、怒ってるんじゃないですか?」

「う〜ん。ビミョー…怒ってる様にも見えるし、呆れてる様にも見えるよ」

 

「ゴホン!あ〜、なんだ、その。すまんな!家族で急に押しかけちゃって…」

「これは奇襲と受け取っても良いのかな?」

「またまた〜。大袈裟なんだからぁ〜」

「大袈裟?今まさに私の背中やら翼の上に乗っかっているこの小悪魔たちに私は攻撃を受けているのだが?」

「こんな可愛い悪魔が居るか。他愛もない子供の遊びじゃないか、大人気ないぞ?」

「僕の大切な鎧を動かしているのも?他愛もない子供の遊びだと言うのかい?」

「ウチの孫は凄いだろ?俺もビックリだ」

「アレは僕以外には動かせない仕様なんだけどね」

「じゃあ動かすの止めればイイじゃないか」

「それが止まらないんだよ!僕より強い魔力で動かしてるんだ」

「そんな訳ないじゃないか…いくらウチの孫が凄いからって一応竜王のリーダー格のアンタより強いって…」

「一応言うな」

「君が母親かい?少し静かにする様に言って貰えると助かるんだがね」

「ちょっと!アンタたち!いい加減にしないと怖〜い龍のおじさんが怒ってるよぉ〜!」

「そう言う叱り方は感心しないなあ」

「チッ…口うるさいドラゴンだなぁ」

「今、舌打ちした!?チッって舌打ちしたよね!?」

「まぁ落ち着けツアー・ツベルクリン」

「ツァインドルクス=ヴァイシオンだっ!1文字も合ってないじゃないかっ!」

「チッ…身体はデカいのに細かい奴だなぁ」

「また舌打ちしたな!聞こえたぞ!チッって聞こえたんだからな!」

「まあまあツアーさん、父も悪気があるのではないので」

「どう取っても悪意に満ち満ちているだろう!」

「どうしたと言うのだツアー、鉄分が足らないんじゃないか?」

「キーノ!君まで…。そうか!分かったぞ…君たち皆んなグルだな。そして僕を精神的に攻撃して勝つつもりなんだ」

「父上、引きこもりも拗らすと怖いですねぇ。私もあのまま宝物殿に篭っていたらと思うとゾッとしますです」

「僕は引きこもりなんかじゃないっ!これでも昔は冒険者だったんだぞ!」

「うわぁ〜、ドラゴンのおじさん、スゴーい!」

「冒険してたんだぁ〜」

「カッコイイよね〜」

「やっぱ、火とか吐いて悪者やっつけてたの?」

「火、吐いて〜」

重なる精神攻撃に不覚にも五つ子に癒されてしまう竜王を鈴木は見逃さなかった。

「な?ウチの孫たちは天使だろ?」

「ウッ!しまった!」

「素直に認めろよ、ツアー」

ツアーは思い出していた。

かつての仲間達との旅を。

こうしてワイワイガヤガヤと取り止めもない話で盛り上がったあの日を。

「あんな日はもう来ないと思ってたよ」

ボソリと呟く。

「ツアーよ、先の事など誰にも分からんのだ。だからこそ面白いんじゃないのか?明日は何が起こるんだろう、冒険していた時そうは思わなかったか?」

「だが…僕1人を置いて皆逝ってしまった…」

「理由があったんだよ。そう、皆んなそれぞれの理由があったのさ。決して置いていったんじゃない」

「君に何がわかる!」

「分かるさ。俺も似た様なもんだから」

「君には息子や家族が居るじゃないか…」

「だからだ、だからなんだよツアー。明日を大切にしたい」

「そうさ。リアルと言う世界から来たプレイヤーたちは皆んな仲間と一緒だった…最初は良かったさ。だけど、ドンドンと仲は悪くなり仲間割れを始める者や世界を蹂躙しようとする者になった。だから僕は守ったのさ、仲間たちと旅をしたこの世界をね。そして決めた、この命ある限り守り抜こうってね」

「ほんの少しのボタンの掛け違いなんだよな。俺が1人で来ていたなら、もしエンリと出逢ってなかったら、もし、もし。だけどなツアー、今はそうじゃない。そしてそれは永遠にそうじゃないんだ」

「決して魔王や魔神にならないと誓えるか?」

「俺は神などを信じないが…そうだな。我が息子に、我が娘に、我が愛する者全てに、誓おう」

「フッ…これは作戦だったのかい?家族仲の良い所を僕に見せて弱気にさせる」

「ハハ…そこまで性悪じゃない。ただ俺の家族を見ればその本質は見抜けると思っていたよ、何百年も生きてきたんだろう?」

「随分と買ってくれたものだね。確かに最初に入って来た時のあの子たちの屈託の無い笑顔で殆ど勝負はついていたがね」

「最強だろ?」

「子供の笑顔に勝る武器などありはしないさ」

 

「お父さん」

「ん?なんだ?」

「せっかくだからツアーさんを村に招待しましょうよ」

「おお!それは良い!どうだ?どうせ暇なんだろ?」

 

「サトル。君はもうちょっと口に気をつけた方が良いね。

エンリ、良いのかい?」

「勿論です!こう見えて村長さんですから!」

 

「よーし!じゃあ凱旋だ!皆んな驚くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

実際は国の重鎮なので、独りぼっちではないのでしょうが
部屋で寝そべっている姿や
見える所に飾ってある鎧で
そうなんじゃないかなぁと。
作者的には天使ちゃんたちは
この場面で必要なキャラだったのです。
鈴木さんと息子さん、エンリとキーノ。
では場面が寂しかった。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
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