今回はプチ冒険に出掛けます。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「久しぶりだなザリュース」
リザードマンの集落を訪れた鈴木は
懐かしい顔に頬を緩めた。
「お元気そうでなによりです、サトル様」
「こんにちわー!」「おじゃましまーす!」
元気な声がして鈴木の後ろから五つ子が飛び出した。
いきなり現れた空飛ぶ物体にザリュースは面食らう。
「ハハ!すまん、すまん。ビックリさせてやろうと思ってな」
「お人が悪いですな…ビックリしましたよ。それで?」
「うん。この子たちは俺の孫だ」
「ま、孫?」
「そう、エンリの子だ。訳あってこの様に魔法が使える」
(訳って何だ?人間の子供の歳は分からんが…産まれてまだ何年も経ってないだろう…)
「今年産まれた」
「へ?今、なんと?」
「だから…この子たちは今年産まれた」
「そんな!妻も魔法を使いますから多少は分かります。産まれたての赤子が空を飛ぶなどはありえません」
「ザリュースよ。お前は何の為に旅をしていたのだ?もっと広い視野を持て、先入観に囚われてはいかんぞ」
「何をもっともらしい事を…。こんな事が直ぐに飲み込める訳ないでしょう」
「あなた、立ち話など失礼ですよ」
「おお!クルシュも元気そうだな」
「お久しゅうございます。まぁ!可愛らしいお孫さんですね」
「な?やはり女は考えが柔軟だ」
鈴木はザリュースにドヤ顔で言った。
ーーーーー
家へ招待するのを断って広場で車座になって座り込んだ。
「本当に良いのですか?」
「別に内緒話をするのでも無いしここで良い」
「じゃあ私はお茶の用意を」
「お前たちはクルシュについて行って家を見せてもらいなさい、帰ってから日記を書くんだろ?」
「は〜い」
五つ子はフワフワとクルシュの後をついて行った。
「さてと。何があった?」
「え?」
「分からんとでも思ったか?来て直ぐに分かったぞ。チビたちが居たので言わなかった」
「………」
「どうした?言ってみろ」
「実は…。最近フロストドラゴンたちに目をつけられまして、食料を取られたりしているのです」
「ドラゴンが魚を食うのか?」
「わかりません…単に強者が弱者を痛ぶっているだけかも知れません。私たちは奴らの暇潰しなのです」
「じぃじ?」
いつのまにかクルシュと五つ子が戻っていた。
「トカゲさんたち虐められてるの?」
「あ、うん…まぁ…」
口を濁す鈴木。
「助けてあげないの?」
相手はドラゴンだ、それに自分は正義の味方ではない。
厄介事を避けるわけではないが、わざわざ火中の栗を拾う趣味もない。
鈴木が上手く逃げ様とした時。
「誰かが困っていたら助けるのは当たり前」
「何故そのキラーワードを!」
鈴木は驚いて五つ子に尋ねる。
「ママが言ってたよ。じぃじはそう言って助けてくれたって、だからママも助かったし私たちも産まれたって」
鈴木はザリュースへ向かって言った。
「それで?私の相手は何処に居る?」
ーーーーー
「呆れた!それで請け負って来たんですか?」
「だってお前がチビたちに言ったそうじゃないか」
「そりゃ本当の事ですもん言いますよ。だからってドラゴン退治を引き受ける事はないでしょう?」
「キラーワードなんだよ、俺の。それ言われたら断れないの!」
「もう…。それで?いつ行くんです?」
「あれ?止めないの?」
「止めたって行くんでしょう?その…なんだっけ…きらーわーど?なんでしょう」
「うん。それでな…あのな…」
「ちゃんと夜には帰る事」
「へ?」
「連れて行くんでしょう?」
