予告通り、Part2です。
普段は滅多に出てこないンフィーレア君が登場します。
頼りない様で実は芯がある。
エンリに敷かれているフリだけかも知れませんよ?
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「はてさて…困ったのぉ〜」
『身体測定のお知らせ』と書かれた紙を机に置き、
ドラウディロンは溜息をついた。
「こんな事なら広場で会った時にツアーに聞いておけば良かったのぉ」
国の為とは言え幼女の姿で卑猥な視線に耐えて来たこの女性は、とても生真面目な性格だった。
「龍形態に成る方法なんてもう忘れてしもうたぞ」
真面目な彼女はありのままの姿で測定しなければと考えていたのだ。
「そうじゃ!フールーダ殿なら今回の件に最初から関わっておるから何か助言が貰えるかも…」
ドラウディロンは上着を羽織りフールーダの家に向かった。
コンコン
「はーい。どちら様ですか?」
「ああ、ネムか。妾じゃドラウじゃ。フールーダ殿はご在宅かの?」
ピョコンとネムが顔を出す。
「こんばんは、ドラウさん。どうぞ、中へ」
「夜分にすまんの。どうしても今晩中に確かめたい事があっての」
話しているとフールーダとリイジーが2階から下りて来た。
フールーダとリイジーは工房の2階で住んでいた。
そこへ五つ子誕生で狭くなったエンリ宅からネムが移って来たのだ。
「ありがとう、ネム。遅いからお前はお休み」
リイジーがネムの頭を撫でる。
「もう!ネム、そんなに子供じゃないよ?」
「そうだった、そうだった、悪かったのぉ」
「エヘヘ、じゃあお爺ちゃんお婆ちゃんドラウさん、おやすみなさーい」
「「「お休み」」」
ネムは2階へ上がる。
「姉に似てキチンとしておるのぉ。下の者の面倒も良く見ておるし」
「あの子には何か特別なものがあるんじゃ」
「フールーダ殿、それはどう言う?」
「上手く言えんが…可能性の卵が幾つも見えるんじゃよ」
「益々、話がわからんのだが…」
「統率力、指導力、武力、魔力。なにより強いのは慈愛の力じゃ」
「慈愛の…力…」
「居るだけで周りを癒す。常時発動しているスキルと考えて貰えば良い」
「それは魔法…ではないのか?」
「違う。第一本人に全くその意識が無い。無意識に発動する魔法など聞いた事がない」
「それも…その…今回の五つ子に関係していると?」
「かも知れん。儂も多くの子供たちを見て来た。アルシェなどは天才肌じゃった。だがネムは何かが違う、それはサトル殿も感づいておる」
「サトルが?」
「うむ。なんでも元の世界の古い言い伝えで、世の中が乱れると北の方角から救世主が現れるらしい。じゃがその者は暴力を友とし闘いを糧にする。力で得る平和は長続きせん、そこで南の星々が動き出すのじゃ。救世主の暴走を止める為にな。その南の大将が慈母の星じゃ。ネムは特別だからと言うておった」
「それ程か…」
「あのサトル様が言うのだから特別なのだろう。儂には特に何も感じないのじゃがな」
「とろこで、お主何用じゃ?」
リイジーが思い出し様に問いかける。
「そうじゃ、そうじゃ、うっかり本来の要件を忘れる所じゃった。妾は明日の身体測定はどの姿で受けたら良いのじゃろう?」
「と言うと?」
「ふむ。龍の姿に戻る方法を忘れてしもうておるのじゃ」
「なんと!呆れた女王様じゃの…それにそんな格好で来られたら測る方が大変じゃろう?」
2人の老人は呆れる。
「…それもそうじゃの…言われてみれば体重などは測れんかったわ。それで御老体たちも測るのかの?」
「いやいや、儂らは測る方じゃ。この歳で今更やっても仕方あるまい。儂が男子、婆さんは女子担当じゃ」
「リイジー殿も魔力測定が出来たのか」
「いや、ポーションの鑑定は出来たがな。爺さんに教わった」
「仲が良いのぉ」
「馬鹿な事をお言いでないよ。儂の工房に医学の勉強をすると言うて転がり込んできたのは爺さんだぞえ?」
「ンフィー君の部屋が空いておったし…他にも部屋が幾つも空いておる。勿体ないじゃろう」
「よう言うわい。1人暮らしは寂しかったと何故正直に言わん」