「何故分かった?」
「分かりますよ…娘なんですから。だけど夜はちゃんと帰って来て下さいね。ゲートあるんだし」
「参ったな…心配しないの?」
「お父さんがあの子たちに指一本触れさせる訳ないでしょう?もしそうなったらこの世界が吹き飛んでますよ」
「まぁ…そうなんだけどな」
「約束ですよ?」
「日暮れには必ず村へ戻る。ちゃんと日記も書かせる」
「大変良く出来ました」
「お前は俺の自慢の娘だ」
「褒めたって何も出ませんよ」
「馬鹿」
鈴木はエンリを抱きしめた。
これ程、人を愛おしいと思った事はなかった。
「お父さん」
「なんだ?」
「頼みましたよ」
「任せておけ」
ーーーーー
「えーーーっ!それで行かせちゃったの!?」
クーレは驚いてパンを落とした。
「肝の座り方が半端ねぇな」
ブレインはビビった。
「女傑と言う言葉はエンリの為にあるんだな」
ガゼフは納得した。
「だってぇ言う事聞くと思う?」
「「「思わない」」」
「でしょ?だったら毎晩帰るって約束させた方が安心でしょう」
「毎晩帰るのか?」
ブレインが不思議そうに聞く。
「行きはね。お昼はゆっくり道中を楽しんで日暮れになったらゲートで村に帰って来るの、で翌日はまたゲートで昨日の所まで行く。その繰り返し」
「アゼルリシア山脈まで行くのにまるでピクニックだな」
「お弁当持たせてるもの」
「あーあ。もうね、この親子にはついて行けない。アタシも大概だけどスケールが違い過ぎるよ」
クーレはそう言って笑い出した。
ーーーーー
「本当の所を知っておるんじゃろう?」
「うむ。聞いておる」
「なら話せ。一応儂のひ孫なんじゃぞ」
フールーダは仕方ないなぁと話し出した。
「良いか?これは秘密じゃぞ?誰にも言うでないぞ?」
「えーい!勿体ぶらずにさっさと喋れじじい!」
「デビュー戦じゃよ」
「デビュー戦!?た、戦わせるつもりか!?」
「そうじゃ、それで儂に意見を求めに来た」
「それでお主なんと?」
「魔力量では既に儂の遥か上。あの広場での魔法を覚えておるだろう?7…いや8かも知れん」
「それ程か?」
「魔法を覚えて居らんだけじゃ。数が多いでのそう簡単には覚えきらん」
「だったら危険じゃろう…」
「装備じゃよ…れじぇんどきゅう…とか言うておったの、それで固めるそうじゃ」
「それは凄いのか?」
「儂が全力で放った魔法やガゼフ渾身の一撃も傷一つ付けられんよ。全て無効にされるか弾き返される」
「そんな物が5つもあるのか?」
「サトルさん自身のはごっずきゅうらしくて、流石にそれは自身の分しか無いがその下のは予備があるそうじゃ。だから足りない分はバフを掛けまくるそうじゃ」
「効くのかのぉ?相手はドラゴンじゃぞ?」
「これはツアーから聞いたのじゃが。評議国に行った折りも掛けておったそうじゃ。曰く、多分自分の魔法は無効化されるだろうと」
「白金の竜王の魔法をか?」
「まだ一度も本気を出しておらんよ、あの方はな」
「法国の時もか?」
「詠唱一つで国が吹き飛ぶ。流石の儂もそれを目の当たりにするのは恐ろしい。後戻り出来んでな」
「では、ひ孫は安心じゃな」
「殺すつもりは無いと言うておったから、デビュー戦と言うより練習試合かの?」
「知らんと言うのは怖いのぉ」
リイジーはしみじみとそう言った。
ーーーーー
「わぁ!綺麗なお花!ねぇ、なんて言う名前?」
「…綺麗な花」
「みてみて!可愛い!ねぇ、なんて言う名前?」
「…可愛い花」
「すっごい良い匂いするよ!なんて言う名前?」
「良い匂いの花」
「………」
「しょーがないだろう!知らないんだから!」
実際、鈴木は花の名前など皆目知らなかった。
野に咲く花など見た事が無いのだから仕方ない。
「大体だな、花の名前ならパパやママの方が詳しいだろう?」
「…パパもママも葉っぱの名前しか知らないの」
(あ〜、薬草系かぁ〜)
鈴木と孫たちはリザードマンの村までゲートを使い
そこから徒歩でアゼルリシア山脈を目指していた。
ザリュースとクルシュは流石にまだ幼い子を一緒に連れて行くのは危ないと止めたが、ペットのロロロとの模擬戦を見て何も言わなくなった。
ロロロは成す術もなく敗退したのだ。
因みにその余りの圧勝劇に種族の暴れん坊の異名を持つゼンベルも模擬戦に名乗りを挙げていたが辞退してしまった。
そして何故徒歩なのかと言うと、エンリから折角行くのだから出来るだけ見聞を広める様にとお達しがあったからである。
(だったら植物図鑑ぐらい持たせろよな)
最近色んな意味で逞しさを増す娘に鈴木は心の中で悪態をついた。
「じぃじ、お腹空いたぁ〜」
空を見上げた鈴木は太陽が真上に来ているのを見た。
「おお、もうそんな時間か…」
鈴木の持つ特性の飲食睡眠不要や疲労無効はともすれば時間と言う概念を忘れがちになる。
「え〜と、何処か良い場所はないかな…」
キョロキョロしてお昼ご飯を食べるのに適当な場所を探す。
「あのね、もう少し行ったら芝生のある広場があるって」
「?」
「ここを真っ直ぐって言ってたよ」
「…誰が?」
「小鳥さん」
「…小鳥?」
「うん。さっき飛んできた小鳥さんとお話ししたの」
「ち、ちょっと待て!お前たち鳥と話せるのか!?」
「少しだけね」
「いやいやいや、少しだけでもそれ凄い事だろう。いつからだ?」
「ピニスンおじさんに教えてもらった。相手の目をこーやってジーっと見て仲良くしよーねって心の中で話しかけるとね、お話し出来るんだよ」
(魔法…じゃないよな…。子供にありがちな無垢な心の為せる技か?はたまたテイマーの素質があるのか?)
「じゃあ他の動物さんともお話し出来るのか?あと命令とか出来る?」
「う〜ん、あんまり動物さん居ないから試してないよ。それとお友だちなんだから命令とかしないよ?」
「そ、そうか…そうだよな…友だちに命令しないよな。じぃじが悪かった」
(上下関係が嫌いな癖に自分はそれを知らない内に求めているのか…これは注意しないとな)
「うわぁああああ〜!」
そこは真ん中に大きな樹があり青々とした芝生が生い茂っていた。
周りには花が咲き、小鳥たちが戯れる。
「…これは見事な」
絵画の様な風景に鈴木も息を呑む。
「自然の芸術だな」
「げいじゅつ?」
「ん?なんでもない。さぁ!お昼にしよう!」
皆、芝生に座り込みエンリのお弁当を広げる。
「じぃじも食べられたらいいのに…」
五つ子はちょっと寂しそうに言った。
鈴木は嬉しそうに五つ子の頭を撫でながら
「じぃじはこうやって居るだけでお腹いっぱいになるんだよ。お前たちの笑顔が1番のご馳走だからね」
「変なのぉ〜」「笑顔なんて食べられないよぉ〜」
五つ子はキョトンとして首を傾げた。
鈴木は思った。
「あー!カメラ欲しいーっ!」
お疲れ様でした。
まだ言葉を喋られない赤ちゃんは
動物と心を通わせられると思っています。
動画とかにもよくあるじゃないですか。
赤ちゃんと飼ってる犬や猫がまるで心が通じ合ってるかの様な仕草をしているの。
あと、狼に育てられた少女とか。
目は口ほどに物を言うらしいですからね。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。