「お主こそネムが戻った時に大喜びしとったじゃないか」
「儂はエランテルでネムと暮らしておったから懐かしかったんじゃ、お主とは違うわい」
「口の減らない婆さんじゃ」
「その台詞そっくり返す」
「まあまあ、3人で仲良く暮らしたら良いではないか。さて、長居してしもうた。ありがとう、礼を言う」
「うむ。ではまた明日。おやすみ」
「おやすみ」
帰り道、自分も誰かルームメートを探そうとかなと考えるドラウディロンであった。
ーーーーー
「ねぇねぇ、この下着って派手過ぎかなぁ?」
「ちょっと、アタシのブラ知らない?」
娘たちは初めての身体測定を前に大騒ぎだった。
「でもさぁ、女しか居ないんだから別に裸でも良くない?」
「それアタシも思った」
「なんで何でなんだろう?」
「何がよ?」
「ネムやクー、ウーが魔力があるからってのは分かるんだけどアタシらまで?」
「魔法なんて使えねぇって」
「無いよねー」
「うん。無い無い、その兆候も無い」
「お爺ちゃん曰く、念の為だって」
「これから使えるようになるんじゃん」
「マジ?」
「立ち聞きしたんだけどさ。村全体が魔法に覆われるんだって、そんでアタシらも魔法に包まれちゃうの」
「そんじゃマジックキャスターデヴューって事?」
「やったね!」「アタシら大勝利ぃ!」
「でもさぁ村長さんって魔法使えないじゃんね?」
「あ、そっかぁ。皆んなが使える様になるわけじゃないのかぁ…ガックシ」
「それよりさぁ、こないだのお祭りで告られちった」
「あ、アタシも」
「良い人っぽかったけどね…」
「なんか引いちゃうんだよね」
「そうそう、アレ、付いてるかって思うとね」
「仕方ないよ、アタシら過去あるし」
「出たよ。心と身体に過去の傷を持つ薄幸の少女ロール」
「アンタ、それ好きだねぇ〜」
「ハハ!だってさぁ。でもツアレさんって平気だったのかなぁ。1番酷い目にあわされてたんだよ?」
「村長さんとツアレさんは別格。アタシらとは比較になんない」
「メンタルがアダマンタイトだもん」
「こないだそれ言って睨まれたから速攻で土下座した。めっちゃ怖かった」
「バッカでぇ」
「自分で仕掛けた地雷踏み抜いてどうする?」
「クーレお姉様は?」
「お姉様はどっちかって言うとアタシら寄り」
「納得」
「そうそう、呼び方決めた?」
「サトル様でしょ?何でサトル様じゃ駄目なの?」
「もう村のお披露目も済んだんだから、いつまでも様付けはヨソヨソしいって」
「サトル様ってもうお父さんって呼んでる感覚なんだけどなぁ」
「そうそう」
「村長さんとネムがお父さんでぇクーレお姉様はパパ、パンドラズアクター様…あ、兄上だった…は」
「ストッープ!兄上?」
「本人希望」
「ああ」「ああ」「だろうね」
「そんで兄上は父上、ツアレさんは未定。で、アタシたちは?」
「おやっさん」「おやじ」「父ちゃん」「ダディ」「パピィ」
「それだっ!」
「え?どれ?」
「パピィ」
「え〜怒られないかなぁ〜」
「大丈夫だよぉ。じぃじって呼ばせてるぐらいだから。きっと可愛いのが好きなんだよ」
「じゃ、決定!サトル様の事はこれからパピィ!」
今を生きる彼女たちに明日は関心なかった。
ーーーーー
「さぁさ、明日は早いからもう寝なさいよ〜」
「ふぁ〜い」
「寝る前にちゃんと歯磨きするのよ。吸血姫は歯が命だからね〜」
「ふぁ〜い」
「エンリ、それはいくらなんでもシュール過ぎないかい?」
堪らずンフィーレアが口を挟む。
「ん?なんでよ?虫歯になったら困るじゃない」
「いや、そこじゃなくてだね…いや、もうイイよ…」
「変なの…」
「パパ、ママ、歯磨きしたぁー」
「皆んな、よく出来ましたぁ〜。じゃあ、おやすみのキスしてあげるからね」
エンリは一人一人の頬にキスをする。
「パパにもキスするぅ〜」
「お!パパにもしてくれるの?」
ンフィーレアはとても嬉しそうだ。
「しても良いけど、噛んだら駄目よ?パパも仲間になっちゃうからね」
「いや、だからシュールでしょ?って」
「だって本当の事だしぃ〜」
「おやすみなさい、パパ、ママ」
そう言って五つ子は寝室へ消えて行った。
「ンフィー、トマトジュース飲む?」
「ワザとだな?絶対、ワザとだ。普段からそんな物飲まないじゃないか」
「テヘペロ」
「最近ネタがドンドン、エスカレートしてくよね」
「ん?そうかなぁ〜?結構ウケてるよ?」
「だからってどうなの?そこをネタにするって…母親としてさ」
「あの子たちがこれからコソコソ隠して生きてくなんて嫌。だったらいっそカミングアウトして笑いを取って行こう作戦よ」
「そりゃンフィーには分からないと思うわ。違うし」
「あ…その言い方、傷つく」
「だったらこっち側へ来てよ」
「前にもそんな事言ってたけど、それ本気なの?」
「本気も本気、大本気だよ。やっぱ家族はズッと一緒じゃなきゃ駄目だよ」
「信じらんないよ、夫に死んでくれなんて…」
「逆でしょ?生きて欲しいの」
「あ、そうか」
「あ〜、ンフィーがこんなに悩むんだったら内緒で珈琲に母乳混ぜて飲ませちゃえば良かったなぁ〜」
「何考えてんの…怖いなぁ」
「だってぇ〜。あの子たちにやってる時にも全然寄って来なかったしぃ」
「だって授乳の邪魔でしょう」
「普通はさぁ。パパにも〜とか言ってオッパイ吸いに来るじゃない?」
「来ません。そんな話ありません」
「あったもんねー。昔、村に居たお姉さんが井戸の所で言ってたもん。旦那さんがそんな事言うって」
「だいだいエンリはその手の話、妙に詳しいよね」
「アタシたちの年頃はちょっと歳上の結婚してるお姉さんたちの話は興味津々なの。わかるでしょ?」
「なんとなくね」
「いいの?先に死んじゃうんだよ?その前にアタシたちはピチピチなのに1人だけヨボヨボになるんだよ?嫌だよ?介護なんて面倒だし」
明日の決戦を前に気持ちが昂ぶるエンリ。
「そんな事言ったって君やあの子たちはやむを得ない理由があったけど僕はそうじゃないから、お義父さんも怒るよ?」
「お父さんはンフィーの事なんか気にしてないよ」
「…エンリ、言葉の暴力って知ってる?」
「なにそれ、美味しいの?」
「お婆ちゃんも居るし」
「お婆ちゃんも成っちゃえばイイじゃん。今度聞いてみよ」
「聞かなくてイイ!そもそもエンリはどう思ってるの?」
「アンデッドになった事?」
「それもあるけどアンデッドとして生きる事だよ」
「別に」
「べ、別に!?」
「だってそうじゃん。別に何も変わって無いし…それどころかこれからもズッと変わらないし。本当は村の人全員がそう成って欲しいぐらいだよ」
「それ、お義父さんにも言ったの?」
「うん」
「なんて?」
「悪くないけど、やっぱり本人の意志が大事だからって」
「…まともな様な…そうで無い様な」
「今はほら、不明な点が色々とあるから。何年かしたら分かると思うんだよね。そうしたら希望者を募るつもり」
「アンデッドになる希望者って…」
「あら?ラボばっかりに居るから知らないんだ。結構、今でも居るんだよ?お父さんが止めてるだけでさ」
「…そう…なんだ」
「だからさぁ、やろうよぉー。カプっとするだけだから全然痛くないよ?」
「う〜ん」
「愛してないの?」
「…そう来たか」
「私たちが人間じゃなくなったから愛してくれないんだ。可哀想な私たち…これから愛を求めて夜な夜な彷徨うのね…」
「…もうイイ?寸劇、終わった?」
「ひどーい」
「わかった、わかった。3日待って、その間に考えるから」
「なにその3日って」
「やりたい事を纏めてノートに書くんだよ」
「えー!じゃあもう成るの前提じゃない!だったら今夜…」
「駄目だって!こう言う儀式ってのは順序があるの」
「几帳面ってか几帳面だよね〜」
「君が大雑把過ぎるの」
「だけど小さい時から好きだったんでしょ?」
「…まーね」
「今でも?」
「もちろん」
「じゃあ、キスして」
「噛むなよ?」
「どーしよっかなぁ〜」
「コラっ!」
「エヘヘ♡」
「………」
「………」
(男の子も欲しいなぁ〜)
お疲れ様でした。
はたして、これから村はどうなって行くのか…。
(ホント、どうなるんだろう…)
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。